ユーゴ人道介入の口実「虐殺」デッチ上げ(その18)

ユーゴ戦争:報道批判特集《特別緊急連載》

悪魔化謀略を見抜けず反省せず惚け通す厚顔無知

2000.6.2

2000.5.20.入力。5.22.追加。

 まずは拙訳により、以下の最新入手情報を紹介する。原文は後に示す。


『カルガリ-・ヘラルド』(2000.4.2)

民族浄化の報道は捏造との告発

[ ]内は私の注。

【ベルリン】あるドイツの将軍の言によると、ベオグラード[ユーゴ政府]がコソボのアルバニア人の組織的な民族浄化を計画したとの主旨の報告は、捏造であった。

 この[捏造]報告は、ドイツの外務大臣、ヨシュカ・フィッシャーが、昨年の4月6日、NATOがセルビアへの空爆を開始して以後、ほぼ2週間後に、発表したものである。

 退役準将のハインツ・ロケーは、戦争に関する新著の中で、この[捏造]計画なるものは、セルビアの戦時の行動様式に関してのブルガリア情報機関による概括的な分析を基にして、偽造されたものだと述べている。

 その当時、ドイツ空軍の空爆参加の是非をめぐって、ドイツの世論は割れていた。

[カルガリ-:カナダ中南部の都市]


 つぎは、上記の原文を旧知の立教大学社会学部長でメディア論の教授、門奈直樹に送った際のファックスの全文である。門奈は、月刊雑誌『世界』(2000.3)に5頁に記事、「コゾボ戦争とマスメディア」を寄せていた。


門奈 直樹 様  2000.5.16. 木村愛二

 前略、さきほど学部長室に電話しました。午後3時に来られると聞きましたので、また電話してみますが、ご都合が悪い場合、別途、電話頂けると幸いです。

 用件は、きたる6月11日のユーゴ問題シンポジウムのことですが、私も、有志の実行委員会に加わっています。ボランティア・センターが中心なので、あまり深い議論はできていません。

『世界』(2000.3)「コソボ戦争とメディア」を拝見しました。私のホームページでは、かなり「ウソ」を詳しく追及していますが、できれば、御覧頂きたいと思います。

 湾岸戦争でも「水鳥」を具体的かつ典型的な、「映像詐欺」として追及しましたが、今回は、1999.1.15ラチャク村事件が、今に至るも、アルバニア人の「復讐するはわれにあり」の最も強いインパクトになっていると思います。つまり、水鳥の場合よりも、現在性が強いのです。1.24.読売記事、その源のフランス3紙報道など、ご研究頂ければ幸いです。

 以下は、つい最近、アメリカの友人が転送してきた記事です。

Ethnic cleansing report called fake

The Calgary Herald
April 2, 2000 Berlin --

 A report purporting to show that Belgrade planned the systematic ethnic cleansing of Kosovo's Albanians was faked, a German general says.

 The report was revealed by Joschka Fischer, the German foreign minister, on April 6 last year, almost two weeks after NATO started bombing Serbia.

 Heinz Loquai, a retired brigadier general, states in a new book on the war that the plan was fabricated from a general analysis by a Bulgarian intelligence agency of Serbian behaviour in the war.

 German public opinion about the Luftwaffe's participation in the air strikes was divided at the time.


 上記の「1.24.読売記事、その源のフランス3紙報道」は、すでに昨年、わがホームページに入力済みであるが、門奈の専門はイギリスでの報道なので、そのいずれも知らなかった。私は簡略ながら、彼に、共同の資料収集、分析作業、忌憚なき討論の必要性を説いておいた。

都合の悪いことには触れない1周年記念の奇怪な報道検証

 さて、前回述べた3月28日のユーゴ大使館における“空爆”開始1周年記念の記者会見集会では、いささかの「報道検証」の発言と議論があった。

 講師には、日本・ユーゴ友好協会の理事長である大学教授の他に、2人が招かれていた。1人は、湾岸戦争で名を挙げた元・防衛庁詰め朝日新聞記者、現・『あえら』スタッフ、田岡俊次であった。田岡は、「アメリカから『悪者』のレッテルをベタっと貼られると、それでお終い」という状況を語った。それ自体は結構なのだが、ラチャク村事件報道については、まったく語らなかった。『朝日新聞』本体も、「虐殺」報道を垂れ流したまま、無反省のまま、である。

 田岡の隣には、すでに何度も批判した「虐殺報道」のスポーツライター、木村元彦がいた。それ以前の3月24,25日に行われた「ユーゴ“空爆”開始1周年記念シンポジウム」の際には、彼が中心の「ミール[セルビア語で平和]の会」は実行委員会に加わっておらず、彼自身も出席しておらず、またユーゴに行っていると聞いていた。だから、大使館の入り口で顔が合った際、そのことを言って、軽く挨拶したのだが、困ったような顔をしていただけだった。彼には、ラチャク村事件を洗い直せと言っておいたのだが、彼もまた、ラチャク村事件報道については、何も語らなかった

 別途、日本共産党の中央機関紙、『しんぶん赤旗』の「ユーゴ報道検証」連載記事の切抜きを届けてくれた読者がいる。この「しんぶん」がラチャク村事件では3日間も続けて「虐殺」報道をしていた件も、すでに昨年、わがホームページに入力済みであるが、これまた、ラチャク村事件についても、その報道状況についても、まったく触れていない

 なお、それ以前に、ユーゴ“空爆”反対運動の仲間の1人が、日本共産党もユーゴ報道の批判をしていると言って、つぎの本が出てると教えてくれた。

『戦争と平和の問題を考える/ユーゴ空爆からアジア外交まで』
(新原昭治、新日本出版社、2000.3.15.)

 新原昭治の名は知っていた。奥付の著者紹介は、つぎのようになっている。

 1931年生れ。長崎放送記者。赤旗編集局論説委員会責任者、日本共産党政策委員会副責任者などを歴任。現在、日本共産党幹部会委員、同国際委員会責任者。

 この本にも、ラチャク村事件のことは、まったく載っていない

 長崎放送なら民放労連の加盟組合があったはずであるが、民放労連の場では新原の名を聞いたことはない。しかし、とにもかくにも記者経験者らしい。その経歴を奥付に記すのは、専門家を信じやすい一般人向けの出版商法の常である。そして、上記の厳めしい肩書きが物語るように、これが日本共産党の公式見解なのである。自分達が犯した垂れ流し報道の誤りは検証の埒外に置くという方式の、奇怪、いや、ありきたりの自称「報道検証」なのではあるが、もう、同じ批判を繰り返えす気にはなれない。ともかく、こんな厚顔無知な商売人どもを、平和勢力と勘違いしている善意の人々は、実に、実に、気の毒である。

 とは言え、私自身としたことが、何度も痛い目を見ながら、しかも、何度も、目から鱗が落ちるとはこのことかと覚えたこともありながら、それでもなお、すべての幻想を捨て切るまでには、人生の大半を要したのであるから、他人を気の毒に思うというのも、おこがましいことなのかもしれない。ああ……………

以上で(その18)終わり。


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