米国防省は秘密裡にハリバートン社に
イラク石油産業運営を指名していた

ジェーソン・レオポルド
ZNet原文
2003年5月16日


米軍がイラクに爆弾とミサイルの豪雨を降らし始める数カ月前に、米国防省は、秘密裡に、副大統領ディック・チェイニーの昔いた会社であるハリバートン社と共謀し、この、世界第二の石油サービス会社に対し、イラクの油田に関する全面的な統制権を与えることが検討されていたと、ハリバートンの最上級役員が、インタビューで語った。

さらに、先月入手された社内秘のハリバートン社文書は、イラク侵略が、サダム・フセイン大統領の政権を転覆するのと同じくらい、世界第二の石油資源を統制することが目的であったことを示している。

国防省と、ハリバートンの部門であるケロッグ・ブラウン&ルートとの間で交わされた、イラク石油産業を巡る商談は、ハリバートン社の内部文書によると、2002年10月の段階で始まっており、最終的には70億ドル相当になる。この商談は、ハリバートンにとって、この上なく良い時期に現れたものである。

昨2002年10月、ハリバートンは何十億ドルものアスベストの責任負担を科されており、国内の石油生産減少の打撃を被っていた。ハリバートンの株価はこの状況に敏感に反応し、その前年の22ドルから2002年10月の12.62ドルへと低下していた。ハリバートン社は破産申請をせざるを得ないという噂が渦巻き始めていたのである。

けれども、イラク侵略が切迫しているというニュースは、ハリバートンの財政危機を、サダム・フセイン政権と同様に、過去の歴史の中に押し込むこととなった。2002年11月の機密文書は、国防省は、米国陸軍工兵隊に対し、ブラウン&ルートに、「石油関係インフラの状況評価、石油漏れをはじめとする石油施設からの環境ダメージの浄化、ダメージを受けたインフラの施設設計・修復・再建、施設操業の補助、石油生産品の流通、イラク石油産業の操業再開のためのイラク人支援」に加えて、イラク油田火災の消火の契約を与えるよう勧告していた。

「国防省が、イラク石油インフラの修復を必要とし操業継続に備える可能性を計画していたという事実は、2003年3月まで機密扱いだった」とエージェンシーはそのウェブサイトで述べている。「このため、ビジネス界に対して、あるべき要求を認め広報するのが遅れた」。

陸軍工兵隊は、ブラウン&ルート社との取引に関する文書の一部を機密解除している。商談のメモは、http://www.hq.usace.army.mil/cepa/iraq/factsheet.htmで読むことができる。

イラク石油産業修復の契約をハリバートン社が受注した2002年10月以来、ハリバートン社の株価は2倍近くになった。2003年5月13日火曜日には、株価終値は23.90ドルだった。

米国議会が今年初頭に、ブラウン&ルート社に対して、チェイニーとの密接な関係が故に、非入札で契約を与えたことを批判したとき、エージェンシーは、ブラウン&ルートは、イラク油田の火を消す以外何もしないと述べた。陸軍工兵隊によると、ブラウン&ルートが選ばれたのは、連絡し次第すぐに「派遣」できるからであると言う。

けれども、ハリバートン社の重訳たちとのインタビューによれば、ハリバートン社の社員が、昨2002年11月から、イラクの石油インフラ評価とイラク石油産業の操業計画を検討するために、クウェート・シティのホテルで活動していた。

2003年4月に発行されたビジネス2.0誌は、この点を明らかにしている。

「ラップアラウンド・サングラスの黒曜石の鏡の後ろから、レイ・ロドンは、イラク南部ルマイラー油田の広大な砂漠の風景を検査していた。ハリバートン社の施設建設部門であるケロッグ・ブラウン&ルートのプロジェクト・マネージャであるロドンは、イラク石油産業の修復という圧倒的な仕事の準備のために数カ月を費やしていた。まず米国テキサス州ヒューストンの本部で働いた後、クウェート・シティのホテルを拠点に働いていたレイ・ロドンは、イラク国営石油産業の込み入った事情を勉強し、国営石油会社の組織図を検討さえしていた。ハリバートン社と米軍が、信頼できるイラク人技師は誰で、誰がサダムに忠実な人々であるか確認するために」と記事は述べている。

3月のニュース・リリースで、ハリバートン社は、イラク石油インフラの修復で最初に仕事を始めたのは、国防省の要請によるものだったと述べている。

「国防省は、米軍兵站文民統合プログラム(LOGCAP)IIIによるケロッグ・ブラウン&ルートとの契約を通して、2002年11月に、不測事態対応計画を作成するよう指名された。計画の実行は、ケロッグ・ブラウン&ルートが現在米国陸軍工兵隊とのあいだで交わした別途契約を通して行われる」とニュース・リリースは述べる。

ハリバートンの数名の職員は、この政府からの利益の大きな契約を受けるにあたりチェイニーが何らかの役割を果たしているとは考えていない。むしろ、陸軍工兵隊は、ハリバートン社がチェイニーと関係があり、政府がお気に入りに仕事をやっているという議会の民主党議員からの批判があるために、わざと、イラクのインフラ修復におけるハリバートン社の役割を控えめに語っていると指摘する。

