1999.7.23 WEB雑誌『憎まれ愚痴』掲載
「神戸事件の疑惑」後藤昌次郎(弁護士)
HTML化した寄稿を夏休み編集部体制ゆえ長文のまま掲載します。
定額料金制ではない後進国の読者は取り込んでから読んで下さい。
(↑この嫌味な記述は1999年当時のものです。あしからず)
◇告発した人びと◇考え方の基本◇民事訴訟で自白した意味
◇告発したことの意味◇警察・検察共謀の偽計捜査◇資料
(一九九八年十一月十五日「神戸事件の疑惑-後藤昌次郎さんを囲む集い」都内で)
【一九九九年七月電子化/野副達司】
警察・検察をなぜ告発したか
告発人:後藤昌次郎(弁護士)
◇告発した人びと
「神戸事件」のA少年を偽計による「自白調書」で逮捕、勾留した警察官・検察官を告発し、国家権力の不正を弾劾する一大国民運動を起こそう、まき起こそうと。---「起こそう」というのと「まき起こそう」というのとでは、「まき」があったほうがいいですね、なんかダイナミックになってくるから。広がりをもつように。
ところでここに、告発人十一名が名前を連ねてこの運動への賛同を求めるアピールを出しております。ご存知ない方もあるかとも思いますので、簡単に、どういう人たちであるかということをご説明いたします。
後藤昌次郎というのは私です。明治維新の時にね、坂本龍馬の財政的なパトロンになった土佐藩の大蔵大臣みたいなのやった人がいますよね。龍馬の発案に基づいて大政奉還を徳川慶喜に進言した人物。あれとは違います。
その次、伊佐千尋さん。この人作家とありますが、皆さん『逆転』というノンフイクションの小説を---ノンフィクションの小説というのは変かな---、ご覧になったことありますか。
占領下の沖縄で、沖縄県民が、沖縄の青年が、米兵に暴行を加えたという口実で、逮捕され裁判にかけられた。当時、その刑事裁判は陪審裁判。で伊佐さんは、沖縄県民の中から選ばれた陪審員の一人として、この陪審裁判というものを体験された。その時の体験を書いたのがこの『逆転』というドキュメント。これは、大宅壮一賞をとりました。
私は、当時は作家としてはまったく無名の伊佐さんでありましたが、伊佐さんが大宅賞をとることによって作家としての地位を確保したとか、あるいは高めたとか、あるいは地位を得たとか、そういうふうには思っていないんですよ。そうではなくて、大宅賞はですね、伊佐さんのこの『逆転』という本を賞にしたことによってみずからの権威を高めた、というふうに思っております。
これは、本屋さんに行くと、いまでも文春文庫のなかに入っておりますから、ぜひご覧になってください。沖縄にたいする米軍の占領というものがいかなるものであるか。裁判というものが、いかなるものであるか。とくに、陪審裁判というのが、いかなるものであるかということが、よくおわかりになるでしょう。
岡田義雄さん。この方は、大阪の弁護士でありまして、皆さんご承知かと思いますが、「神戸事件のはじめの頃からですね、A少年を「犯人」とする警察・検察のやりかた、マスコミの動きにたいして、ずうっと批判を加えてこられた弁護士です。
酒井博さん。この方は、大須事件の元被告。大須というのは、名古屋ですね。名古屋で一九五二年に起きた事件です。東京では、メーデー事件というのがありました。大阪では吹田事件というのがあります。ああいうのをですね、共産党による暴動であると称して弾圧したわけです。で、被告たちはですね、しかもひとりや十人やという被告ではないんですよ、百人単位の被告の人たちが、逮捕され、裁判にかけられた。で十年以上もたった。みなさんご承知のように、いや、あんまり承知している人いないですね。東京のメーデー事件の被告ね、あの人たちが騒乱罪でどういう刑を受けたか。全員無罪です。知らないでしょう。忘れてるんですよ。つまり、本来全員無罪となるべき労働者、学生をね、騒乱罪だ家を転覆する寸前まで騒動を起こした、といって起訴する。吹田事件でもそうであり、大須事件もそうであったんですが、大須事件は残念ながら無罪にはならなかった。ですけれども、酒井さんたちの闘争によって、実質的には勝利ともいえるような判決をかちとることができたのです。
里上護衛さん。大阪経済大学の教授です。環境経済学の権威であります。もともと、大学の農学部で研究しておられましたが、自分の農学者としての経験を深めるなかでですね、環境経済学というものを究めなければ農業そのものも究めることできないということから、大阪経済大学で、環境経済学を研究し、教えておられます。
壽岳章子さん。ご承知のように、著名なエッセイストであり、国語学者であります。で、この「神戸事件」には、三つの不可思議な文書がある。ひとつは、学校の正門のところに置かれてあった被害者淳君の首の口にくわえさせられておった酒鬼薔薇聖斗なるサインのある文書である。ひとつは、その後まもなく神戸新聞社に送られてきた犯人の挑戦状であります。警察にたいする挑戦状。それからもうひとつですね、「懲役13年」という文書があって、これは、A少年が中学の同級生に自分の原文を示して、ワープロで打たしたと称する文章でありますが、ちょっと読んだだけで、これが十四歳の中学三年生の文章であるとは誰でも疑うような、そういう文章なんですよ。で、これはね、その中に例えばニーチェの『善悪の彼岸』とか、それからダンテの『神曲』からの引用なんかがある。で、自分で本当にね、苦心してものを書いた経験のない人は、ほかの人の文章をひっぱってきて文章を作るのは簡単だというんです。ところが、難しいんですよ。というのはね、そういう文章を、文章全体の中のどの部分に、どういう意味をもつものとして引用すればね、引用の効果があらわれるか。自分自身で書くよりも、その文章自身の引用効果という、そういう文章全体の構想力、思想的な構成力、そういうものがないとね、簡単に引用できない。
で、ダンテの『神曲』からの引用がある。警察でだまされて「自白」させられたA君の「自白」によりますと、本屋で『神曲』を読んで、その部分を覚えて、家へ帰ってきてから書いたっていうんですね。ものすごい能力だということでね、「直観像素質者」とかなんとかって言ってました、私はああいう高級な学術用語を知りませんけれども、そういう高級な、高級かな?、要するにすばらしい精神能力、というよりは病的に近いすばらしい精神能力というものがあるんだと。
で、私がその話をしてある人に「そんなことね、できるはずないよ」と言ったら、「いや俺はね、友人でそういう能力を持ってる人間を知ってる。それはできるんだよ。その少年は、実際やったんだよ」と。本屋でかなり長い文章を立ち読みして、ちゃんと覚えてきて、家に帰ってちゃんとそのとおり書いたんだと。
