第 147 国会報告
労働・社会政策委員会
2000年3月15日 03 号
中国人実習生問題・雇用均等政策研究会報告書
○大脇雅子君 きょうは、雇用均等政策研究会の報告書で指摘された論点を中心にお尋ねをしたいんですが、まず、昨日の質問と関連いたしまして一問お尋ねをしたいと思います。
武生における中国人実習生問題に関連するものであります。
昨年の十一月十八日の委員会で、この中国人実習生問題あるいはその制度に関してはさまざまな省庁が関連しているので、労働大臣のイニシアチブで外国人労働者問題に対する各省の横断的な連絡協議会をおつくりいただきたいとお願いをいたしまして、それに対応したいという発言をいただいておりましたが、その進捗状況はいかがでございましょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) 技能実習制度につきましては、その適正、円滑な推進を図るため、法務省、外務省、通産省、労働省及び建設省の関係省庁の十分な連携が必要である、こう考えておりまして、その旨昨年十一月十八日に答弁させていただいた次第でありますが、その後関係五省庁で連絡会議を開催しており、最近では三月七日に課長レベルの会議を開催して問題点の検討に当たっております。
御承知のとおり、技能実習制度においてはいろんな面から問題が発生しておりまして、これらの未然防止を図るために、財団法人国際研修協力機構によりまして受け入れ団体に対する計画的な巡回指導を行うところをまず差し当たって決めさせていただいた次第であります。
○大脇雅子君 先回も実態調査をお願いいたしましたので、ぜひこの連絡協議会といいますか連絡会議、それ自体が有効に将来機能していくようにと願わずにはいられません。
さて、雇用均等政策研究会報告書がこの二月に出されましたが、これは私の感想でありますけれども、現状と企業の雇用管理、個人の就業意識の変化等労働者像のプロファイルの変化といったものを浮かび上がらせているという点ではさまざまな問題点が指摘されていると思います。しかし、差別の存在が非常に抽象的に描かれていて、いま一つ迫力に欠けているのではないかという感想を持つものですが、これが審議会に諮られて指針策定へと行くわけですが、大体これはどんなタイムラグで行くんでしょうか。
○政府参考人(藤井龍子君) 報告書を踏まえまして、ただいま女性少年問題審議会で雇用均等政策基本方針の御議論をお始めいただいておるわけでございます。審議会は三者構成でございますので、労使のそれぞれのお立場からの御意見というのはいろんな形で出されているところでございます。
なるべく早くおまとめいただきまして、手続といたしましては、案を諮問させていただいて答申をいただく、その後に今度は都道府県知事の御意見を賜らなければいけないということになってございますので、そういう手続を踏んで公表ということになりますと、どうしても六月ごろにはなるかと考えておりますが、なるべく早く策定できるように努力をしてまいりたいと思っております。
○大脇雅子君 この研究会報告書に出ております政策の方向とか多様な選択肢等については、いずれも企業自体の認識と積極的な取り組みなしには絵にかいたもちにすぎないという危惧があります。労働省の見解はどうでしょうか、お伺いをいたしたいと思います。
また、ファミリーフレンドリー企業として積極的に取り組む企業の実態というものを今後施策にどのように取り入れられていくお考えか、あわせて見解をお伺いしたいと思います。
○政務次官(長勢甚遠君) 男女均等の実現のためには、企業の自主的、積極的な取り組みが重要であるということは御指摘をまつまでもないわけでありまして、このような企業のポジティブアクションを促進するため、企業の自主的取り組みのガイドラインの普及やトップセミナー、業種別使用者会議の開催、具体的な取り組み事例の提供等により、企業の取り組みの援助を強化いたしております。さらに平成十二年度からは、中小企業での取り組みを促進するため、中小企業の人事労務担当者に対するセミナーや、女性の管理職候補者を対象とした研修等を実施することといたしております。
また、ファミリーフレンドリー企業についてでありますが、法を上回る育児・介護休業制度の導入など、仕事と家庭との両立がしやすくするような取り組みを自主的かつ積極的に行い、成果を上げている企業が見られるところであり、こうした企業の取り組みを促進するため、本年度から毎年、労働大臣表彰及び女性少年室長表彰を行い顕彰することとしたところであります。今後につきましても、平成十二年度に諸外国の有識者を招いてファミリーフレンドリー企業についての国際的なシンポジウムを厚生省と共同して開催することといたしております。
労働省といたしましては、こうした事業を通じて、仕事と家庭を両立するための環境づくりに取り組む事業主を積極的に支援してまいりたいと考えております。
○大脇雅子君 この研究会の報告書でも指摘されておりますが、コース別雇用管理制度というものについて、依然として事実上の男女の雇用管理として機能している例とか、一般職の勤続年数が長期化する中で、コース別区分の合理性とかコース間の処遇の格差について納得を得られにくい例も見られるということが指摘されています。
