第 150 国会報告
労働・社会政策委員会
2000年11月2日
KSD問題、労災保険法改正
150回国会労働・社会政策委員会2000年11月02日KSD問題、労災保険法改正
○大脇雅子君 法案の改正点に先立ちまして、先回に引き続きまして、財団法人KSDの問題について二、三お伺いをしてから、法案の改正の問題点に触れさせていただきたいと思います。
まず、労働省が監督官庁として是正措置を講じるようにとKSDに対しては指導されていると思うのですが、どのような内容で、いつから、具体的などのような問題に対して指導をされていたのか。そして、それに対してKSDはどのように是正を行ってきたのか。さらに、労働省としてはそれをどのようにして確認してきたのか、明らかにしていただきたいと思います。
○政府参考人(野寺康幸君) 少し長くなりますけれども、お許しを願いたいと思います。
KSDに対します主な指導監督の状況でございますが、平成五年の三月に立入検査をいたしたわけでございます。災害補償の事務処理要領の策定が、これがきちんとできておりませんでしたので、この点について指導をいたしました。同年五月に指導項目を改善してまいりまして、報告がございました。
また、ちょっと飛びますが、平成十年七月には評議員会の設置、これが内閣の方で各公益法人が設けるべしということが決まっておりまして、そういう意味でこの評議員会の設置、あるいは役員数が余り肥大化しないようにと、抑制しろといったような趣旨の改善勧告をいたしております。
さらには、同年の、平成十年の十一月には、豊明会におきます補助金の使途が不明確であると。つまり、豊明会に出しております補助金と豊明会の自前収入のどちらでどの事業をやっているのか明確に区分されていないという点につきまして、区分経理を明確にするように指導したところでございます。これについては、残念ながら、是正が確認されていないこともございました。
そういう意味で、本年五月になりまして立入検査を行いまして、八月の十日に、一つは評議員会、それから評議員会の設置を「寄附行為」の中で明確に定めるといったような問題。それから、豊明会に対しますKSD自身の補助金の審査体制。それから、補助金の使途の明確化並びに組織、職員、場所について豊明会といったようなところとKSD本体を明確に区分しろといったような区分の問題。それから、経理を明確に区分しろという問題。さらに、先ほども御指摘がございましたが、KSD会館の使用を適正化する。それから、KSDの行います事業を、例えば、本来公益法人としてあるべきではない宗教法人への融資であるとか、あるいは株式会社ケーエスデーブライダルへの便宜供与であるとか、そういった点につきまして改善をするように勧告いたしたところでございます。
今般の改善勧告に対しましてKSD側からは、九月八日の日付で文書によりまして、これら指摘した事項について大部分につきまして改善する旨の報告をいただいておるわけでございます。
ただ、私どもとしては、この結果を徹底するために、改めまして九月の二十九日付で、期限を付して、その期限までに改善しろといったような形の勧告を出してございます。
以上、概略でございますが。
○大脇雅子君 そうしますと、平成五年の三月二十五日に立入検査を最初されているわけですが、この場合に何か広報誌の掲載における関係会社や団体との関係を一層明確化するようにという指導もしておられると思うんですが、これは先回問題になりました自由民主党の機関紙への広報というような問題も入っていたわけでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 先ほどの経過の中で概略を申し上げたので、そういった抜けた点があった点をお許し願いたいと思うんですが、先生御指摘のその点は、平成五年三月三十一日の文書の中で指摘している問題でございます。これはKSDの広報誌、「沙羅双樹」というものがあるわけでございますが、その中に事業広告を載せておりますが、その広告の中でKSD本体がやっている事業と、例えば関連会社ケーエスデーブライダルであるとかそういった別会社、営利法人がやっている事業とをごっちゃにして載せていたということがございますので、そこの点を、本体がやっている事業なのか、あるいは営利事業から広告料を取って、そしてこの機関誌に載せているのか、そこを明確に区分しろと、こういった指摘をしたわけでございます。
○大脇雅子君 そうすると、まずその関連事業の営利事業の広告というのはここで、この勧告でとまったわけですか。
○政府参考人(野寺康幸君) 今申しましたように、KSD本体の事業と関連企業、要するに一般的な民間企業の広告とがどっちがどっちなんだかごっちゃになっていたわけですね。営利企業の広告は営利企業の広告、KSD本体の事業の広告は本体の事業の広告、そこを明確にしろと、こういう指摘でございまして、それはその後是正されております。