ところがね、そのダンテの『神曲』の翻訳として引用されている文章は、この壽岳章子さんのお父さんで壽岳文章さんという、もう亡くなられましたけれども非常に有名な学者の訳で、ダンテの『神曲』の翻訳としては最も権威のある翻訳なんですよ。ところが古い本なもんですから、いま新本屋へいったってまずないですね。ですから、少年が仮にね、『神曲』を見たとすれば、それは壽岳さんのお父さんの文章じゃないんですよ。別の新しい学者がいろいろ翻訳したのがいま本屋にでてますから、そういう新しい学者が翻訳した文章を読んでね、家に帰るまでの間にね、壽岳さんの翻訳書を見ないでですよ、壽岳さんの翻訳に変える能力なんてものが、あるんでしょうかね。私は、そういうのがあるかどうか心理学者や精神病理学者に訊きたいと思ってる。
その次は瀬川負太郎(まけたろう)さん。どうも「おいたろう」さんが正しいのでしょうが、「まけたろうさん」と呼ぶ人もいまして正確にはどう読まれるのかよくわかりませんが、正確な読み方まで調べてこなかったもので非常に失礼になりますけれども、新聞記者とあります。これは九州の小倉(こくら)タイムスの社長さんやっておられる方であります。ちょうど、戦前、戦時中にですね、桐生悠々というような、軍部に抵抗して筆を曲げなかったジャーナリストが何人かいましたが、あのようなタイプのジャーナリストである。
それから妹尾活夫さん。この方は牧師であります。沖縄で牧師をしています。その前は、阪神地方におられて、神戸で、同じ神戸で起こった甲山事件の救援に力を尽くしておられた方です。
それから、戸井昌造さん。この方は画家です。私はこの戸井さんくらいね、庶民の生活の息吹をもった絵をかく画家というものをほかに知らない。それは、私が見聞が狭いせいかもしれませんが、皆さん実際にご覧になったら、理解してくださるだろうと思います。
で、たんに画家であるばかりではなくて、明治の自由民権運動の頂点にある事件、と言えば皆さん、すぐ思い出されるでしょう、秩父困民党ですね。秩父困民党にかんして、自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、実証的な歴史の本を書かれたすばらしい歴史家であります。残念ながら、いま胃ガンをわずらって臥しておられるので、皆さんの前に姿をお見せすることができませんけれども、ま、そのうち元気回復するでしょう。自分でもそう言っておりましたから。
それから永見寿実さん。この方は、A少年の人身保護請求をおこされて、先頭にたってたたかっておられる弁護士です。
それから前田知克さん。この方は、東京の弁護士です。ついこのあいだ、日弁連、日本弁護士連合会の会長選挙に立候補しました。惜しいことに敗れました。まあ、われわれにとっては、ある意味では幸いなんですけどね。もし彼が会長になっておれば、日弁連の会長というのはものすごく忙しいですから、こういう告発に加わることは、そういう時間的な余裕、肉体的な余裕はもてなかったでしょう。幸いにしてなんて言うと非常に失礼になりますが、彼は落っこってもなお屈せず、こっちの方にですね、力を尽くそうということで、告発人の一人になられました。
◇考え方の基本
こういうことを長々とやってますと時間がきますので、次に私はこのアピールに即して説明したいと思います。
皆さんすでにご承知のことを私がくりかえして、なんだそんなことは知ってると思われることがかなりあるだろうと思いますけれども、我慢してお聞きください。知ってると思ってることがですね、実はそれと似たようで、似て非なる概念であった、本質を見ていなかった、ということに気が付かれる場合があるのではないかと思いますので、私はあえてお話しようと思います。
非常にむごたらしい、残忍な許すべからざる事件が起きたとき、まず私たちが考えなくてはならないのは、無実の人に重大な犯行の責任を負わせるようなことがあってはならないということです。この種の事件が起きますとね、まず多くの人たちが考えるのは、すぐ犯人をひっとらえて死刑をはじめとする重大な刑罰を下さなければならないといういわば報復的なことが、ピーンとくるんですね。それは人間は動物の一種でありますから、無理のない点もあるんですけれども、やはり人間はほかの動物と違っているということも事実であります。無実の人間にですね、犯罪の重大な責任を負わせるということは、これは避けなくちゃいかん。これは非常に大事なことであると私は思うんです。
言葉の問題のようですけれども、ベッカリーアというイタリアの刑法学者が「犯罪と刑罰」というのを書いています。近代刑事学の根本原則を解明した古典的著作です。犯罪というのは、刑法とか刑法に準ずるような法律の規定、その規定にこれとこれとこれ、こういう要素を満たす行為をやった場合には犯罪だと決めているわけですね。
で、この場合話がややこしくなりますから、刑法なら刑法といいましょう。刑法に窃盗とは人の意志を無視して、その人の物を奪うことである、という意味のことが書かれています。殺人というのは人を殺すことである。ま、そういうふうに、鼠を殺してもこれは殺人罪じゃない。当然ですけれども。それから、人を結果として殺してもですね、殺意がなかったらつまりブン殴って怪我さしてやろうということは考えておったけれども、殺すということまでは考えていなかった、しかしブン殴ったら怪我をしただけではなくて死んでしまった。これは傷害致死罪であって、殺人罪ではない。こういうふうに、ひとつの犯罪が成立するための要素というものがあるわけです。
ですから、なんか悪いことをしてもね、刑法の犯罪の要素に適合しないと、それは犯罪じゃない。じゃあなんだとうと、「けしからん罪」というんです。世の中にはかなり「けしからん罪」というのがありましてね。これけしからん、とっつかまえて重罰に処さなくちゃいかんというふうに考えてもね、やはり刑法なら刑法という法律の規定に、それを処罰するということが書いてないと駄目なんです。近代刑法の大原則は罪刑法定主義です。犯罪とそれに対する刑罰が法律にはっきり定められていなければならない。そうでない限り犯罪として処罰できない。ですから事後法は駄目なんです。事件が起こったあとでできた法律、けしからんことがあるんで法律で取り締まらなくちゃいかん、といって、ある事件が起こったあとでね、法律をつくっても、あとでできた法律で処罰はできない。
では刑罰というのはなにかというと、犯罪にたいする国家権力による制裁ですね。
で「犯罪と刑罰」、ところがね、日本の言葉というのは非常に微妙でしてね。これを「罪と罰」なーんていうとね、ベッカリーアのような法律学者を思い出さないでね、ドストエフスキーを思い出すんだよね。文学的になっちゃうんです。
