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少子高齢社会で老後をどうささえるのか?

「年金改革の骨格に関する方向性と論点について」では次期年金改革の目的を以下の5つとして示しています.

(1) 若い世代を中心とした現役世代の年金制度への不安感,不信感を解消すること

(2) 少子化の進行等の社会経済情勢の変動に対し,柔軟に対応でき,かつ,恒久的に安定した制度とすること

(3) 現役世代の保険料負担が過大にならないよう配慮することに重点を置きつつ,給付水準と現役世代の保険料負担をバランスのとれたものとすること

(4) 現役世代が将来の自らの給付を実感できる分かりやすい制度とすること

(5) 少子化,女性の社会進出,就業形態の多様化等の社会経済の変化に的確に対応できるものとすること

上記目的の背後にある大きな課題は,公的年金の財源不足です.日本の公的年金は賦課(ふか)方式といって,今年高齢者等に支払われる年金給付は今年現役勤労者が納める年金保険料でまかなっていくという方法です.しかし実際はまだ年金受給者が最多になるまでにはいたっていないため,保険料から積立金にまわっている部分が制度によってはあります.日本で最も高齢化が進むと予想される2025年には,完全賦課方式になるように保険料率が設定されてきました.しかし,このところの大幅な少子化(生まれるこども数の減少)と,不況やフリーターの増加など正規労働者の減少とそれに伴う保険料収入の減少によって将来の財源不足が深刻な問題として認識されています.平成16年度公的年金改革の最重要課題は,将来にわたって安定した財源を得るための制度改正をどのようにおこなうかの1点といっても過言ではないとおもいます.

財源不足を解消するための議論で,女性と関係が深い問題は,こどもを生む女性の減少と第3号被保険者として財源に貢献しないことの2点でしょう.日本における特殊合計出生率は2001年で1.33人で人口が将来に渡って増減しない水準2.1人を大幅に下まわっています.5年毎に行われる国勢調査をもとに,「日本の将来推計人口(平成14年1月推計)平成13(2001)年〜平成62(2050)年」を国立社会保障・人口問題研究所が公表していますが,推計を更新する毎に将来の出生率の予想は低くなってきています.

また,女性の場合,子育てが終わってからの再就職の機会も限られており,たとえフルタイムで働くことを願っていても多くの人がパートタイムで第3号被保険者にとどまる傾向があり,M字型就労曲線(20歳台と40歳台で就労率がピークを示し,30歳台で落ち込む現象)の後のピーク時にも年金の保険料を納める働き方をする女性はあまり多くはないのです.

日本の公的年金が賦課方式を基礎とする以上,少子化による被保険者人口の減少は安定財源を揺るがす重要な問題です.しかし,少子化が社会経済に与える影響は年金財政だけではなく,納税者の減少により国家財政に大きな影響を与えます.その上,高齢社会では生産活動を停止した人々(=引退者)の生活を年金のみならず福祉サービスなどによって支えていく必要があります.

「少子化対策基本法」が2003年国会で承認されました.それに基づく「次世代育成支援対策」を市町村レベルで議論し各自治体の支援計画の策定を急いでいます.これも,ひとつには女性がこどもを生みやすくするための対策やこどもを生んでも仕事をやめることなく,年金保険料を実際に負担する勤労者としていつづけるための支援策(保育所や育児休業制度拡充)を政策上推し進めていくための手段です.

世界の先進国をみると,女性の就労率や社会進出が進んでいる国(北欧諸国,フランス,アメリカ等)ほど出生率が高く,それが遅れている国(スペイン,イタリア,日本 等)ほど逆に出生率が低くなっています.これは,子育てに専念できる環境を整えることだけによって,出生率が回復するものでないことを示唆しています.日本でも,専業主婦の出生率より妻が管理職であるフルタイムの高収入共働きの方が専業主婦より,出生率が高いという人口動態統計の結果が公表されています.(2003年厚生労働省公表「2000年人口動態職業・産業別統計」による)

 少子化問題を考えるとき気をつけなければならないのは,「生む生まないの選択権は個人にある(リプロダクティブヘルス&ライツ)」こと,子供を育てている期間だけを保護することで,現実の問題として被保険者としての保険料納付期間が短縮され、将来女性の受給年金額の減少や低額である事実が正当化されてはならないことです.

現在議論されている女性の年金についての制度改革には,子育て期間の年金保険料の取り扱いや年金保険料負担の個人単位化,そして厚生年金給付の夫婦折半化などです.

    3号被保険者の見直しに取り組む

    離婚時の老齢厚生年金分割を実施

    パート労働者への厚生年金適用拡大

少子化の影響について知るページとしては,

少子社会の現状と将来を考える(少子社会の多面的検討特別委員会報告)」日本学術会議少子社会の多面的検討特別委員会平成12529

国立社会保障・人口問題研究所 第7回厚生政策セミナー「こども,家族,社会−少子社会の政策選択−」を参照 講演内容がPDFファイルでダウンロードできる.

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更新日03/10/06  お問い合わせは次のメールまで