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1. 国内行動計画策定の経緯
政府の回答に対して指摘しなければならないのは回答の分析対象が日本国籍 を有する女性に限られている点である。従って日本に住む外国人女性や移住労働 者女性の人権への配慮、マイノリティの女性の視点が欠落している。国内行動計 画である「男女共同参画2000年プラン」、今国会で成立した「男女参画社会 基本法」においてもあてはまる。またこれらは人権の尊重、地球社会の平和に貢 献する国際的協調などが基本的理念に掲げてはいる。しかし今日の日本は、これ らの理念に相矛盾する方向に進んでいる。今国会で成立した日米新ガイドライン 関連法案、日の丸・君が代を国旗・国歌とする法律、人権侵害につながる住民台 帳法案、盗聴法・組織的犯罪対策法がそのことを明確に示している。
経済のグローバル化が進むなかで移住労働者は増加し人権が侵害されている。 また労働の規制緩和は不安定雇用を増大し、女性労働への搾取を強めている。
このような状況との関連のもとで策定された国内行動計画、男女共同参画社会 法基本法であることをわたしたちはまず認識しなければならない。確かに国内行 動計画は北京行動綱領パラグラフ297にあるNGOとの協議(意見を聞く会の 開催、全国からのFAXでの意見募集など)のもとで策定された。その経緯、立 案過程は評価できる。
しかしながらパラグラフ297にある政策実現の目標達成期限及び監視基準 に関しては、2000年プランは国の審議会委員の女性の割合を2000年までに20%達成するという数字の明記以外に具体的な期限や監視基準は明文化していない。
2000年プランは最優先課題として(1)男女共同参画を推進する社会システムの構築を掲げられている。社会システムの変革をともなって初めて男女平 等の実現が可能だという認識が呈示されたこと、そのためには政策方針決定過程 への女性の参画の拡大が手段としてあげられたことは大きな前進である。しかし 政策方針過程への参画にとって不可欠な政治への参画を促進する、例えば選挙制 度の検討、比例代表制におけるクオータ制導入などの具体的施策がない。
施策の目標達成期限、監視基準は、(2)職場・家庭・地域における男女共同 参画の実現、(3)女性の人権が推進・擁護される社会の形成、(4)地球社会の 「平等・開発・平和」への貢献という4つの基本目標のいずれにもない。
例えば99年改正された男女雇用機会均等法はポジティブアクション規定が 新設されたが、国が事業者の相談に応じるなどの援助のみで事業者への強制力 はないし、同法は公務員に適用されないなど問題がある。
また政府レポートには95年以後の主な法令改正が列挙されているが、労働 基準法の休日労働、深夜労働の女子保護規定の撤廃を初め、パート労働法、 派遣労働法の成立などにみられる女性労働に対する搾取の強化につながる法律 への言及がない。さらに同プランには、女性のなかでも二重、三重の差別状況にお かれている被差別部落、アイヌ民族、在日韓国、朝鮮人をはじめとするマイノリテ ィ女性の視点が欠如している。
2. 男女共同参画に関する意識の動向
意識調査はデータの結果が羅列されているだけで、分析がない。
例えば学校教育の場は男女共に半数以上が平等という認識の結果をそのまま 記述している。学校教育の場が性差別の再生産の場でもあることを、記述する必要がある。また、性別役割に対する考え方に関して政府レポートは男性は仕事 優先が64.4%、女性は家庭を優先が45.0%、家庭と仕事を両立させるが41.2%と 「女性は仕事をもつのはよいが、家事・育児はきちんとすべきである」という考えに賛成する者が依然として多数を占める(賛成86.4%)。性別にみる と、女性は仕事よりも家庭を優先する又は家庭と仕事を同じように両立すると答 えた女性は男性よりも多く、「女性自らが家庭責任を感じていることが表 れている」と記述している。これでは女性の意識にこそ、原因があるのだととら れかねない。むしろ、性別役割意識の固定化と経済システムとの関係、性別役割、 性別分業体制を変革することができなかったことに対する分析が求められる。
しかし意識に関しては、政府の「家庭基盤充実政策」にもかかわらず、性別役 割分業を否定する人は増加していること、女性の多くが働くことをのぞみながら も働けない現状こそを指摘すべきである。
3. 民間女性団体(NGO)等の活動