でまあ、余計なことを話したようですけれども、非常にむごたらしい重大な犯罪が起きた、だから処罰だというふうに、そっちのほうにパーッとこの思考と感情を走らせるのは非常に大きな過ちを犯すことになる。無実の者にその重大な犯罪の責任を負わせるというようなこと、これは避けなくちゃいかんということがですね、この種の事件にかんする一番大事な考えの基本だと私は思っております。
◇民事訴訟で自白した意味
昨年五月に起きたあのいまわしい神戸小学生殺害事件の被害者のご両親が、犯人とされているA少年やそのご両親にたいして損害賠償を請求する訴訟を提起され、十月十六日にはその第一回期日が開かれようとしている時に、つまりまだ裁判が開かれていない段階で、私たちはこのアピールを書いた。私たちはこの原点をあらためて確認したい。そしてすべての人々にこの裁判の出発点がどこにあるかを訴えたいのです。これは皆さんのお手元にありますね。「10・16民事訴訟裁判と被告側弁護人の対応」という資料です。
伝えられるところによりますと、淳君のご両親は家庭裁判所の審理の過程を通じて自分たちはその手続きから疎外されて、真実を知る機会を与えられなかった。なんにも知らない。それはあまりにも不公平ではないか。そこで民事訴訟を起こして、この民事訴訟の中で自分の愛する子がどうして、どのようにしてあのような無残な殺され方をしたのかということを知りたいという切ない思いで、民事訴訟を起こした。
そしてこれに書いてありますが訴訟が起きてまもなくですね。加害者とされているA君の代理人、付添人をやった方々と同じ立場であって、付添人にはならなかったけれども、あの時マスコミなんかが押しかけてきて、とても付添人としての任務を果たせるような状況ではなかったというので、神戸弁護士会がマスコミ対策とかあるいは家族の保護の対策なんかで、対策協議会という別の救援組織をつくった。その救援組織の一員であった弁護士の人がですね、今度A少年およびA少年のご両親の代理人として裁判に臨む。
で、どういう方針をとるかというと、全部認める。事実も認める。A少年がやった行為であると、事実も認める。でA少年がそういう非行、ま、刑法だと犯行ということになりますが、そういう非行をやった時にですね、自分の行なった非行がどういう意味をもつものであるかということを認識する能力もあった。これを責任と言います、法律用語では。事実関係も認める。責任も認める。それから損害賠償額も認める。全部認めるんです。
ねえ、これはえらいことになった。なぜならばそういう態度をとればね、これはせっかく切ない思いから民事訴訟を起こした淳君のご両親の意志というものがまったく満たされないからなんですよ。
つまり、事実関係を認めるということは自白するということですね。この自白という言葉は刑事でも民事でも言葉としては同じである。しかし意味内容は本質的に違うんです。どこが違うか。それは刑事裁判の場合は国家権力によって国民個人の責任を問うものでありますから、対立するのは国家権力対国民個人。でその場合捜査権力、警察・検察ですね、これは非常に強力な権力をもっている。そして今までの体験、日本の戦前の体験、それから国際的な捜査と裁判の歴史、そういうものからみると、全然力関係が対等でない両者のあいだでは、警察・検察、捜査権力が被疑者・被告人を脅かしたりだましたり、暴行を加えたり、虐待したりしてですね、嘘の自白をさせる。つまり人権を侵害するだけでなくて、そういう人権侵害の行為を加えることによって真実を誤らせる、裁判官の認定を誤らせる。そういう危険がある。
それでですね、本人が自白しても、警察や検察庁で自白してもね、すぐそれが証拠にならないんです、自白調書は。たとえばその自白が強制、拷問、それから不当に長い拘禁ののちにつくられた自白である場合には、これを証拠としてはならないという規定が憲法にあります。それから、自白のほかに証拠がない場合には有罪としてはならないという規定がある。それからさらに、自白を裁判の法廷で取り調べる場合には、ほかの証拠を取り調べた後でなければ調べちゃいかんという規定が、刑事訴訟法にあります。
これはなぜかというと自白というのはね、皆さん、いろんな事件で痛感しておられるでしょう。あれが逮捕されて自白した、一件落着である、自白したということは自分が犯人であるということを認めたことであり、自分が犯人であるということを認めたということは彼が犯人である、ということである。これずーっと三段論法かなんかでいっちゃうんですね。それは一番いかんことだと、裁判を誤らせてきたいちばん大きな原因であると。戦前の日本でもそうであったし、世界の裁判の歴史でもそうである。で刑事裁判における自白というのはそういう制限、厳しい制限がある。
ところがですね、民事訴訟というのは、これは国民対国民の争いなんですね、理論上は。たとえば交通事故を起こしますね。で相手が怪我した。加害者は業務上過失傷害罪とかあるいは道路交通法違反というふうな容疑で逮捕される。あるいは逮捕されなくても、警察に呼ばれていろいろ調べられて、そして起訴される。そして罰金を取られる。もっともいま人身事故だと罰金だけで済むというのはめったにありませんけれども。ま、仮に罰金だとすると、かなりの人はね、俺はもう罰金払ったから被害者にたいして損害賠償する義務はねえだろうと、こう考えるんです。
ところが、その罰金というのはですね、これは交通事故の刑事法の面なんです。つまり交通事故というのは、単なる事故ではなくて、いま非常に広く深く国民生活の中に起こっている危険な事故なのである。これは社会的な問題としては社会を代表する国家がこれに制裁を加えなくちゃいかん。その制裁の一種として禁固がある。禁固というのは懲役みたいなものですね、そのかわり労働はさせない、身体の自由だけは奪うけれども労働はさせない。労働もさせる労役をさせるというのは懲役である。
そのほかにこの二つは身体の自由にかんする刑罰ですが、財産刑というのがあるわけです。これは罰金ですね。三十万円支払えとか百万円支払えとか、でこれはね、あくまでも国家が刑罰として被告に加える制裁なんです。ですからその罰金というのはどこにいくかというと国庫の中に入るんです。ですからそれは被害者の懐には入らないんです。じゃ被害者はそれきりかというとそうではなくて民事訴訟に訴えて、つまり被害者と加害者という、個人としての国民と国民が争って、そして第三者の裁判官があるいは裁判所が事実を認定して、損害賠償を支払わせるとか支払わせないとか、そういうことになるんですね。
ですから物事にはですね、これは交通事故なんかが一番わかりやすいわけですが、刑事的な側面と民事的な側面がある。あるいはたんなる個人対個人の問題として解決させなくちゃいけない事件もあれば、それだけではなくて社会的な問題として国家が制裁を加えるという事件、つまり刑事事件もある。
