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第 145 国会報告
本会議
1999年5月24日

派遣法代表質問


○議長(斎藤十朗君) 大脇雅子君。

  〔大脇雅子君登壇、拍手〕

○大脇雅子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、議題となりました職業安定法の一部を改正する法案及び衆議院で修正を施された労働者派遣法の一部を改正する法案について、小渕総理大臣、甘利労働大臣にお尋ねいたします。

今回の労働者派遣法の一部を改正する法律案は、労働市場の規制緩和及び失業対策として、労働力の需給調整システムの適正化を進めることを目的に、港湾運送業務、建設業務、警備業務及び当分の間製造業務を除いて、派遣労働のネガティブリスト化を柱としています。

派遣労働のネガティブリスト化は、コストの削減と雇用調整弁的に派遣労働を活用する道を開き、正規雇用の労働者を派遣労働者に代替していく危険性があります。別会社による従業員の派遣労働者化とともに、派遣活用事業場における派遣労働者の割合は高率化しつつあり、直接雇用による経費負担を回避するための方策として、現在直用のパートタイム労働者の派遣化が予想されます。

改正法案は、派遣労働を臨時的、一時的な労働需要に対応するためのテンポラリーワーク型派遣へ統一することを目的とすると言いながら、その見直しは三年後に見送られ、派遣労働を臨時的、一時的な活用に厳しく限定する措置は、派遣期間の一年を除き、何らとられておりません。派遣の業種やポストを臨時的、一時的なものに法文上限定するなど、実質的な歯どめが必要と考えます。

そこで、総理大臣にお尋ねいたします。

正規労働者の派遣労働者による代替は起こり得ないと予想しておられるのでしょうか。また、今回の職安法、派遣法改正により雇用の創出効果をどのように試算しておられるのでしょうか。

また、現行の労働者派遣法は、一九八五年以来、専門的領域や経験を生かして働く雇用として定着してきたことから、通達で二回までの更新が許され、派遣労働者の賃金はそれなりの水準を維持してきました。派遣がすべての業務に無制限に拡大する中で、賃金や労働条件が大幅に低下することは必至です。専門的・技術的職種の派遣のあり方について将来どのように位置づけるお考えでしょうか、労働大臣にお尋ねいたします。

第二に、派遣労働は、派遣元の雇用関係と派遣先の指揮命令関係とに対応して、使用者責任を雇用責任と使用責任に分離しています。しかし、派遣先における指揮命令関係は、労働者に対する業務命令という労働契約の基本的部分を占めており、労働の継続関係を考慮するとき、派遣先の責任を明確化し、派遣労働者の一層の権利保護が図られなければなりません。その点において今回の改正と修正はいまだ不十分であります。

最も重要なことは、派遣労働者の人権保障として派遣労働者の適正な労働条件の確保を図ることです。

派遣元は、派遣労働者の登録や派遣決定の平等取り扱いに加えて、派遣労働者の賃金や労働条件について、その就労の実態、派遣先における同種同等の業務に従事する通常の労働者の賃金や労働条件との均衡を考慮して派遣料金を取り決め、派遣先は、業務の指示や配置及び労働環境について、派遣労働者と同種同等の仕事をする通常労働者との均衡を考慮すべきだと考えます。

生産性のみに力点を置き、人件費や雇用管理費の節減のためにのみ派遣労働を利用すれば、公平平等な社会を構築するという二十一世紀の日本社会に、働く人たちの所得格差とさらなる差別を持ち込むことになります。多様な雇用形態で働く労働者が不合理な差別を受けることのない均等待遇の原則の確立は重要な課題であります。この点に関する総理及び労働大臣の御所見を伺います。

加えて、労働者派遣の契約当事者は、業務の遂行上、性別または年齢に係る事項が不可欠であると認められる場合を除き、派遣労働者の性別または年齢に係る事項を定めるべきではないと思います。特に、職業紹介についても不合理な年齢差別が禁止されるべきです。高齢化社会においては能力と意欲によって働き続けられるエージレス社会の構築が不可欠であると考えますが、総理の御見解を伺います。

次に重要なことは、派遣が一年を超えた場合の派遣先の雇用責任の問題です。

派遣労働者が派遣先に雇用されることを実現する措置として、労働大臣の雇い入れ勧告と企業名の公表制度が導入されました。この勧告の法的要件はどのようなものですか。違法派遣と雇い入れ勧告を監視する機関はどこでしょうか。どのように一年を超えた違法な雇用の存在をチェックしていくのでしょうか。企業名公表の要件についても伺います。