雇用機会均等法ができまして、コース別雇用管理制度が均等法の本来の立法趣旨や機能をゆがめているんではないかということはたくさん指摘をされてきたところでありますし、訴訟も起きたりしているところだと思います。それに対して、コース別雇用管理の望ましいあり方という見解も出ているわけですが、これは担当の方にお尋ねしたいんですが、こうしたコース別雇用管理制度に対する労働省の取り組みというのは今までどんなふうだったのでございましょうか。
○政府参考人(藤井龍子君) 先生がただいま御指摘なさいましたとおり、雇用機会均等法が昭和六十一年に施行されました前後からでございますが、大企業を中心に労働者の能力や適性等に着目して、コース区分を設けるというコース別雇用管理制度、一番典型的な例は総合職コース、一般職コースということで分けて管理をするという形のものが広く導入され、大企業では半数近くの企業でこれが導入されている状況でございます。
これは、それまで基幹労働者はすべて男性、補助的労働はすべて女性という形で男性、女性区別して管理されていたものが、総合職、一般職という形で、総合職の中に女性というものを採用するといいますか、登用するというようなことでございまして、その点では女性活用の契機になったということで私どもは評価をさせていただいているところでございますが、一方、先生御指摘のとおり、事実上、総合職はすべて男性、一般職はすべて女性ということで、男女区分型のあるいは差別型の人事管理という形になっているところも多く見受けられるというような実情等々、問題もたくさんあるというふうに考えているところでございます。
それで、コース別雇用管理の望ましいあり方についてということで、平成三年に私どもで企業の方々に対してお示しをしたものがございます。ただいま、均等法が改正され、昨年の四月一日から施行されたということを受けまして、またコース別雇用管理制度の運用の実態、先ほど申し上げました実態も踏まえまして、このコース別雇用管理制度あるいはその他職種区分の雇用管理制度というのも最近出てきているようでございますので、それを含めまして、民間企業の方々にお示しできるような指針みたいなものを今検討を進めているところでございます。
○大脇雅子君 コース別雇用管理制度に対する的確な平等への指針ができるということは、男女平等の雇用管理といいますか、そうしたものを進めるために非常に重要だと思いますので、ぜひ審議会においても深い討議を期待したいと思っています。
もう一つ、私たちは、ほかの議員の方も御指摘があったように、いわゆる職業と家庭の両立支援法という新しい法分野を形成していくことによって、男も女も仕事と家庭を生きがいとしてさまざまなライフスタイルを選択していけるような社会を描きたいということであります。そのために、均等法改正に伴いまして労働基準法も改正され、女性の保護規定が解消されるとともに、男女共通の家族的責任の遂行の方法という道筋を私どもは懸命に描き続けてきたわけであります。
しかし、それがしっかりでき上がる前に、女性のいわゆる激変緩和の措置として時間外労働の上限基準は一年間百五十時間というのが維持されているわけですが、これの施行状況というものはどのようになっているのでありましょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 先生お話しのとおり、昨年四月から施行されております改正労働基準法につきましては、私ども一生懸命事業主に説明する機会を設けまして、適切な施行ということを図っているつもりでございますが、今お話しの時間外の問題ですが、いわゆる時間外労働協定の届け出件数が全体で十五万件、これは昨年の四月の時点でございますけれども、そのうちの先生お触れになりました家族的責任を理由とする女性労働者に関します限度基準、年間百五十時間、そういうところを違反している可能性がありましたのが、うち一万四千件というふうに承知いたしております。
○大脇雅子君 違反していたというのはどういう趣旨ですか。
○政府参考人(野寺康幸君) 百五十時間を超えておりましたので、それを百五十時間以内におさめるように指導させていただきました。そういう件数でございます。
○大脇雅子君 百五十時間というのが、激変緩和の措置として一応三年間というふうに期限を設けて、あとはポスト激変緩和措置として時間外労働に対する男女ともの拒否権といいますか、拒否するそういう形成権のようなものを深夜業と同じように家族的責任を有する男女労働者に認めていこうという道筋が附帯決議と附則で描かれているわけですが、均等法が施行された後、まだ時間はございますけれども、こうした時間外労働の上限基準の男女ともの見直しとか、あるいは休日労働についての措置とか、対象女性労働者の範囲の見直しなどといったポスト激変緩和についてどのように検討が始められているか、お伺いしたいと思います。
○政務次官(長勢甚遠君) 平成十年の労働基準法改正法によりまして、平成十四年三月三十一日までの間において、時間外労働が長時間にわたる場合には家族的責任を有する労働者が時間外労働の免除を請求することができる、いわゆるポスト激変緩和措置について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということにされておるところであります。これに従いまして、現在、育児や家族の介護を行う労働者の時間外労働の動向、育児・介護休業法の施行状況、激変緩和措置の施行状況等について実態を調査しております。