で、いま自白の説明からえらく脱線しましたけれど、これね、脱線した理由というのは、さっき言いました民事訴訟における被告弁護側弁護人の対応によるところでね、事実関係も責任も賠償額も全部認めるということになると。いいですか、民事訴訟の本質というのはですよ、個人対個人の、国民対国民の、個人としての利害の問題なんですよ。ですから、本人がね、たとえば損害賠償請求した人が途中でね、「もう許してやる」って訴え取り下げることだってありうるわけ。それからまた、被害者の方がね、「その通りです」と謝って払う場合もある。そういうふうにあくまでも個人の利益にかんする問題ですから、個人がその利益を処分することは自由なんですよ。
ところが刑事はそうはいきません。「俺は被告になったけれども、被告になるのは嫌だから被告の身分を離脱する」なんてことはできない。ですから、民事問題の場合はね、自白について刑事事件におけるような厳しい制限はないわけです。個人の自由なんですから。自白というのは事実関係を認めることですが、事実関係だけではなくて賠償額も認めるということになりますと、これは法的用語で言いますと「認諾」と言いますけれども、まあ、常識的に「自白」と言っておきましょう。そういうことができうるし、そういうことをやればね、もうあれですよ、法廷で事実関係が、お互いに証拠を出して争って調べられるということはないんですよ。
で、被害者の淳君のご両親が民事訴訟を提起したということですが、これは私は、本来非常に不幸な事件だと思っております。民事訴訟じたいがそうだと思っている。なぜかと言いますと、もともとA君およびその家族、それから淳君およびその家族とは加害者とその被害者という立場ではないのです。それがたまたまね、A君が犯人とされ、そして警察が嘘をついてだまして「自白」させ、そして逮捕した、ということになりますと、被害者の淳君のご両親をはじめとしてね、国民の多くの人々、いわゆるインテリゲンチャと称する人たちも含めですよ、みんな信じちゃうんですよ。偉大なる世界的学者の言うことよりも、警察の言うことをすーっと信じちゃう。皆さんのご体験でどうですか。いろんな事件を、自白した、逮捕された、あー犯人だ、そう思っちゃう。残念ながらそういう傾向があります。で、淳君のご両親も、A君が犯人だと思われたんでしょう。それで、A君とA君のご両親を相手に民事訴訟を起こした。
で、ここでね、「自白」しなければ、認めなければですよ、A君の側で認めなければ、これは当然、民事法廷で証拠調べをすることができるわけですね。まさに、訴訟を起こした淳君のご両親の希望するような真実を解明する手続きが展開するわけです。ところが全部認めちゃった。そして和解するという。これではそういうことはできなくなっちゃう。
◇告発したことの意味
それねえ、私はというより、私たちは、私と志を同じゅうする人はたくさんいました。いったいどうしたらいいのか、真実を解明する法的手続きはどうしたらいいか、考えました。いろいろ考えたがなかなかいい考えが浮かばない。ある日突然、天啓のように、ピーンときたのがあったんですね。手近にあったんですよ。それは「告発」ということ。
どういうわけかわかりませんけれども、前の家庭裁判所で付添人をやられた弁護士の方々はですね、私がせっかく事務所を訪れて、あるいは手紙を出して、いろいろなことをお話したいと、敵対関係として話をするんじゃなくて、真実を発見するために率直な話し合いをしたい、それからご両親に会わせてほしい、そう言っても会わしてくれない。残念ながらそういうことでした。
ですから、A少年の両親の委任状を手にして、その委任状をもって民事訴訟にのぞむということはもちろん不可能である。それから民事訴訟はもう、「和解」ということで事実審理はしないことにちゃった。いったいどういう方法があるか。委任をうけなくとも、国民の権利として、警察・検察の取り調べに許すべからざる不正がある場合に、国民は手をこまねいているほかないのか。手をこまねいているほかないとするならば、こんな不合理なことないでしょう。必ずあるはずだ。あるんですね、ちゃんと覚えておったんですが、そういうときにはパッと出てこないんですよね。窮すれば通ずるというやつね。ほかに手がないか、ないかと思ってたらパッと出てくるんですよね。それで出てきたのが「告発」ということです。
「告発」というのは、「告訴」とどのように違うかと言いますと、「告訴」というのはですね、被害者が加害者を訴えることです。警察や検察にたいして訴えるのが「告訴」であります、被害者が。
「告発」というのはね、刑事訴訟法にちゃんと書いてある。国民は誰でもですよ、誰でも、犯罪があると認めるときには告発することができると書いてある。だから、「告訴」は被害者がやる。「告発」は被害者以外の国民が、「犯罪がある」と知ったときにはできる。
しかも、ここで大事なことは、さっきね、警察や検察が不正なことをやっても手をこまねいているほかないのか、という問題のたて方をしました。まさにここなんです。いま、防衛庁、日本の軍事を支配している防衛庁も腐りきっているということがわかった。警察はどうか。これは神戸家庭裁判所の決定要旨を見ればすぐわかるように、少年をだまして嘘をついて、そして絶望させて、「自白」させた。これは疑うことのできない事実なんです。それなのに、それなのにですよ、われわれは黙っていなくちゃいかん、そんなはずはない。で、告発しようと。
しかも、この場合の告発は違うんです、ほかの告発と。「特別公務員職権濫用罪」ってあるでしょ。この「特別公務員職権濫用罪」の特別公務員というのは、裁判官、検察官あるいは警察官のような裁判や捜査にかかわる、司法にかかわる公務員をいうのです。これがね、悪いことをやりたい放題で誰もとがめる者がいない、国家による処罰も何もない、ということになればですよ、これは大変なことです。ですから刑法は、一般の公務員の職権濫用罪とは別にですね、特別公務員の場合には、特別公務員が職権を濫用して、国民の身柄を拘留したと、あるいは乱暴を働いたという場合には、とくに特別公務員職権濫用罪という犯罪を、公務員の職権濫用罪とは別に設けたんですね。しかも、これは刑法の話ですが、今度は刑事訴訟法、刑事訴訟法では特別公務員の職権濫用罪がどのようになるか、告発されると。
ところで皆さん、何だろう、警察官と検察官を告発したわけで、告発を受理するのは、これは検察庁じゃないか、あるいは警察じゃないか。同じ穴のムジナがね、どうして正しい判断をするか、そんなはじめっから蹴られるようなバカなことをする、というふうにお思いだろうと思います。ま、思わない賢明な方もいらっしゃる(笑)。
