第 147 国会報告
金融経済活性化に関する特別委員会
2000年4月28日 4号
ペイオフ解禁延期
○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。
ペイオフ延期関連についてお尋ねをいたします。
我が党は、この間の住専処理問題に対する取り組みや公的資金注入処理を可能とした金融機能安定化法等により破綻金融機関の処理のために講じた措置等を考えるとき、今回提起されているペイオフ解禁の凍結については多くの問題をこれまで衆議院段階から指摘してまいりました。
大臣のお答えによりますと、信用組合等の早期健全化を達成する、そのために一年延期するということでありますが、この分野だけではなくて全般的にペイオフの解禁を凍結するということについては護送船団方式の復活ではないかという批判もあり、全般的に延長することの意義について改めてお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) ペイオフを一年延期しましたことの直接の理由は、信用組合がこのたびこの新年度から国の検査のもとに入ってくる、そうであれば、これも我が国の金融システムの末端ではあるがそれに加えて考えることがいいだろうという判断であったわけですが、ただいまのお尋ねは、仮にそのために信用組合に対して一年ペイオフを延期するということであったにしても、その他の金融機関については予定どおりすることが妥当ではなかったか、そこはどう考えたのかというお尋ねでございます。
この点は、与党各党の議論の中でも、また私どもの党の中でもいろいろ議論がございました中で、一つは、ある種の金融機関についてはペイオフの解禁が一年で成立する、信用組合だけはもう一年まだあるということによる預金の移動、いわゆるモラルリスクのようなものがいろいろ生ずるのではないかと。しかし、そうは言っても大銀行からどこかの信用組合に預金が移動するということは本当にあるだろうかとか、いろいろ議論がございましたけれども、最終的には実は、信用組合の代表者の人たちがヒアリングに出てこられまして、自分たちだけ別に扱われることは実は自分たちは賛成できませんということを言われたわけでございます。
それは理由はいろいろあったのだろう、私は直接おりませんでしたが、いかにも自分たちだけが何か悪い方に差別をされると申しますか、まだ悪いんだなと言われることは自分たちにとって決して得策ではない、こういうことであったらしゅうございまして、ためを思って信用組合だけ一年延ばしてほかはもういいじゃないかということについては、当事者である信用組合がむしろ反対をしたということが現実の一番直接的な関連でございました。
私どもとしては、それがあるなしにかかわらず扱いを異にすることはやっぱり問題だろうと、やるとすれば一緒でないといけないのではないかと思っておりましたものですから結局そうなりましたけれども、当事者の方々はそう考えておられたという事実はございます。
○大脇雅子君 二〇〇一年四月にペイオフを解禁するというふうに決められたのは、問題銀行の不良債権の処理などがその時点では終わるだろうということが大きい原因であっただろうと思うんです、二〇〇一年四月にやるということは。
そうしますと、他の銀行、信用組合のほかは健全な銀行として不良債権処理が行われたのか、既に行われたという認識に立っておられるのかということをもう一度お尋ねしたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) マネーセンターバンクスを初め他の銀行については、もともとそういう要望もございませんでしたが、私ども見ておって、まず完了しておるということを申し上げて間違いないと思います。信用組合の話が出てまいりましたときに、一部の第二地銀あるいは信用金庫、一部でございますけれども、それなら自分たちもということを言われたところはありましたけれども、大勢としてはもうまず問題ないと考えていいような状況であったと思います。
○大脇雅子君 そうしますと、一年延長すれば信用組合あるいは信用金庫関係その他はどのような再編強化が図られるかというふうに見通しておられるのか、それ以上の延長は必要ないと考えておられるのか、改めてお尋ねします。
○国務大臣(宮澤喜一君) これは後ほど谷垣大臣からもお答えいただけると思いますが、まず信用組合につきましては、現実には帳簿等がそろいまして検査が実態的に進むのは六月ごろからではないかと思っておりますけれども、私どもが考えておりますのは、検査になりまして、その結果、どうもリタイアしてもらうしかないというものもあるかもしれません、また早期是正を必要とするものもあるかもしれない、また資本的な援助をした方がいいというものもあるかもしれない。全体が三百絡みと聞いておりますので、今申しました三つの分類で、さあ、どれだけ破綻になりますか、これからのことでございますが。
