『最高裁長官殺人事件』

第一章 《お庭番》チーム出動

「こんにちわ……」

「お名前をどうぞ」と器械音の声が応ずる。

「影森智樹です」

「……(ピッピッピッ)……声紋チェック終了。……(カチャッ)……どうぞ、おはいりください。ドアは手で開けられます」

 本当はただのリモコン・ドアで〈声紋チェック〉の設備まではないのだが、SF好きの華枝がコンピュータにいたずらして機械音を入れたのだ。

 智樹がドアを開けてはいると、華枝は椅子に座ったまま身体をねじって、顔の正面を見せた。ただ美しいというだけの顔ではない。いつもどおりの、観世音菩薩を総天然色にしたような、和やかで華やかな笑顔である。その和やかさは真に、得もいわれぬもので、智樹の胸から全身に暖かい波紋を広げてくれるのだった。ふた回りも年下の、娘であってもおかしくない年頃の女性から、こういう精神的な抱擁を感じるのは不思議であった。

 華枝が右手を動かすと、カシャッとロックの音がした。

「ドアはもう開きません。貴方は永久に監禁されました」

「アハハハッ……。これは新しい仕掛けかな。そのうち、床がパックリ開いて、下の穴倉に落とされるんじゃないの」

「そうですよ。油断は禁物ですよ」

 ドアにカギをかけたからといって、2人はすぐに抱き合ったりはしない。2人とも、そういう性格ではなかった。智樹は、華枝のさっぱりした余裕のある性格に、安らぎを覚えていた。いくら親しくなっても一定の距離を保つ、といったらよいのだろうか。他人ではなくなってからも、お互いに礼儀は守る。むしろ、ジョーク混じりの演技も含めて、交際の手続きはかえって丁寧になっていた。

「最高裁の調査、ありがとう。それでね、資料リストのことで相談したくて……」

「はい。なんでしょう」

「いつものことで、読むのは大変でしょ。中身は入力されていないだろうけど、なんとかして、弓畠耕一長官に関する部分だけを探し出したいんだ」

「そして、極秘……なんでしょ」

「はい」

「つまり……手っ取り早くいえば、私に読め、ということですね」

「はい。察しがよくて助かります」

「ウフフッ……予想どおりでした」

「申しわけない。それで、……公式資料よりも、雑誌記事なんかの方が参考になるかもしれない。新聞記事は僕がもう呼び出してみた。少し範囲を広げて、裁判関係の雑誌記事なんかを当たってもらえないだろうか」

「はい。できるだけやってみます」

 華枝の声はいつもどおりの明るさだった。だが、上目づかいで智樹をじっと見つめる様子には、いささかこだわりが感じられた。智樹は言葉に詰まった。

「……なにか、ご意見がおありのようですね」

「ウフフフッ……。ご意見ってほどじゃないの。ご気分ぐらいなの。私も、風見さんみたいに足を使って調べたくなったの」

「それは……」

 智樹はいいかけて、言葉を濁した。〈危険だから〉という言葉の次には、〈女性だから〉が控え、〈差別だ〉と反論されれば、〈母性〉を持ち出さざるを得ない。それらの言葉の触れたくない脈絡がサッと脳裏を走る。智樹は華枝と男女関係を持ちながら、華枝の〈母性〉についての話題はオブラートに包んだまま、1度もさわらずにきた。華枝も智樹の過去の傷跡をおぼろげながら知っており、智樹を追い詰める台詞は避けてきた。

「ごめんなさい、勝手なこといって。でも、私、風見さんがうらやましいわ。コンピュータばかり相手にしていると、時々、息が詰まりそうになるの。ヒミコはまだましだけど、やはり機械に変わりはないわ」

 華枝の研究室にも自宅にも、智樹の名義で特別にヒミコが設置されていた。その2台のヒミコはまた、2人だけの暗号スクランブルによる連結システムで、智樹のオフィス、自宅、車のヒミコにつながっていた。もっとも智樹のオフィスは、華枝にいわせると1音違いの〈オルス〉がほとんどの状態ではあったが……。

