北村光寿くんの落雷事故裁判 ( 事例No.S960813 )



 以下は1996年8月13日、高知県高知市の私立土佐高校北村光寿(みつひさ)くん(高1・16)が、大阪府高槻市で開催されたサッカー大会の試合中に落雷を受け、両眼と下半身などに重い障がいを負った事故を受けて、責任の所在を求めた民事裁判の最高裁法廷で、母親の北村みずほさんが読み上げた陳述書の内容です。




北村みずほさんの陳述(全文)

2006年 2月13日 最高裁判所・第二小法廷にて朗読


 台風の影響で遠雷があり、真っ黒い雲が押し迫ってくる中、引率の先生・主催者から何の安全配慮もされず、試合が開始され、息子は雷に直撃されました。
30分近く心肺停止でまるで死人のような光寿と対面した時、私はたった16年しか生きていない息子をここで死なすわけにはいけない、どうにかして息子の命を救いたいと必死に看護をしてきました。


 私たちがここに息子とともに口頭弁論に参加することが出来ましたこと、ありがとうございます。


 事故から1年7ヶ月入院して退院まぎわに二度と見る事が出来ない、自分の足で歩くことが出来ない光寿は引率の先生に「ぼくの身体を元に戻してください。ぼくがこうなったのは引率の責任ですよ」と訴えました。そばで聞いていた私は、調べたくても自分で調べることが出来ない息子に代わって真相を調べ始めました。


 学校・教師・主催者の皆さんが子供向けの本に「遠雷は危険信号」と書かれているように、雷に対する知識をもっていれば、この落雷事故を回避することができたのです。それにもかかわらず、たくさんの生徒の命を預かる教育者が「雷現象に無知」であることが免責の理由とされるような判決は納得できません。このような無責任が通るならば、今後も、(生徒の)野外活動で同じような事故が繰り返し起きるでしょう。


 私たちは学校管理下で「命や安全」を軽視した地裁・高裁の判決をどうしても認めることが出来ず、原審判決を是正してもらいたく、人権擁護の最後の砦である最高裁へ上告をしました。


 16歳でこれ程重大で重度の障害を負わされた息子の前途は暗澹たるものです。息子の暗闇の心に明かりを与え、一人の人間として堂々と生きて行く事が出来るように力を与え、そして、これからの未来あるこどもたちのために生命と健康の保障のもとで、将来の幸福追求のための学習が保障されるような判決を命じてくださるよう心から願っております。








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