第 1999 決算委員会報告(閉会中) 国会報告
決算委員会
1999年10月27日
西村防衛政務次官強姦発言・クロイツフェルト・ヤコブ病
○大脇雅子君 十月十九日発売の「プレイボーイ」誌上での西村発言の内容は、憲法の根幹を冒涜するものであり、とりわけ社会民主党の女性議員に対して強姦を例えとする性差別の表現をもって語るなど、政務次官としてかつ国会議員としても品位を欠く発言であったと思われます。
先ほど首相は、こうした発言を西村議員がされることについて、図らざること、予想できなかったと言われましたが、一方、防衛問題の認識を深くしている、発言についても承知していたと言われておりました。
総理は、西村議員を政務次官に任命するについての危惧の声、大丈夫かという懸念の声を任命のときに知っておられたでしょうか。
○国務大臣(小渕恵三君) 簡単に申し上げれば、その時点においてそのような危惧はいたしておりません。なぜかなれば、政務次官として政府の立場に立ちますれば、当然政府の立場に立っての発言が行われるものであり、そのことは従来から閣僚あるいは政務次官の任に当たられた方々は、そのような日ごろの言動は言動といたしましても、政府としての立場について十分認識をして発言あるものと認識をいたしておったからでございます。
○大脇雅子君 それは任命権者として不明ではないでしょうか。新聞にもそのような不明を恥ずべきだという言論があります。
とりわけ、西村議員の発言リストを調べますと、「正論」、「諸君」、「ボイス」、「週刊文春」、「改革者」その他、その論文は二十に及ぼうとしております。当然任命権者としては知っておるべき事柄であり、そうした予想をすべき立場にあったと思います。
任命について、なおかつ責任がなかったと言われるのでしょうか、お尋ねいたします。
○国務大臣(小渕恵三君) これも先ほど来御答弁を申し上げておりますように、結果的に事実上更迭をいたさなければならなかったということを顧みますれば、まことに申しわけなく、その責任は深く痛感をいたしております。
重ねてでございますけれども、日ごろの言動のすべてを実は承知しておるわけではありませんが、委員会等におきまして、野党としての立場で私に対しての質問等について私は承知をしていることはこれは事実でございます。
ただ、政府となりました場合には、それなりの一つの大きな方向性について基本的に認識をして受諾したものということが事実でありまして、例えて大変恐縮でございますけれども、自衛隊の存在等につきましても、それぞれ当時社会党の先生方もお考えがあったかと思いますけれども、政府・与党として政府を預かるという立場になりますれば、その方向について、それぞれ閣僚あるいはまた政務次官になられた方々、その方向について御認識をされて御答弁等があったやに理解をいたしておりまして、そうした意味では、私自身が十分そのことを確認しなかったという意味では責任を痛感いたしておりますが、申し上げたように、私としては、政府として大きな責任を国民全体に預かるという立場においては、日ごろ個人としての見解は見解といたしましても、やはりその与えられた責任は政府としての基本方針にたがうものでないという理解のもとに任用したわけでございまして、その点が結果的にそうした国民的不信を抱かせたということについては、私自身の責任を回避するものでないと先ほど来申し上げておるところでございます。
○大脇雅子君 「プレイボーイ」のところで特に私が注目するやりとりは、質問者が、「いちばん危険な西村真悟を政務次官にしたのには、そういう意味があるわけですか。」、「西村 なにごとも、ブレイクスルーせなアカン時期になっているんですよ。」、「大川 意図的にブレイクスルーを企んでいると。」、「西村 小渕さんはそういう人ですよ。」というふうに答えているわけです。
これについてどのような感想をお持ちですか。これで見ると、まさにトロイの木馬を小沢さんに言われて送ったというような記事と重ね合わせられるわけですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小渕恵三君) 私がそのような考え方で任用したということは絶対ございません。
○大脇雅子君 それでは、クロイツフェルト・ヤコブ病についてお尋ねをいたします。
私は、今の総理の答弁に対しまして満足をしているわけではございません。しかし、人権救済で非常に重要な事態が放置されているという点について、私は、クロイツフェルト・ヤコブ病について総理の所信をお尋ねしたいと思います。
現在、我が国で脳外科手術等の際に移植されたドイツ製のヒト乾燥硬膜ライオデュラがクロイツフェルト・ヤコブ病の病原体であるプリオンたんぱくに汚染されていたために、ヤコブ病に感染した患者が多発しております。ライオデュラは、厚生省が七三年に輸入販売を承認して以来、九七年までに年間推定で約二万件の移植がされております。
クロイツフェルト・ヤコブ病は潜伏期間が長いのですが、発病すると急激に病状が進行して、痴呆、植物状態から死に至ります。人体組織の移植に際しては、感染症伝達の予防に十分な注意を払うべきであるということは早くから指摘されておりました。一九七八年には、日本国内において、公衆衛生学会第一人者が編集した教科書「総合衛生公衆衛生学」で臓器移植によるヤコブ病伝播の危険性が警告されています。厚生省の特定疾患調査研究事業による遅発性ウイルスの感染調査研究報告書でも予防が重要と言われております。八七年には汚染ライオデュラの使用によるヤコブ病発症例が報告されて、米国食品医薬品局、FDAが、ロット番号二千番台のライオデュラの廃棄と使用禁止命令を出しております。しかるに、日本がそれの回収命令を出したのは一九九七年、それにおくれること十年であります。