また、その法的関係、すなわち民事的効力はいかなるものと解されますか。私は、一年を超える労働者派遣は、事実上の就業関係を重視して、派遣先と派遣労働者の間で法的に労働契約成立のみなし規定、または契約成立の推定が働く明文規定を置くべきであると考えますが、いかがですか。単なる行政上の雇い入れ勧告と企業名公表という行政指導のみで、派遣先に対する派遣労働者の雇用の義務づけがどれほど効果があるか疑問だからです。労働大臣にお尋ねいたします。

第三は、プライバシーの保護についてです。

容姿におけるランクづけなどの九万人の派遣労働者の情報が流出した事件は、重大なプライバシー侵害として社会を驚かせ、注目を浴びました。しかし、今回の改正では、派遣元に対しては規制がかかっても、派遣先の規制は不十分です。まず、派遣元は、業務と合理的関連のない情報を申告させ、第三者から収集することを禁止すべきです。例えば、年齢、家族関係、本籍、医療情報、容姿等であります。また、派遣元から派遣先へ提供される個人情報の取り扱いについても業務との関連性が重視されるべきであり、労働者の個人情報の開示請求に加えて、修正、削除を労働者の請求権として規定し、派遣先が持つ情報に関しても徹底した保護が必要と考えます。労働大臣、いかがでしょうか。

第四に、我が国では事前選別、適用対象業務を超えた業務命令やセクシュアルハラスメント等、労働法上の責任を回避するために派遣を活用しながら権限の逸脱や乱用が目立っています。例えば、派遣契約の中途解約の場合の取り扱いや派遣先の適切な就業環境の維持のための措置等、派遣元と派遣先の連帯責任を強化する考え方が世界の流れとなりつつあります。今回の改正法案の実効性を高めるために、派遣先の使用者としての責任の強化が最も必要なのです。労働大臣にお伺いします。

第五に、登録型派遣を取りやめて常用型にすべきだという意見があります。登録型派遣の不安定さが権利侵害、差別的労働条件の原因となっていることはこれまでにも強く指摘され続けてきました。だからこそ、将来廃止すべきと考えますが、いかがですか。

最後に、ILO百八十一号条約は、派遣や民間職業紹介の自由化促進のみを目的とするものでなく、労働者保護のルール化とセーフティーネットの徹底を求めています。この視点から改めて今回の改正案を見てみますと、改正案は派遣先、派遣元の事業主に使い勝手のよい労働者を供給する制度として機能し、一生の生活設計もままならぬ不安定雇用の創出が図られて、労働者の権利に深刻な影響を及ぼすでありましょう。また、民間職業紹介の弊害から労働者を保護するという歴史的経過を踏まえるとき、公共職業安定所が果たす役割と権限が改めて問われていると思います。

これらの問題をめぐる労働政策に関する総理の御決意を伺って、私の質問を終わります。(拍手)

  〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

○国務大臣(小渕恵三君) 大脇雅子議員にお答え申し上げます。

正規労働者の代替等について、まずお尋ねがありました。

今回の改正により新たに労働者派遣事業の対象となる分野につきましては、派遣期間を一年以内に制限し、違反した派遣元に対し改善命令、罰則を適用する等の措置を講じておりまして、さらに衆議院の修正によりまして派遣先に雇い入れ勧告を行うこととされ、これらの措置の適切な運用により常用雇用の代替は十分防止できると考えております。

また、雇用創出効果を具体的に見通すことは困難でありますが、本改正は労働力需給のミスマッチの解消に資するとともに、多様な就労機会の拡大が確実にもたらされるものと考えております。

派遣労働者と通常の労働者との均衡についてお尋ねであります。

賃金等の労働条件につきましては、派遣労働者と派遣元事業主との間で決定されるものであり、さらに、我が国の賃金制度は勤続年数、年齢、学歴等が大きな決定要素になっていることから、派遣先の正社員との均衡を考慮した賃金とすることにつきましては、労使のコンセンサスの面から困難であると考えます。

エージレス社会についてお尋ねがありますが、急速な高齢化が進展する中で、高齢者がその能力と意欲に応じて働き続けられる社会を構築することは、高齢者にとりましても、活力のある経済社会を築いていく上でも大変重要な課題であります。このような社会の構築に向けまして、引き続き努力してまいる所存であります。