○大脇雅子君 そうすると、今、私がお尋ねした自由民主党の機関紙への広告等その他はどうなったわけですか。その点は問題にならなかったんですか。
○政府参考人(野寺康幸君) この平成五年の指摘の中では、そういったことを問題にしたわけではございません。
○大脇雅子君 それから、平成十年の七月三十日は文書を交付して評議会の設置等されておりますが、それとともに役職員数や組織の肥大化の抑制というようなことを指導しておられると思うんですが、このとき、役員報酬の非常に大きい額ということについてはどのように認識されていたんでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) これも前に御答弁申し上げたわけでございますが、この平成十年の際に役員報酬のことを問題にしたわけではございません。ただ、こういった時点、ごく最近に至るまで私ども、私どもの所管の公益法人につきまして役員報酬全体の額を把握しているという形で監督をしてまいりました。
KSDの場合には、たしか二十三人の役員で二億八千万か九千万ぐらいの額でございますので、これを二十三で割りますと一人当たり一千万ちょっとと、こういう額でございますので、その中でもちろん例えば理事長の方は若干高いでしょうし、そういった高低はあるんだという前提でございますが、全体として平均がその辺であればそれほど高くはないんではないかと、こういう認識であったわけでございます。
○大脇雅子君 そうすると、最近になって七千万という役員報酬を取っておられますし、それからアイム・ジャパンにおいては二千万近い報酬を取っておられて、合計一億円というようなことが報道されているわけですが、これについての是正勧告などをなさるおつもりはありますか。
○政府参考人(野寺康幸君) 先ほど申しましたように、私どもが古関理事長個人の年俸が七千二百万であるということを認識いたしましたのは、この事件がこういう形をとりまして大々的に報道された後であるというふうに御認識いただいたと思いますけれども、今後につきまして、こういった金額というのは社会的に見まして不当である、不当に高額であるというふうに思っております。
現在、理事長は職を辞しまして、空席でございますので給与は払っていないわけでございますけれども、仮に今後、理事長といったようなものが存在する場合には、世間的な常識の範囲内と、当然内閣におきます決定事項もございますが、そういった範囲内におさまるように指導はするつもりでございます。
○大脇雅子君 それから、平成十年十一月に、いわゆる豊明会におけるKSDからの補助金の使途の明確化について、そして補助金と他の経理との区分の経理の明確化について指導をしておられるわけですが、このとき、村上議員などの党費を肩がわりしているというような実態については労働省としては認識があったのでしょうか。それから、その補助金というものが明らかに豊明会に流れているという認識があったわけですか。
○政府参考人(野寺康幸君) 改めて申しますが、KSD本体から特に福利厚生事業を補助金の範囲内でやるようにということで豊明会が請け負っているわけでございますので、私どもの所管公益法人でございますKSDから出ているその補助金の額の範囲内でそれが適正に使われているかということを私どもは監督する義務があるわけでございます。
その意味で、この補助金が適正に使われているか、あるいは補助金を使ったと称するその項目について、果たしてそれが補助金で賄われたのか、あるいは豊明会の独自収入で賄われたのか、その区分が明確でないという認識を持っておりましたので、その区分を明確化しろと、こういう要求をしているわけでございます。
国会の先生方に豊明会としてどのようなアクションをとられたか、それは私どもの関知するところではないというふうに思っております。
○大脇雅子君 そうすると、最近また、平成十二年五月に立入検査をされたと。この場合には「寄附行為」の所要の改正を求められたということですが、これはどういう改正を求められたんでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 一つには、一つにはというか、前々から指摘してございますこの評議員会、これを政府の決定として各公益法人に設けさせろと、こういうことになっておりますので、この点を、評議員、評議員会を設けるという趣旨を「寄附行為」の中に明記しろと、こういう趣旨の要求をしたわけでございます。
○大脇雅子君 それから、この豊明会との関係における審査、検査体制を確立するように、そして補助金の使途の明確化等、その組織、職員、場所について明確な区分をするようにと。机が二つ並んでいるとか云々というようなことが新聞紙上言われているんですが、この豊明会との関係における審査体制の確立、補助金の使途の明確化というのは一体、もう少し具体的にどんな指導をなさったんでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 先ほど申しましたように、豊明会という任意団体にKSDの方から補助金が流れておりまして、それが福利厚生事業に使うということで流れているわけですが、これは、まずもって行政が使途をチェックするという以前にKSD本体の中で果たしてそれが福利厚生事業にちゃんと使われているかどうか、こういう審査体制をつくれと、こういう要求をしているわけでございます。