「ハリバートン社は1940年代から米国政府の仕事を受注している」と、文書を提供した匿名希望の役員は述べた。「けれども、ディック・チェイニー副大統領が、ハリバートンを運営していたため、誰もが自動的に、我々が現在受注する政府関係の仕事にはチェイニーが何か絡んでいるのではないかと考える」。

9月11日以降、ハリバートンのブラウン&ルートは、いわゆる「対テロ戦争」で利益をあげた唯一の会社であった。

バルカン半島の米軍に家屋と食料、水、郵便、洗濯、重機材を提供する仕事の成果に基づき(この仕事でハリバートン社はこれまでに30億ドルの支払いを受けている)、同社は2001年12月に、世界中での米軍の作戦に対して同様の兵站提供を行う契約を、前例のない10年という契約期間で、2001年12月に交わした。

「ペンタゴンの兵站文民統合プログラムは、ハリバートンに、いわゆるコストプラス方式で発注を行っている。つまり、ケロッグ・ブラウン&ルート社は、契約条件が実行されさえすれば、原価費用が支払われることを保証されている上に、一定の利潤を得るようになっている。現在までに、ケロッグ・ブラウン&ルート社は、8億3000万ドルをこのプログラムの契約から受け取っている。同社はまた、トルコのインジルリク空軍基地[クルド人弾圧やイラン偵察、イスラエル軍によるトルコ軍の訓練などが行われるトルコの中心的な空軍基地の一つ]をはじめとする米軍施設の運営補助を行っており(今年9月に契約が切れる予定の当初契約は1億1800万ドル相当のものである)、アフガニスタンとウズベキスタンの軍基地支援契約では6500万ドルを受け取っている。さらに、キューバのグアンタナモ基地で、アルカイーダのメンバーであると疑われる人々に対する牢獄の建設で3300万ドルを受注している。全体で、2002年最後の3カ月だけで、ハリバートンの政府からの受注残高は40%拡大した」とビジネス2.0は伝えている。

ブラウン&ルート社に与えられた美味しい取引を巡って最も問題含みで、ヘンリー・ワクスマン(民主党・カリフォルニア州選出)のような議員が批判するのは、同社が、チェイニーがハリバートン社の社長だったときに、何度か、200万ドル相当の金額を政府からだまし取ったこと、そして、ハリバートン社が、米国が制裁を加えているにもかかわらず、イラクやイラン、リビアといった「テロリスト政権」と商売を行ってきた長い経験を持つことである[訳注:そもそも世界最大の暴力政権である米国政府から大規模な侵略・戦争・弾圧・国家テロ作戦の関係で大規模な受注をしている中で、何故、イラクやイラン、リビアといった米国政府がテロ政権と言うところとの商売だけが問題になるのか、ここの論理はよく分かりません]。

昨年、ケロッグ・ブラウン&ルート社は、米国政府に、チェイニーがハリバートン社の社長だったときに軍に負っている200万ドルを米国政府に支払うことで合意した。カリフォルニア州モンテレー近くにあった軍の施設フォート・オードの維持と修復の契約価格を水増ししたことで告発されていたのである。サクラメントで起こされた訴訟では、ケロッグ・ブラウン&ルート社は、1994年4月から1998年9月までの224件の発注に対し、偽りの請求を提出し、嘘の明細書を作成したとされている。ハリバートン社はまた、別の数件についての調査と訴訟を終わらせるために、調停金を払っている。

1978年、大陪審は、ケロッグ・ブラウン&ルート社を、海軍の建設に関する仕事で競争者と談合したとして起訴した。この件では、同社は100万ドルの罰金を支払った。1995年、米国政府は、リビアに対する禁輸措置を破ったとして、380万ドルの罰金を科した。その4年後、ハリバートンの子会社の一つが、米国政府がイランとのビジネスを禁止しているにもかかわらず、イランに事務所を開設した。2001年、ハリバートンの株主達は、ハリバートン社がビルマでパイプライン・プロジェクトを開始したことにつき、ビルマの人権侵害のために、経営陣を激しく非難した[しかし、米国では多数の軍関係プロジェクトを行っているのですが]。

2001年、監視グループは、チェイニーがハリバートンの子会社44社を海外の税から逃れられる場所に移したと批判した。

ハリバートンが、アゼルバイジャン、インドネシア、イラン、イラク、リビア、ナイジェリアという6カ国でビジネスを行っていることは、同社が、人権が尊重されない場所でも喜んでビジネスを行うことを示しており、これはビルマでのビジネスを超えるものである[相変わらず世界中で人権侵害を繰り返している米軍とのビジネスが何故最大の問題とされていないのか、不明です]。

では、疑わしい記録をもつハリバートン社が、なぜ、米国政府との間で、今回のイラクの場合のように、利益の多い契約を得ることができるのだろうか?