「分かるよ。済まない。……では、お詫びのしるしと、謝礼の内金代わりに昼食をおごらせていただきたいのですが、ご都合はいかがでしょうか」

「光栄です。お待ちください。秘書にスケジュールを確認させますから。ウフフッ……」

 含み笑いをしながら華枝は、白い皮製の四角い大型ハンドバッグを引き寄せた。蓋を開いて智樹に裏側を示す。蓋の裏の鏡を剥がすと電子手帳が出てきた。

「電子手帳と無線電話機を仕込んだの。ここからヒミコにもつながるのよ。散歩しながら思いついたアイデアでも、その場ですぐヒミコに送り込んでおけるわけ。面白いでしょ。トモキの7つ道具にも負けないわ」

「これは参った。降参、降参。男の弱味で、ハンドバッグは持ち歩けないもんね」

「そうでしょ」華枝はご機嫌。電子手帳のスケジュール表を呼び出す。「OKですわ」

 

 昼食の場所は華枝が決めた。華枝はサーチャーらしく、いつも何ヵ所か候補を用意していた。話題の選び方もそうである。青山のインド料理店に落ち着いてワインを注文すると、華枝はあらかじめ選んでおいた話題をするりと持ち出した。

「トモキ、〈煉獄〉ってご存じ?」

「言葉は知ってるよ。何度かお目にかかった。最近だと、ソルジェニチンの『煉獄にて』という小説を読んだ。政治犯の収容所の話だ」

「怖い、怖い……。私のは、そんなんじゃないの。SFによく出てくるのよ。煉獄の火に焼かれて若返るとか、浄化されるとか……。ところが、〈煉獄〉をサーチしてみたら、もっと複雑で大変な場所だったの」

 華枝の瞳はキラキラと輝いていた。インド風に飾った店の、ステンドグラスが醸し出す異国情緒の中で、華枝の〈煉獄〉のイメージは、途方もなくふくらみそうだった。智樹は、喜んで聞き手を引き受けた。

「おやおや、また半可通の無知を再認識させられるようだね」

「そうなのよ。私も驚いたの。だって、仏教でもキリスト教でも、あの世は上が天国か極楽、下が地獄だと思うでしょ。ところが〈煉獄〉は、天国と地獄の中間にあるんですって。しかも、その存在を認めているのはカソリックだけなのよ」

「ふうん、そりゃあ初耳だね。あんまり深く考えたことはなかったよ」

「英語ではパーガトリーだけど、一番の元はラテン語の動詞でプールゴー。洗い浄める、ってことなのね。英語のパージは、戦犯パージとかレッド・パージとか、追放するという意味にもなっているでしょ。つまり、汚れを追い出すのね。〈煉獄〉だと、いかにも煉瓦みたいに地獄で火に焼かれるって感じでしょ。ちょっと違うのよね。確かに火で浄めるってことになってるんだけど、浄める方が元の意味なんだから、日本の〈みそぎ〉に似た考え方なのよ。罪を浄めて天国に行くってわけ」

「日本の〈みそぎ〉は最近の政治家に汚されてしまっているけれどね。ハハハッ……。それじゃともかく〈煉獄〉は天国の入口でもあるわけだ」

「ねえ、トモキはどうかしら、ダンテの『神曲』、読んでないでしょ。当たり?」

「ピン、ポン。恥ずかしながら、若い頃に文庫本を買ったまま」

「……でしょ」華枝はニッコリ。「まず、〈煉獄〉はイエス・キリスト時代の発明ではないのよ。色々な起源はあるけれど、やっと12世紀後半になってからスコラ派の神学者がカソリックの教義に組み入れたんですって。それをダンテが『神曲』の《煉獄篇》で具体的に描いたわけ。〈煉獄〉は地獄でも極楽でもなくて、極悪人でも聖人君子でもない中位の人間が行くところなのね。ちょっぴり人が悪かったり、ちょっぴり人が良かったりする普通のオジサンやオバサン、つまり、多数派の大衆向きの〈あの世〉の店開きだったのよ、デパートとかスーパーみたいに。そう考えると面白いでしょ」