第四回世界女性会議を契機に日本政府、自治体に対し政策提言を行う NGOが誕生した。北京JACは北京会議での日本政府に対するロビー活動を契 機に誕生した政策提言型NGOのネットワークである。北京行動綱領の12の重 大領域別コ ーカスを初め、男女共同参画基本法案の成立や、女性に対する暴力防止法の 成立 に向けて活動を続けてきた結果全国各地にネットワークが形成された。また国会 の動きをはじめ全国の女性の動きをいち早く全国の女性たちに提供するために ファックスによる「女性政策情報ネットワーク」は情報の地域格差をなくし、女性のエンパワメントの役割を果たしている。
北京会議後、全国各地に誕生したNGOは、自立した一人一人が核となるネッ トワーク型組織で上から下へではなく水平な、対等なパートナーシップをベース に輪を広げているが、この動きはまだ限られた特定の地域、特定のグループのみで 多数ではない。
しかし、政治への参画の拡大をめざす運動はこの5年間に全国に広がり、 1999年の全国統一地方選挙においては全国各地に女性と議会に送り出すバッ クアップスクールが設立され、今回の選挙においては、女性議員が倍増した。
さらにネットワークの動きは国内にとどまらず、東アジアにおいても北京会 議を前に東アジア女性フォーラムを結成し、94年には第1回フォーラムを日本 だ開催した。東アジア全域5カ国・1地域の女性ネットワークは二年に一度フォ ーラムを開催し、第2回目は韓国、1998年8月23日〜26日にはモンゴル のウランバートルで第3回目のフォーラムを開催した。全体の参加者は400名 ほどだったが体制変革後のモンゴルと交流を深め、経済のグローバル化による女 性労働者の周縁化の進展をはじめ、広範で密度の高い討議を行なった。報告 書は1998年11月に刊行された。第4回は2000年に台湾で開催される。
4. 男女共同参画社会の形成に向けた体制の整備・強化
2001年には中央省庁等改革により、各省の事務に広範に関係する事項に関する 企画立案及び総合調整を図る内閣府に男女共同参画会議が設置される。男女共同 参画会議の任務として,男女共同参画社会に関する基本方針、総合的な計画等に ついて審議するだけでなく、政府の施策に男女共同参画社会の視点が反映される よう関係大臣に必要な意見を述べること、男女共同参画に関して講じられる施策 の実施状況を調査し、及び監視することが挙げられている。局に格上げされる男 女共同参画室が事務局として機能する。男女共同参画室が単に連絡する権限しか 持っていなかったので画期的な進歩である。男女共同参画会議の構成は関係大臣 および学識経験を有する者10名によるとされているが、後者にNGOの代表を入れ るべきである。NGO代表が1名程度議員となったのでは、NGOとのパートナーシッ プをすすめるには不充分なので、その仕組みを作るべきである。また、男女共同 参画局にも、外部から男女共同参画に学識経験のある職員の登用を図るべきであ る。
現在すべての省に、男女共同参画のための窓口が設置されているが機能してい ない。各省に総合調整と監視機能をもつフォーカルポイントを設置しなければ、 当該省内のジェンダーのメインストリーム化は進行しない。
地方公共団体も国に準じて体制を強化すべきである。首長を議長とする庁内推 進体制を作り、首長部局の総合調整権限のある部局に男女共同参画担当部局を独 立設置し、専任の担当者を置く。さらにNGOとの連携を推進するため、機能する 審議会やその他の仕組みも作るべきである。
これらの仕組み作りに加えて,職員の意識の変革や向上を図るための研修を実 施する事が必要である。
5. 男女共同参画社会基本法の制定
男女共同参画社会基本法の制定は高く評価できる。国、地方公共団体が積極的 改善措置をとることを義務づけ、国が救済措置をとることを義務づけている。し かし救済機関について,国会答弁で官房長官は当面行政相談員や人権擁護委員な ど既存の機構を使い今後あり方を検討するとしているが、既存のこれらの機構は 救済機関としては不充分である。付帯決議に盛り込まれたように、行政からの独 立したオンブズパーソン的機能を持った新しい人権救済機関を設置すべきであ る。
具体的な内容や罰則等が明記されていないため、個別法の制定を待たなければ ならない。男女共同参画を進めるべき領域に付いても、「職域、学校、社会、家 庭」と述べただけである。韓国の女性発展基本法では政策決定過程及び政治参画 支援、公職参加、雇用均等、における女性差別の問題、男女平等教育(学校、家 庭、社会)、福祉などと領域を挙げ、雇用均等法などすでに制定した個別法に言 及している。緊急に必要とされている女性に対する暴力根絶法、家庭内暴力廃止 法など策定するべきである。
