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女性2000年会議、日本NGOレポート
by NGOレポートを作る会, 1999.08.13
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G 権力および意思決定における女性

  1. 政府および政府機関などの現状
  2. 政党の現状
  3. 民間部門、労働組合、使用者団体、小地域および地域機関の現状
  4. NGOおよびNPOの現状
  5. 将来へのビジョン
    (1) クリティカルマス(決定的多数)概念の徹底化
    (2) すべての領域におけるポジティブアクションによる目標設定と進行管理
    (3)女性の政治参画の促進

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1. 政府および政府機関などの現状

 日本は「意思決定レベルの地位における女性比率を1995年までに30%にする」という国連の目標(1985年ナイロビ将来戦略目標、経済社会理事会承認) から、ひどく遠い状況にある。改善に向けて政府も少しずつ努力を続けてはい るが特段の措置が今後望まれる。 総理府は国の審議会委員の女性比率について、1996年5月に10年間で30%達成の目標を掲げ努力してきた。しかし、98年9月現在18.3%の実績であり、2000年の20%達成を目指している。審議会の種類によっても男女の偏りがあ る。地方公共団体も女性計画に目標値を掲げているが、30%を超えたところは ほとんどない。 人事院によれば国家公務員の女性比率は97年度で19.9%である。管理職に ついて女性比率を表す統計はない。行政職に限定し(国立大学、税務署などを 除く)、課長級以上を給与等級9〜11級の人数から計算すると、1.7%(7,894 人中94人)と低い。96年、労働省に戦後初の事務次官がようやく登場した。 また省庁による女性職員の採用・管理職登用に関し、人事院には明文化された 積極的推進措置はない。この事についても30%達成目標を掲げるべきである。 96年以降の内閣は、女性大臣はゼロもしくは1名で推移しているが、政務次 官は少ないが定着している。

 行動綱領では、政府は選挙制度等を通じて、男女が同じ比率になるような奨 励策を取れと述べている。しかし政府は、政治の行政からの独立を理由として、 政党への奨励策は講じていない。

 1994年より衆議院選挙はこれまでの中選挙区制に代わり小選挙区比例代表 並立制が導入された。政党によっては、女性を含めたマイノリティの議席確保 に道を開くもので、一定の評価を受けている。現在比例区選出の定数は衆議院 500議席中200議席、参議院252議席中100議席であり、総議席の40%であ る。政党によっては、男女交互の比例名簿や女性候補を上位に掲載した名簿に よって女性議員の増加に努力しているが十分とは言えない。94年から始まった 公費による政党助成金制度は、政党に所属する国会議員数によって配分される。 その結果圧倒的多数の男性議員に助成され、女性たちはその恩恵を受ける事が 少ない。今後は政党助成金の30%は女性候補の発掘や研修などに当てられるべ きである('97IPU会議:於インドでの提言)。

 現在、女性の国会議員は衆議院25名(5.0%IPU世界ランク123位)、参 議院43名(17.1%同20位)と少ない。政党の中には中選挙区制に戻すことを 主張するものもあり、政府部内では比例区を廃止すべきと言う意見も出ている。 そして99年6月23日には比例区選出人数を50削減する法案が政権の座にあ る自民党と自由党の議員立法として出された。これは女性議員の進出を阻むも のであり、むしろ代表枠の拡大を選挙制度改革で図るべきである。また、現在 参政権は20歳以上とされているが、被選挙権(衆議院議員と市町村長は25歳 以上、参議院議員と都道府県知事は30歳以上)とあわせ、若い男女の政治参 加を制限するものであり、各国並の一律18歳以上参政権が検討されるべきで ある。現在に至るも女性知事は登場しておらず、市町村長は現在6名(市長3 名、町村長3名)である。地方公共団体の議会に占める女性比率は7%と極端 に少ない。国、地方政府共に、女性議員を増やす奨励策をとる必要がある。 政府は「男女共同参画白書」を発行しているが、抽象的表現が多い。女性の参 加について、各分野で達成すべき目標値と期限、年次達成数・率、分析と対策 をわかりやすく記載すべきである。その際、基数と意思決定機関への進出数を 併記すべきである。各省庁の総計数字に内数として女性数が記載されるように なった事は進歩であるが、行動綱領の各項について日本の現状と目標をあらわ す数値一覧がない。デジタルなデータ管理と公表が政府の課題である。そのた めにも監視機関の設置が急務だ。

