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『亜空間通信』692号(2003/11/20)
【バスに乗り遅れるなTBSニュース23「水で読み解く中東紛争」特集のしたり皺顔似非紳士評価】
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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!
昨晩のTBSニュース23で、「水で読み解く中東紛争」と題する特集を放送したそうである。「多事争論」とか題して、似非紳士朝日新聞出身の中でも最も似非紳士然とした皺顔の筑紫哲也が、とくとくと、したり顔の解説をしたらしい。
まだ電網発表がないので、TBSに直接電話して確かめたところ、すでに報道特集でやっていて、またやるとのことである。
期待はするが、私は、以下の文章を、すでに11年前、湾岸戦争の直後に発表している。やっとこさ、追い付いてきて、イスラエル崩壊直前に「滑り込みセーフ」を狙う大手メディアと似非紳士の「ずるさ」が、透けて見えるのである。もう飽き飽き、慣れっこだが、一応、念のために指摘して置く。
以下は、「水」関係の部分のみの抜粋である。
---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/gulfw-50.html
Web無料公開『湾岸報道に偽りあり』
隠された十数年来の米軍事計画に迫る
第八章:大統領を操る真のアメリカ支配層(6)
(その50)中東和平会談の裏に潜んでいた砂漠の「水争い」
七月七日からピッツバーグで開かれていた日米財界人会議の席上、日本側代表団は、「湾岸大型平和プロジェクト」なるものを発表した。その名も「PWP(ピース・ウォーター・パイプライン)計画……トルコ国内を起点に、中東地域に東西二本の大型給水パイプラインを敷設し、サウジアラビアなど関係八ヵ国にトルコの豊富な水を供給。総延長距離は六千五百五十キロ、総工費は二百十億ドルを予定している」(『読売』91・7・8)
計画の検討に当たっているのは、すでに紹介したGIF(日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団)である。
読売新聞の記事には、給水の相手国として、イスラエルの国名は上げられていない。だが、イスラエルが不法占領地区を手放したがらない死活的理由の一つに、「水資源」問題が横たわっているのだ。現在問題になっている占領地への入植キャンプも、パイプで水を引くという高価な代償の上に成り立っている。
中東と石油問題の専門家であり東海大学文明研究所教授の松原清二郎は、著書『イスラム・パワー』の〈補論〉として、「中東和平を妨げる水資源問題――イスラエルのサバイバル戦略」を設けている。その詳しい研究を要約すると、まず、イスラエルの地中海側にはパレスチナ側の西岸地区から地下水が流れ込んでいるから、西岸地区でアラブ側が地下水を使うような独自の開発を阻止する必要がある。ヨルダン川とその源の中間にあるガリラア湖の水資源に関しては、さらにその源をなす上流の川がアラブ側にある。これまでにもアラブ・イスラエル双方の転流計画があり、そのための国境紛争さえ起きていた。これらの上流の水源地帯を制圧するために、ゴラン高原とレバノン南部が地理的に重要な戦略地帯なのである。
中東和平会談を横目で見ながら打ち上げられた巨大プロジェクトの背景に、なにが隠れているのだろうか。もしかすると、砂漠地帯への給水によって平和的に新たなカナーンの地を生み出し、イスラエル対パレスチナ問題の一挙解決を図ろうとする起死回生のアイデアなのではないだろうか。
早速GIF事務局を訪ねて、この点を質問したところ、やはり、そういう可能性をにらむ気配が濃厚であった。「一九八六年に水源地トルコのオザル大統領が提唱した計画。技術的には十分可能だが、政治情勢とカネの出所が心配」だという。カネの出所には、石油よりも水の方が高いという金満国家クウェイトも数えられている。技術的な競争相手は湾岸戦争で有名になった「浄水装置」である。
