「発言」しただけで処罰する法律とは何か ドイツ上院で否決

ユダヤ民族3000年の悲劇の歴史を真に解決させるために ― 論証と資料

映画「シンドラーのリスト」が訴えた“ホロコースト神話”への大疑惑

初出『噂の真相』(1994.9) レポーター・木村愛二(フリージャーナリスト)

その2:ドイツ議会と裁判所で連続の逆転劇

 火元のドイツでは議会と裁判所で「ホロコースト」問題の連続逆転劇が起きている。

 日本では、「アウシュヴィッツの嘘」などの「発言」を最高3年の禁固で処罰する刑法改正案が、さる5月20日、ドイツの下院で賛成多数をえて可決され、上院でも可決されれば「9月から発効」(毎日94.5.21.夕)などと、ほぼ確定的なニュアンスで報道されていた。実際には上院で否決されたのだが、この方の報道はまるで目立たなかった。私自身は『週刊金曜日』(94.6.24.)の「海外版」欄で初めて上院の「否決」を知った。

 「発言」しただけで処罰する法律とは何か。民主主義後進国の日本でさえ不敬罪を廃止した現在、まことに異例である。だからこそニュウズになっている。発言内容のいかんにかかわらず言論の自由にふれるはずだが、日本の大手新聞の簡単な報道では、その裏側どころか経過さえほとんど分らない。

 表面的な大手報道だけを追うと、同改正案の上程に先立って4月にドイツ連邦基本法裁判所が、「ユダヤ人虐殺はなかった」などと主張するのは「基本法(日本の憲法に相当)が保障する言論の自由には当たらず公共の場では禁止できる」との判断を下している。「ネオナチ」と呼ばれるウルトラ民族派の極右政党、ドイツ国家民主党が起こした訴訟への最終判決だ。同党は、1991年に開こうとした集会の許可に当たってミュンヘン市当局が付けた「ユダヤ人を侮辱しない」という条件を、「言論の自由に反する」として訴えていた。

 ただし連邦基本法裁判所の判断は、同じ事件について連邦通常裁判所が3月に「虐殺の否定自体は犯罪とはならない」として下した判決を、さらにくつがえしたものである。ドイツ国内でも、「発言の禁止」は、法律家の一致した見解ではなかったのだ。

 しかも、「ホロコースト」または「ユダヤ人抹殺計画」、特にアウシュヴィッツなどの収容所の「ガス室」における「大虐殺」説に対して疑いの意見を提出しはじめたのは、むしろ「左翼」だった。いわゆるユダヤ系の学者までが何人も加わっている。もともと不勉強な狂信的ウルトラ右翼などは、それらの研究に便乗しているだけらしいのだ。

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