 意思決定への女性の参加等に関する調査研究をしているNGO団体や研究機 関への政府による支援については、国立お茶の水女子大学にジェンダー研究セ ンターが設立された。他の公私立大学では同様のセンターは10余りにとどま る。民間では市川房枝記念会、全国フェミニスト議員連盟、北京JACや北京会 議後各地に誕生したNGOや多くの個人による調査・研究機関があるが、政府 の支援を受けた恒常的、定則的なものではない。NGO側からも、もっと積極 的に政府に働きかけたい。

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2.政党の現状

 以下の記述は、1998年6月に北京JACが行った「政党の女性政策アンケート 調査報告」に基づいている。党員に占める女性比率は、公明が47.1%で最高、 以下共産党40.5%、自民党38.3%、社民党約30%である。民主党・自由党・新 党平和は集計がない。女性党員の増加策について言及した政党はなく、共産党 のみが「女性党員の活動と成長の援助」をあげている。 女性の幹部登用については、方針決定機関に女性が占める割合では、自民党 6.7%、民主党9.1%、自由党7.7%、共産党17.6%、社民党24.0%、公明5.0%、 新党平和10.5%で、全政党合計14%であり、政策立案機関に女性の占める割 合は、自民党4.5%、民主党18.2%、自由党5.8%、共産党14.3%、社民党9.1%、 公明16.7%、新党平和28.6%で、合計で9%と少なく、女性党員の比率とは 連動していない。過去5年間の重点的な女性政策の中で、女性の幹部への積極 登用をあげたのは、共産党・社民党のみとなっている。長年政権の座にある自 民党は「女性議員の幹部への登用」をあげているが、女性議員が極端に少ないた め、実のある増加策になっていない。

 女性議員の進出については、各党ごとの衆議院議員数、参議院議員数(党の議 員に占める女性の比率)は以下のとおりである。自民党5人、10人(1.9%、8.4%)、 民主党3人、9人(3.2%、22.0%)、自由党2人、1人(5.0%、8.3%)、共産党5 人、4人(19.2%、28.9%)、社民党3人、5人(20.0%、28.3%)、公明0人、5 人(0%、20.8%)、新党平和4人、0人(10.5%、0%)。候補者選定での女性の 積極的登用は、民主党・共産党・社民党が党の文書に盛り込んでいる。以上の 政党のうち、民主党と社民党が98年の参議院選挙で1位から4位までに女男 交互名簿を採用したが、他に実際にクォータ制を導入したところはない。導入 をうたっても文言倒れに終わっている。

 女性議員を増やそうとする試みは、93年日本新党の「女性のための政治スクール」より始まった。同党解散後は新進党、その後は民主党に受け継がれてい る。98年から社民党も同様の試みを始め、民主党は女性議員候補のための資金 提供や、女性国会議員候補の公募をはじめた。地方議員候補の養成については、 超党派NGO組織によるものが活発化しているが、政党によるものはわずかし かない。女性地方議員が多いのは共産党954人(党内女性地方議員比率24.2%) と公明党357人(12.6%)である。党の地方組織が基盤になっている。

 自民党は地方組織が現職議員の後援会の寄せ集めであり、国会議員も地方議 員も組織的・積極的に女性候補の登用を行う動きがない。各党は、例えば男女 共同参画社会基本法制定という政府レベルの政策には積極的な提言を見せ、党 内に女性部局(自由党を除く)も設けているが、党自体の課題として女性部局以 外の各部署でも達成するべき女性比率を目標値として示すなどの事はしていな い。女性党員のみではなく、男性党員や幹部に、女性が意思決定機関に参画す る必要性があることを理解させためには、新しくて強力な方策が求められてい る。

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3. 民間部門、労働組合、使用者団体、小地域および地域機関の現状

 企業経営者および労働団体において、意思決定の場における女性の指導者、 管理職などのクリティカルマス(決定的多数)の重要性あるいは、概念そのもの が理解されていない。

 経営者3団体のうち経団連では、1995年2月社会本部の「女性の社会進出 に関する部会」の手によって「社会が変わる、会社も変わろう、男女の働き方 を変えていこう」と題して会員企業のアンケート調査をふまえ、報告書を取り まとめている。その中では労働環境の現状と課題、新しい男女の働き方を構築 するための提言がされている.。また97年2月には「部会レポート フォロー アップ調査の結果の概要と今後の課題」と題するレポートも取りまとめられた。 しかし、これらは社会や経営者に対する啓発であって、具体的な制度化は会員 企業に任されている。