しかも現在、「ユーフラテスの水源地帯にダムを築いたことでもめている」とのこと。ユーフラテスは、チグリスとともにメソポタミアの古代文明を育てた大河であり、今もなおイラクの農業地帯をうるおしている。つまり、イラクをふくめた国際協調なしには、肝腎の水源問題は解決しないはずなのである。
これは大事件というよりも、やはり湾岸戦争の深層には「中東改造」の巨大プロジェクトが潜んでいたのではないだろうか、という疑いをますます濃くする。だとすれば、日本の財界が提案者に回ったことの政治的意味を、今こそ深く考える必要があるだろう。「平和」の売り込みのコロモの陰から、エコノミック・アニマルだのバブルだのだけではなく、自衛隊の海外派遣のヨロイまでチラチラするようでは、せっかくのアイデアも台無しだ。
その後、懸案の「中東和平会談」がアメリカ主導で進められているが、やはり、「地域協議」の議題の報道記事の中にまず一行、「水利問題」が入っていた。少しづつ具体的な中身が報道され、ついには「日本への協力要請」から「参加決定」までトントン拍子。展開は意外にも早い。「中東和平会談」開始後から数えると三ヵ月目になるが、「イスラエルが共通の水浪費」と題する「ヨルダン大学水研究所長」の談話も報道されるようになった。次のように具体的な数字まであげられている。
「水不足は極めて深刻だ。水問題は一国では解決できない。ヨルダン、パレスチナ占領地とイスラエルは、ヤムルク川やヨルダン川という共通の水源を利用しているからだ。……人口三百五十万人のヨルダンが一年に七億五千万立方メートルなのに対し、四百五十万人のイスラエルは二十億立方メートルを消費している」(『朝日』92・2・1)
現在もなお、アラブ側の反対を押切って進められている旧ソ連からの大量移民計画は、水不足をますます加速する要因となる。「水と油」などとダジャレを飛ばすつもりはないが、近代工業社会の「命の水」となった石油の支配権をめぐる長期戦争が、人類社会始まって以来の「水争い」とともに解決が急がれるというのも、歴史の長さを誇る中東諸国ゆえの宿命なのであろうか。
[後略---------- 引用ここまで ----------
次には、5年前、以下の「訳者解説」を発表している。上記と同じく、以下は、「水」関係の部分のみの抜粋である。
---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-33.html
緊急Web無料公開『偽イスラエル政治神話』(その33)
訳者解説(その1)
[中略]
第三は、謎というよりは、ゴラン高原などの違法占領の意図をより詳しく指摘し、さらには、知るひとぞ知る類いの現在日本との関係を、明らかにして置きたい問題である。
一九九六年三月以来、日本は「自衛隊」と称する軍隊を、ゴラン高原に「派遣」と称して出兵している。だが、なぜゴラン高原なのかという議論は、まるで起きていない。
本訳書では、二四〇頁から二四一頁に引用されている“ユダヤ国民基金”総裁の一九四〇年の発言の最後は、こうなっていた。
「北の方はリタニ川まで、東の方はゴラン高原まで、ほんの少し国境線を広げれば、イスラエルの領土は、それほど狭くはない」
リタニ川の方は今、イスラエルが占領地に勝手に設定したレバノン南部の「安全保障地帯」に含まれている。ゴラン高原の方は「併合」宣言下にある。ともに連合国総会の非難決議の対象であるが、ダブルスタンダード超大国、アメリカは、何らの行動も起こさないどころか、安全保障理事会では拒否権を行使してイスラエルを援護している。
ともかく、イスラエルは今、一九四〇年の“ユダヤ国民基金”総裁の発言の通りに、実質的な領土拡大を実現しているのである。なぜ、国際世論を敵に回してまでそうするかと言えば、領土の広さの問題だけではなくて、リタニ川もゴラン高原も、水源地帯だからである。