また、改正男女雇用機会均等法では「事業主が積極的改善措置をとることを妨げ てはならない」としか述べていないが、基本法では国および地方公共団体の義務 となっており、公務員等の採用、昇進等で効果が現れる事を期待したい。
事業者、団体、国民をまとめて、国民と表現している。条文にもマイノリティ や日本国籍のない在日外国人の視点が入っていない。共同参画の推進に当たって、 女性の中でもより困難な状況に置かれているアイヌ民族、被差別部落、在日外国 人女性、一人暮しの女性などの人権の尊重と差別の撤廃のための施策を重視して 行うべきである。
いくつかの地方自治体で、男女平等条例の策定が進んでいるが、基本法を実効 性のあるものにするためには、当該地域の女性の実態に合った条例が必要である。 NGOは地方議員と協力して、条例作りのための活動を進めるべきであろう。
1. 財政的措置
総理府の回答に示された1999年度の男女共同参画関係予算の総額は、7049753 千円で国の全予算額の10%となっている。しかし、その内訳を見ると必ずしも 男女が対等に社会作りに参画するための予算ではない内容が大部分を占める。
例えば,男女共同参画予算の83%にあたる5,858,657,191円が高齢者等が安心し て暮らせる条件の整備に宛てられている。その内訳を、厚生省に問い合わせたと ころ、総額の70%強である5,039,016,499円が年金などの国庫負担分に当てられて いるという事実を確認した。現在の年金制度では、年収130万円以下の給与所得 者の配偶者は年金を掛けることが免除され、その総数は1200万人にのぼる。そし て、その99%は主婦という存在があり、専業主婦制度を強化しているという強い 批判がある。その年金制度に対する国庫負担金を男女共同参画予算とすることは、 男女共同参画に逆行するものであるため、適切ではないといえる。
厚生省の担当者の認識の低さも問題であるが、それを調整できない現在の男女 共同参画室の権限に問題がある。現在持っている権限は連絡機能だけであるため、 各省から提出されたデータを単に受け取り,リストに入れこむだけしかできない ため、ナショナルマシーナリーとして妥当なデータが作成できない事が大きな要 因である。
男女共同参画関係予算を[1]男女が対等な立場で男女共同参画社会の成立を図 るため固定的な性別役割分担意識をなくすための事業(ジェンダーの主流化関連 事業も含む)[2]女性の人権向上を図るための事業に限定するべきである。その視 点で各省に対するガイドラインを作成し,提供し男女共同参画関係予算の定義を 徹底すべきである。
メデイアにおける女性の人権の尊重が全く予算化されていない。日本のメデイ アは女性を性の対象としている番組やコマーシャルの多さでは国際的にも悪名 高い。むやみに規制するのではなく、女性を暴力や性の対象とした番組に対する 意識を醸成するような放送関係者の研修や、女性の人権を尊重するような番組作 成のため活動しているNGOの支援など表現の自由を侵害しない方法で早急に検討 するべきである。
日本政府が第4回世界女性会議で大々的にWIDイニシアテイブを発表したが、 1998年度から1999年度の予算は1998年度の予算の6.3%減となっている。もとも と日本のODA全体予算の中で占める割合は極めて低いWID予算はむしろ大幅に増 額すべきである。
2. 北京行動綱領のフォローアップ体制
男女共同参画本部は総理大臣が本部長で全ての大臣がメンバーであり、形態的 には最も強力な体制となっている。有識者やNGOの代表が委員として任命されて いる男女共同参画審議会も一九九七年に設置法が制定され、組織上は望ましい体 制となっている。しかし、事務局としての男女共同参画室の権限が極めて弱いた め、全ての省が北京行動綱領を実施しているかどうかの監視が全く出来ない。 2001年4月から発足する男女共同参画会議は監視機能を持ち、男女共同参画室は 局に格上げされることになっており、大幅な権限強化となっており、期待される。
官房長官が女性問題担当大臣を兼務する事になっているが、官房長官の職務内 容に明文化されていない。そのため、女性問題を理解しない官房長官が就任した 時、女性問題を担当することを拒否し、女性問題担当は別の大臣の職務となった ことがある。官房長官の職務に女性問題担当を明記することが緊急の課題である。 また、官房長官は極めて多忙な職であるので、女性問題担当専任の副大臣を設置 することが必要である。