「ケロッグ・ブラウン&ルート社が選ばれたのは、同社が、複雑な緊急対応計画を、極めて直前の通達で遂行することができるからである」とハリバートン社は2003年3月のニュース・リリースで述べている。

政府がハリバートンの部門であるケロッグ・ブラウン&ルート社にイラク関係の仕事を発注していることについてワクスマン議員が批判しているにもかかわらず、イラクでの同社の役割はどんどん大きくなっているようである。そして、他社にも入札で機会を与える計画は既に破棄された問題であるようだ。

5月12日、米国陸軍工兵隊は、ケロッグ・ブラウン&ルート社に、新たに2400万ドルの契約を与えた。今回は、イラクでガソリンと料理用燃料を配る仕事である。

陸軍工兵隊は、5月4日にハリバートン社の子会社に対して与えられた配給の仕事は、同社との間で3月にかわされた、イラクでの消防サービス活動契約の一部であると述べた。

先週、米国陸軍工兵隊は、ハリバートンの子会社が、これまでに7500万ドルの発注を受けたと発表し、総額は6億ドルに達する可能性が高いと発表した。イラク攻撃前に予測されていた最悪のケースの70億ドルよりも遙かに少ない。

米国陸軍工兵隊の報道官キャロル・サンダースは、新たな発注は、元々の契約の中に含まれている事項であり、ハリバートン社がイラク石油産業の再建でさらに利益の大きな直接的役割を担っているとするワクスマンの批判は当たらないと述べた。

イラクの人々が国を再建し始めたので、人々には料理のための油とガソリンが危急に必要なのだ、と彼女は述べる。病気を予防するために水を沸かさなくてはならない必要性を考えると、その仕事を競争入札とするのは、妥当ではないと[12年間にわたり平然とイラクの子供たちを殺してきた人々が、突然人道主義に目覚めたのは、どうしてでしょう]。。

「我々は、物事をこのように進めることが出来るよう、契約を広義のものとした」と彼女は言う。

特に、サンダースは、ケロッグ・ブラウン&ルート社が、液化天然ガスとガソリンを地域の貯蔵センターに運んで、そこから、イラクの人々が配給を管理していると述べる。

ケロッグ・ブラウン&ルート社のウェンディ・ホールも、最新の契約はより広い契約の一部であると述べ、それは、「イラク石油インフラの操業の継続」を維持する目的のものだ、と述べている。


「イラク攻撃は、石油を巡るものではない。米国は石油の十分な供給をイラクなしでも確保できる」という見解が、イラク攻撃が石油を巡るものだという批判に対して繰り返し言われました。イラク攻撃の一つの焦点は、石油への統制を巡るもの[石油の米国への供給ではありません]であり、石油関連の総プロセスにおける諸企業による略奪を確保するものです。

「テロ」という言葉はあまりに使い古されていて、扇情的な意味しか残っていないので、あまり使いたくなかったのですが、上記注の中で、米国が支援する暴力行為について、敢えて「国家テロ」という言葉を使ったのは、以前、トルコの人権相が、米国の支援を受けて1990年代大規模にトルコ南東部のクルド人に対して自らの政府が進めていた弾圧と虐殺を、「国家テロである」と述べたことがあるからです。この大臣はトルコ政府から罷免されました。

上記、「では、疑わしい記録をもつハリバートン社が、なぜ、米国政府との間で、今回のイラクの場合のように、利益の多い契約を得ることができるのだろうか?」というのは、本来的に誤った前提にたった問題提起のように思えます。米国政府も海外で(最近では国内でもかなりの規模で・一部の人権侵害は以前から)大規模な人権侵害を繰り返しており、何よりも米国政府のそうした人権侵害作戦を巡る契約で潤うハリバートン社が他の人権侵害国との契約を喜んで行うことは当然予想されますし、米国政府にしてみれば、色々な人権侵害関係契約に関与しているハリバートン社だからこそ、自国が行う人権侵害の契約を任せやすいのでしょう。この関係は、推測に過ぎませんが、「米国政府は疑わしい記録を持つ企業には、本来、契約を与えないはずだ」という前提に立っているように見える「では、疑わしい記録をもつハリバートン社が、なぜ、米国政府との間で、今回のイラクの場合のように、利益の多い契約を得ることができるのだろうか?」という疑似質問よりは、妥当性を持つはずです。

米国によるイラク不法侵略と不法占領。その中での諸資源の略奪。これは、米国の後押しを受けたインドネシアが、東チモールを侵略し不法占領したときに行なったことでもあります。24年間の不法占領と大規模な虐殺・人権侵害・破壊の後、東チモールの独立(主権回復)一周年記念が、4日後に近づいています(メディアなどで「インドネシアからの独立」という言葉が使われますが、東チモールは一度もインドネシア領であったことはないため、この言葉は誤りです。結婚していない人間は離婚できないのと、論理的には同じです)。

米国の問題ですが、場所別の米国が重くなり、独立させるのもナンなので、イラク侵略コーナーにだけ置いておきます。
益岡賢 2003年5月16日 

イラク侵略] [トップ・ページ