第 147 国会報告
労働・社会政策委員会
2000年4月20日 07 号
雇用保険法
○大脇雅子君 失業者が増大して、雇用保険でそれを支えていくという基本的な枠組みで、雇用保険法というのはそういう意味で雇用政策の最も中核的な制度であると考えるわけです。
今般、三百日が百八十日になるという激変が行われる場合に、こうした失業者が増大しつつある中で、激変緩和措置を全くとらないで制度改革を行っていくということに、私は起こるべき結果というものに対して非常に危惧をするわけです。
激変緩和措置が財政的な中で、雇用保険制度の中だけでやっている場合にはなかなか難しいという御説明もわかるわけですけれども、やはり失業というのは経済政策及び雇用政策と連関しておりますし、政府が連帯をしていく制度だと森総理大臣は言われましたが、それならばやはり痛みというものをどう共有するのかということで、国庫負担が四分の一ということの原則にあれば、実際上は〇・五から〇・七兆円にすぎないわけであります。
私は、お尋ねしたいのは、激変緩和措置がこれまで検討されたのかされなかったのか。とりわけ国庫負担について四分の一を一四%に変え、また百分の五十六に変え、さまざまな折衝の中で四分の一という国庫負担率がいわば固定化しているのかどうか。大蔵省との交渉というのは一体どのようになされたのかということについてお尋ねをしたいと思います。
○政務次官(長勢甚遠君) 激変緩和措置が必要ではないかというお尋ねでございます。
この点につきましては、この法案を審議いたしました安定審議会におきましてもいろいろ御議論があったと承知をいたしております。
今回の改正の中で、いわゆる再就職を容易にするためのいろんな意味での施策の整備も図られつつあるという意味で、再就職の促進を別の意味で確保する手だても講じておるということ、また雇用保険制度の安定的な運用を図る上で早急な制度の再構築が必要であるということの観点から、公労使三者一致の意見として激変緩和措置を設けることはしないという結論に至ったというふうに承知をいたしておる次第でございます。
国庫負担につきましては、四分の一という原則に戻すということでございますが、将来いわゆる給付と収入のバランスが大幅に変わった場合には弾力措置も法律上明定されておるわけでございますので、これをどうするというふうな議論は特になかったように承知をいたしております。
○大脇雅子君 この点はやはり制度の仕組みとして私どもがどうしても納得できないということでありますので、将来に向かっても国庫負担率というものについては制度の中に組み込んでそれをふやす方向で検討すべきだと思いますが、この点、労働大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) 今回の改正に当たりまして、本来の姿に戻るということでお願いをいたしているわけですが、私も着任いたしまして、本来のあの料率、国庫負担分それから労使双方の負担分、これはどういう論理的な根拠であの料率が決まったのか、随分実は調査をさせていただきました。
しかし、やはりこういう場合は三者で負担するということでありますから、大体これくらいでお互いがそれぞれ負担しようと、どうも最終的にはそういう形で、政府が負担するのは四分の一がマキシマムでこれ以上は出す必要はない、そこまでの論理ででき上がったことではないようでございます。今回は、今までストックが随分ふえましたから、それでその料率をずっと段階的に下げてきて今日に至ったというのが実情でございます。
今回も本来の姿に戻ればそれで給付は賄えるかと、弾力条項を入れましたけれども、それで何とかセーフティーネットとしては御心配かけなくて済む、こういうことで実は本来の姿に戻させていただいた。
今の先生の御意見は、きょうの午前中の御意見にもございましたが、四分の一を三分の一にすべきだとか、いろんな意見がこれから出てくるだろうと思いますが、一応現段階では私どもとしては本来の姿に戻らせていただいて、何とかセーフティーネットとして皆さんに御迷惑をかけずにきちっと失業保険を払える、こういうことで、本来の姿と。
一回話し合ってできておる姿ですから、これを、私のところはだめだ、あなたのところが余計出せという議論をやり始めますと、これはエンドレスでございまして、要するに一番最初スタートしたときにそう決めたじゃないですかと。これはやはり一応の結論を得る場合の考えられた一つの選択肢であったわけでありまして、それに戻った、こういうことでございます。
○大脇雅子君 そういう選択肢の結果として給付日数が減ったということがあって、そこに激変緩和措置がしかれないということに対して危惧を表明するわけです。
雇用三事業についての執行率の低さということについては、私もこれまで代表質問で取り上げさせていただきまして、きょうの大臣や担当の方の御説明によりますと、これから研究をしていくと。そして、衆議院の附帯決議によりますと、実効性を検証して政策目的の重点化も図ると。さらに、新卒者など、この奨励金の枠をはみ出す形での使いようも考えていくという、かなり踏み込んだ御答弁があったということを歓迎するものでございますが、先ほどの執行率でいろいろと残ったものを計算いたしますと、約二千百億という金額があるわけですが、やはりここの中から見えてくる事象というのは、緊急性の高い中高年の非自発的失業者の雇用確保というものができていないということで、そうした失業者を雇い入れた事業者がほとんどいないという深刻な状況を雄弁に物語っているのではないかというふうに思うわけです。
ですから、現下の緊急対策として、私はこうしたものも激変緩和措置の財源というものに考えていったらどうか。特に、そうした給付に三事業を充てることについての制約が法的にあるのかどうかということについてお尋ねをしたいと思います。