そんなことがあるといけませんので、特別公務員職権濫用罪の場合に、告発された警察官や検察官、それを検察庁が不起訴にしたという場合には、とくに、「付審判の請求」という手続きを認める。つまり、起訴しないという通知が告発人のところに届いてから確か七日以内だったかな、私は数字を覚えないことにしてるんですよ。というのは、六法を開けば書いてあるからね。というのは、覚えると、毎日何万個と減っている脳細胞がね、入れるところがなくなりますから。確か七日だったと思うんですが、皆さん調べてください。起訴しないという通知がきてから一定の期間内に、「付審判の請求」というのを出す。それは、検察庁に出すことになってるんですが、検察庁はそれを受けたら、裁判所に渡さなくちゃいかん。その「付審判の請求」がなされますと、いったいこの事件、この警察官や検察官の不正行為を、起訴しないのがいいのか悪いか、というだけではなくて、これは警察(検察、引用者)審査会でもやりますけれども、警察(検察、引用者)審査会の場合の最後の議決というのは、検察庁を拘束しないんですね。たんなる参考意見にすぎない。
ところが付審判の場合には、裁判所がいろいろ証拠を調べて起訴すべきかすべからざるか、というのを決めるんです。で起訴すべきだということになりますと、これはたんなる参考意見ではなくて、拘束力があるんですね。つまり裁判所は起訴すべきだと判断したならば、弁護士の中から検察官を選ぶんです。その弁護士が検察官役となって、告発された警察官や検察官と対立して刑事法廷での攻防が始まる、ということになっておる。
ですから私どもはね、はじめっからね、蹴られるに決まってる手続きをね、とったんじゃなくて、まさに狙いはこの「付審判」にある。「付審判」になって準起訴手続きがすすめば、起訴に準ずる手続きがすすめば、これはわれわれは当事者にはならないけれども、いろいろ書面を出してね、裁判所に働きかける。あるいは、検事役になった弁護士に働きかける。そして訴訟を有利に、真実を明らかにするという意味で、有利に展開することができる。これを期待しているわけです。
◇警察・検察共謀の偽計捜査
で、皆さん、あのA少年にたいする警察での取り調べがどうであったかということはご承知だろうと思います。ごく簡単にかいつまんで申し上げます。
去年の六月二十八日に、兵庫県警本部は、朝からA少年を自宅から県警本部に連行しました。名目は「任意同行」であります。しかし、実際は任意なんてもんじゃなくて、もう朝から、そうですね、夕刻をこえる時までです。「任意同行」というかたちで調べたんですね。でね、その六月二十八日という日はね、意味があるんです。その前の日何があったか、覚えてらっしゃいますか。前の日にね、さっき私、この事件では三つの非常に不思議な文書があると、一番最後の「懲役13年」というワープロで打ったのは別としまして、あとは肉筆で書かれている。口にくわえさせられた文書、神戸新聞杜に送られた文書。その肉筆で書かれた文章の字と、少年が日頃学校なり家庭で書いている日常的な文字と、同一人の筆跡と鑑定できるかどうかという鑑定を兵庫県警は求めておりました。で、その鑑定書が出てきたのが、六月二十七日。少年を「任意同行」して嘘をついて「自白」させて逮捕したその前の日なんです。
しかもね、その鑑定は民間の専門家が鑑定したんじゃないですよ。兵庫県警の科学捜査研究所が鑑定したんです。それが「同一人の筆跡と断定することは困難である」。で、その頃までね、A少年を逮捕できるような証拠はまったくなかった。それで期待をかけておったのがその鑑定書なんです。
ところが、その鑑定書の内容見たらどうです。その鑑定書を証拠として、逮捕状の請求書にくっつけてね、逮捕状を請求したらどうなりますか。皆さん裁判官だったらね、「同一人の筆跡と判定するのは困難である」という証拠がついてる、それでは逮捕状出さないでしょ。これは常識です。誰が見てもそうなんです。それでね、警察は身内に裏切られたようなかたち、ま、裏切るっていうのはちょっとおかしいけれども、結果としてそうなったんですね。それで非常に困って考えました。物事をいろいろ考えると、必ずしもいい知恵が出るもんじゃなくて、悪知恵が出てきます。それは何かというと、少年を呼んできてですね、そして調べて疲れた頃に、「お前の字と、あの二つの書面の字はおんなじだという鑑定がでてるぞ」と嘘をついたんです。そうして少年を絶望におちいらせて「自白」させた。こういう経過がある。
で、神戸家庭裁判所の決定すらもですね、この事実を認めて、警察官の作成したA少年の「自白調書」は、違法な取り調べによるものであるからといって証拠から排除した。ところが、検察官の作成した「自白調書」は採用した。なぜかというと、検察官は取り調べにあたって黙秘権を告げた。「言いたくなければ言わなくてもよろしい」と、こう言ったと。黙秘権を告げた、だから、少年が警察でだまされたというそういう状況は断絶されたのであると。だから、検察官の作成した「自白調書」は、これは「毒樹の果実」ではないと。つまり毒の樹になった果実ではないから、その検事調書、および検事調書の中にあらわれているいろんな証拠はですね、証拠から排除しないと。
これね、おかしいんですよね。まず第一にね、最初私が驚いたのはね、六月二十八日に少年はひっぱられて嘘ついてだまされて「自白」した。その嘘ついてだましてつくった「自白調書」を証拠にして、警察は逮捕状を請求しました。で、裁判官がそれを調べて、逮捕状を出す理由があるか、さらに逮捕状を出す必要があるかということを調べたうえで逮捕状を出すわけですから、一時間くらいの余裕はあります。一時間以上あったはずです。で、その間にですよ。検事が調べて「自白調書」つくってるんですよ。しかも、警察の取調室ですよ。こういうことはね、ないですよ。
普通の弁護士が聞いたらびっくりする。というのは、警察で逮捕したということになれば、逮捕の有効期間というのは、これは四十八時間、二日ですね。で、二日以内に検察官に事件を送らなくちゃいけない。いわゆる「送検」しなくてはいけないわけですね。で、検察官の持ち時間は何か、二十四時間、一日です。この一日の間に取り調べ完了、これがとてもできないということであれば、裁判官に勾留状を請求するんですね。勾留状がありますと、十日間、普通十日間、身柄をおさえておくことができる。そして普通はそれをもう一回更新しますから、二十日間身柄をおさえておくことができる。で、結局検察官のところでは二十一日、警察の二日を加えると二十三日間というのはずーっと身柄をおさえて取り調べることができるわけです。そこで最初に警察がね、取り調べをして、それから検事のところに事件を送るわけですよ。そこではじめて検事が取り調べをやるんですねえ。
ところがこの場合そうじゃない。検事のところに送致されたのは、二十八日ではなくて二十九日なんです。ところが、検事が取り調べをしたのはですね、警察が取り調べ、「自白調書」を作成して、逮捕状を請求した、そして逮捕する、その直前からやっとるんですよ。こういうことはない。これは非常におかしい。