 また労働団体である連合本部では中央執行委員の女性比率はわずか7.7%で あり、また全国的に見ても労働界では業種別組合執行委員の女性平均数は93 年時点で平均1.5人、それ以後のデータはない。連合傘下の組合における女性 執行委員の平均参画比率は過去4年間ほとんど変わらなかったが努力の結果、 99年2月調査では6.5%と上昇の兆しを見せている。しかし女性の組織率が約 27%であるのに比べてまだ低すぎる。

 ここ5年間の間に、全国の自治体単位で設置されている女性センターを拠点 に活動している北京会議のNGOフォーラムに参加した地域団体など(特に各 地の女性会議)では、地域単位でジェンダー統計を出したり、アンケート調査 や女性プランへの提言を行うなど、活動が活発になってきている。しかし一般 市民にはこうした取り組みがあまり見えず、実態的には、狭いコミュニティー で形成される市民団体(地縁によるものも含む)では、意志決定機関に積極的に かかわる女性は排除され、男性を立てる女性が選ばれがちである。また団体の 長は固定化され、公的機関の審議会などもアテ職によりその長が地域代表とし て選ばれるケースがしばしば見られる。また専門性を持ち発言する女性に対し、 男性市民や行政職員(おもに男性の)などから、正当な評価を受けず性役割分業 観に基づいた批判を受けたりする。

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4. NGOおよびNPOの現状

 大都市周辺に設立された障害を持つ当事者団体では、リプロダクティブヘル ス・ライツの実現のために優生保護法の改正に向けて活発な相互学習の場を設 け、国会議員と連携しながら自らの意見反映のための活動を行い、優生条項の 廃止を伴う母体保護法の切り替えを勝ち取った。

 また自立生活支援、ピアカウンセリングを通じて、自己決定へのエンパワー メントを獲得する努力や、その目的のための女性議員を議会に送ったりしてい る。

 95年統一地方選挙の実施に向けて、女性議員を増やそうと言う動きが全国各 地で見られた。94年からは市川婦房枝記念会が政治参画センターを開設し、政 治家を志す人やそれを支援する人たちの実践的な訓練の場として大きな成果を あげてきた。95年には全国フェミニスト議員連盟が開催したシンポジウム「め んどり歌えば国栄える」はじめ北京会議の影響や、女性議員を増やそうという 様々な運動をてこに、全国各地で「女性を議会に」を合言葉に政治参画のため のバックアップスクールがおもに女性市民の手によって開講された。また地方 議会で女性議員を増やす活動に対して資金的援助をするための女性連帯基金や、 国会議員を目指す女性への資金援助団体としてWIN.WIN.も結成された。 99年統一地方選に向けて、おもに女性記者の取材によってマスコミでも「増 やせ、女性議員」などの記事が多く掲載されるようになった。こうした追い風 を受け、これらのスクール受講で勇気と自信をつけた人たちを含め、女性参政 権獲得以来の大量の女性候補者を生んだ。その結果、無党派を中心に女性議員 が増え、自治体女性議員比率は7%となった。

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5.将来へのビジョン

(1) クリティカルマス(決定的多数)概念の徹底化

 もし、意思決定機関に女性が参画しないか、あるいは圧倒的少数のままである としたら、その決定は果たして女性を含むすべての人々のニーズに応え、公正 な決定と言い得るのだろうか。物事が男性だけで決められて進んでいく事をお かしいという感性を意識化し、こうした議論をあらゆる組織、地域で起こし、 日本政府が1985年ナイロビで合意した意思決定機関における女性率最低30% を実現する。

(2) すべての領域におけるポジティブアクションによる目標設定と進行管理

 政府、地方自治体および公的機関は意思決定機関における女性の参画の現状を 科学的なジェンダー統計によって明らかにし、女性の登用を阻害する要因を除 去する事。職員の採用、登用、職域拡大、審議会などへのポジティブアクショ ンによる目標設定と進行管理(監視機関の設置など)をする。また男女共同参 画社会基本法や、男女雇用機会均等法などの中で、積極的優遇措置を取らなか った場合の罰則規定を設ける。

(3) 女性の政治参画の促進

 女性の政治参画を促すために、比例代表制の枠を広げたり政党助成金の 使途についてポジティブアクションの義務付けを行う。また民間の女性議員を 増やす運動団体に対し、適切な財政的支援をする。

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