米国重要技術報告書復活へのカルテ」 4

2000.7.4

(4)生産技術(上)制御装置がカギ

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国家重要技術 商務省 国防総省
フレキシブルCIM
知的処理装置
ミクロ・ナノ加工
システム管理技術
フレキシブルCIM
人工知能
知的処理・ロボット



(注)商務省、国防総省の技術リストは昨年の「新技術報告書」、「重要技術計画報告書」に基づく。

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【フレキシブルCIM】=企業内情報網、製造制御システム、ワークステイションなどを活用し、状況の変化に機敏に対応できるフレキシブル・コンピユーター統合生産システム(CIM)の導入は生産性と製品の品質向上に不可欠だ。システム構成上、特に必要なのは(1)生産のシミュレーションモデルをつくるツール (2)CAD(コンピユーターによる設計) (3)CAE(コンピューター利用によるエンジニアリング) (4)グループ技術 (5)CAPP(コンピューターによる工程計画づくり) (6)資材手当て計画なども織り込んだ工場計画ツール……などだ。

▼技術選択の理由=米国の経済成長はサービス産業に大きく依存しており、その動向は製造業の状態に大きく左右される。製造業が力を失えば米国産業は競争力を失い、経済成長の持続が危うくなり、国防力の維持に必要な製造部品や機器も手に入らなくなる恐れがある。

 こうした事態を防ぐには従来の少品種大量生産ではなく、必要な時にバラエティに富んだ部品や構造材料をすぐに供給できるフレキシブルCIMの導入が必要だ。戦略防衛システムなどの兵器の充実にも威力を発揮するとみられる。

▼国際動向=米国で稼働しているフレキシブルCIMの数は日本の2倍以上にもなるが、日本はこの分野で非常に進んでいる。日本ではこのシステムをファクトリーオートメーション(FA)と呼び、世界最大の自動機械産業や優れた情報通信技術、設計・製品改良の思想に支えられて伸びている。

 日本の通産省は自動生産システムや情報通信技術に関する国際協力計画を提案しており、この分野で率先して国際標準をつくることも考えている。知的生産システム(IMS)と呼ばれるこの計画は、フレキシブルCIMのさらに先を行くものとして注目される。

【知的処理技術】=先端的な生産技術の開発戦略を進める際の土台となるのが、コンピューター制御を活用した知的処理技術だ。高性能センサーにより製品の品質などに関する情報をフィードバックさせる機構を組み込んだ新世代制御装置(NGC)を活用し、最終的には検査の不要な生産ラインを作り上げるのが重要な課題となっている。

 これが実現すれば、製造コストの低減と製品の品質や信頼性の向上を同時に達成でき、競争力のある優秀な製品製造が可能になる。

 知的処理技術のいわば頭脳の役割を担うのは制御機器で、機械の監視・制御だけでなく生産計画の策定や温度・圧力など製造条件の設定までを広く受け持つ能力が要求される。大きさや色、形などをとらえるものだけでなく、超音波センサー、位置制御センサー、バーコード読み取り機などを高度化させなければならない。

▼技術選択の理由=半導体を使用した製造・制御機器などの製造を手がける米国の機器メーカーは、国際市場でシェアを失いつつある。自前で高性能な機器をそろえられなければ、ハイテク製品の生産でも十分な競争力を持つことはできなくなる。知的処理技術の導入はこうした問題解決のカギを握る。

 処理速度の向上は図表の作成プログラムや高度なプログラム言語の開発など、周辺技術の改良に支えられて制御機器の能力アップにつながり、製造システム全体のレベルアップをもたらす。また、知的処理技術は農業やサービス産業など、他の産業分野にも波及効果が期待できる

▼国際動向=自動制御機器などの国際市場で米国が誇っていた競争力は、1980年代の半ば以降急速に低下した。代わって海外、特に日本のメーカーが支配的な地位を占めるようになり、次世代製品の開発にも精力的に取り組んでいる。日本では知的処理の開発技術は機械技術とエレクトロニクスとを統合した「メカトロニクス」として知られている。

 米国の制御機器メーカーの競争力は欧州各国に比べても落ちており、結果として先端技術分野における米国の国際的な地位は低くなる一方だ。こうした事態を打開するために米国が進めているNGCの開発の成果が注目される。

以上で(4)終り。(5)に続く。


(5)生産技術(下)柔軟な経営必要

WEB雑誌『憎まれ愚痴』56号の目次