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第 150 国会報告
本会議
2000年11月13日

あっせん利得処罰法案代表質問


150回国会本会議2000年11月13日あっせん利得処罰法案代表質問

○大脇雅子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題になりました自由民主党、保守党、公明党共同提出、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案について質問いたします。

あっせん利得の禁止は、第二次橋本内閣当時、ロッキード事件で受託収賄罪で有罪になった佐藤孝行入閣問題を契機に社会民主党が提起し、その後自民党がこれを受け入れず、我が党の閣外協力解消の原因の一つにもなった重大なテーマです。

そこで、本法案の制定を必要とする日本の政治風土について、森総理及び発議者がどのように認識しておられるか、伺いたいと思います。

そこで、私の基本的な疑問について述べたいと思います。

民意を行政に反映させるのは正当な政治活動ではありますが、なぜ日本の民主主義は、政治家により民の声をお上、官僚に届けることから始まるのでしょうか。陳情、要請という行為は官尊民卑的行動ではないのか。国民の声は、官僚に届ける前に、議員としてそれを立法や政策の形にすべきであり、それをしないのは議員の怠慢ではないかということであります。これまで、予算配分から就職の世話に至るまで、さまざまな政治家による口ききが行われ、自民党内からは、支持者に頼まれて口をきくことは政治家本来の仕事である、政治家はあっせんする動物だという声がありました。政官癒着とか族議員と呼ばれて、あっせん行為がシステム化していることこそ日本の政治腐敗の根源ではないでしょうか。

あっせん利得の禁止法案の審議を、政治とは何か、政治家は何をすべきかを根底から考える機会にしなければなりません。議員は全体の奉仕者であり、特定の個人や団体の利益のために口ききする行為は、本来のあるべき政治活動とは言えない。加えて、口ききの見返りに利得をすれば、行政の公正な執行をゆがめ、国、地方を問わず、政治家や政治への不信を生むことになります。あっせん行為は日常的な政治活動とお考えなのか、この法案が政治活動の自由を制約する危険があると考えていられるのか、総理のお考えをお聞きします。

一九五八年に、公務員の一層の綱紀粛正を求める世論の声に押されて導入されたのが、あっせん収賄罪及びあっせん贈賄罪でした。その際、政府は、危険な副作用を伴うおそれがあるので、漸進的に事を運ぶのが適当であるとしていました。その結果と言えましょうか、国会議員で起訴されたのはただの二件です。

そこで、このあっせん収賄罪におけるあっせんの定義について、そして、なぜこれまであっせん収賄罪による国会議員の検挙件数が極端に少なかったのか、その理由をどのように受けとめていられるのか、法務大臣にお尋ねいたします。

次に、本法案の主な問題点について質問します。

今回の法案も、構成要件が厳格であったり、また要件があいまいであったり、多くの抜け道が用意されていて、既に効果が乏しいのではないかと危惧されております。

第一に、立証の難しい請託の要件に加えて、権限の影響力を行使してという構成要件は、収賄罪に言う職務権限とどのような関係になりますか。これは、あっせん収賄罪の新設の際、見送られた要件であります。実際に職務権限条項を置いたと同様の効果を生むのではないかと危惧しますが、いかがでしょうか。

第二に、第三者への利益の供与について、与党は、政治家本人らの支配が事実上及ぶ場合は本人と一体とみなすとしています。まず私設秘書は、給料の出所が異なるだけで、公設秘書と同じ議員の仕事をしているのですから、実態を考慮した場合、行為の主体から除外する理由はありません。現に今も、中小企業向け融資保証制度にまつわる西川太一郎衆議院議員と山崎都議の私設秘書の事件の例があります。議員とあうんの呼吸で口ききをし報酬を得た場合など、網からこぼれるときがあります。地方議員の場合は公設秘書を持たないのですから、実行行為を免罪することにはなりませんか、森総理の見解を伺います。

第三に、与党は、金額や利得の時期から対価性があると判断される場合は処罰の対象とするという方針のようです。しかし、対価性を判断する基準が明らかになっていません。本人の支配力が及ばないところに金銭を供与して、複数の業者が複数の議員を介在させるなど、依頼と口ききと対価の支払いが複雑に絡み合う場合も想定すべきであると考えますが、発議者はどのようにお考えですか。

第四に、行為の対象を契約と行政処分に限定したのは、予算の箇所づけや特定業界への税の優遇、政策の立案など、核心部分を除外しています。対象範囲は行政全般とすべきであります。

第五に、利得の内容を財産上の利益に限定しますと、情交関係の提供、供応、票の取りまとめ、就職のあっせん、投資情報の提供、後援会や選挙活動などはすべて除外されることになりますが、問題ではありませんか。