しかも、この両地帯をイスラエル国家の領土内に確保しようという考えは、一九四〇年どころか、一世紀以上も前からのシオニストの構想だったのである。
とりあえず最寄りの資料だけを紹介して置く。
通産省の外郭団体で財団法人の中東経済研究所が発行している『現代中東研究』には、三つの専門論文が載っている。
「ヨルダン川水系に於ける水資源開発と国際水利権紛争について」(9号、91・8)
「イスラエルとパレスチナの水資源」(12号、93・2)
「シリア被占領地ゴラン高原」(13号、93・8)
国立国会図書館調査立法考査局が発行する『レファレンス』は、折々の国際的な政治課題を予測しながら特集を組んでいるが、そこにも、五三頁にわたる論文が掲載されている。
「中東の水と平和~イスラエル・パレスチナ水資源管理をめぐる対話」(通巻第五三八号、95・11・15)
シオニストの構想は、まず、周囲のアラブ諸国との力関係から見て、それと十分に対抗できるだけの国民皆兵国家を建設するための人口、約四五〇万人の確保であった。さらには、その人口を養う食料の自給が可能な耕地面積、そこへの灌漑、水資源地帯の確保という順序で、リタニ川とゴラン高原は、重要な戦略的獲得目標に設定された。右の「ヨルダン川水系に於ける水資源開発と国際水利権紛争について」と題する論文では、つぎのように、この経過を要約している。
「一八六七年に早くもパレスチナの開発基金を集めた創世期のシオニストの運動組織は、パレスチナの天然資源を調査するための技術調査団を派遣した。一八七一年の報告書では、ネゲブ砂漠を含むパレスチナは数百万人の人口を移住させる可能性を有し、そのためには北部の豊富な水資源を乾燥した南部へ導水しなければならないことを指摘している」
シオニストは、一九一七年のバルフォア「意志表示」以前から、国際談合で、この北部の水資源地帯がイギリスの委任統治の範囲に入るように画策したが、それは果たせず、フランスの委任統治地域に入ってしまった。それが現在の国境線にもなっているのである。
では、なぜ、以上のような歴史的事実を記載する論文が、通産省の外郭団体の雑誌などに載っているかといえば、現在、日本の企業集団が、「イスラエルとパレスチナの水資源」に関して、巨大プロジェクトを売り込み中だからである。
日本側の売り込みが最初に具体化し始めたのは、チグリス・ユーフラテス両大河の水源でもあるトルコの山岳地帯を出発点とし、クウェイトを終点とするコンクリートのパイプ・ライン計画だった。だが、こちらはトルコの政変で棚上げのままになっている。現在、最も有力とされているのは、地中海から四百米の落差のある死海に海水を導く水路を堀り、その途中に逆浸透膜による浄水化工場を設置する計画である。農業用水確保と同時に、かねてからの懸案の塩工業プラント建設も展望されている。売り文句は「二一世紀プロジェクト」などとなっているが、イスラエル側が日本のODA予算を狙っていることは見え見えである。暗殺されたラビン首相も、その直前、日本に来た。『マルコポーロ』廃刊事件の背景に、外務省だけでなく通産省の圧力を見る向きもある。
本書には、この間の底流の一端を伝える二つの資料が紹介されている。第一は、『キヴーニム』(82・2)掲載論文、「一九八〇年代のためのイスラエルの戦略計画」(一五五頁上段)であり、第二は、『ニューヨーク・タイムズ』(81・12・1)掲載、ベギン政権のシャロン国防大臣とワインバーガー米国防長官が“戦略的協力”計画を語った会見の記事(同前二七〇頁)である。
湾岸戦争の主役を演じたシュワルツコフ指揮下の中央軍の前身は、緊急展開統合機動軍であるが、私は、旧著『湾岸報道に偽りあり』の中で、この機動軍の形成が一九八〇年に方向付けられたことを立証するアメリカ議会の特別委員会議会記録の存在を指摘した。本文が三六八頁にも達する議事録そのものも、三〇〇部自費出版で頒布した。伏せ字の多い議事録には、日本の掃海艇派遣に関する報告も入っている。
ゴラン高原出兵にいたる経過には、まだまだ深い秘密の交渉経過が潜んでいるのである。
[後略]
---------- 引用ここまで ----------
以上。