男女共同参画審議会の委員にNGOの代表は1名しか入っていないため、NGOとし ての監視や評価も困難な状況である。男女共同参画推進会議はNGOのネットワー クであるが、限られたNGOだけがメンバーである。全般的に日本の官僚組織はNGO を対等なパートナーと見なしていないので、他の領域に比べれば女性政策はNGO との連携が進んでいる。しかし、女性政策先進国に比べればまだ、ナショナルマ シーナリーからNGOへの一方的な情報提供とNGOからナショナルマシーナリーへ の一方的な意見の具申、NGOの意見がこのように反映されたか明らかでない現状 は、効果的な双方向対話には至っていないといえよう。
3. フォローアップ体制におけるNGOの役割
国連は、90年年代の国際会議において(92年環境・開発会議、93年人権 会議、94年人口開発会議、95年社会開発サミット、世界女性会議)、NGOの 代表を政府代表に加えるように指導してきた。これは、環境、開発、人権など の地球規模の問題解決のためには、メキシコ会議以降20年間に力をつけてきた 国境を超えたNGOの意見を無視できないという認識に達したことを意味して いる。日本政府もこのような国連の動きを反映して、NGOとの意見交換会、意 見募集など実施し政策の策定に活用してきたことは評価できる。しかし、これら は限られた時間内でしかも行政主導型で行なわれているために相互に対等な関 係で政策としてまとめあげていく作業としては展開していない。今後NGOは自 らが政策形成の主体となる力をつけること、パートナーシップを強調する行政、 日本政府がどのような方向に向かおうとしている政府なのかを見極め、批判して いく力をつけていくことが重要である。またNGOとしてNGOが政策決定の場 により広範囲に参画していくシステムをつくっていくことが求められる。
政府レポートには男女共同参画連携会議の連携を初め、「2000年6月に開 催される国連特別総会「女性2000年会議」に関する準備の過程において広く 民間団体等との情報及び意見の交換、その他の連携を図るため「女性2000年 会議日本国内委員会」を設けた」と記載されているが、連携の内容や国内委員会 の委員の選出方法などが見えてこない。
1. WIDイニシアティブ
ODA部門において女性対象プロジェクトを含む社会開発セクターへの供与の割 合が増えてきたことは評価できる。しかし、ODA全体としてみれば、いまだに経 済インフラ整備など大型プロジェクトが中心である。こうした大規模プロジェク トの場合、女性への配慮はプロジェクトデザイン後の審査要件に含まれているが、 実際にどの程度プロジェクトの実行に影響を与えているかは不明である。収入向 上プロジェクト等、女性への影響ミティゲーション措置は実施されても、基本的 なプロジェクトデザインが変更されることはほとんどない。JICAやOECFは、グローバ ルなジェンダー政策/指針を作成し、それに基づいて、中期計画を立てるべ きである。JICAのWID関連部局の予算ならびに職員を充実し、全ての技術協力 プロジェクトおよび多額な資金を投入して実施している「開発調査」にジェンダー 視点が組み込まるような審査機能を強化すべきである。さらに、すべてのプロジ ェクトでジェンダー視点のモニタリング/評価指標を計各段階から明確に設置 しそのためのプロジェクトの人的/資金配分を明確にすべきだ、すべてのプロジ ェクトの決定/実施以前にジェンダー専門家によるジェンダー調査を実施すべ きである。
プロジェクトのデザイン段階から女性を含む地域の人々の参加を保証する参 加型プロジェクト、NGOなどによる第3者評価などがJICAや外務省で始められてい るが、不十分である。特に途上国の地域住民女性あるいは本来の受益者となる女 性たちがプロジェクトの計各段階にもっと参加/参画するようなシステムを作 るべきである。ジェンダー要因を含む社会環境審査の基準と情報の公開、代替案 の検討、第三者による監視・評価、そして何より、大規模インフラプロジェクト 中心の体制を改め、ODAの基本理念を、最も貧しい、抑圧された人々の自立支援 であると明確に位置付けることを伴わなければ、WIDはあくまで周縁的なものに とどまると思われる。
プロジェクトの実施期間・実施後における女性への影響や参加状況に関するレ ビューも不十分であったが、JICAが南アジアをはじめいつかの地域で時後ジェン ダー評価に着手し始めたことは評価すべきである。