いずれにしても、そういう処置をいたしますと、六月から始まりますとちょっと来年の三月にはその処置のところまで間に合いかねるということが延期した理由でございますので、したがいまして一年以上延期する理由はございません。そういうことをいたすつもりもまたございません。
○大脇雅子君 協同組織金融機関が、公的資金の注入と優先出資証券が発行できていくということで、公的資金の注入とあわせて優先出資証券の発行ができるということになっております。自力による資本調達がより広がるということでありますが、これの期待は果たしてそれにかけられるかという議論もあり、こうしたことの効果ということについてどのようにお考えでしょうか。
○政務次官(村井仁君) 御案内のとおり、協同組織金融機関のうちで、例えば信用組合の中央機関でございます全信組連と私ども呼んでおりますが、これでございますとか、あるいは信用金庫連合会でございますとか、こういう中央団体につきましては既に優先出資証券を発行することが認められております。
しかし、個々の協同組織金融機関につきましてはそれがないわけでございます。結局メンバーからしか出資を得ることができない。こういうことで、非常にその資本の充実が難しいという環境でございますので、今般優先出資法の改正によりまして会員以外からも広く受け入れることができるということになりますと、これは個別の例を挙げるわけにはまいりませんけれども、信用組合の中にもかなり体力のあるところもございまして、相当な信頼もある、そういうところにはどんどん出してやろうというところもございましょうし、あるいは信用金庫の場合でも相当な規模のところもございます、能力があるところもございまして、こういうところは公的な資金に頼ることなく自力で相当な調達が可能なところがあるのではないか。さような意味で、私どもこれには大いに期待しているところでございまして、この効果は公的資金の投入の可能性とあわせまして非常に地域に対して責任を持ちます金融機関の体力強化のために役に立つと、このように期待しておるところでございます。
○大脇雅子君 整理統合が進む中で新たに破綻処理ということが問題になりまして、早期是正措置という一つの大きな武器を持っているわけでありますが、しかし、これが金融機関からの申し出が条件となっているということで、もしも経営者が事業存続のみを企図していろいろな工作をして行動すれば破綻の認定がおくれるのではないかということですが、この改正の趣旨を生かすために積極的などのような取り組みをなされるのか。とりわけ受け皿探しというのがこれまでの銀行処理を見ていると何かちょっとおくれがちであるというふうに思うわけですけれども、そういう点についてはどのように施策を強化していかれるのか、お尋ねいたします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今先生お尋ねの件は、私どもからいたしますと、今回の改正の一つの目玉と申しますか、まさにポイントだろうと思うんです。それで、金融機関が破綻した場合あるいは財務状況が悪化して回復の見込みがなくなった場合に、預金者の損失とかあるいは預金保険の負担をできるだけ小さくしていくためには、早期に破綻処理を開始するということが一番必要だろうと思います。
それで、今回の改正では、債務超過とか預金等の払い戻しの停止のおそれという事態に至っていない場合でも、一番自分の財務状況を知っている立場にある経営者から債務超過に陥るおそれがあるというふうに申し出があった場合には、破綻処理を開始しよう、あるいはつまり金融整理管財人の選任等を可能にしよう、こういうことでございまして、今までに比べると選択肢を広げたということだろうと思います。
しかし、これだけで全部うまく機能するわけではございませんで、まさに今委員がおっしゃいましたように、早期是正措置それから平生のモニタリング、こういうものを活用して早期発見、早期治療ということをしていかなければうまく機能しない、それは当然のことだろうと思います。
それから、今おっしゃったなかなか受け皿探しが進んでいないというのは実はこの金融整理管財人を派遣した場合あるいはしない場合でも一番私ども頭が痛いところでございまして、これは今の委員のお尋ねに的確にお答えをするのはなかなか難しいんですが、私どもとしてはあらゆる知恵を絞ってあるいは人脈等もたどって探していかなければいけないなと思っております。
○大脇雅子君 その一つ、そうした制度を効果的に動かすためには検査制度、検査の体制ということが重要であろうかと思いますが、見ていて質量ともに弱いのではないかというふうに思われるんですが、この点についての強化措置などについてはどのように御検討されているんでしょうか。
○政務次官(村井仁君) 全く御指摘のとおり、検査の問題は非常に重要でございます。
