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第 147 国会報告
金融経済活性化に関する特別委員会
2000年5月8日 5号

保険業法・年金担保融資問題


○大脇雅子君 保険業法の改正について質問をする前に、今私が心を痛めているケースについて、一件お尋ねをしたいと思います。

それはお年寄りの年金などを担保にして行われる融資でございます。

一九九九年の六月三十日に、クレジット・サラ金対策協議会の事務局が年金担保融資の実態調査のアンケートをいたしました。一九九九年六月三日から六月三十日にかけて九十七件の被害のケースが寄せられております。

本来、年金というものは担保にすることができないということで、例えば国民年金法によりますと、その二十四条で「給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分により差し押える場合は、この限りでない。」というふうに規定されております。この特別の法律による場合というのは、年金福祉事業団から融資を受けるいわゆる年金担保融資を指しているのであります。

しかし、現在、やみ金融で年金を担保に融資をしている事例が九十七件寄せられた。その具体的な内容を見てみますと、ほとんどの場合、年金の振り込み口座を業者に新設させられて、通帳と印鑑を取り上げられているという事例であります。

七十代のひとり住まいの女性の場合は、市内の無登録業者に年金担保をとられ、暴力的な取り立ても受けていた。弁護士の法律相談で、受任弁護士が通知を出しても本人を追いかけるので、結局、証書の再発行手続をして解決した。

またさらに、年金を全部取られて、生活費として毎月二万円渡されるだけで、生活全般をむしろその債権者がコントロールしていた例もあります。

それから、借金を返済させるために老人を貸金業者へ連れていって年金担保で借り入れて、自分の生活費とその借金返済のため充ててきた。

これは年金だけではなくて原爆のいわゆる健康管理手当とかあるいは児童扶養手当にも及んでおります。

児童扶養手当の場合は、母子家庭で、振り込まれると、銀行口座のキャッシュカードを強制的に業者が預かって、期日が来ると返済金としてそこから引き落とすという事例が報告されております。

本来こういったことは全くの違法でありますが、そうした事例が多発しているということについて金融監督庁はどのような認識をお持ちか、お尋ねをいたします。

○政府参考人(乾文男君) ただいま先生御指摘になりましたように、国民年金法等におきまして年金等の受給権を担保とすることは禁じられているところでございます。

その後、私どもの貸金業法の方の話になるわけでございますけれども、実は、貸金業法のところには法律上その点についての禁止あるいは罰則ということはないわけでございますけれども、監督当局は監督に当たりましての指針といたしまして私どもで事務ガイドラインというのを設けております。

その際に、契約を締結するに際しては印鑑、預貯金通帳、キャッシュカード、運転免許証あるいは健康保険証、年金受給証等の債務者の社会生活に必要な証明書等を徴求するというふうなことをやってはいないかということを監督当局は業者を監督する際に十分見るということになっているわけでありまして、現在、貸金業者というのは三万ございまして、ほとんど都道府県の管轄でございますけれども、財務局あるいは都道府県におきましてそうしたガイドラインに沿ってこれまで対応してきたところでございます。

先ほど去年の六月の調査についての御指摘がございましたけれども、この問題につきまして平成七年ごろから関西方面についてそういうことが行われているという報道がございましたことから、大阪府におきまして特に平成八年三月ごろからそうしたことを十分念頭に置いた業者の指導を行ってこられたということも承知しておりますし、また大阪府以外の当局も先ほど申しましたガイドラインに基づき指導を行っているというふうに承知しているところでございます。

○大脇雅子君 貸金業法に禁止はないといいましても、ほとんどの場合、借用証書などを見ますと利息は年率三七・九六あるいは日歩十・四〇銭ということですから、ほとんど四〇%すれすれ、三九・何%のぎりぎりのところを貸しているわけであります。

厚生省の年金担保融資の返済の場合に、全額返済ということがあって、現在は年金の一・五倍まで借りられるんですけれども、返済途中に収入がなくなって生活が苦しくなるというのを防ぐのがねらいで、新規融資の場合から全額返済から半額返済まで選択制を認めるというシステムが導入されて、むしろ償還予定表を利用者に送付するサービスを開始したという形ですらあるわけです。

これはこの間「サンデープロジェクト」でも報道されておりまして、貸金業者が年金担保に融資しますという看板を堂々と出していて、そして業者の発言によりますと、銀行もどこも相手にしないお年寄りを我々が困った人を助けているんだというような発言をしているということでありまして、結局最終的にはほとんど貧困の底に陥れられ、あるいは相続人が全然知らなくて亡くなってから初めて発見されたという事例もあるわけです。

私は、金融監督庁に、それは都道府県の業者とはいいますが、これはもう法律で譲渡の禁止、差し押さえの禁止、担保の禁止というのは明白に決まっているわけですから、やはりきちっと取り締まりをしていただかないと、これは人権の問題ではないかというふうに思いますし、違法な事実を放任するということになりますので、金融監督庁としては今後この問題についてどのように対処されるおつもりか、お尋ねをしたいと思います。

