侵略:戦争とテロを巡る40の嘘
---第4部 (31)から(40)まで---

スティーブ・ペリー
原文
2003年7月30日


イラク侵略とテロリズムを巡る40の嘘のうち、ここでは31番目から40番目を紹介致します。1番目から10番目についてはこちらを、11番目から20番目についてはこちらを、21番目から30番目についてはこちらをご覧下さい。必ずしもイラクを巡るものだけではなく、アフガニスタン、パレスチナ等関連のポイントもあります。

繰り返しになりますが、日本政府は、こんな嘘を繰り返してごり押ししてきた米国のイラク侵略を支援しようとしているのです。一方で、何の見通しもない経済政策と外交政策をゴマカすために、危機感を煽って偏狭ナショナリズムに訴えながら。私のページは文字だらけですし、どちらかというと論理的なトーンの記事が多いのですが、こうした状況の中、論理的な批判に加え、無策ゆえに偏狭なナショナリズムに訴え女性差別的発言を行なって虚勢を張る政治家たち(とそれに同調する人々)に関して、実はどうしても「カッコ悪い」と感じてしまいます。


(31) 米国は、アフガニスタンで自ら述べた目的を達成し、タリバンを打ち負かした

香港のアジア・タイムズ紙の記事によると、米国は今年初頭にタリバン指導者たち及びパキスタンの情報筋と秘密会談を行い、アフガン政府にタリバンを含める取引を提案した(そのための主要な要件は、オマル師を見捨てることであった)。『ジ・アメリカン・プロスペクト』でマイケル・トマスキーがコメントしているように、「まず不思議に思うだろうこと:何故、これからのアフガン政府にタリバンの役割があり得るのだろうか?ハミッド・カルザイが事態を運営していて、基本的にうまく行っているのではないだろうか?明らかになったように、そうではなく、全くそうではない・・・・・・実際には・・・・・・ゲリラ戦がエスカレートしており、「小規模なヒット・アンド・ラン攻撃が国内のほとんどの場所で日常的に起きており、さらに南部カンダハル周辺の元タリバンの拠点ではフェイス・トゥー・フェイスの小戦闘が頻繁に見られる」。


参考リンク

なし


(32) 注意深い科学的調査は、劣化ウランは人々に危険ではないことを示している

全くのナンセンスである。政府は劣化ウランの危険の仮面を剥ぐ専門家を次から次へと示しているが、第一次湾岸戦争でイラク人も米国及び連合国兵士もともに経験した健康被害の原因であることが示されている。不発のDU弾は恐ろしい危険ではないが、爆発したDU弾は空気・地面・水・食料に広まっていく放射性粒子を放出する。

数カ月前、BBCは、最近アフガンの民間人に対して行なったテストで、人々の尿中に非劣化ウランの同位体が尋常でない高い濃度で見つかったことを報じている。国際的なモニターは、これを、米国がアフガン侵略で、新たなウラニウム加工爆弾を用いたことのほとんど決定的な証拠であると述べている。


参考リンク

劣化ウラン研究会ページ

Scott Peterson, The Christian Science Monitor, 4/15: Remains of toxic bullets litter Iraq

Col. James Naughton, Defense Link (DOD), 3/14: Briefing on Depleted Uranium

Dan Fahey, .pdf file [via Current Issues], 3/12: Facts, Myths and Propaganda Over Depleted Uranium Weapons

Bush Wars 5/5: Get Your Dirty Bombs Here

Alex Kirby, BBC News, 5/22: Afghans' uranium levels spark alert

Uranium Medical Research Center [undated]: UMRC's preliminary findings from Afghanistan & Operation Enduring Freedom



(33) イラク核施設の略奪は、人々に対してさほど大きな危険をもたらすものではない

現場の司令官とワシントンのラムズフェルドは、直ちに、全ての人に対して、未処理のウラン粉(いわゆる「イエローケーキ」)をはじめとするいくつかの放射性アイソトープを貯蔵してある施設の略奪は、人々に対して深刻な危険をもたらしはしないと発表した。けれども、この施設に対する略奪が知られることになったのは、一つには、ワシントン・タイムズ紙が指摘するように、「米国と英国の新聞報道が、その地域の住人が、イエローケーキを樽から取り除いて、樽を食料の貯蔵に使い始めてから、深刻な健康問題を患っていることを示唆したからである」。


参考リンク

なし


(34) モスルで抗議行動を行う市民の集団に対して米兵たちが発砲したとき、米兵たちは攻撃に晒されていた

2003年4月15日、米軍兵士たちは、モスル市の新市長マシャーン・アル−ジュブリが親西洋的な演説をしたことに腹を立てた抗議者の集団に向けて発砲した。7人が殺され、数十人が怪我をした。目撃証言によると、兵士たちは、人々がものを使ってジュブリを殴っている中でジュブリを連れ去った後、それから射撃姿勢をとって、人々に向けて発砲を始めた。


参考リンク

Bush Wars 3/4: What Happened in Mosul?