それから、使途の明確化の問題でございますが、これも先ほど申しました豊明会がやっておる福利厚生事業の中で果たしてその支出が、その費用がKSD本体から来た補助金で賄われたのか、あるいは豊明会の独自収入、これは主として会員の分担金あるいは雑収入といったようなものでございますが、こちらの方で賄われたのか、そこが書類上明確に区分されていないという点、これを明確にしろと、こういう要求であったわけでございます。
○大脇雅子君 そうすると、先回もさまざまに言われたように、会費とか雑収入が非常に少ないにもかかわらず補助金が非常に過大であるということで問題になっているわけですが、最初は平成十年十一月に指導しておられて、十二年五月にさらに立入検査をして改善勧告書を交付されたと。どうしてこれがなかなか改善されなかったのか、余りにもずさんなまま今日まで至ったということについて非常に大きな疑問があるわけです。
指導体制が甘かったのではないか、あるいはまたいわゆる理事長の政治的な力が強かったのかどうかわかりませんが、余りにも勧告に対して不遜というか、そういう改善の傾向がずっと続いていて司直の手が入ったということに対して納得がいかないんですが、その点はどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 今の点でございますが、順を追ってお話ししますと、平成十年の指摘の際には、これは口頭で指導しております。その際に、KSDの側からは、平成十一年度においてこれは改善する、こういう御回答をいただいているわけです。しかしながら、平成十一年度になりまして是正されていなかったわけでございますので、翌年の、ことしの平成十二年度に当初の立入検査でこの結果を、口頭指導よりは若干強いと私ども思っておりますが、文書で勧告したわけでございます。
○大脇雅子君 そうしますと、これは九月八日付で指摘した部分は改善すると言っているわけですが、現在に至るもどのような対応をKSDはとっているんでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) これは、この文書を交付した後に、KSDの幹部の方から今度はちゃんとやりますというお話をいただいていたところ、今般のスキャンダルと申しますか、捜査当局が入った、こういう事態になって、正直申しまして現在KSDは混乱状態にあるわけでございます。
ただ、私どもは、行いました改善勧告が今後早急に適切に実施されるように厳しく監督してまいりたいというふうに思います。
○大脇雅子君 平成十二年五月にKSD会館の使用の適正化ということが改善勧告に入っているわけですが、先ほど木俣議員も質問されましたけれども、本来ならばKSD会館というのは会員のために使われるべきものであり、登記もしっかりKSDのものにしなければならないというわけですけれども、使用の適正化という場合に、やはりここから私は古関一家は退去するということが必要だと思うんですが、こういう点についてはどのように指導しておられますか。
○政府参考人(野寺康幸君) この会館については、要するに最初KSDにいらっしゃるお客様をお迎えする迎賓館というような御説明があって、その後にKSD会館ということで広く会員の方がいろんなイベントの際に使う、こういう趣旨で私ども聞いておるわけでございます。もちろん、これは部分的に個人所有の部分がございまして、それぞれKSDの所有財産として登記されている部分と古関何がしの個人財産として登記されている部分に登記上分かれているわけでございます。
ところが、ことしの五月の実態調査、この会館の中に入りまして実態を見ましたところ、どうも一般の会員が使っているような形跡がないということがあったものですから、それではまず会員が使うというふうに言っている以上は会員が使える体制をきちんととる必要があるんではないか、これはまず規定をつくって会員が利用することができるようにすべきではないか、こういうふうに考えたわけでございますけれども、その後いろんな事情がマスコミ等で報道されております。
現在のところ、KSDの方でみずから改革案を出しておりますが、その中でもこのKSD会館については早急に処分するということを表明しておりますので、今後はその辺を十分見守ってまいりたいというふうに思っております。
○大脇雅子君 それからさらに、KSDの行う事業の適正化で、宗教法人へ霊園開発の融資とか、あるいはケーエスデーブライダル、関係会社への便宜供与の是正、KSDからここへ出た資金というのは回収が可能だと考えていらっしゃるかどうか、お尋ねします。