最後に、私は、基本的事項について総理にお聞きしたいと思います。

政治資金規正法附則第十条は、「施行後五年を経過した場合においては、」「会社、労働組合その他の団体の政党及び政治資金団体に対してする寄附のあり方について見直しを行う」としております。企業・団体献金こそ政治の清廉と公正さを損なう根源的なものであると確信しますが、総理は、法の趣旨を尊重し、この条項に従い、企業・団体献金について見直しをされるお考えはありませんか。

政治の倫理は議会政治の根幹であります。政治家みずからが自律的に浄化に努めなければなりません。政治倫理審査会はほとんど空洞化し、十分に機能していません。国会法を改正して衆参に政治倫理委員会を新設して、議院の自治・自浄能力を高めるべきであります。

最後に、利益誘導型の政治を断つために、森総理の政治浄化の御決意を重ねてお伺いして、質問を終わります。(拍手)

  〔衆議院議員尾身幸次君登壇、拍手〕

○衆議院議員(尾身幸次君) 大脇議員にお答えを申し上げます。

本法案の制定を必要とする日本の政治風土についての認識いかんとの御質問がございました。

まず、今日、国内外の社会経済の急速な変化の中で、これまでのような官僚主導では政策立案と改革の実現は困難になりつつあります。政治には、今や総合的な政策を立案し、変化にスピーディーに対応することが強く求められていると考えます。このとき、この状況において、政治の担い手である政治公務員は、みずからの政治活動を厳しく律し、政治活動の廉潔性、清廉潔白性を保持し、これによって国民の信頼を得ていくことが要請されていると考えています。

その意味で、今回、あっせん利得処罰制度を創設することは、まさに時代の要請であると認識するものであります。

なお、あたかも自民党は二年前は消極的であったかの発言がございましたが、当時、我が党も国会議員の政治倫理確立法案を提案した経緯もあり、決して消極的との御指摘は当たらないと考えております。

次に、我が国の政治風土についてでございますが、現実の政治制度、政治活動の実態、さらには国民の政治意識などの政治的、経済的、社会的諸条件や我が国の歴史的所産などを総合的に分析、検証する必要があり、一概に論ずることはできませんが、私は、今政治に求められているのは、国民の信頼を得る透明でわかりやすい政治の実現であると認識しております。

その意味で、今回の本法案はその一助になるものとかたく信じているものであります。

本法案の権限に基づく影響力の行使と刑法百九十七条の収賄罪に言う職務権限との関係についてのお尋ねでございますが、単純収賄罪や受託収賄罪で「職務に関し」と規定しているのは、これらの罪の成立に際して、わいろが職務を行う公務員の職務権限に属する行為に対する報酬であるか否かが問題になるということであります。

一方、本法案では、あっせんされた公務員が行う職務に関して、公職にある者等が何らかの権限を有しているかを問題にするものではありません。

本法案においては、公職にある者等の権限は、公職にある者等が職務を行う公務員に対して権限に基づく影響力を有しているか否かという場面で問題になるのでありまして、刑法上の収賄罪とは権限が問題とされる場面が異なるものであると理解しております。(拍手)

  〔衆議院議員漆原良夫君登壇、拍手〕

○衆議院議員(漆原良夫君) 財産上の利益の授受がいかなる場合にあっせん行為の報酬と認められるかという御質問でございますが、このことは、具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題でございまして、一律に基準を示すということは不適当であると考えております。

なお、政治献金については、社会通念上常識の範囲内での政治献金であればあっせん行為の報酬と認めることは困難でありまして、これを受けても本法案の罪の適用対象とはならないものと考えております。

しかしながら、政治献金の名をかりてあっせん行為の報酬である財産上の利益を実質的に本人が収受したと認められる場合には、本法案の罪が成立し得ることを念のために申し添えておきたいと思います。

また、複数の業者や議員が介在し、事案が複雑な場合も想定すべきではないかとの御質問でございますが、そもそも、現実の法律の運用に当たりましては、単純な事実関係の場合ばかりではなく、事実関係が複雑に入り組んでいる事件も多々あることは当然でありまして、この法案につきましても、そのことは当然の前提として立案を行っているところでございます。

事実関係がどのように入り組んでいる場合でありましても、本法案の罪が成立するか否かは具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題でありまして、処罰すべき事案は処罰されるものと考えております。このことは、法律家でいらっしゃる先生もよく御理解いただけるものと考えております。

以上でございます。(拍手)

  〔衆議院議員小池百合子君登壇、拍手〕

○衆議院議員(小池百合子君) 報酬を財産上の利益に限定するのは問題ではないかとのお尋ねがございました。

結論から申し上げますと、何ら問題はございません。

刑法のわいろ罪で言うわいろとは、財産上の利益よりも広範な概念でございます。情報、職務上の地位の提供、さらには異性間の情交等、およそ人の需要、欲望を満足させるに足りるものであればよいということは御承知のとおりでございます。

しかし、本罪は、わいろ罪とはそもそもその保護法益を異にしております。また、本罪が前提といたしておりますあっせん行為は、公務員に正当な職務行為をさせ、または不当な職務行為をさせないというものであってもよいこととされております。