Bush Wars 4/15: More Lessons in Democracy



(35) ファルージャで、抗議行動を行う市民の集団二つに対して米兵たちが発砲したとき、米兵たちは攻撃に晒されていた

4月28日:米兵たちはサダムの誕生日に集まったデモ参加者たちに発砲し、13人を殺し、75人に怪我を負わせた。米軍司令官は兵士たちが攻撃を受けていたと主張したが、目撃証人たちはこれに反駁しており、米軍自身のハムビー(高機動多目的装輪車両)が群衆の上に警告発砲したことに怯えた兵士たちが人々に向かって発砲を開始したと証言している。その二日後、米軍兵士たちは、ファルージャで別の群衆に対して発砲し、さらに3名を殺している。


参考リンク

London Times, 4/29: US troops 'kill 13' after shooting at Iraqi crowd

Bush Wars 5/1: Unfriendly Fire

Bush Wars 5/2: Fallujah: Fever Pitch



(36) 占領軍と戦っているイラク人はほとんど完全に「サダム支持者」と「バアス党の残党」から構成されている

これは、先月ブッシュ屋たちが米国による占領に反対する残りの人々を拘束したり殺したりするためにサイドワインダー作戦を開始して以来、彼らの長話の話題であった。最近の反対派ゲリラの最も激烈な活動(とはいえ全てでは全くない)が、サダムの拠点であったスンニ派の地域に集中しているというのは事実であり、サダム支持者たちが多くいることについても疑問の余地はない。けれども、恐らくそれが故に、多くの他のゲリラ戦士たちも、イラク内外から、ジハードとしてそこを訪れている。米国の侵略の頃、1万人ほどの戦士たちが国外からイラクに入った。そして、それ以来、何人がそれに参加したかについて、きちんとした推定を目にしていない。

バグダッド周辺の元共和国防衛隊員が、サダムに対して忠誠を誓っているというのであなく、実際のところ全く反対なのに、血に飢えているようであることには理由があるかも知れない。私が知る限り、この話題は米英のメディアで持ち出されたことがないが、中東の英語新聞は、4月後半に、いくつかの記事で、バグダッド陥落を巡ってペンタゴンとサダムの共和国防衛隊の上級士官たちとの間で取引があったとしている。この線によると、バアス党上級幹部たちは、サダム後の政府の地位と金を得ることができるという約束と引き換えにサダムを売って、テントをたたんだ。けれども、この約束---それが実際になされていたとするならば---は、その後米国占領軍司令部が、バアス党の関係者は政府への参加を禁ずると発表したことにより、破棄された。こうした裏切りは、共和国防衛隊員たちが抵抗ゲリラで果たしている獰猛な役割を説明する。

けれども、取引に関するこの話は、信頼できるのだろうか?見たところ、信頼できる。二つのことを思い起こす必要がある。ラムズフェルド自身が、イラク侵略の初期段階で、ペンタゴンが共和国防衛隊上級士官たちに接触していると述べている。そして、バグダッド陥落の際、多数の記者が、ある日突然、政府全体が、姿を現さなかったかのようであると語っている。

後のニュースが示しているように、これがまさに実際に起こったことである。ある日サダム政権は機能しており、その翌日に消え失せた。自然に崩壊する政府は、そのようには振舞わない。どう見ても、政権崩壊は、イラク政府の司令系統上部のどこかから指揮されたようである[詳細については、Bush Wars の以下のポストから入手できる: 4/15; 4/214/25.]


参考リンク

Mark Phillips, CBS News, 6/12: US Mounts Major Iraq Offensive

Jason Burke, The Observer, 6/29: Why were six Britons left to die in an Iraqi marketplace?

Neil MacFarquhar, New York Times, 7/20: Iraqi Shiites Protest in Formerly Calm Najaf


(37) イラク「再建」契約への入札で、ブッシュ/チェイニーの石油/ガス仲間が優遇されたことはない

ディック・チェイニーの元の会社ハリバートンが、再建契約の第一ラウンドであらゆるところに名前を表したことは非常に悪名を馳せている。あまりのことに、ハリバートン社は、自らのPRイメージのために、10億ドルの再建契約参加を後に辞退したほどである。けれども、ハリバートンの子会社ケロッグ・ブラウン&ルートは油田の火事を番するため、そして(真の目的である)まともなにイラク石油ポンピングを行うに必要な設備改善を行うために、70億ドルの契約を手にした。これにより、5億ドルの利益を上げることができる。ディック・チェイニーが自らのエネルギー・タスクフォースがコンサルトした個人と企業の公開を全力を挙げて阻んでいるという事実は、隠された真実を全て示している。