派遣労働者による常用代替の防止等についてのお尋ねでありましたが、新たに拡大される業務の派遣期間は原則として一年以内に制限し、これを担保するための措置を講じております。また、公共及び民間職業紹介機関の連携の強化等を図りますとともに、民営職業紹介事業についても秘密の漏えいに対する罰則規定を新設するなど、労働者の保護を十分図ることといたしております

残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

  〔国務大臣甘利明君登壇、拍手〕

○国務大臣(甘利明君) お答えいたします。

まず、専門的・技術的職種のあり方についてお尋ねがありました。

今回の改正法案におきましては、専門的な知識、技術、経験等や特別な雇用管理を必要とする現行の二十六の業務につきましては、既にその業務において就業している派遣労働者の雇用の確保及び専門的な能力の活用の観点から、引き続き現行の枠組みを維持することといたしております。

将来的には、専門的業務に関する制度のあり方について、改正法施行三年経過後に労働者派遣法の規定について見直しを行う中で必要な検討を行ってまいりたいと思っております。

次に、派遣労働者と通常の労働者との均衡についてのお尋ねであります。

先ほど総理から御答弁がありましたとおり、我が国の賃金制度との関係や労使のコンセンサスなどの面から困難であるというふうに考えておりまして、派遣労働者の能力開発や派遣先での適正な就業の確保を通じて労働条件の向上を図ってまいりたいというふうに考えております。

次に、雇い入れ勧告の実施条件についてお尋ねがありました。

この条文は衆議院の修正によって追加されたものでありますが、条文によりますと、まず一年を超えて派遣を受け入れている場合、次に派遣労働者が派遣先への雇用を希望している場合等が規定されているところであります。さらに、具体的な運用については今後の検討課題であるというふうに考えております。

違法派遣や雇い入れ勧告に係る監督についてのお尋ねがありました。

違法派遣に対する許可の取り消しであるとか雇い入れ勧告等についての事務は、基本的には公共職業安定所が行うこととなります。今回の改正によりまして、公共職業安定所における苦情処理や違法事案の申告についての規定が設けられていることから、この適切な運用を図るとともに、定期監督や臨検監督を的確に実施することによりまして、一年を超えた違法な派遣等を厳格にチェックしてまいりたいというふうに考えております。

さらに、雇い入れ勧告に従わない場合の公表の要件については、衆議院の修正によって追加されたものであり、具体的な運用については今後の検討課題であるというふうに考えております。

次に、雇い入れ勧告についての法的関係、民事的効力についてのお尋ねがありました。

勧告は、派遣労働者が派遣先に雇用されることを希望する場合には、派遣先に対して雇い入れるよう勧告をするものであります。

実際の例として、一年を超えて就労していて、派遣元との雇用契約は終了しているケースにおいては、派遣先との雇用関係が成立していると解釈される場合もあると考えられますが、みなし雇用であるとかあるいは雇用契約成立の推定が働く明文規定を設けることについては、我が国における法制度のもとにおいては困難であろうというふうに考えております。

続きまして、プライバシー保護についてのお尋ねがありました。

今回の改正によりまして、派遣元はその事業目的の範囲内で派遣労働者等の個人情報を収集、保管、使用する旨の規定が設けられるところでありますが、この収集できる個人情報の具体的な内容や、派遣元が派遣先に提供することができる個人情報の具体的な内容並びに派遣労働者による個人情報の開示、訂正等につきましては、中央職業安定審議会の意見を聞いて、指針におきまして具体化してまいりたいと考えております。

次に、労働者派遣契約の中途解約の取り扱い等についてのお尋ねでありますが、派遣先の責めに帰すべき事由による中途解約については、衆議院の附帯決議を踏まえまして、派遣先は派遣元に対し派遣労働者の三十日分以上の賃金に相当する損害賠償を行うべき旨を指針に明記することと、また派遣先における適切な派遣就業の確保についても、指針においてその内容の一層の具体化、明確化を図ることを考えております。

最後に、登録型派遣をやめて常用型にすべきとの見解についてのお尋ねがありました。

仮に登録型を認めないということにいたしますと、希望する日時であるとか職場において、みずからの専門的な能力や経験を生かして働きたいとする労働者及び専門的な業務分野の即戦力となるような人材を期間を限って臨時・一時的に確保したいとする企業のこの両方のニーズにこたえることができなくなりまして、このような労働者の雇用機会を失わせることになるとともに、労働力需給のミスマッチの解消が困難となりますことから、適当ではないというふうに考えております。

以上です。(拍手)

○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。


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