第 145 国会報告
労働・社会政策委員会
1999年3月23日
派遣法・職安法改正ほか
○大脇雅子君 今回、雇用促進事業団から雇用・能力開発機構へと業務が承継されたわけですが、その際、業務の精査を行ったと言われるわけですが、住宅の建設、管理運営の事業のほか、能力開発事業に関してはどのような業務の精査をなされたのか、お尋ねをいたします。
○政府委員(渡邊信君) 職業能力開発短期大学校を職業能力開発大学校に再編するに当たりまして、今後三校の短期大学校を廃止いたしますとともに、職業能力開発促進センター、いわゆるポリテクセンターと称しているものでございますが、これにつきましては全国的なバランスも考慮しまして再配置を行うということで、六カ所のセンターを廃止することとしているところであります。
○大脇雅子君 大学を開発大学校へしていってさらに専門性を高めていくということですが、労働者の職業能力の開発、向上を図るというためには、民間における取り組みとの関係をどのように考えられているのか。例えば、今までの職業能力の開発は主として企業のOJTによって、いわばその社内の教育訓練ということで労働者の職業能力が開発されてきた、そのために今一番問題になっているのは、そうした企業内における職業能力の訓練というものに対しては、非常に汎用性がない、あるいは一貫性がない、あるいは包括性がないという点で大きな問題を私は提起しているのではないかと思うわけです。とりわけ、資源のない日本では人的資源というものがまさにいわば経済の活力の基本的なところにあるわけですが、そういう民間に任せていては職業能力訓練の実施が期待できない分野というものもあるのではないか。したがって、国みずからが積極的に職業訓練の実施に取り組んでいくべきだということがいよいよこの新しい時代には重要ではないかというふうに考えるわけですけれども、こうした民間の職業訓練、そして国みずからが行う積極的な職業訓練の問題の関係をどのように労働大臣はお考えか、お尋ねいたします。
○国務大臣(甘利明君) 職業能力開発における国と民間との役割分担、これをどうすみ分けあるいは連携を図っていくかということは、御指摘のようにとても大事な問題だと思います。
私もいろいろ頭を悩ましておるんですが、まず、国は職業紹介と失業給付、それから職業訓練、最低限のことはやってあげなくちゃならない。職業訓練も無料で失業者に最低限のことはやらなきゃならない責任が国にあると思うんです。
それが前提なんですが、どういうすみ分けを民間とするかということを考えますと、例えばいろんな多額の設備投資が必要なところというのはなかなか民間ですぐにいろいろ対応もできないでしょうし、特に大きな設備機械が必要であるというようなところ、その辺は国がそういう装置のもとに対応していかなければならないだろうなと。それから、先導的にいろいろやっていく分野もあると思うんです。
民間は、では何をするかといえば、今までもそうですし、これからもそうだと思うんですけれども、ホワイトカラー部分でそう過大な設備投資を要しないで取り組める分野について取り組んで今までもこられたし、これからもいくのでありましょうし、それから相互に協力をするという分野では、委託訓練というのがあると思います。民間の能力を活用して委託費を払ってやってもらうと。
ですから、公がやる部分、民間がやる部分、両者が協力してやる部分、いろいろな組み合わせで遺漏なきを図っていくべきなんだろうなというふうに考えております。
○大脇雅子君 三月十一日の日経新聞の記事によりますと、首相直属で競争力会議というものをつくりたい、これはアメリカ大統領産業競争力委員会というようなものに似せて、これから製造業の体質改善と生産性向上を目指して、各閣僚や日経連のさまざまな会長や社長とともに供給サイドの改革の断行を要請すると。これは経済戦略会議の最終答申を引き継いでその実行機関と位置づけるというような非常な重大な問題が出ていると思いますが、この競争力会議というのは、今具体的には既に計画されているんでしょうか。その政府側委員の顔ぶれには労働大臣も入っておられるということが報道されておりますが、お尋ねをしたいと思います。
○国務大臣(甘利明君) まだ確定的な日程は私どもの方に来ておりませんけれども、恐らく月内に報道されているメンバーで開かれると思います。もちろん私もそのメンバーの一員でありますから、出席をし、思うところの発言をさせてもらいたいというふうに思っております。
○大脇雅子君 そうしますと、これは技術開発戦略というふうにも報道されているわけですけれども、この会議のいわば方向性というか、どこに焦点があるというふうに伺ったらよろしいんでしょうか。
○国務大臣(甘利明君) まだ中身について具体的にこういうことをやるという話はおりてきておりませんのでわからないんですが、要するに、供給サイドの競争力をつけていく、そのためにいろいろな構造改革を行っていくということに関して議論とか提言とかがあるんだというふうに思っております。
○大脇雅子君 私がこれを伺うのは、「雇用の移動を円滑にするために民間の職業訓練制度を充実する財政措置などを政府としても急ぐ。」というふうに書かれているということになりますと、言ってみれば、雇用の流動化がリストラ支援策のように利用されていくということとともに、また職業訓練の軸足が民間に移動していくということでは、公的な職業訓練を国としてきっちりと位置づけるということに対して危惧を念ずるからであります。
やはり職業訓練というものは、とりわけ大学校まで、中高学校も含めましてしっかりとした一貫性がないということが日本の特徴でもあるというふうに思いますので、この競争力会議では、国の職業訓練の言ってみれば一つの機能というものをしっかり持ちながらぜひ提言をしていっていただきたいというふうに思います。
もう一つ、次の質問は、産業構造の転換の進展とか厳しい雇用失業情勢に的確に対応していくためには、雇用開発というものが重要となっていると考えられますが、この雇用開発に関してはいかなる助成措置をこれから講じていかれるのか、お尋ねをいたします。
○政府委員(渡邊信君) 現在我が国では、起業、業を起こす方の割合が廃業率を下回って推移をしているという大変憂慮すべき状況にあろうかと思います。そういった意味では、雇用の場が今縮小しているというふうな状況かと思います。
先般、臨時国会で改正をいただきました中小企業労働力確保法、これは通産省との共管法律でございますが、この法律によりまして、新しい事業を起こすあるいは中小企業が異業種へ進出をするといったときの助成をするということにしておりまして、労働省としましては、この法律を中心にして雇用の新しい開発に向けての取り組みを支援したいと思っております。
○大脇雅子君 最後に大臣にお尋ねをしたいのですが、今の失業率が非常に高くなって、そしてそれは、今までは中小企業の雇用がそれを吸収してきたということにあるわけですが、その一つのそういう中小企業の雇用創出あるいは雇用の受け皿という機能が非常に減退をしてきているということがあるのではないか。したがって、雇用・能力開発機構というのは、業務の効率化を図りながら、中小企業の雇用の創出あるいは高度な人材の育成など、そうした雇用の開発の課題に積極的にこたえていくことが求められていると思いますが、それに対する大臣の御決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(甘利明君) 御指摘のとおり、雇用促進事業団が全面的に衣がえをいたしまして、雇用・能力開発機構という形で新しくスタートする、それはこれからの時代により重要な点に絞り込んでその施策を充実させようという意味合いがあるわけでありまして、そういう新しい時代には、雇用、能力を引き上げていくための、職業能力開発を幅広にそして部分的には非常に深く掘り進んでいくということは大事でありますし、一歩進んで雇用自体を開発していく、先般成立をしていただきました法律等を駆使いたしまして職場の創出をしていくということも大きな仕事になってくるわけでありまして、精力的に、精査をした事業分野について取り組んでいきたいというふうに思っております。
○大脇雅子君 終わります。
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