それからもうひとつおかしいのはね、皆さんどっかおかしいと思いませか。あのね、黙秘権を告知したから、だまされた状況、だまされている状況、いわゆる偽計の呪縛から解放されたと、考えますか?考えないでしょ。だってね、同じ警察で調べられてるんですよ。皆さんね、警察官と検察官、どこ違うかわかりますか?法律上のね、職務権限が違う。これはね、簡単にいうと、検察官は捜査だけでなくて、捜査のうえで起訴するかどうかを判断し、実行する唯一の権限をもっている。それが検察官であります。警察官にはそれがない。そういう権限の違いはありますけれども、少年の前に現れてくるのはね、それは同じような背広を着た、ま、少しばっかり月給がいいから検察官の方が立派かもしれませんけれども、要するに同じような私服を着た取調官。しかも取り調べられる部屋は同じ警察ですよ。警察の取調室なんですよ。どうして違いがわかりますか、「黙秘権がある」と言われただけでね。
しかも、これはたくさんの冤罪事件でみられることですけど、検察官からそう言われて仮に真に受けてね、で警察と違うこと言った、「実は警察で自白いたしましたけれども、あれは違うんです。私は、ほんとはやっていないんです」というようなことを言った。そうすると検察官の取り調べから、また留置場に戻されて、警察の留置場ですよ、警察の留置場からまた取調室に戻されて、そこに待っているのはあの優しい警察官であります。もうガンガンガンガンやっつけるわけですね。
ですから、警察の留置場つまり代用監獄に置かれたらね、黙秘権の形式的な告知があっただけではとても嘘の呪縛から解放されるなんてことはない。現にですよ、少年が自分がだまされておったということを知ったのは、家庭裁判所に送られてからなんですよ。検事がね、捜査を終えて、家庭裁判所に記録を送ります。で、付添人である弁護士ははじめてその記録を見ることができる。で、その中に、科学捜査研究所の筆跡鑑定があった。それを見てはじめてね、これと逆のことを言って少年をだましたんだということを弁護士も悟るんです。そして少年は「僕はだまされた。悔しい」と言って泣いた。これは動かすべからざる事実です。
ですから、私たちは告発しました。残念ながら嘘の「自白」をさせて、その「自白」にもとづいて裁判を誤らせたということは犯罪として規定されていないんですね。「けしからん罪」なんだよ、残念ながら。ですからそこまではね、告発できないんです。告発できるのは、権限を濫用して自由を奪ったということ。ですから、そこまでを告発する。しかし、さっきも申し上げたように、不公正な取り調べは人権侵害であるばかりでなくて、そこから生まれた証拠、自白調書が主たるものですが、その証拠は裁判を誤らせる危険があるんだと。だから、人権擁護という点、虚偽を排除するという点、二つの点からですね、自白について、憲法は重大な制限を設けているわけです。それを、警察と検察は犯した。しかも取り調べの経過をみるとですよ、さっき言いましたように送致される前に検事が調べてる。検事と警察はね、全然別個にやってるんじゃない。それまではね、中年の男がやっただろうと言われておった。それがね、誰でもびっくりするような中学三年生の少年であった。それがしかもね、家から呼んできたその日のうちに「自白」した。これ誰だって不思議に思いますよ。お前どんなような調べをされたんだ、だまされたんじゃあないか、何と言われたんだ、と。普通なら必ず聞きます。ところがこの場合、それを聞いてね、検察官が少年に注意したという痕跡はまったくない。ですから、検察官の取り調べ期間中、少年はずーっとだまされっぱなしであり、『文藝春秋』にも載った検事調書なるものは、だまされっばなしの状況で作成された調書なんです。
私たちはこういうことは絶対許せない。そういうことで告発しました。検事調書も証拠から排除すべきである、家裁はこれを排除すべきであったと付添人だった弁護士も言っています。ところが、どういうことか家裁の決定に抗告しなかった警察・検察は不正のやり得、やりっ放しということになる。こういう事態を見逃していいでしょうか。見逃したら告発という国民の権利を放棄するだけでなく、国民としての道義的義務を怠ることになるのではないでしょうか。
私どもは、現在は少数である。しかし、魯迅も言ってるじゃありませんか。道は最初からあるんじゃないんだ。人が歩いて、そのまたあとを人が歩いて、多くの人が歩いて、道ができるのである。
私たちは、その道を切り拓いて、警察・検察の不正を弾劾し真実を明らかにしたい。こう思っております。
* 道を拓く「神戸小学生惨殺事件の真相・第6集」、神戸事件の真相を究明する会、一九九八年。2~13頁より、野副達司(for-nze@din.or.jp)が電子化したものです。
* 昨98年夏休みたまたま手にした「神戸事件の真相を究明する会」発行の冊子「神戸小学生惨殺事件の真相・第1~4集」から、事件についての疑問や納得できないのはわたしだけではないと霧の晴れる思いでした。また、「ピース・ナウ!戦争に税金を払わない!市民平和訴訟の会・東京」の湾岸戦争戦費負担・自衛隊掃海部隊派遣違憲訴訟の最高裁判決後の慰労会の席で、訴訟代理人でもあった後藤昌次郎弁護士にそれまでのわたしなりの疑問をぶっつけました。すでに、先生はご自身の見解をひろく述べられ、「私と志を同じゅうする人」とともにすでに、事件に関わった警察と検察の双方を告発されておられることも初めて知り、このように収録されたものを電子化したしだいです。公表にあたっては、印刷物である〈道を拓く「神戸小学生惨殺事件の真相・第6集」〉の当該内容の確認とともに、後藤昌次郎弁護士、神戸事件の真相を究明する会の了解を直接得てください。
* 神戸事件の真相を究明する会の連絡先(代表・野田 洋)
ホーム・ページ, http://www2.odn.ne.jp/~cac05270
電話 〇三ー三二三二ー九〇〇五、ファクス 〇三ー三二三二ー九〇三五
電話&ファクス 〇六ー三七〇ー〇二一七
関係団体
A少年の人身保護を求める会(カンパ先の名義も同じ)
電話 〇三ー五六八四ー五四〇八、ファクス 〇三ー五六八四ー五四二五。
カンパ送り先 郵便振替〇〇一九〇ー五ー七一九六一
銀行振込 東京三菱銀行本郷支店(普通)〇二一二一八〇番
警察・検察の不正の告発を支援する会(代表・弓削 達)
電話 〇三ー五六八四ー五四二〇、ファクス 〇三ー五六八四ー五四二五。
カンパ振込先 東京三菱銀行吉祥寺支店(普)一七九二八二七口座名「告発を支援する会」
「神戸小学生惨殺殺事件の真相」総目次(第1~第8集)1999年7月現在
〈第l集〉『権力の恐るべき犯罪----神戸小学生惨殺事件の真相』(97年8月発行)三百円
・正門に頭部を置いたのはA少年ではない!