○政務次官(長勢甚遠君) 先生のお尋ねは、余り執行率がよくない制度をつくり直すということは可能かということでございますね。
一つは、今回いろいろ手だてを講じております給付金の中には、労働省頑張りまして一般会計でとった給付金もございますので、これはちょっと別の問題だと思いますが、三事業の中の給付金は法改正を要するものもあるかもしれませんし、予算でできるものもあるかもしれませんが、工夫をすればそれなりに見直しは可能であるというふうに考えております。また、そういう方向で検討すべきものはしていくべきことだろうと思っております。
○大脇雅子君 ぜひ、激変緩和措置に私はこだわり続けているわけですけれども、そういうことが可能ならばそれも検討の視野に入れて検討していただきたいというふうにお願いをいたします。
それから、訓練延長給付制度を有効にこれから活用してセーフティーネットを検討するということが長谷川議員の御質問の中で出たわけですけれども、対象者が今のところ十四万と承知しているわけですが、こうした対象者の拡大の中でそれがどういうふうに検討されつつあるのかということと、とりわけ中小企業の離職者に非常に深刻な影響を与えるということがあるので、この訓練延長給付制度を言ってみれば優先的に活用する道があるのかどうかということについてお尋ねをいたします。
○国務大臣(牧野隆守君) 訓練受講中について給付期間が延長される訓練延長給付制度を有効に活用しながら職業能力開発を促進するということは、これは一つの手段として非常に大切な課題だと、こう考えております。
公共職業能力開発施設における訓練に加え、民間教育訓練機関に対する委託訓練、こういう制度も活用し、多様なニーズに対応した教育訓練機会の提供に、ぜひこういう時期であればこそフルにそれぞれ活用しなきゃいけない、こう考えております。
○大脇雅子君 教育訓練の対象者を拡大していくということについてはいかがでしょうか、検討されているのでしょうか。
○政府参考人(渡邊信君) この職業訓練の対象者も基本的には雇用保険の被保険者で再就職の難しい方ということでございますけれども、現在緊急の措置といたしまして、例えば学卒未就職、大卒、高卒等の方について一般会計による訓練を無料で行う等の措置もとっておりまして、こういった制度をこれからどうするかということは大きな検討課題ではないかと思います。
○大脇雅子君 中小企業からのいわば離職者に対する対応というのはどのようにお考えでしょうか。
○政務次官(長勢甚遠君) 中小企業に就職するとか雇用していただくという方については、大企業に比較して手厚くやっている制度もたくさんございますが、どの規模の企業から離職されたかによって区分をしておる制度はないと思っております。
○大脇雅子君 そうしますと、ますます中小企業からの離職者が深刻な状況に陥るということが現出するのではないかというふうに私は危惧するわけであります。
ちょっと時間がありませんので問題進みますが、制度の枠組みが自発的、非自発的という離職理由による給付体系への組みかえが行われたわけですけれども、この自発的か非自発的かということを認定するということについては全国の窓口での公平公正な法の適用と迅速な対応ということが必要になると思いますが、これに関してはいかなる具体的な方策を立てておられるのでしょうか。
○政務次官(長勢甚遠君) 離職理由についての客観的かつ公正な基準をきちんとしていくということが極めて大事であるということは再々御答弁申し上げておるところでございます。
これは、この法案が成立させた暁に労働省令で基準等を定めることにいたしておりますので、今後関係審議会におきまして、いろいろな実態もあるわけでございますので、それを踏まえて十分に検討いただいて、またそれの運用についても十分な指導をしていく、こういう体制を考えたいと思っております。
○大脇雅子君 離職を余儀なくされた者の主な例示として、倒産、解雇の場合、あるいは人員整理のための退職者、それから採用条件と実際の労働条件が著しく相違したことによる退職者、それから企業による故意の排斥により退職した者ということになっておりますが、この企業による故意の排斥により退職した者というのは一体どのような事例を考えておられるのでしょうか。
○政府参考人(渡邊信君) 典型的なものは、職場におけるいわば冷遇とか意図的な配転とか出向とかあると思いますが、セクハラなどもこれに含まれるのではないかと思います。
○大脇雅子君 そうすると、いじめなどももちろん含むわけですよね。
このような労働者については自己の申告を尊重していかなければならないということになるわけですが、例えば労働者が行政機関、例えば労働相談窓口などへ相談に行ったとかあるいは弁護士のところへ相談に行ったとか、あるいは医師の健康診断などがあったということがあれば、これはやはり企業による故意の排斥により退職した者というものの客観的な証明になるというふうに思うんですが、これの取り扱いはどのようにお考えでしょうか。
○政務次官(長勢甚遠君) 先ほど申しましたように、判断の基準はこれから審議会で御議論いただくことになるのでありますけれども、当然御本人の事情を十分踏まえて、権利義務にかかわることでございますから、本人の申し立て、御事情も十分尊重する形で運用していかなければならないということは当然のことだと思っております。
その際、今お話しのような弁護士さんですとか医師さんの相談なり受診なりということをどの程度活用するか、また必要な場合というのはどういう場合かというようなことも当然御議論いただいて、客観的な基 |