日本政府の掲げるWIDイニシアティブには評価できる部分もあるが、ODA政策全体、特に主要な割合を占める大型インフラプロジェクトの方針には大きな影響を 与えていない。WID専門家の数は増えてきているが、援助関係者のジェンダーバ イアスでなかなか、長期の専門家として派遣されていない。短期で使いまわされ ているのみで、分野も保健/医療に片寄っている。女性が全ての援助プロジェク トにもっと登用されるよう、全てのプロジェクトで女性専門家の比率を2010年ま でに30%にするというような数値目標を設定すべきである。さらに派遣される専 門家の資格要件として、ジェンダー研修を受けていること、セクシャルハラスメ ントについてきちんとした認識を持っていることを入れるべきである。
グローバリゼーションにより急激に進んだ開発途上国の貧困化に対して日本 は債務帳消しについても消極的で、ほとんど何もしていないという非難がある。 その中で、97年のアジア経済危機以降、日本政府は「宮沢構想」を始めとする 大規模な緊急支援を行ってきた。これには、いわゆる「ソーシャル・セーフティ ネット」が導入されるが、全体として使途が明らかでないことが、1999年6月に 実施された東アジア女性問題国内本部機構上級担当官会議の時参加者から指摘 されている。宮沢基金のアカウンタビリテイを明らかにするとともに、世界銀行 で行っているように、各国に融資を行う場合、女性の地位向上のプロジェクトに ある程度割り当てるというガイドラインをつけるべきである。さらに、多国籍企 業の女性労働者に対する差別的扱や健康、労働権等を含む企業行動ガイドライン が必要となってきている。日本は国際的議論の場において、こうした方向を積極 的に推進すべきである。
WIDイニシアテイブもふくめ、ODAの枠でどのような事業がどのような予算で行 われているか、明らかでないが、一般にわかりやすい形で情報公開をするべきで ある。さらに、JICAはODA事業の評価チームを派遣して行っているが、報告書が 公開されていない。評価チームの構成についても当該事業と関連のある専門家が 入り批判が出来にくいシステムになっているなど開発NGOからは疑問が出されて いる。
2. 東アジア女性問題国内本部機構上級担当官会議
東南アジア、南アジア、太平洋などの小地域では、女性問題国内本部機構担当 者の会議を定期的に実施しているが、東アジアでは行っていなかったため、1996 年に開始されたこの会議は意義深いものである。しかし、参加国には東南アジア の諸国も入っている。これまでは、参加国が話し合いをするだけで、合意結論、 宣言、勧告などを採択していない。
今後はモンゴル、中国、韓国などの東アジアの国々だけでも、北京行動綱領の フォローアップに関わる討議を行い、関係国間の取り決めもしくは努力目標を採 択し、毎年その目標に照らし合わせた評価をすることにより女性の地位の向上を 促進する事が可能となろう。
3. 男女共同参画社会の実現を促進するための基本計画の検討
すでに述べた今国会成立の「男女共同参画社会基本法」に基づいて日本政府は 基本計画を策定することになっている。女性差別撤廃のための基本的枠組みであ り、法的根拠とな基本法が成立したことは大きな前進である。しかし基本法は企 業の責務を国民の責務にふくめるなど女性にとって最も差別を強いられている 労働での差別撤廃にむけて明文化がなされていない。また機会の平等にとどまり、 結果の平等にまで言及していない点、間接差別禁止を謳っていない点、新たな苦 情処理の機関の保障の欠如など問題を含んでいる。
今後、基本計画、個別の法律制定に向けてNGOがいかに内実を獲得各地していくかが課題である。
4. 新たな千年に向けての男女平等及び女性の地位向上に関する我が国のビジョン
日本政府は「男女共同参画社会とは、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、 もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することがで き、かつ、共に責任を担うべき社会をいう」と繰り返し述べている。しかし、現 実に両性間に存在する不平等な力関係を認識し、それを克服することこそが平等 で公正で平和な社会を創りだす鍵である、という視点が曖昧である。21世紀に向 けて、20世紀の男性中心社会にとって中心的テーマであった相手と戦い征服し、 目的を達成するために暴力を肯定する価値観にとってかわる新たな価値と文化 の創造のためには性差別を撤廃することが不可欠である、ということを明確にビ ジョンにうちだすべきである。
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