○政府参考人(野寺康幸君) 例えば、御指摘のうち霊園の方でございますが、正善院というお寺がお墓の分譲をしたいということで造成をしたいわけですが、その費用がないということで金融機関から借りようとした場合に、担保が十分でないので借りられない、こういう事情があったようでございまして、そのときにKSDが担保を提供して銀行から借り、これを又貸しした、こういうことになっているようでございます。
私どもとしては、こういった営利企業に便宜を図るということは公益法人としてはあってはならないというふうに考えておりまして、そういう意味でこれをやめろと、こういうことを言っているわけでございます。契約というものもございますので、若干改善に時間はかかるかもしれませんけれども、こういった営利企業に便宜を図ることをやめさせるというつもりでおります。
○大脇雅子君「寄附行為」の違反行為というのがさまざまあったわけですが、これを是正するというのはかかってKSDに加入した会員のいわば権利というものを回復するということが必要だと思うわけですが、これに対して、解約をしたいんだけれどもなかなか応じられないというような不満も私ども社会民主党のKSD問題ホットラインなどの訴えではあるわけであります。会員に対して収支報告も一切行われていないということもありますが、この点についてはどのような指導を行っていかれるつもりでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 私どもとしては、KSD本体について会員の方から解約したいということが事実上難しいというお話は届いておりませんが、万一そのようなことがあるとすればそれは大変な問題でございますので、今後そういった点に注意しながら指導してまいりたいというふうに思います。
○大脇雅子君 収支報告の点はどうでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) 御指摘の点も含めまして、ほかの点も経営上のいろいろな問題につきまして今後情報公開がもっと図られるべきだというふうに私どもは考えております。
それにつきましても、KSDのみずからの改革案の中に、会員等に対して透明性を確保すること等、運営についての情報を開示するといったような一項を入れておりますので、今後この点が十分に担保されるかどうか見守ってまいりたいというふうに思います。
○大脇雅子君 実は、十一月一日に実施いたしました社会民主党議員団によるKSD調査におきましても、KSDは、「寄附行為」や各年度の収支報告書等、KSDの事業活動を確認する基礎資料の提供を請求したところ、すべて霞が関の方に差し出しているという回答でありました。この霞が関が警察庁をいうのか労働省をいうのか明確ではありませんけれども、今回のKSDに関する捜査を進めるためにも、労働省は情報公開を誠実にKSDに行わせるべく対応をしていただきたいと思います。労働大臣の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(吉川芳男君) KSDが十月十八日に発表したKSDの改革においては、会員等に対し透明性を確保するため、運営についての情報の開示を徹底することが盛り込まれているところでありまして、労働省といたしましては、今後、これまで労働省が改善を勧告してきた事項やKSDが発表したKSDの改革に基づき、KSDに早急に改革の実現を図らせるとともに、捜査の推移を見守りつつ、公益法人として適正な運営が行われるよう十分指導していく必要があると考えております。
さらに、社民党議員団に対して、基礎資料は霞が関に差し出しているという回答をしたとのことでありますが、これは、現在、KSDに対しては東京地検特捜部の捜査が行われ、同特捜部により関係書類が押収されていることからそのような回答になったのではないかと推測しております。
○大脇雅子君 それでは、法案について一、二点お尋ねをしたいと思います。
二次健康診断等給付について、これまでいわゆる死の四重奏と言われている肥満、血糖、血圧、血中脂肪の四項目すべてに該当しなければできないのではないかというような点について疑問が提示されて、四項目の中では例えば並列ではなくて、さらに危険度が一つでも非常に高いという場合、あるいは二項目が該当すれば労働者の請求を認めるということにすれば、労働者の健康維持のためには非常にこの制度が資すると考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) これは専門家の御意見を十分尊重しなきゃいけない分野であると私ども思っておりまして、専門家の、お医者さん方でございますけれども、検討の結果を踏まえまして、高血圧、高血糖、高脂質、さらに肥満、この四項目に該当する場合に、ほっておきますと飛躍的に過労死の危険が高まる、こういう状況の報告をいただきましたので、これを踏まえまして、この四項目に該当する場合に二次健康診断給付を支給しよう、こういうふうにしたわけでございます。