参考リンク

米国防省とハリバートン社の契約

戦争の不当利益

Bush Wars 4/11: Halliburton: $7 Billion for Starters

Bush Wars 5/12: Woolsey: Another Bushman With His Hand in the Till

Dan Ackman, Forbes, 7/9: Cheney Task Force Loses Place To Hide

Bloomberg, 6/17: Iraqi Oil Production Slowed by US Push to Oust Saddam's Men


(38) 「大量破壊兵器(WMD)を発見した!」

ブッシュ屋たちが、息もつかずに、メディアに対して、同盟軍がホカホカのWMDを見つけたと述べたことが、少なくとも5回以上あった。大統領自身、6月1日に、記者たちに対し、「我々が禁じられた製造機器や禁止された武器を発見しなかったと言っていた人々は、間違っていた。我々はそれらを発見した」と述べている。

すぐさま誤りであることが暴かれたこうした発言は、嘘というよりは過ちとすべきだろうか?状況を考えると、やはり嘘であると言える。第一に、政府は、根拠薄弱であると知りながら大げさに宣伝することがあまりに多いという経歴を持っている。今回も同様である。第二に、偉大なる才能を備えたカール・ローブと残りのブッシュ屋たちがプロパガンダのポテンシャルについて理解しているとすると、確実に、反復こそが全てだということについては理解している。メッセージを定期的に広めよ。それが誤りでもかなり多くの人が信じるだろう。

最後に、米国のメディアに政府がいんちきのWMD証拠を植えつけたかどうかについて思弁する必要はない。既にそれは行われている。とりわけ、ニューヨーク・タイムズのジュディス・ミラーと、4月21日、彼女が軍の示唆で書いたイラクの脱走「科学者」に関する記事はそれをはっきり示している。ミラーはこの科学者とされる人物と自ら話すことさえできなかったにもかかわらず、米軍司令官がこの科学者が語ったと言った次のようなことを喜んで伝えたのである:イラクは戦争の数日前になってようやく化学兵器を破壊した、WMDはシリアに移送された、イラクはアルカイーダと関係がある、といったことである。メディア批評家ジャック・シェーファーがWNYCラジオの「オン・ザ・メデイア」という番組で述べているように、「[彼女の記事を]見てみると、霧か霞のようなものであることがわかる。彼女の情報を判断する手段はどこにもない。というのも、彼女にいかなる検証もさせなかった名前のない情報源からのものだからである。そして記事の中身を見るならば・・・・・・ミラーが自ら確認できた唯一のことといえば、軍が科学者であると述べた人物が、野球帽をかぶって、埃の中でマウンドを指さしていることだけなのである」。


参考リンク

Philip Gourevitch, The New Yorker, 6/16: Might and Right

Peter Beaumont et al, The Observer, 6/15: Iraqi mobile labs nothing to do with germ warfare

Jack Shafer, Slate, 5/15: Miller's Double-Crossing

Alexander Cockburn, CounterPunch, 4/25: The Case of Judy Miller



(39) 「イラクの人々は、今や自由である」

イラクの現米国総督L・ポール・ブレマーは、最近のニューヨーク・タイムズ紙の論説で、このように述べた。彼は、合意しなければ、ペンタゴン最新のイラク平定計画であるサイドワインダー作戦[(36)を参照]の規定により、射殺されるか投獄されるという点については述べていない。この作戦は、バアス党員とサダム支持者の残党全員を一掃すべく先月開始されたもので、実際には、米国によるイラク占領に対して熱心に反対するあらゆる人を一掃することを意図している。


参考リンク

エレイン・キャッセル「占領?イラクの人に聞いてみよう


(40) 神がブッシュに侵略せよ、とのたまった

2001年9月11日の攻撃があってからまもなく、ネオコン司祭のノーマン・ポドレッツは次のように書いている:「何をしたいかあまりはっきりした考えを持たずにホワイトハウスの椅子に座ったブッシュが、今や自分が選出されたことの背後には一貫して目的があったのだと感じていると言うのを耳にする。生まれ変わったクリスチャンとして、彼は、世界からテロリズムの邪悪を一掃する任務のために神に選ばれたのだと信じている、と言われている」。

いや、彼は「本当に」それを信じている、あるいは本当に信じていると我々に思わせたがっている。パレスチナ首相マフムード・アッバスは、イスラエルのハーレツ紙に、最近ブッシュと会ったとき、次のような発言をブッシュがしたと語っている。「神が私にアルカイーダを攻撃するよう指示し、私は攻撃した。それから、神はサダムを攻撃するよう支持したので、そうした。そして今、私は中東問題を解決する決意である」。

奇妙にも、米国内で、これについてはほとんど騒がれていない。


参考リンク

なし
益岡賢 2003年8月8日 

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