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西陣プロジェクト その7〜高引き(そらびき)
小倉織物 小倉徳治郎さん、小倉亮さん
2002年 3月30日取材
ものづくり職人列伝

「五代目の小倉織物

場所はもちろん西陣。新町通寺之内の付近です。右ののれんは屋号である「蔦屋(つたや)」のを描いたもの。明治25年に小倉捨吉さんが初代蔦屋久兵衛に襲名されたそうです。

今回、取材をさせていただいたのは三代目の小倉徳次郎さんと、五代目に襲名される予定の小倉亮さん。

徳次郎さんは、90歳というご高齢にもかかわらず、私たちの取材に、忌憚(きたん)なく応えてくださいました。

亮さんは28歳。織りの勉強をされるだけでなく、会社のホームページの作成や展示会への出展など、幅広く活躍をされてます。この厳しい状況でこれからの西陣を支えていく世代としての思いをお伺いしました。


小倉徳治郎さんについて

小倉徳次郎さんは、大正元年生まれ。小学生の頃から家業のお手伝いをしてながら育ち、16歳のときに家業を継がれました。

龍村商店(現龍村織物)でしばらく過ごされ、幅広く製織、組織など、西陣の織物について研究してこられました。戦後には、「双美苑」というグループのリーダーを勤められました。組織や柄についての勉強し、共同販売をすることで織り仲間の方々と切磋琢磨されたそうです。

一番厳しかった時代は、やはり戦後とのこと。社会情勢が厳しいうえ、生糸などが配給になり、「やめてしまったら割り当てがなくなってしまうから」と、なにがなんでも作り続けなければならなかったそうです。


高引き機について

高引き機とは、人が機の上に乗って、ぬきいと(横に通す糸のこと)を通す道をつくって織る方法です。織り手の人と糸をあげる人が息を合わせないといけません。
明治末期にフランスからジャガードが持ち込まれるまで、織物はこのようにして織られてきました。

「よいしょ!」というかけ声とともに、機の上で糸を操る人がぐっと綜絖(そうこう)を持ち上げ、織っている人が杼を走らせます。
徳次郎さんは、小学生の頃、学校から帰ってくると、機の上に乗って、空引き機のお手伝いをされてたそうです。


糸枠からドラムへ

ジャガードの衝撃

空引き機では、複雑な模様はできません。人が綜絖を操るわけですから。そんな時代に、作った模様は「如源」という文字だったそうです。それだけでもたいへんな作業です。もちろん、仕上がった作品は高級品です。

ジャガードが導入されたのは、大正中頃とのこと。「これからは、これやらなあかん」ということで、「とにかく、織機を使いこなすこと」に必死だったそうです。

ジャガードを使うと、複雑な模様が「見ているだけでできる」のは、衝撃的だったそうです。ただ、「機械の動きがわからんと、故障したときに対応できない」と困惑されたこともあるとのこと。


家業を継ぐこと

家業を継ごうとされる亮さんは毎日、深夜まで猛勉強中です。
徳次郎さんがおっしゃるには、「毎日のことやさかいにね。日々の生活の中で見たり聞いたり」することが「自然の流れをつくっていく」とのこと。つまり、家業を継ぐとは、そういうことなのかもしれません。

わからないことがあれば、お父さんやおじいさんが聞くことはできますが、結局やっていくのは自分自身。「あとは、自分がどれだけ吸い取るかです」とひたむきな姿には心強い思いがしました。

織りについては、「1聞いて10わかれ」というおじいさんの言葉。 どんな仕事でも同じですね。自分が技術を身につけて、それで生計を立てていくというのは、伝統産業もサラリーマンも同じだな、と感じました。

チキリに巻くところ

糸たち 新しい技術とこれから

最後に、亮さんがパソコンで作っている模様を見せてくださいました。織りのことは「まだまだ勉強中」とのこと。パソコンを使ったデザインなど、新しい技術を取り込んでいくのも、「時代の波ですわ」とおじいさん。こればっかりは、自分で切り開いていかなければなりません。ジャガードが入ってきたときのように、使いこなせないと取り残されてしまいます。

ただ、今の西陣の状況はほんとうに厳しいです。そんななかで、常に新しいことに挑戦し、これからの西陣織をつくり続けようとされる小倉亮さんにエールを送りたいと思います。


小倉織物ホームページ http://www.dd.iij4u.or.jp/%7Ehrju/index.htm



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