2000.7.4
(10)航空・陸上輸送/総合力でリード
[1991.6.3(5)] 日経産業新聞連載(1991.5.21~6.3)
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国家重要技術 | 商務省 | 国防総省 |
航空技術 陸上輸送技術 |
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空気吸入推進機 |
(注)商務省、国防総省の技術リストは昨年の「新技術報告書」、「重要技術計画報告書」に基づく。
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【航空】=航空技術には重要な基盤技術が含まれている。例えば、航空機の材料や構造には、強度のほか、温度変化や腐食に耐え、しかも大きさや重さの制約が加わる。このため、その材料を製造する技術も必要になる。21世紀に、民間機市場でのトップのシェアを確保したり、空軍力の優位を維待するためには、航空技術分野で先頭に立っていることが必要だ。
▼技術選択の理由=1,000億円(ママ)以上の規模を持つ世界の航空機市場での優位を保ち続け、軍事技術レベルを維持するためにも航空技術は米国にとって重要。連邦政府が支出する研究開発資金のほぼ半分、産業界の研究開発費の20-25%は航空宇宙分野へ投入されている。米国の国防予算の約3分の1は、航空機の研究開発や調達などにあてられている。産業界の技術開発役資は売り上げに左右されるので、結局、シェアが技術の優位性のカギを握る。
▼国際動向=過去20年間、米国の産業は多くの分野で衰退してきたが、航空宇宙分野は市場での優位を保ってきた。しかし、民間機、軍用機両分野でシェアは減少しつつある。1990年代に米国や外国の国防予算が減少するにつれて、民間機市場は一層重要になる。軍から民へのシフトといつ傾向は加速しそうだ。
外国政府は、補助金や政策誘導により自国の航空宇宙産業を援助してきた。また、米国メーカーは自社製品に多くの外国製部品を利用してきた。
これに伴い米国の技術は外国へ流出し、西欧では航空力学と構造の分野で米国と同等になり、先端材料ではやや先を走るようになった。しかし、エンジンや航空電子工学は米国が勝っている。
日本は政府と産業界が協力した研究開発計画を設けている。欧州や日本が伸びてきても、米国はシステム統合技術ではリードし続ける。
【陸上輸送技術】=重要なのは (1)コンピューターを駆使しで安全で効率的な移動手段と道路を実現するインテリジェントカー・高速道路システム (2)電気自動車向けなどの小型車用エネルギー源 (3)100-500マイル離れた都市間を結ぶのに適している磁気浮上列車システム……などだ。
電気自動車用の高性能電池としては、最高速度50マイル、1回の充電で100マイル走行可能なところまで達し、磁気浮上列車は外国で開発が進んでいる。
▼技術選択の理由=交通基盤は経済成長と国際競争に不可欠だが、現在、その基盤は崩れてきて、道路や橋が交通量に対応できなくなっている。また、現在の交通体系は大気汚染や騒音等の公害問題も引き起こした。現在利用している液体燃料には限りがあるので、既存の交通体系に代わる新たな大量輸送システムを見いだし、その効率的な運用によってこれまでのシステムの弊害を最小限に抑える必要がある。
▼国際動向=多くの陸上輸送技術は、材料、通信、エレクトロニクスなど国家的に重要な技術に依存しており、欧州と日本は大掛かりなインテリジェント高速道路計画に着手している。米国では連邦や自治体のほか民間でもインテリジェントカー・高速道路システムを進めている。電気自動車は電池の寿命と低出力が依然として難関となっている。
ガソリン車と競合するには、商業的に利用できる高性能電池などの開発が必要だ。
磁気浮上技術は重要な研究開発課題だ。主にドイツと日本が20年以上実験してきた。両国では、市街地での低速度走行は実証され、高速度で試験評価中だ。米国での実用性は、建設コスト、代替手段などを考慮する必要があり、まだ確定していない。
◇エネルギー・環境分野(略)=おわり
以上で(10)終り。連載終了。