私どもといたしましては、金融監督庁の検査部の定員につきまして、まず国家公務員全体につきましては大変厳しい環境でございますが、御理解をちょうだいいたしまして、平成十一年度におきまして八十七名、平成十二年度におきまして七十二名新規の増員をお認めいただきまして、検査部の定員三百十九名ということになっているところでございます。
さらには、こうしてせっかくちょうだいいたしました定員、増員を大いに生かしまして検査を充実させていくということでございますけれども、これによりまして私どもとしましては、主要行につきましては一年に一回くらいは大体検査できる、それから地銀、第二地銀、保険会社等につきましては一、二年に一回、証券会社については二年に一回程度、その他の業態につきましても大体三年に一回程度は検査できる、こんなような体制ができていると思っております。
さらには、検査マニュアルというのをはっきり表へ出しまして、それでこれを活用させていただいている。
さらには、民間専門家を大いに登用いたしております。これは、公務員の経歴のある者だけではなかなかついていけないいろいろな新しい事象も出てまいっておりますので、それに対応するための手段でございます。
それから、もう一つ工夫しておりますのは、検査につきまして部門制をとりまして、例えば保険の方を専門にやる部門とかいうようなものをつくりまして、いわば検査の専門性というのを高めておる。これは大変な工夫でございまして、非常に効率的に検査が実行できるような体制になっておる。
さらには、検査は決して何といいましょうかばらばらであってはいけませんから、検査の体制を統一するという観点から、検査指導官というのを新しく設けまして、検査の質ができるだけ均質になるような努力をいたしておる。
さらには、最近のコンピューターの進歩によりまして、そのシステムでかなりモニタリングがいろいろできる。民間からもらいました電子的情報を、私どもの方で財務データ等をもらいまして、これを中で分析する、こんなこともやっておりますし、さらには海外のいろんなノウハウもいろいろな情報交換によりまして手に入れまして、これを使いまして有効な検査をやっておるということで御理解をいただきたいと存じます。
なお、今後ともよろしく、なおなお足りないところでございますので、御支援を賜ればありがたいと存じます。
○大脇雅子君 ぜひ検査体制を充実させていただいて、しっかりと早期是正措置が働くようにお願いをしたいと思います。
ペイオフ解禁後であってもシステミックリスクというのに対する例外措置ということが決められているわけですが、このシステミックリスクが起こりかねない緊急時というのは預金の全額保護などの例外措置が設けられるということですが、この発動基準というのが非常にあいまいで、金融危機対応会議の裁量に任せられているようでありますけれども、しかし一方、退場させるべき金融機関が整理をされてしまえば天変地異以外には例外措置が働く余地はないということになると、何か非常にお守り的な気分もするわけですが、しかし、これをやる場合には国民にどう納得をしてもらうかということが大切になると思うわけですけれども、この発動基準についてどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。
○政務次官(林芳正君) お答えを申し上げます。
システミックリスク規定に関して、どういった場合に発動されるのか、またそのときの基準についてどういうデュープロセスになるのかということだったと思いますが、今委員が御指摘がありましたように、この第七章におきまして、内閣総理大臣は、例外的な措置が講ぜられない場合には、我が国またはその金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときには、金融危機対応会議の議を経て当該措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことができると法案に書いてあるわけでございます。
そこで、あいまいではないかということでございますが、個々のケースごとに内閣総理大臣が主宰をされます金融危機対応会議の議を経た上で判断をするということになっておりまして、さまざまな局面が想定されるものですから、あらかじめこれとこれと限定的に決めておきますと、かえって対応が困難であるということを御理解いただきたいと思います。
そう申し上げた上で、例えば、ほかの金融機関の連鎖的な破綻が発生するような場合とか、連鎖的にほかの金融機関の資金繰りが困難となる場合、もしくは大規模な貸し出し抑制や回収等資産の圧縮を進める動きが生じるおそれがある場合等で、こういうように信用秩序が混乱をしてまいりまして我が国もしくはその地域の金融機能が不全に陥ると、こういった場合が想定されますが、もちろんこれに限定をするという意味ではなくて、こういった場合を含めてそういう必要が生じた場合にはそういう手続でもってやるということが定めておるわけでございます。