ポスト激変緩和措置については、これらの実態調査の結果等を踏まえ、関係者の意見も聞きつつ、その水準については激変緩和措置との連続性にも十分留意しつつ検討を行い、適切に対処してまいる方針でおります。
○大脇雅子君 そうすると、その調査はいつごろ終わって、どのような審議過程の中でこの時間外労働の上限基準の見直しがいつごろ始まるんでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) この激変緩和措置が平成十四年三月三十一日までの間というふうに先ほど総括政務次官の方から申し上げましたので、その間におきますすべての事情を勘案してその後のいわゆるポスト激変緩和を決める、こういうことになりますので、それまでの間ずっと調査をし続けるということになるわけでございます。
○大脇雅子君 休日労働については何か議論がございますでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 休日労働でございますけれども、これは先生よく御存じのとおり、平成十年の附帯決議の中で休日労働のガイドラインについて専門家会議を設けるといった趣旨が書かれてございます。
そういうことで、休日労働のガイドラインにつきましては中央労働基準審議会の中で労使の意見を聞きながら検討するということになっておりますが、現在中央労働基準審議会は、それまで特に裁量労働制の方に全面的に実は精力を割く事態になっております。この裁量労働制が四月一日をもちまして施行される運びになったわけでございますが、ようやくしたがいまして休日労働のガイドラインをこれから検討する段階に入っているわけでございます。そういう意味で、公労使でそういった検討がなされるということを再確認してございます。
○大脇雅子君 対象女性労働者の範囲というものについてはさまざまな議論がありまして、育児とか介護が小学校入学までなのか、あるいは小学校卒業までなのかとかさまざまあるんですが、こういう点についての議論は今どのように検討されているんでしょうか。
○政府参考人(藤井龍子君) ただいま、育児・介護休業法の施行状況と申し上げてよろしいかと存じますが、育児・介護休業制度を中心に、いろいろな仕事と家庭の両立の制度の導入状況とか運用状況とかというのを企業でどうなっているかという調査をこれは私どもの方は私どもの方で実施しておるわけでございます。
そういうことを踏まえまして、先生の御指摘なさいましたようなことも全体ひっくるめて実態をよく把握いたしまして検討を進め、平成十四年三月三十一日までの間に必要な措置をとるということにさせていただきたいと思っております。
○大脇雅子君 こうした法体制ができますと、私は、近代家族のモデルというのは働く母親と家庭を守る女性、子供二人と犬一匹という一つのティピカルな家族像が、男も女も働き続けて自由な選択肢を広げて両方を両立させていくという、そうした働く女性にとってはとても呼吸しやすい社会というのができるだけ早い時期に生まれてほしいと思いますので、鋭意、十四年三月三十一日には、働く女性とそれから男性にも期待が持たれているわけでありますから、そうした国際的にもたえ得るようなシステムを構築したいものだなというふうに思っています。
研究会の報告で非常に気になる指摘がされております。
それはパートタイム労働者と正社員の賃金格差が広がって、それが大企業じゃなくて中小企業にもますます格差が多くなっているんではないかというような指摘がある一方、パートタイム労働のいわば正社員との均等処遇という物差し研究会というのが開催されておりますが、このパート労働に関する今やられております均等処遇を検討する研究会の報告書も間近いと聞いておりますが、その進捗ぐあいはどのようなものになっておりますでしょうか。
○政府参考人(藤井龍子君) 御質問の研究会はパートタイム労働に係る雇用管理研究会というものでございまして、これは平成十年の二月に女性少年問題審議会から「短時間労働対策の在り方について」という建議が出されたわけでございます。その中に、労使がパートタイム労働者と通常の労働者との均衡を考慮するための指標づくりや処遇の均衡または均等に取り組みやすくするため、技術的、専門的な検討を行うことを目的として発足、開催しているものでございますが、これは公労使三者構成ということになってございます。
平成十年十二月からずっと御議論を進めていただいておりまして、その間には事業所及びパートタイム労働者に対するアンケート調査、さらには多数の事業場、それから相当数の労働組合の方々からのヒアリング調査をやっていただいておりまして、賃金制度等、大変難しい問題がございます。研究会の先生方に鋭意御検討を進めていただいておりまして、今最終段階の調整に入っていただいておるという状況でございます。