「いやあ、アハハハッ……それは面白い」

「それと、〈煉獄〉のイメージが広がった時期は、司法制度の発達だとか地理上の発見なんかと相呼応するんですって。大病で死に損なった人が見た夢なんてのが、あの世の探検の手がかりになっているのよ。これも面白いでしょ。人間って本当に欲張りなのよね、どこでも探検しちゃうんだから。死後の世界だってね。……でも私、〈煉獄〉が好きになっちゃった。ねッ、死んだあとでもまたトモキと〈煉獄〉でデートできるかしら」

「ハハハハッ……〈煉獄〉でデートね。しかし、僕もやっぱり〈煉獄〉のスーパー組か」

「……でしょ。そんなに極悪なこともできないし、聖人君子ではないし」

「うん。でも、なんだか軽く見られた感じ」

「そうじゃないのよ。人間の顔をしてるってことなのよ。しかも、そういう人、これからもますます増える一方じゃないのかしら。組織人間、企業戦士、組織悪、企業悪……」

 智樹はギクリとした。無邪気に顔をのぞき込まれてドギマギする。しかし華枝には別に〈煉獄〉を引き合いに出して智樹をいじめようという魂胆はなさそうだった。

 思いっ切り辛いインド料理を、フーフーいって食べながら、話は弾んだ。〈煉獄〉が人間臭いということは、人間回復のルネッサンスの思想につながるというのだ。

「だれでも生きているうちに自分の〈煉獄〉を持つのよ」

 華枝はあっさりと結論づけた。

「なるほど」

 智樹も軽く応じたが、脳裏には〈おれの煉獄〉と同時に〈華枝の煉獄は……〉という思いがひらめく。華枝は一時期、〈水子〉信仰に強い関心を示していた。今はいかにも冷静な話し振りだが、妊娠中絶と離婚を経験した華枝にとって〈煉獄〉は、ただの知的好奇心の的というだけではないはずなのだ。

 華枝は結婚後、バイクの衝突で腰骨を打ち、整形外科でレントゲン写真を撮った。骨に異状はなかったが、レントゲン写真には小さな胎児が写っていた。華枝にはまだ妊娠の自覚がなかったのだった。整形外科医は驚いて、産婦人科でエックス線の影響について相談するように指示した。産婦人科医は常識どおりに安全性を考えて中絶を勧めた。華枝は夫とも相談して中絶に踏み切った。だが心の中では〈子殺し〉の自虐のささやきが収まらず、ノイローゼにかかり、ついには離婚に至った。華枝の極楽のような笑顔の裏には、やはり傷のある過去が秘められていたのである。

 華枝がインド料理店を選んだ理由は分かっていた。これは華枝らしい催促の仕方なのだ。だから智樹は、さり気なくつぶやいた。

「そういえば、インド旅行の話はそのままだったね」

「いけないのはトモキよ。私はいつでも休暇を取れるんだから。トモキと一緒に、もう1度あの歓喜仏をじっくり拝みたいわ」

 華枝が〈子殺し〉の自虐から立ち直ったのは、インドへの1人旅によってだという。智樹は、そのことを知ってはいたが、旅の詳しい話はまだ聞く機会を得ていなかった。

「……本当に、とても凄いのよ。じいっと見ているうちに、突然自分が別人のように思えてくる。何千年も生き続けているような感動に襲われるの。生きているってことの意味が、理屈抜きに体の奥底から分かってしまうって感じなのね。あんな仏像を一生懸命になって造った人たちに1度会ってみたい、……なァんて考えると、身体が現実の時間の壁を超えて漂い始めるの」