そして、今申し上げましたように、内閣総理大臣が判断をするということでございますし、その後この認定を行ったときには内容を国会に報告するということも規定をしておりまして、極めて厳格な手続で国会にも報告をされて、また公表されることによって国民の皆様にもこれをきちっと御報告をするということになろうかと存じておるところでございます。
○大脇雅子君 そうすると、具体的にその発動基準というものはどんなところ、どう働くんですかね。何かちょっと、どういうことをイメージされているのか。
○国務大臣(宮澤喜一君) たまたま我が国の場合、この数年非常な金融危機がありまして、公的資金の導入をしたり、あるいは預金のいわゆる無制限な政府が保証をいたしましたものですから、どう申し上げたらいいんでしょうか、比較的お若い方はこれをごらんになってまた同じことがすぐにあるような印象を持たれるということを私はこのたびの国会の質疑応答を通じて感じましたが、先生にはおわかりいただけると思う意味は、昭和の初めの恐慌みたいな、ああいう状況に発展しかねないようなことが起こりましたときに、我が国では今緊急勅令というようなこともできませんし、これに対応する法的な手段がほとんどないような状況でございますので、そういう場合を想像していただくのが私は一番恐らく合っているのではないかと。
したがいまして、そうしょっちゅうあることではないということになりますが、あらかじめこれを書いてみようとしますとなかなか上手に書けないというところに、むしろそう滅多にないことだという感じを持つのでございますが。したがいまして、具体的に書けませんので、総理大臣が特別の会議で諮って、そして決定をして、国会に報告すると。非常に重い手続を加えておりますから、そうそう起こることではない、昭和から七十年でございますか、まあ七十年に一遍あってもらってもむしろ困るというような事態を考えております。
○大脇雅子君 よくわかりました。
それでは最後に、時間が迫ってまいりましたので、生命保険契約者保護機構の財源策について一点お尋ねをいたしたいと思います。
今次の改正案によりますと、保護機構の借り入れに係る政府保証の恒久化及び平成十五年三月までの国庫補助の可能性ということが決まっているわけですが、この保護機構というのは決済機能を持たないということから、生保に対する公的資金の投入についてはさまざまな問題があると考えられます。
例えば、九千六百億円の規模で果たしてセーフティーネットとして妥当なのかということであります。条文を見ますと、見直し規定もあります。どのような財源策についての議論があったのか。財界といいますか業界は追加負担というものはしないというようなことを言っているということもありまして、この保護機構の財源対策がしっかりしていないと、これから大きな生命保険その他の保険業界の再編が行われますと、非常に契約者の不安が増すというふうに考えられるわけですが、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 冒頭に林政務次官から五千億円という説明を申し上げましたが、既に使ってしまっておりまして、それを今回政府もひとつするから業界ももう一遍というようなことでここまで来ました。
ただ、今見ておりますと、万一のことが起こりました場合に、これから業界が毎年毎年の金を積んでいきましても、なかなか完全に対応できないことがあるかもしれない。あるかもしれないときは、今業界の負担が本当に精いっぱいに見えますし、正直申しましてこういう非常に低い金利になりましたので、各社とも自分の責めに帰すべからざると言っては甘過ぎますが、客観状況の変化で非常に経営が苦しくなっておるということがございますから、各世帯の九割までが頼っておる保険についてはやはり政府は場合によっては援助に出なければならないのではないか。ただいまのところ将来のことをこれ以上はコミットいたしておりませんけれども、実際にそういうことが起こりますと、やはり政府としてはいろんな意味で保証の規模であるとかあるいは場合によりまして財政支出であるとかということを考えざるを得ない事態になるのかもしれない。これは、なると申し上げておるのではありませんで、なった場合にはかなり業界の負担能力の限界に来ているということを政府は認識しておりますということを申し上げたらよろしいかと思います。
○大脇雅子君 最後に、やはり生活上の事故が保険化し、そしてまた事故が多様化するという二十一世紀の中で、この保険会社の整理統合、あるべき姿というのに対しては私ども非常に大きな関心を寄せざるを得ません。時間がございませんので、またの機会にさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
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