○政府参考人(乾文男君) 先ほど年金担保のことだけお答えいたしましたけれども、貸金業者の行為が利息制限法あるいは出資法の上限金利を超えている、あるいは貸金業法の取り立て規制、暴力的な取り立てを行ってはならない等に触れております場合には、これは当然警察当局の対応というものが行われるべきものというふうに考えているわけでございます。

今の年金担保の点につきましては、国民年金法では確かに禁じられているわけでございますけれども、罰則がありませんことから、なかなか難しい問題でございます。さらに、それに加えまして、この四月一日から地方分権推進法の施行に伴いまして、都道府県の貸金業者に係る事務が都道府県の自治事務に移行いたしておりまして、国から指示とかそういうのをすることができなくなったという問題がございます。

私どもは、さはさりながら、都道府県からいろいろな御相談がありました場合には、こうした法令上の問題点、都道府県も十分にわかっておられるわけでありますけれども、そうした法令上の問題点、また国会でこういう御指摘がありましたことも十分お伝えして、都道府県当局におきまして適切な対応を行われるよう要請してまいりたいというふうに思っております。

○大脇雅子君 それは、暴力行為に触れている場合には取り締まるのが当たり前でありますが、私は基本的な年金受給権とか、原爆の、三万一千円なんですよね、その人たちの健康管理手当とか、母子家庭に支給される児童扶養手当、児童手当それ自身が被害に遭っているところを、自治事務だということで国がほうっておいていいのかということであります。

これは大臣にぜひ実態調査をして通達あるいは通達ができない場合は何らかの指摘をするなりして違法行為を取り締まるということが当たり前のことではないかと思うんですが、大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。

○政務次官(村井仁君) ただいま政府参考人から御説明をしたところでございますけれども、国民年金法等では禁止をしておりましても罰則がない、それで一方貸金業規制法の方ではその辺の手当てがない、こういう状態でございまして、私ども金融監督庁の立場では、執行官庁でございますので現行法令の適切な運用、執行を行うということはこれはもう当然でございますけれども、それを超えましてそこで規制すること、規制といいましょうか、何らかの処分をすることが権限として与えられていないということにつきまして処分をするのはどうもいかがなことか、ある意味では立法政策について申し上げるということになりますので、これはちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。(「悪徳業者を取り締まれ」と呼ぶ者あり)

○大脇雅子君 今指摘があるように業者それ自身を取り締まるとか、あるいは立法政策について金融監督庁の、大臣は法律家でもありますから、あるべき方向について御意見を伺いたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) これを担当しておりますのは金融監督庁でございますが、金融監督庁というのは、先ほど政務次官から御答弁申し上げましたように執行官庁でございまして、執行官庁として与えられている権限は残念ながら先ほど御答弁したことしかない。そうすると、それを超えて、今の措置が適正なものであるかどうか、こういうことになるかと思うんですが、その点は立法府で、適正なものであるかどうかというような御意見は差し控えたい、こう思っております。

○大脇雅子君 そういうお答えであるとすれば、まさにこれは立法政策の問題で、我々国会における法案の提案権をしてその法の穴を埋めるしかないということであるということで、我々としては皆さん方とともにこの点をぜひ対応させていただきたいというふうに思います。

ただ、こういう実態調査というのも権限はないんですか。やはり地方自治体しかないんですか。

○政務次官(村井仁君) 結局のところ、都道府県が直接貸金業者を一応自治事務として見ているということでございますので、私どもといたしましては都道府県から話を聞くというような、本当にまだるっこしい話でございますけれども、そういう形で進めるしかないということでございまして、しかしながら、こういう御指摘でございますから、それなりの私どもも努力はさせていただきたいと思っております。

○大脇雅子君 ぜひ実態を聞かれましてきちっとした対応を、やはり金融監督庁としてもでき得る限りぎりぎりの対応をしていただきたいと思うわけであります。

さて、それでは保険業法についてお尋ねをしますが、まず、第一火災に対する金融監督庁の業務停止命令が五月一日に出されました。このことについて御質問したいんですが、これは損害保険業界第一号の業務停止命令が出されたということであります。保険会社の健全性基準であるソルベンシーマージン比率が三月期はマイナス一六〇%という見通しとなっています。

昨年五月から集中検査を行われていたわけですし、一月より第一火災に対する検査を実施されていたということですが、全く経営改善計画や個別措置なしに業務停止命令が出たという点について、金融監督庁は事前にどのようにこの問題を把握しておられたのか、お尋ねをいたします。

○政府参考人(乾文男君) ただいま御指摘のように、第一火災に対しまして五月一日に保険業法第二百四十一条に基づく業務停止の命令を行ったわけでございます。その後、同日午後、保険契約者の保護に万全を期すために、保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分を行うとともに保険管理人の選任を行ったところでございます。

なお、当社の財務がこのように厳しい状況にあるということは、ことしの一月から私どもの金融監督庁検査部が入っておりました立入検査によりまして初めて判明したものでございまして、それ以前の段階、例えば昨年三月期の決算におきまして当社が公表しておりましたソルベンシーマージン比率は三三〇%ということで、早期是正措置の発動の条件でございます二〇〇%を上回っておりましたことから、早期是正措置は発動されていなかったところでございます。