これらのことを考慮いたしまして、本罪の保護法益であります政治公務員の政治活動の廉潔性及びこれに対します国民の信頼を端的に保護するためには、処罰対象を政治公務員の活動において最も問題とされます財産上の利益の収受に限定すれば足りるとの判断をしたものであり、ゆえに、報酬を財産上の利益に限定することには何ら問題はないものと考えた次第でございます。(拍手)

  〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕

○国務大臣(森喜朗君) あっせん利得罪処罰法案の必要性及び我が国の政治風土について御質問をいただきました。

政治倫理の一層の確立のためには、まず何よりも政治家一人一人の自覚が大切であると考えます。しかしながら、政治家と金をめぐる事件が絶無とならず、遺憾ながら国民の政治不信が深まっているのが現実であります。

こうした中、あっせん利得罪法案につきましては、国民の政治に対する信頼を高めていく上でも極めて重要であると考えており、今国会で早期に成立させていただきたいと考えます。

あっせん行為と日常的な政治活動との関係及びあっせん利得処罰法案が政治活動の自由を制約する危険性の有無について御質問をいただきました。

議員御指摘のとおり、私としても、政治家が口ききで私腹を肥やすようなことは正していかなければならないと認識しております。一方、いかなる行為が議員御指摘のあっせん行為に該当するのかは必ずしも明確ではないと考えますが、政治は国民の要望を幅広く行政に反映させるという大きな役割も有していると考えております。

したがって、法制化に当たっては、こうした政治の仕組み、機能をいたずらに制約することがあってはならないと考えており、このため、解釈次第で適用範囲が変わることのないよう、犯罪の構成要件を明確にする必要があると考えております。

与党案においては、ただいま申し上げました論点を十分に踏まえて、対象行為や処罰対象などを明確に定め、実効性の確保に努められるとともに政治本来の機能に配意されたものと承知しており、御指摘のように、与党案が政治活動の自由を制約する危険があるとは考えておりません。

第三者供与と行為主体としての私設秘書についてのお尋ねがございましたが、両者は別個の問題であると認識いたしております。

行為主体としての私設秘書につきましては、本法案は政治に携わる公務員の政治活動の廉潔性とこれに対する国民の信頼を保護しようとするものであり、処罰の範囲を公務員ではない私設秘書にまで拡大することは不適当であるとの考えなどから、私設秘書は処罰対象から除外されたものと承知しております。

また、第三者供与につきましては、本法案においては、現在のあっせん収賄罪においても第三者供与規定が設けられていないことの均衡との考慮などから、第三者供与を盛り込んでいないものと承知いたしております。

企業・団体献金に関してお尋ねがありました。

企業・団体献金については、政党本位、政策本位の政治を目指す政治改革の理念を踏まえ、既に本年から政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されたところであります。一方で、政党に対する企業・団体献金につきましては、最高裁判例でも、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として、政治資金の寄附の自由を持つことは認められており、これをおよそ悪と決めつける論拠は乏しいと考えます。

いずれにせよ、政治資金のあり方につきましては、透明性を高めつつ、民主主義のコストをどのように国民に負担していただくかという観点から、各党、各会派において御議論をいただくべきものと考えます。

政治倫理審査会について御質問がございました。

衆参両院において、政治倫理の確立のため、政治倫理審査会が設置され、国会議員が行為規範等の規定に著しく違反し、政治的、道義的に責任があると認められるかどうかについて審査するものとされておりますが、そのあり方については、国民の政治に対する信頼を高めるとの視点から、各党、各会派において御議論いただくべきものと考えます。

最後に、政治浄化のための決意についてお尋ねがありましたが、政治が国民からの信頼を得るためには政治家が口ききをして私腹を肥やすようなことは正していかなければなりません。政治倫理の確立は議会政治の根幹であり、国会議員は主権者たる国民の代表であることを自覚し、政治家の良心と責任を持って政治活動を行い、国民の信頼にもとることがないように努力することが求められており、私自身もそのために最大限の努力を行う決意であります。

残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

  〔国務大臣保岡興治君登壇、拍手〕

○国務大臣(保岡興治君) 大脇議員にお答え申し上げます。

あっせんの定義についてお尋ねがございました。

刑法百九十七条の四のあっせん収賄罪に規定するあっせんとは、請託の内容に従って、被あっせん公務員に対して、その職務に関して、不正の行為をするように、または相当の行為をしないように働きかけ、仲介の労をとることを言うものと解されております。

あっせん収賄罪による検挙件数がこれまで極端に少なかった理由について、また、この理由についてどのように受けとめているかというお尋ねがございました。

あっせん収賄罪につきましては、被あっせん公務員に対する職務上不正な行為をさせること、または相当の行為をさせないことのあっせんを要件としている犯罪でありますが、先ほどからお答えしているとおり、平成七年から平成十一年までの最近五カ年で見ましても三十四名を公判請求しているところであり、その数が少ないとは考えておりません。



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