原子力汚染 vs 超々クリーン・マグマ発電(その11)

「コスト高」で足を引っ張る向きに逆転パンチ!

1999.10.19.mail再録。

 本シリーズは、東海村臨界事故の衝撃を、「超々クリーン・マグマ発電」の話題浮上のチャンスと捕らえて、急遽、開始したものですが、個人宛てmailでも、様々な御意見、御激励をかたじけなくしました。本来なら、それらのmailにも応えて、さらに深く論じたいところですが、この間、中断の止むなきに至ったユーゴ戦争問題でも、寄せられた資料が山ほどあり、このところの数回のNHK「コソボ」報道のあり方など、急ぎ批判を加えるべき点も多々ありますので、今回、総合的な意見を述べて、一応の締めと致します。

今回の主要テーマは、一番肝心な「コスト」です。

 前回、幻の『週刊朝日』記事を紹介しましたが、あの記事にも、コスト問題が出てきました。高温岩体発電の1キロワット時当たりの「原価」の試算が、12円70銭で、原発の9円程度より「少々高くつく」となっていました。通産省の外郭団体、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の方の試算は、「20円から30円」となっており、むしろ、こちらは、足を引っ張るための深慮遠謀の研究なのではなかろうかとの疑いも生じます。

 ところが、まず、原発反対運動関係者や、電力会社の労組の反主流派に聞けば、誰でも知っていることですが、原発のコスト「9円」なるものには、意図的な数字の操作が明らかなのです。

 電力会社の内部の費用でさえ、「原発の安全性」の真っ赤な嘘をバラマクためにフンダンに使われる宣伝費はもとより、放射能の防護服など、原子力発電に特有の費用さえ、加算されていないのです。しかも、原子力「平和利用」の隠れ蓑として設立された科学技術庁、東海村、その他の再利用のための核燃料サイクルなどの費用は、まったく含まれていません。電力消費者は同時に納税者です。双方を合算しなければ、本当のコストとは言えません。実際の話が、現在、バブル崩壊の主犯の銀行救済で「公的資金」を大盤振る舞いして財政困難な国そのものが、核燃料再利用の費用を電気料金に上乗せしようと画策している最中なのです。

 さらには、今回の臨界事故でも、「農家400戸が賠償請求/JCOに約7億円/名産品に風評被害」(『日本経済新聞』1999.10.19.夕刊)とあります。その他の実質被害を加え、総合的な観点から、「コスト」を論じ直すべきです。

ついでに、二酸化炭素を発生する石油発電も、串刺しにしましょう。

 石油の主な輸入ルートを「シーレーン」とか称して、軍事費の支出の必要性の屁理屈をこねています。湾岸戦争では、中東からの輸入に60%を頼っている日本に、アメリカの鷹派は、「金を出せ!」とわめき、援助など合わせて130億ドルもの税金を、むしり取られました。アメリカ軍への「思いやり予算」も含めて、軍事費を全部、石油による電力の原価に加算してみて下さい

 しかも、原子力発電は、そのものが危険で、石油をめぐる戦争は、さらに危険です。石油に関しては、別の問題もあります。石油産出国の経済の問題です。しかし、それらの国々、特にイスラム圏は、石油文明以前には世界の文明の中心でした。むしろ、石油資源が、呪いとなって、石油文明による工業先進国の侵略を受けたのです。世界経済の仕組みを根本から変えることを、今こそ、真剣に考えるべき時なのです。

 私個人は、実は、ユーゴ戦争の問題で、今年の夏、ニューヨークで開かれたNATOを裁く独立国際戦争犯罪法廷に参加してきました。打ち上げのパーティで、環境問題に関心を持つ熟年のアメリカ人から、日本ではどういう議論になっているかと、意見を求められました。私は、簡略に言うと、石油文明(Oil civilization)を止めるべきだと述べました。ついでに、相手が2メートル近い大男だったので、あんたらは食い過ぎだ(You eat too much)と言ったところ、相手は腹を抱えて大笑いしました。

 この最後の台詞は、別に深く考えて用意して行ったものではありませんが、戦後日本の背の低い日本人の欧米コンプレックスを、根本的に覆す大ヒット、会心作、痛快なる逆転ホーマー、カウンターパンチであります。若い頃のギリギリ165.5センチメートルが、現在163センチメートルにまで寸詰まりした元軍国少年Aとしては、大いに自負しております。

以上で:11終り。これで一応の締めとします。「原発に死を!」シリーズへは、下記をクリックして下さい。


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