・矛盾だらけの殺害・遺体切断の筋書き
・警察発表の「物証」にはこれだけの疑惑がある
・「犯行声明」を書いたのはA少年とは別人だ!
・権力の陰謀--神戸事件の背後に潜むもの
・マスコミの批判精神はどこへ?
・知識人諸氏の奮起を期待する
・河野義行氏からのメッセージ
・浅野健一氏からのメッセージ
〈第2集〉『深まる権力犯罪の疑惑--続・神戸小学生惨殺事件の真相』(97年10月発行)四百円
・A少年のご両親にお会いして激励
・みなさんの調査をぜひ生かしたい-------羽柴修弁護士談----
・浮かびあがった頭部切断の真相--龍野教授ら法医学関係者が重大証言
・疑惑に満ちた三月「連続女児通り魔事件」
・「挑戦状」のような文章は中学生には書けない!
・犯行声明の投函場所は変えられた!
・9・15「少年の供述」報道への疑問----馬脚をあらわした警察・検察---
・鵜の目・鷹の目・鳶の目----------品野 実
・松本サリン事件と神戸事件--------河野 義行
・全国から寄せられた手紙
・私は疑い深い性格なので----------阿部 猛
・権力犯罪を見破る眼--------------酒井 博
・"権力は事件をつくる”-----------元山 俊美
・戦前の取調べを連想させる--------伊橋 彰一
・犯罪報道はリンチ----------------浅野 健一
・「神戸事件と報道を考える会」のアピール
・広がる真相究明の声
(第3集)『「A少年供述調書」の虚構』(98年4月発行)五百円
・カラー口絵--目で見る神戸事件の真相
・『文藝春秋』に掲載された「検事調書」の虚構を暴く
〈付〉少年の供述書----------------------------永野 義一
・事件当日にかんするご両親の誕言
・「懲役13年」の筆者はA少年ではない
・浮き彫りになった「朝日新聞」の役割
・「調書」は少年の取り調べを十分にしていない検事が一方的な筋書きに頼って書き上げたものとしか思えない---------------------------------安倍治夫弁護士談
・本当に少年が書いたものものだろうか--「懲役13年」について国立K大学S教授に聞く
・遺体は冷凍して切断されたとしか考えられない-----元北大法医学講座助手談
・あいまいな日本人神戸事件の問題点----------------品野 実
・「正常と異常の間」にあるのは誰か-----------------酒井 博
・『文藝春秋』九八年三月号を読んで-----------------浅野 健一
・「神戸小学生殺人事件」通説シナリオヘの疑問--------戸田 清
・〈A少年〉は果して酒鬼薔薇聖斗か-----------------岡田 啓
・〈当会の声明に見るたたかいの軌跡〉
・神戸事件の処分決定を怒りをこめて弾劾する
・A少年の訴えを圧殺した弁護団を弾劾する
・Kさん夫妻への卑劣な脅迫行為を弾劾する
・羽柴弁護士による当会への中傷に抗議する
〈第4集〉『再検証』(98年6月発行)六百円
・A少年犯行説の虚構しめす新事実--遺体発見を聞いてA少年は「恐わいなあ早よ帰えろ帰えろ」と言った
・犯人は日本語をよく知らない外人だ------------------安倍 治夫
・A少年の心からの叫びを無視した精神鑑定
・「酒鬼薔薇聖斗健在」当会に二通の怪文書
・「あの日から一年 5・24シンポジウム」の発言から
問題は何か--神戸事件と報道-----------------------後藤昌次郎
神戸小学生殺害事件を検証する----------------------酒井 博
報道されたような事実はなかった---------------------佐藤 公彦
・これだけはぜひ言わせていただきたい-----------------岩田 信義
・少年Aに捧ぐ-----------------------------------否樫 侑
・神戸少年事件の本質をめぐって-----------------------品野 実
・歴史の曲り角には謀略事件がおきる-------------------高井 信子
・マスコミの能天気が生む言論の自由の放棄--------------瀬川負太郎
・神戸事件をめぐる空騒ぎは子どもたちにとって迷惑-------新谷 良
・司法の世界に適合すべく編まれた物語-----------------養老 孟司
・A少年犯人説の崩壊-----------------------------戸田 清
・若者たちの声----友が丘中学校、タンク山見学の感想/大切なのは真実を暴く人間の心/マスメディアも少しは会を見習ったら/すばらしい本をありがとう/カナダからの手紙
・会に寄せられた手紙から----不思議なくらい乾いた印象/奄美人の名にかけて無実を晴らす/「学校殺死」は日本人の表現ではない/家裁の処分決定に怒りでいっぱい/少年の逮捕でけりがついたと思っていたのに/何てことを思いこんでいたのだろう/多くの疑問点のある著作/神戸事件真相究明者の受難
・読者からの葉書
・全国の書店で大反響
・A少年の人身保護請求裁判への支援を訴える----------A少年の人身保護を求める会
〈第5集〉『私は思う』(98年12月発行)四百円
・特集・民事訴訟「和解」に思う
民事訴訟「和解」の報に接して 里上譲衛/辛くとも頑張ってください 壽岳章子/日本人にとって重大な試煉 森井眞/日本社会の奇妙な実態 川平俊男/私の感想・疑問・意見 匿名/声明文に賛同する 新倉滋/あふれ出る泪は流れてやまない 愚庵秋徹/何のための、誰のための弁護人か! 音羽糺志/過去の事件との類似性 三浦英明/強制された決定は許せない 匿名詩人/運動の発展に期待 助川徳是/社会正義のためにも疑問に答えてほしい 元山俊美/疑念は深まるばかり 住友順一/司法の反動化は総保守化を招く 中村周行/事件はまだ終わってはいない 匿名/事実解明を保障せよ 増井喜一/頼りの弁護士が仕事の基本を果たさないとは! 秋山小南/民主主義を守るため真実の究明を 小林義孝/事実にもとづかない判断は人と社会をあやまたせる 原田奈翁雄/弁護をしない弁護士に憤りを覚える T・W
土師守氏の手記『淳』に思う-----------------新谷 良
真実は壁を通す--『淳』を読んで-------------------K・T
なぜ、A少年は犯人なのか------------------小山 亨
〈声明文〉吉井正明弁護士らによる和解の要請を弾劾する----神戸事件の真相を究明する会
〈アピール〉法廷の場で神戸事件の真相を究明しよう------安倍治夫/駒井俊二/酒井博/里上護衛/妹尾活夫
「五者声明」に三四七名が賛同の署名
ドキュメントlO・16民事裁判
真実の究明を求める声に全く耳を貸さない吉井弁護士
A少年のご両親へ--------中村克郎/恵沢岩生
・報道に思う----報道や警察のあり方を正していくことこそ 佐伯有美/「プロのジャーナリスト」を目指したい 匿名/人民の側に立ったマスコミ報道を! 大城盛俊/流される情報はあまりにも偏っている 菊池洋一
・世論と法の砦----記者と法曹は今!-----------------品野 実
・疑問点を解明しよう----------------------------戸田 清
・繰り返されるメディアの犯罪---------------------浅野 健一
・〈コウベを垂れた大江健三郎---------------------否樫 侑
〈第6集〉『道を拓く』(98年12月発行)四百円
・警察・検察をなぜ告発したか--------------告発人・後藤昌次郎
・非理法権天の旗を掲げて-----------------------酒井 博
・権力の不正を弾劾する一大国民運動を
・メッセージ---------------------------------弓削 達
・胃の内容物が物語る事件の真相----淳君は外出直後に殺されていた!