これについて、厚生省はそれらをなぜ見落としていたのかということについて、簡単にお答えいただきます。
○説明員(丸田和夫君) 御指摘の遅発性ウイルス感染調査研究班報告書などにつきましては、ヒト乾燥硬膜とクロイツフェルト・ヤコブ病発症の直接的な関連を示唆するものではありませんで、これらの文献の存在をもってヒト乾燥硬膜の移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病発症の危険性を予見することは不可能であると認識しております。
また、一九八〇年の米国におけるヒト乾燥硬膜移植後のクロイツフェルト・ヤコブ病発症に関します第一症例報告や、同年のFDA安全警告を初めとしまして、ヒト乾燥硬膜とクロイツフェルト・ヤコブ病との関連性につきましては、当時の関係職員に対します厚生省内の調査を一九九七年に行いましたが、当該調査によれば、何らかの認識を有していた者は確認されていない状況でございます。
なお、当該FDA安全警告は、ヒト乾燥硬膜ライオデュラの第一症例報告に係ります特定のロットの廃棄を勧告するものでありまして、すべてのヒト乾燥硬膜についての廃棄を勧告するものではないということでございます。
○大脇雅子君 そこで、総理にお尋ねをしたいのですが、ライオデュラの輸入販売の承認の際は、当然ウイルス伝播の危険性に対しては医学界のみならず厚生省もみずから警告を発していたわけですから、安全性の基準とその内容については、当然にドナーの特定と管理、複数の個体から採取した硬膜の混合処理の危険性など、十分な注意義務が必要であったと思います。
さらに、そのような経過から見ますと、こうした多発するヤコブ病の患者がいるという状況から考えますと、当然、輸入販売元の承認許可を見直すべきであった。それを見逃したという厚生行政について、私はそれが全く機能していなかったと思うわけですが、これらについて総理の御所見を伺いたいと思います。
総理に、もう時間がないですから。
○国務大臣(小渕恵三君) 今、大脇委員御指摘のこの病についてでありますが、私も素人でございますから十分承知しませんが、ただ、いつかのテレビの報道番組で、この被害に遭った方の状況についてかなり長い間報道されましたのを私は見た覚えがございました。
奥様がこのヒト乾燥硬膜を移植されて発病し、意識がほとんどなくなっておるのに、御主人が毎日大変看病を尽くしておられる。そしてドイツのその医薬品会社等に対しましても、たしか現地で裁判ざたになっておるというようなことを承知いたして、それを見たときにまことに同情を深くいたした記憶がございます。
そこで、それに対する対応についてということになりますと、私も今それに対して十分なお答えはできないと思いますけれども、国等に対する損害賠償訴訟が現在提起されておるところございますし、厚生省の法的責任についてはこれらの訴訟について裁判所の判断を仰ぐべき問題と考えておりますので、さらに、その結果においてどのような法的措置を講ずべきか否かにつきましては、現在私が申し上げることはやや行き過ぎになるんじゃないかと思います。
ただ、問題の重要性については、一番組ではございましたけれども、私は十分深く認識をし、こうしたことが起こってはならぬという気持ちは当時から強くいたしておるところでございます。
○大脇雅子君 現在、先端医療技術が発達いたしまして新薬開発競争が激化する中で、臓器とかヒト組織の移植使用が今後ますますふえてまいります。ヒト組織が商品化され、これによって引き起こされた最初の本格的な薬害がこのヤコブ病だと私は思うわけであります。ヒト組織をピンセットと同じような医療用具として扱って、安全の基準も不十分なまま承認をしたという厚生行政についてもう一度根底から問い直していただきたい。
現在、臓器の細胞や皮膚、血管、関節など人体のさまざまな組織が商品化されつつありますし、安全性がなおざりにされた製品が出回る危険性ということは否定できません。安全性のチェック体制の確保、それからヒト組織の利用には無断の採取及び売買を禁止する、あるいは被害救済策を盛り込んだ総合的な規制の立法が必要だと思います。フランスなどには生命倫理法など包括的な法律があると聞きますが、日本でもそうした法規制を将来に向かって検討される必要があると思いますが、総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。総理の御所見を。もう時間は一分です。
○国務大臣(小渕恵三君) こうした人体を移植することによって生命が維持されるということも一面として明るいことだと思いますが、一方、こうした被害が起きてくるということもこれまた大変暗い残念なことであります。したがいまして、こうしたことを除去する方法としていかなる処置、すなわち法的処置も含めて行うかどうかにつきましては、大変申しわけありませんが、専門家でない私がここで断言することは甚だ難しいことだと思いますが、十分検討させていただきたいと思っております。
○大脇雅子君 ぜひ病床で呻吟するクロイツフェルト・ヤコブ病の早期解決と救済の万全を要望いたしまして、私の質問を終わります。
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