○大脇雅子君 村山内閣のときから、情報公開を徹底するという意味で審議会の審議内容の公開が進められてきました。しかし、研究会は結論が出るまで一切論点も含めて情報を公開しないという対応がなされておりますが、これは問題であると考えざるを得ません。少なくとも論点整理の内容を公開し、今はインターネットで各省庁もパブリックコメントなどを受けているような開かれた時代でありますから、広くさまざまな意見を聴取しながら結論に反映させるために誠実な対応が必要だと思いますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(牧野隆守君) 平成十一年四月二十七日に閣議決定されました審議会等の整理合理化に関する基本的計画に基づきまして、研究会については議事要旨を公開すること等により議事内容の透明化を図っております。さらに、来年四月に情報公開法が施行されますので、その趣旨も踏まえ、今後とも議事内容の透明性の確保に努めてまいりたい、こう考えております。
○大脇雅子君 審議会というのは大抵の場合、公開されて、議事録の、人はともかくとして、大体の論点などはわかると思いますので、研究会もできる限りそういう形で処理をしていただきたいと思います。
三十三分までで時間がなくなりましたが、ちょっとお聞きしたいのは、今女性の新卒者は、改正均等法第五条で募集における男女差別を禁止している、しかし何社就職活動をしても最終的には採用されないという実質的な差別を受けている現状というものが深刻に報告されております。これに対する労働省の見解とその方策についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(藤井龍子君) 改正均等法施行後につきましては募集についてはそのほとんどが男女不問に是正されておるわけでございますが、先生が今御質問いただきました採用の段階におきまして男女異なる取り扱いが行われているというのは残念ながら一部に残っておるようでございまして、このことが女子学生の就職が大変厳しいということの原因の一つであろうかとは認識しているところでございます。
私どもはかねてから、そういう女子学生が就職において差別的な取り扱いを受けることがないように、事業主の方々に対しまして募集、採用について女性差別を禁止している改正均等法の内容に沿った取り扱いが行われるよう法の周知徹底を図っているところでございます。
また最近、大変そういう採用で取り扱いが異なっているのではないかというような声も各方面から出ておるところでございますので、大学等の就職担当者課の方々からの情報収集に努めますとともに、女子学生の方々からの個別の御相談、あるいはアンケート用紙をお渡しいたしまして、それに具体的にどういうようなことがあったかというようなことを書いていただく、そういうことで実態把握に努めております。
その実態把握に努める中で、具体的に個別企業でこういうことがあったということがわかりました場合は、均等法に基づいて厳正な指導を行っておるところでございます。
○大脇雅子君 その指導というのはもうかなりの件数に上りつつあるのでしょうか。
○政府参考人(藤井龍子君) ちょっとその指導をこの女子大生に限って何件というふうには集計してございませんので、数字、ちょっとお答えできるような状況にはございません。
○大脇雅子君 それでは、また集計の結果を待ちたいと思います。
女性が職場で能力を十分に発揮できるための雇用環境整備の施策としまして、男女均等取り扱いの徹底ということが十分大切でありますが、具体的にこれからどのようにするのか、労働省の御意見を伺いたいと思います。
○政務次官(長勢甚遠君) 今御指摘の事項につきまして、労働省といたしましては、一つは、平成十一年四月から施行された改正男女雇用機会均等法に沿って、募集、採用、配置、昇進など雇用管理のあらゆる面において男女の均等取り扱いが実現するよう、引き続き企業に対する行政指導に積極的に取り組んでまいる所存でおります。
また、女性労働者と事業主の間の個別具体的な紛争について、女性少年室長の助言、指導、勧告や機会均等調停委員会の円滑な運営により、迅速な解決を図ってまいりたいと思います。
さらに、改正均等法において新たに設けられた男女均等取り扱いの実効性を確保するための企業名公表制度についても、必要に応じて活用するようにしてまいりたいと思います。
これらの施策を今後とも一層推進してまいる方針でおります。
○大脇雅子君 大臣にその均等取り扱いの徹底のための御決意を伺いまして、質問を終わります。
○国務大臣(牧野隆守君) 今、総括政務次官から具体的な我が省としての取り組み方について御説明いたしましたが、これらは当然といたしまして、私自身非常にぜひやりたいなと思っていますのは、きちっとやっていただいている企業を公表いたしまして、特別の表彰制度、こういう形で、ぜひ元気を出していただくような方法がとれないかということを、実は単にこれだけではなしに、企業として育業制度、介護制度等についても本当に模範となるようなことをどんどん前向きにやっていただく企業をやはり公表して、表彰させていただきたい。また、就職あっせんのときにも、この会社はこういうことで、例えば均等法の趣旨にのっとって積極的にやっておりますよと、こういうことも新卒の学生等の皆さんに説明できるようなこともぜひやってほしいということを実は事務当局にあわせて検討をしてもらうようにいたしております。
○大脇雅子君 終わります。
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