 華枝のインド旅行への誘いは、聞く度に説得力を増していた。

「タントラ美術っていうのね。ヒンズー教の神々が裸で愛し合っている姿が、いくつもある太陽神殿の壁一杯にたくさん、たくさん、堂々と浮き彫りにされているのよ。昼を司る女の神のミトゥナと夜を司る男の神のヴァルナはね、どちらも太陽神スーリアの分身なの。ミトゥナとヴァルナは生と死の象徴で、2人が交わることによって宇宙が再生される。2人の交わりにはヒンズー教の永劫回帰の思想が秘められている。性愛を曇りのない純粋な快楽として、あるがままに見つめるのがヒンズー教の思想なのね。性愛を世の中で一番大事なものとして、〈蓮の中の宝石〉にたとえているのよ」

 

「……シュタカ……抱擁……」

 サンスクリット語でささやく華枝の声が、甘く優しく智樹の鼓膜をくすぐる。

 シャワーを浴びたあと、智樹は華枝の身振りによる指示に従って絨毯の上で結跏趺坐の足を組んだ。裸体で向かい合うには、いささか面映ゆい姿勢だが、華枝はまったくたじろがない。古代インドの貴族の性典〈カーマスートラ〉の教えが、その大胆さの秘密であった。唇を触れ合う前に目を閉じようとすると、華枝が首を横に振って、ゆっくりとイヤイヤをする。智樹は、事前の〈授業〉を思い出し、華枝の目をじっとのぞき込んだ。〈お互いの目を見ながら、愛情を確かめ合って愛撫を交わすのよ〉と華枝はいったのだ。

 華枝の誘いで膝立ちをした。華枝を両乳房の横からそっと抱えた。華枝は裸体のプロポーションも素晴らしかった。華枝も水泳をやっている。得意な種目は背泳ぎである。ほかの種目よりすぐれて手足のコンビネーションを利かす泳ぎだから、自然と腰のバネが強くなる。薄く柔らかな皮膚の感触の奥には、しなやかに弾ける女体が隠れている。腰を寄せて、下腹部を押しつけ合う。秘所が触れ合う。仕掛け花火を思わせる刺激が、背筋を貫いて脳天に達する。

「……ジャハノバグハーナ……性器抱擁……。そちらがリンガム。こちらがヨニ……」

 華枝はうっとりと上気した表情で、智樹の目の奥をのぞき込んでいた。

「……素敵だわ、ト・モ・キ……」

 華枝は、2人だけになると〈トモキ〉、愛し合うときにはさらに〈ト・モ・キ〉という感じで、ゆっくりと智樹に呼びかける習慣だった。智樹はそれをも、精神的な愛撫として味わっていた。

 

 インド料理店での食事のあと、外苑を抜け、華枝のマンションに向かった。10分で歩いて行ける距離である。青山通りから右に折れて脇道にはいると、突然訪れる意外な静けさに驚く。

 古代インドでは、〈カーマ(性愛)〉がダルマ(法律)・アルタ(経済)とともに、貴族の必修科目であった。テキストの一つ、紀元前6世紀のグプタ王朝期の性典〈カーマスートラ〉には、肉体と精神の統一、瞑想による精神の高揚、全身全霊をあげての結合と大爆発を追い求める秘術がまとめられていた。お互いのリンガムとヨニを意識するが、それに手や口で触れてはならない。抱擁する。軽くたたく。爪でかく。歯でかむ。動物の自然の結びつきのように、じゃれ合いながら優しく求め合うことが基本とされていた。

 智樹は掌で華枝の頭、頬、肩、乳房、太腿と、たたき降ろす。右からと左からと、たたきながら華枝の身体を抱いて床に横たえる。人差し指の爪先で乳房の横を少し強く押す。指を離すと薄赤い爪跡が3日月形に残る。華枝がサンスクリット語でささやく。