・筆跡と文章力の違いは明らかだ!----「三年生になって」を検証する
・崩れさったA少年=犯人説----10・17家裁決定から一年
・A少年の精神鑑定の欺瞞---------------------臨床心理学研究者
・いつか来た道 妹尾活夫/一日も早く少年を釈放すべきだ 西尾義行/権力亡者への長い闘いをたたかいぬこう 伊橋彰一/国民総ての力を結集して 岩渕忠夫/神戸事件の洗い直しを 尾関菊次郎/権力の独善と虚偽は許されない 山口友孝/神戸事件について今考えること 匿名/背後から臭ってくる真犯人像 島田文彦/むしばまれていく子供たちの人権 谷内武雄/あらゆる角度から徹底的に追跡すべき 武富登巳男/人間の常識 遠藤忠夫
・〈会に寄せられた手紙から〉---
-こんな時代だから良心の火を燃やさねば/真実をみぬき共に手をつなぎ平和に生きたい/作家の井上ひさしさんからもメッセージ/全ての疑点が解明されるよう祈ります/会は”蟷螂の斧”にはならない/新事態を期待している/真相究明こそ何にもまして重要/皆さんの努力が実を結ぶよう祈る/千丈の堤も蟻の一穴から/淳君、心やすらかにおやすみ/冤罪を明らかにする日が近い将来くることを願う
・神戸事件の真相に迫る10・11集会-----------620人が結集し大成功
・A少年の人身保護を求める第二次提訴が最高裁へ ・私のひと言----「五者声明」の呼びかけにこたえて
・早稲田出版が発行した『真相』が全国書店で大反響
・『神戸小学生惨殺事件の真相』総目次(第1集~第6集)
〈第7集〉『神戸事件2年 真相を求めて新展開』(99年4月発行)六百円
・神戸地裁の3・11民事訴訟判決を弾劾する!
・法廷の場で真実の解明を!------人身保護請求者・真相を究明する会会員駒井俊二
・関東医療少年院の正門脇の看板にA少年の顔写真が貼られていた!
・神戸事件二年----広がる運動 各氏がメッセージ----安倍治夫(弁護士)/里上護衛(大阪経済大学教授)/妹尾活夫(牧師)/北尻得五郎(元日弁連会長)/船橋K老生/村田拓(文化活動者)/田中守(菅家さんを支える会・滋賀)
・3・22 A少年に偽計を用いて自白を強要した警察官・検察官を告発する講演の集い
・ここがおかしいA少年犯人説----神戸小学生惨殺事件の再検証
・『真相』----神戸少年事件再論-------------------伊達功(松山大学名誉教授)
・私たちの意見 瀬川負太郎(「小倉タイムス」代表)/大阪府・R/品野実(元毎日新聞記者)/戸田清(長崎大学助教授)/川平俊男(人権と教育を考える会・沖縄)/大江健三郎氏の決定的言辞(ノーベル賞受賞者フォーラム・札幌セッション)/作家・大江健三郎へのレクイエム(「埴谷さんを想う会」に参加して)/浅野健一(同志杜大学文学部教授)/木村哲也(メディア研究者・弁護士)/小田晋の独協大講演について/中核派の妨害に抗議する
・〈『正論』2月号に掲載された友が丘中学元校長・岩田氏の論文に寄せて〉
槙枝元文(元日教組委員長)/柴原貞夫(鳥取大学名誉教授)/河信基(評論家)/加藤郁(東京都退職婦人協議会会長)/樋口健二(フォトジャーナリスト)/田口恵一(新聞記者)/ジャーナリスト(匿名)/佐伯有美(北大阪新聞社)/たぐち晴快応(詩人)/伊橋彰一(中国帰還者連絡会)/神谷量平(劇作家)/阿部猛(東京学芸大学名誉教授)
・少年法の改悪に反対しよう!
・必要なのはオヤジ法と時短
野口善國『それでも少年を罰しますか』を読む--------萩谷 良(翻訳業)
私はなぜ警察・検察を告発したか------------------後藤 昌次郎(弁護士)
〈第8集〉『冤罪の証明』(99年4月発行)五百円
・物証・自供・動機のすべてにおいて瓦解した「A少年犯人説」---冤罪を証明する両親の『手記』
・「A少年供述調書」の虚構をうち砕く決定的な新事実が浮上した
淳君殺害の当日、少年は自転車ではなく徒歩で家を出た!
A少年の描く「酒鬼薔薇マーク」は天道総天壇と瓜二つ
「A少年=直観像素質者」説の破綻
・警察は、ルミノール反応の出ないタライの所有権を放棄させた!
・仕組まれた「A少年逮捕劇」の全貌---権力はすべて筋書き通りにことを運んだ
・「署が報道陣だらけ」と両親の面会要求を拒絶
・警察・検察は「犯行の動機」をねつ造した!
・崩れおちたA少年の虚像
・さらけだされた弁護活動の驚くべき実態
・文春記者・森下はいかに事実を偽造したか?
・A少年の視力は0・一と0・二!---この視力で、「供述」どおりの犯行が出来るのか?
・真実と道理を社会的な力へ---------------------後藤 昌次郎(弁護士)
・警察・検察の不正を告発する3・22講演の集いが大成功
以上。
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