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西陣プロジェクト 特別編 『愛(藍)の国際交流』 愛染工房 宇津木 憲一さん・寿子さん
2001年 10月27日取材
ものづくり職人列伝
京都の街を歩いていると、表向き普通の町家に過ぎないが中では、素晴らしい技術を持った職人さんが作業をしている工房が無数に点在する。
今回は、西陣に工房兼お店を構えられ、現在では数少ない天然醗酵本藍染めをされている『愛染工房』宇津木 憲一・寿子さんを取材した。

工房の名前が面白い、藍と愛を掛けて『愛染工房』とネーミングをされている。
これは、文豪・谷崎潤一郎によって名づけられたもので、藍染めを通して幅広い交友関係をお持ちだ。
私達が訪問していた時も、店に来る客は海外からの人も多く英語やフランス語が聞こえるインターナショナルな工房だ。


藍を語る

最初、宇津木さんに藍染めの魅力を話していただいた。
藍色は時にはジャパンブルーと呼ばれる様に、日本人に馴染のある色であるが藍染めは世界中に点在する。実際にインドやインドネシアの染物も見せて貰い日本の染めとの違いを教えて貰った。
藍には色々な効用があり、虫除け作用や、これを着用していると汗臭さも付きにくいらしい。また、日本各地の藍絞り・型染め・絣織りを見せていただき技法の奥の深さを感じた。

宇津木さんと見学者たち

藍染めの作品たち 工房での藍は徳島から取り寄せて天然醗酵本藍染めをされている。
藍染めを通し、幅広く活躍されており、海外にも技術指導に行かれる。
それだけに、時々、職人の技術は勘と経験と云われるが学問的裏付けも必要で時には酸性度を示すPHの話がでたりと、探究心をお持ちである。
詳しくは、宇津木さんのホームページに紹介されているので、そちらを観ていただきたい。

http://web.kyoto-inet.or.jp/people/aizen/

藍染めを体験する

実際に私達も藍染めを体験した。体験をするに当たり、息子さんに協力を戴いた。現在、息子さんも御両親と同様に藍染めの職人さんである。
時にはユーモアを交えながら私達に藍染めの魅力を語ってもらった。
藍染めをする瓶(かめ)は3個あるが、今回は2個の瓶(かめ)を使い体験をした。
一つは濃い目の瓶、もう一つは薄めの瓶で染めは一度では出来ず、浸けては乾かし酸素に触れる事で、染めた布は色の変化が起き黄緑色から藍色に変化していく。
作業は一見単純なようだが、色の変化を太陽光線を通し確認する作業は
とても繊細だ。

藍染め風景1

藍染めのかめ

小さい生地を染めるのは作業に負担があまり掛からないが、大きな生地を染めるとなると、布が水分を含み大変な重労働になる。
私達は、染めだけの体験だったが、実際、作品にするには下準備の作業がたくさんあり地味で根気のいる行程がいくつもある。
体験を始めた時は、太陽もまだ高かったが、終わる頃には辺りが薄暗くなり
独特の深い色合いをだすのは時間のかかる作業だった。


私達の体験は15〜16回浸けては乾かす作業の繰り返しだったが、作品によっては40回から 50回と繰り返すそうだ。叉、瓶(かめ)の中のバクテリアが醗酵を助けているので瓶の様子を確かめながら染めていく事になる。

初めての体験だったが、宇津木さんにアドバイスを貰いながらの作業だったので気に入った仕上がりになり一同満足した作業だった。

藍染めの風景2

藍染めの風景3

感想記

私も藍色は好きである。深みのある色合いは日本人の感性のように思える。
でも、実際にその色に染めるのは根気の要る作業に思えた。
作品の幾つかを見せていただいた時、「これは私の作品です。」とはいわれず『これは私の仕事です。』と、言われるところに宇津木さんの人柄を感じた。
作品に取り組む姿勢、生き方が全て一枚の布に染まるから、『これは私の仕事』と言われているのだと思った。


滅多にできない体験でとても感動いたしました。

   秋空に 透かす緑が 藍になり

でしたね。
私たち素人は、色を単色で判断しがちですが単純な色にも色の重なりが隠れているんですね。藍の鮮やかな色があの深い緑から生まれてくるってことがとても新鮮でした。

藍染めの風景4

藍染めの風景5

私は「染色」といえば東山青少年活動センターの工作室にもある設備(例えば大鍋やハイカロリーのコンロなど)を使うものだろう、という先入観があったが、天然醗酵本藍染めは、大瓶(かめ)で醗酵している本藍と流水のみ、あとは日光に当てて酸化させ発色を促すという、とてもシンプルな方法だった。シンプルなのは当たり前で、この染めの方法が1300年続いたものであり、現在でも続いているものだ、ということに驚き、またシンプルさに納得した次第。同時に、センターの設備は“妙に立派すぎる”のでは?と気が引ける思いがしたのだが…。

本藍染めの染色工程は、シンプルではあるが手間と時間と熟練の技が必要で、また、「様々な“もの”を人間が生きるために、必要だから作る(作ってきた)」工程として無理がなく、それには納得できる理由がそれぞれにあった(そしてもちろん大量生産は出来ない)。憧憬や善き事として「ものづくり」と言われる/言うときに含まれる色々な意味の一端がそういう所・その辺ことと関係しているのだろう、と感じた。


このたび愛染工房で天然藍染めを体験させていただきました。
天然藍は他の染めとはぜんぜんちがう、透き通ったようなきれいな藍色でした。今回比べて見せていただいて天然藍のすごさを実感しました。
藍を瓶(かめ)からあげたときは緑色になのに、それが空気に触れるとだんだん藍色に染まっていくのが本当に不思議でおもしろかったです。

宇津木さんご夫妻と記念写真


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