2000.7.4
(6)情報・通信(上)
[1991.5.28(5)] 日経産業新聞連載(1991.5.21~6.3)
… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … …
国家重要技術 | 商務省 | 国防総省 |
ソフトウエア マイクロエレクトロニクス オプトエレクトロニクス 高性能電算機・ネットワーク 高品位テレビ センサーと信号処理 データ記録と周辺装置 シミュレーションと モデル作成 |
高性能電算機 新半導体素子 オプトエレクトロニクス 高性能電算機 デジタル画像処理 センサー技術 高密度データ記録 高性能電算機 |
ソフト生産性 半導体材料 集積回路 光電子技術 並列処理電算機 データ融合 データ融合 信号処理 受動センサー 高感度レーダー 知的機械・ロボット 光電子技術 シミュレーションと モデル作成 計算流体力学 |
(注)商務省、国防総省の技術リストは昨年の「新技術報告書」、「重要技術計画報告書」に基づいている。
… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … …
【ソフトウエア】=ソフトウエア技術で重要なのは (1)コンピューターによりソフトを設計、開発するエンジニアリングツール(CASEツール) (2)ソフトの中心部分の原型をユーザーと共同で短期間に完成させ、その後に払張、高度化していく新たな手法などの革新的概念……などだ。
▼技術選択の理由=最新の高度な自動化システムはソフトの信頼性や性能の高さを前提にしている。コストもますますソフトの開発・生産コストに左右される。高品質のソフトを効率良く生産できるかどうかは、産業や軍事の広範囲にわたる先端技術のカギを握り、多くの重要技術を左右する。現在の労働集約的で試行錯誤による方法では、システムのコストが上がり、性能上の問題点が増大するだろう。
▼国際傾向=ソフトは伝統的に米国が強い。1988年の世界市場で米国のシェアは60%だ。ソフト開発や応用の強さは、米国が情報技術など重要分野で競争力を維持するために大切な要素となつている。
しかし、米国以外の地域の競争力も高まっている。欧州は1992年の市場統合に格み規格統一で力をつけそうだ。労働コストの安い第3世界の国々も競争に加わる。また日本は最大のライバルになりそうだ。いくつかの日本企業は、製品製造工場と同様にきちようめんなソフトづくりを高度に組織化し、膨大なソフトづくりを進めている。
【マイクロ・オプトエレクトロニクス】=マイクロエレクトロニクスではIC(集積回路)の高集積化、信頼性向上、持殊用途に役立つガリウムひ素など化合物半導体の低コスト化、多品種のICを低コストで生産するプロセス技術……などが重要である。
オプトエレクトロニクスで最先端の分野はレーザー。特に半導体レーザーは有益だ。小型、低コスト、長寿命などの点でほかのレーサーとは異なり、光通信、CD(コンパクトディスク)プレーヤーなど家庭用娯楽機器の革新をもたらす。軍事分野にも応用できる。
▼技術選択の理由=エレクトロニクス技術は最も広く浸透している技術だ。半導体・電子部品が先端的な製造、情報通信、航空宇宙輸送といったシステムに欠かせないことからもほかの技術分野への波及が明らかだ。
マイクロエレクトロニクスとオプトエレクトロニクスを応用した製品は我々の生活様式を洗練し、変え続けるだろう。
マイクロ、オプトエレクトロニクス技術の進歩は米国の国際競争力にとって重要であり、製造プロセスや工場管理に革命を起こす。また、軍事分野では優れた誘導兵器や3CI(指揮統制・通信・情報)に、健康福祉・環境分野でも製品やサービスの改善に重要だ。
▼国際傾向=マイクロ、オプトエレクトロニクスとも米国先駆者だが、製品開発、製造、販売では日本が強力な役割を担うようになった。光技術で日本は世界のリーダーであり、光半導体素子では世界市場の3分の2を占める。政府の援助を受けて日本企業は最先端オプトエレクトロニクス技術の開発に向け、欧米の企業や研究機関と手を組みつつある。特に通産省は欧米に第6世代コンピューター開発プロジェクトヘの参加をもちかけている。
欧州は米国と同様、最先端のオプトエレクトロニクス技術ではリーダーだが、商品への応用では役割が低い。マイクロエレクトロニクスで米国は日本から深刻な挑戦を受けており、すでにICの販売で主導権を失った。IC製造技術も同様で、イオン注入、薄膜技術などでは優位を保っているものの、露光、高純度材料、セラミックスパッケージでは日本に後れを取った。日本はマイクロ波プラズマプロセス、放射能露光、電子ビーム、三次元ICなど新しい半導体技術でも先行しているようだ。
以上で(6)終り。(7)に続く。