私どもといたしましては、今回立入検査の結果が出ましたのが四月十日でございまして、その時点でこの状況を把握し、当社に通知いたしまして必要な対応を求めていたわけでございますけれども、当社は、今後の資本の充実に向けての方策を早期に得ることが困難であるとして、この五月一日の未明に当庁に対しまして業務の継続の断念を申し出てきたということでございます。

○大脇雅子君 ソルベンシーマージンが三三〇%ということを信用しておられたわけですか。なぜそれが三月期にマイナスの一六〇というようなことになって、相手が業務停止をしたいというのでああそうですかというようなことになるんですか。

○政府参考人(乾文男君) 私ども監督庁は保険会社に限りませず銀行につきましても適切な監督を行っているわけでございますけれども、この早期是正措置の発動の前提となりますものは、基本的にこの場合でございましたら保険会社が適切な資産査定に基づく自己査定を行うということが前提になっているわけでございます。そして、それを監査法人が適法な意見をつけて要するにかけ、それを総代会で承認してもらっているということでございます。

ただ、私どもはそれに満足しているということではございませんで、したがいまして、まさに今回、ことしの一月から検査に入りまして、約三カ月間の検査を経て四月にこのような状況を把握して、それで今回のような業務停止命令に至ったということでございます。

○大脇雅子君 四月十日に再建報告を出すようにとして要求されたわけですよね。それがどうして五月一日に業務停止命令になるんですか。その間どういういきさつがあったんですか。

○政府参考人(乾文男君) ちょっと舌足らずでございましたけれども、検査に入りました対象は、これは一月に入っておりますから、直近の決算でございます平成十一年の三月期の決算を対象にやっているわけでございます。平成十一年三月期の決算を対象にしまして、例えばBS、PLを見ましたところ非常に厳しい状況を把握されたというわけでございます。

ことしの四月十日に検査結果の通知を検査部からいたしますとともに、私ども監督部におきまして、この検査結果を踏まえて、しからば平成十二年三月期、まさに今の直近の時点でございますけれども、平成十二年三月期にどのようになっているのかということを報告を求めたわけでございます。その報告を求めましたところ、四月の二十四日になりまして平成十二年三月期も四百八十八億の債務超過になるという数字が出てきたものでございますから、その間若干のデュープロセスの期間を経て五月一日未明に業務停止命令を発動したということでございます。

○大脇雅子君 ともかく立入検査の権能もあり、モニタリングを充実するという義務も負われている金融監督庁が、全く早期是正措置を働かせることができずに事ここに至ったということについて、金融監督庁、大臣、どのように思われるんでしょうか。

○政務次官(村井仁君) 私どもといたしまして、この第一火災のケースと申しますのは、ただいま政府参考人からるる経緯を申しましたようなことで、会社が当初表示しておりました情報と実態とが非常に乖離しているということが検査の結果明確になり、そしてそれの是正方につきましていろいろ指示をいたしましてもきちんとした回答が結果的に返ってこなかった。そして、最後には業務継続ができないという決定を会社自体がいたしたということでございまして、私どもとしましては、一月の検査に入りました時点からは少なくとも私どもとして最善の努力をしたものと思っておるところでございます。

○大脇雅子君 こうしたことが起こる根本的な背景には、いわゆる損保、生保に通底する逆ざや問題があると思われます。銀行の次は生保の破綻だというようなこともあり、バブル期に高過ぎる予定利率で商品を大量販売したツケが回ってきたということがあります。

今現在、生保業界は深刻な販売不振と高水準の解約というのに見舞われていて、解約失効高が新規契約高を上回るということであります。逆ざやのいわば累積は十兆一千三百十四億円、平成四年から平成十年、になっているわけでありまして、平成二年から平成十年の間で約二倍の逆ざやが年々増加してきている、全く解消されていないということで、一体全体どのようにこれを受けとめておられるのかということと、それからこの逆ざやを解消するために商工ローンや町金融などへ生保や損保からどれくらいの融資がなされているか、実態についてお尋ねをいたします。

○政務次官(村井仁君) 時間の関係もございます、端的にお答えさせていただきます。

平成十一年三月期で生保各社二十七社におきまして合計一兆六千四百億円の逆ざや額、こういうようなことになっておるわけでございますが、各社とも経営の効率化の推進あるいは自己資本の充実、それから経営基盤の強化、それから資産構成の組みかえでございますね、こういったことをやりまして経営の健全性の確保のために一層の努力を重ねている、このように承知しているところでございます。

それからもう一つ、商工ローンへのお話がございましたけれども、貸金業者への貸し付け、このような形で私どもが把握している限りで申しますと、平成十一年三月末で、貸金業者でございます、これは商工ローンということではなくてリースとかいろいろ入っておりますが、貸金業者に対しまして五兆二千億円、貸し付けに占める比率が九・七%、こんなようなところでございます。

○大脇雅子君 時間が参りましたので、中途ですがこれで終わらせていただきます。



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