逆に、一項目でも二項目でも該当すればやってもいいんではないかというお考えがあるかと思いますけれども、他方で、先ほど来申しておりますように、こういった四つの項目はいずれも御本人の生活習慣に原因がある部分を否定できないわけでございますので、一方で労災保険の給付が事業主のみの保険料で成り立っている現状を考えますと、全面的に事業主に負担をさせるには、これはやはり相当過労死との関連性がより強い場合というふうに限定すべきではないか、こういう考えに基づいているわけでございます。
ただ、四つに該当せず三つにしか該当しない場合、あるいは二つにしか該当しない場合に、ほっておくということではございませんので、そもそも安全衛生法の中に一次健康診断の結果を尊重して事後措置を講ずるという規定がございますので、こういった中で問題は解決されているというふうに理解しております。
○大脇雅子君 法案の第二十六条二項に厚生労働省令で定めるということになっておりますが、この内容はどのようなものになるのでしょうか。
○政府参考人(野寺康幸君) これは、御指摘のように、二十六条二項で二次健康診断の検査内容を厚生労働省令で定めるということにしているわけですが、この際の考えなければいけない判断基準が三つあると存じます。一つは、脳血管疾患及び心臓疾患の発症のリスクを客観的に評価できる検査であるということが必要でございますし、二番目に、検査結果の評価方法が医学的に確立されておりまして、事業主がその結果でどういった就業上の措置が必要かを判断できる適切なものであるということが必要であると思います。最後に、全国の診療所等において広く実態問題として実施できる検査でなければ現実には受診が無理でございますので、そういった三つの条件を満たすような健診の結果というものを今後必要な検討を行って詰めてまいりたいというふうに思っております。
○大脇雅子君 法第六十六条の五というのは健康診断実施後の措置というのを定めておりますが、労働者の健康診断の結果の内容というのは重大なプライバシーであり、十分な保護がなされなければならないと考えます。
まず、そのためにどのような施策がとられているのか。さらに、適切な対処の方法として、配置転換その他で健康状態を理由として不利益取り扱いがあってはならないので、その点の配慮義務を使用者に義務づけるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
○政務次官(釜本邦茂君) 労働安全衛生法第百四条におきましては、健康診断の実施の事務に従事した者に対して秘密の保持が義務づけられており、これに違反した場合には罰則が科せられることとなっております。
また、同法に基づき定められた健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針においては、事業者は個々の労働者の健康に関する情報についてその保護に特に留意する必要があり、また就業上の措置の実施に当たって関係者へ提供する情報の範囲は必要最小限とする必要があるとしております。またさらに、労働者の健康状態を理由とした不利益な取り扱いにつきましては、同指針において、健康診断の結果に基づき就業上の措置等を決定することに当たっては、事業者はあらかじめ当該労働者の意見を聞き了解を得ること、医師等の意見を理由に安易に解雇等をすることは避けるべきであるなどとしております。
今後とも、同指針の周知徹底を図ることにより、労働者の健康情報にかかわるプライバシー保護を図りつつ、適切な就業上の措置がなされるよう引き続き事業者等に対する指導に努めてまいりたいと思っております。
○大脇雅子君 メリット制を適用することによって労災隠しがあってはならないという指摘などされておりますが、今回の改正の意義を踏まえて、実施のための決意について労働大臣にお伺いして、質問を終わります。
○国務大臣(吉川芳男君) いわゆる労災隠しの防止につきましては、これまでも労働基準監督機関において、臨検監督、集団指導等あらゆる機会を通じまして事業者に対しそのようなことが行われることがないよう指導を徹底してきたところでありますが、仮に労災隠しの存在が明らかとなった場合には、司法処分も含めて厳正に対処してきているところであります。
今後とも、あらゆる機会を通じまして事業者に対する指導を徹底するとともに、新たに建設業等の関係団体に対する指導文書の発出、医療機関用ポスター等の作成、配付、安全パトロール等を活用した啓発等の労災隠しの防止の取り組みを積極的に行うこととしております。さらに、労災隠し対策について、行政と労使がともに検討を行う場を設けることも考えております。
以上です。
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