自閉症児転落事件
事件概要: 2004年11月26日、東京都小金井市立第二小学校で、自閉症のNくん(小3)が、校舎2階の体育館倉庫への出入りを叱られ、倉庫内に閉じ込められたことにパニックを起こし、窓から約5メートル下に転落。下あごに全治1か月のけがをしたほか、奥歯5本が欠けた。 |
平成18年12月14日 |
母親の陳述書 |
私たちの息子(次男)は自閉症という障害を持って生まれてきました。 私たちは今回、同じような思いをしている自閉症の子どもが少なくないことを知りました。息子のことをうやむやにしてしまっては、またどこかで繰り返されると感じたのです。 裁判を起こすことには戸惑いがありましたし、正直なところ大きな決断でもありました。それでも、裁判所の判断を伺いたかったのです。どうか、自閉症の息子の未来に希望が持てますよう、ハンデのある子どもたちが不利益をこうむることの無いよう公正なご判断をお願い申し上げます。 |
父親の陳述書 |
裁判官の皆様、今回の私たちの裁判にあたって、ぜひとも自閉症児に対する認識をより深めていただき、ご理解のある判断をいただきたく、以下の三点をお願い致します。 第一点目ですが、言わば障碍(しょうがい)児教育のプロフェッショナルとも言える心障学級の先生とそれを育てた学校長、さらに学校を指導する立場の教育委員会の起こした、とても深刻な事件だということを改めてご認識いただきたくお願い致します。 G先生は、5年間、同じ心障学級で教えていました。この長い間に、G先生が障害児教育の専門知識を十分持つことができなかったこと、また学校や教育委員会が指導することができなかったことが問題ではないかと思います。 第二点目ですが、これまで数多くあると思われます健常児の学校事故の裁判例とは全く違う判断基準をもってご審議いただきたくお願い致します。一般の子どもはこうだからとか、一般の指導はこうだからといった基準ではなく、自閉症児はこうである、自閉症児教育はこうであるという基準をもってぜひともご審議ください。 今回、学校長や市の教育委員会が“健常児なら話せるからいいけど、自閉症児は話さないから事故原因がわからない”と言って事故原因を曖昧にしたことこそ、大いなる差別だと私たちは思っています。こんなことが、常識と判断されるようでは、障碍児やその保護者たちは学校で起こった理不尽な出来事に対して、いつまでたっても泣き寝入りを繰り返さなければいけなくなります。 さらに、第三点目としては、今回の先生の行為は教育委員会が報告書で書いている「不適切な指導」などというものでは絶対にないということを認めていただきたいということです。 今回の先生の行為は、自閉症児である息子が言葉による指導を理解しづらいということを知っていながら、強い叱責を繰り返し、パニックを起こさせた上に倉庫に閉じ込めるなど、自閉症児を持つ親にはとても信じられない、あってはならない行為です。強い叱責は、息子にとっては「言葉」ではなく「暴力」となったのです。閉じ込めた行為自体、なんら「指導」の意味も意図もない「虐待」と言えるものです。 密室から逃げようとして2階から落ちた息子は運良く生きていましたが、心身ともに深く傷つきました。もう誰にもあのような痛い思い、怖い思いはさせたくありません。 私たちのような障害のある子どもの親は、普通の子どもの親よりも、学校に対して「預かってもらっている」という意識を強く持っています。極力、学校とはトラブルを起こさないようにと思っている親は多いのではないでしょうか。 でも、何も言わないことが子どもたちのためになるとは思えません。私たちにとっても大変な裁判になるかもしれませんが、この裁判でしっかりとしたご判断をいただくことが、私たちの息子のためだけでなく、多くの障碍を持つ子どもたちのためになると思っています。どうぞ、この思いをご理解いただいて、ご審議いただきたくお願い申し上げます。 |
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