「チャンドラ……3日月……」

 親指と人差し指を使って、下腹部の皮をつねる。

「マンダラム……満月……」

 5本の指の爪先で乳房をつかむ。

「バタカム……孔雀の足跡……」

 人差し指の爪先で肩から乳房、腰から太腿と、ひとすじに引っかいていく。

「アッ……、アッ……、ナクハム……虎の爪跡……、アッ……」華枝はあえぎ始める。

 智樹は華枝の耳たぶをかむ。頬、首筋、肩、乳房、太腿とかみ降ろす。華枝は身もだえする。あえぎは激しくなる。再び両頬をかみ、唇ではさむ。

「……ビンドゥーマーラ……珊瑚と宝石……」

 華枝の息は乱れ、身もだえは荒くなる。智樹は手を離して、華枝の左脇に横たわる。2人は、しばし息を静め、互いに見つめ合うようにする。身体を触れ合わずに視線だけを交わしていると、気持ちがますます高ぶってくる。

 智樹が右手で華枝の下腹部に軽く触れると、華枝は右足の膝を乳房につくまで抱えあげ、左足を宙に浮かせた。智樹はその左足の下に腰を回し、華枝と直角になる。華枝の左足を抱えて右に横転すると、2人の秘所が触れ合う。智樹のリンガムは固さを増し、華枝のヨニは熱く濡れている。華枝は再び大きくあえぎながら、ささやく。

「動かないで……気持ちを集中して……」呼吸を押さえながら、2人は十分間ほど同じ姿勢を保つ。永遠とも感じられる時の流れの中で、全身が宙に浮き上がるような瞑想のゆらめきを覚える。智樹はリンガムに意識を集中する。リンガムはゆっくりと華枝のヨニに触れ、吸い寄せられて行く。智樹は腰を右に回転した。

「アッ……ハアッ……アアッ……」華枝はゆるやかに波打ちながら、智樹を受け入れる。リンガムは滑らかにヨニに吸い込まれる。リンガムから智樹の全身に、華枝のヨニの形容しがたい暖かさが浸みわたっていく。智樹はゆっくりと華枝の左足を折り、華枝を右に転がしながら、後ろから華枝の腰の上にかぶさる。華枝は身体を丸め、両肘で体重を支える。「ウッ、フウッ……デヌーカ……牝牛……ウフッ……」

 華枝のささやきは途切れがちになった。2人は目を閉じて息を整え、瞑想の呼吸にはいった。ゆっくりと息を吸う。数秒間息を止める。ゆっくりと息を吐き出す。さらに深く息を吸い、同じことを繰り返す。息を吐くときには、ひと息ごとに頭や肩の力が抜けて行くと想像する。次第に訪れる夢うつつの瞑想状態は、さながら天国の楽園をさまよう心地であった。リンガムとヨニの結合に意識を集中し、時折腰をゆらしながら、静かに絶頂の訪れを待つ。

 華枝のヨニは、ゆるやかに脈動を繰り返している。やがて、永遠を思わせる時の流れをさえぎるかのように、華枝の呼吸が段々と深さを増し、強まる。

「アッ……アアッ……ト・モ・キッ……、とても、いい気持ちだわ。……こんな感じ初めてよ。………アアッ……アッ……アアッ……」

 智樹のリンガムの先端を熱い粘膜が包み込む。奥へ奥へと引き込まれる感じである。小刻みにヨニの収縮が強まる。華枝が腰を持ち上げ、心持ち突き上げてくる。智樹の腰はさらにのめり込む。一瞬、気絶しそうになる。

「イイッ……イイッ……」

 華枝はけいれんしながら、ゆるく腰を振る。智樹はもう耐え切れない。腰の奥の奥から爆発が起こる。ズズズッ……、と震動が走り、一気にほとばしる。これほどの激しい射精感覚は生まれて初めての経験であった。亀頭が灼熱しているように熱い。華枝の腰の動きがさらに強く激しくなった。華枝のヨニもしきりに熱い液体を発射し続けていた。

「アアッ……アアッ……初めて……初めて……ト・モ・キッ……初めてよ、こんなこと……。本当よ」

 華枝の両肘から力が抜ける。華枝は腰から崩れ落ちるように床に突き伏す。智樹も支えを失って、ふわりと床に倒れ込んだ。