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ものづくりエッセイ

京都ものづくり塾塾長 滋野
週刊京都経済 連載記事

第3回 歴史や海外から学ぶ

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第3回 歴史や海外から学ぶ

大学院受験を決心した頃に出会った2冊の本がある。1冊目は梅棹忠夫氏の『京都の精神』という著書である。梅棹氏は、この中で京都を「文化産業都市」と位置付けている。この著書は30年近く前の講演の記録なのだが、戦後の西陣織、京友禅の絶頂期において既に「京都のそれ(産業)はいささか時代がかったものが
多い、現代人の生活に適応した商品ばかりではないのです。(中略)京都の文化産業の側面に注目し、現代への適応を常に心がければ、京都は東京に対比できる文化産業都市として新しい時代に脱皮できましょう」と述べているところが注目すべき点である。


2冊目は、岡本義行氏の『イタリアの中小企業戦略』である。京都の伝統産業は、工程毎にきめ細かく分業されていることが大きな特徴であるが、イタリアのテキスタイルや家具も、工程毎に分業された職人技によって生み出されていること、また、それらの工程を取りまとめる業者がいるということを知った。これは、まさに京都の伝統産業の生産システムと酷似しているのである。
 ボローニャやフィレンツェなど、イタリア北東部から中部にかけての都市は「第3のイタリア」と呼ばれる。もともと古くから伝統産業が栄え、産地を形成していたのであるが、70年代のオイルショックによる不況を機に構造改革を行った。中小企業間のネットワーク型水平分業による生産システムとして再構築し、伝統産業をベースにしながらも新しい経営スタイルを導入したり、先端産業を育成したりした結果、高付加価値の商品を弾力的に多品種少量生産することが可能になった。伝統産業を「イタリアブランド」として、国際的競争力を持った産業とすることに成功させたのである。

また、産地と中小企業の成長が、地域経済を豊かにしたばかりでなく、関連産業を発達させ、産地間の産業連関を強化させた。これまでパリファッションの下請けや貴族階級や金持ちを対象としたものを作る産地であったのが、自立したものづくりが可能になることによって、職人達のモチベーションを高めたことも見逃せない。

当時の京都はというと、繊維産業は戦後のピークを迎えていた。国内外に生産拠点を拡大し、ひたすら増産に向けて突っ走っていたころである。ところで、現在好調な先端産業は、伝統産業の技術に端を発していることもあるものの、今日、古くからあった地場産業・伝統産業との産業連関があるとはいえない。ここに来て、インターネットを活用した伝統工芸品のオーダーや、京都文化の発信などを行う企業が出てきたことは新たな動きといえるが。

歴史や海外の事例から、今こそ京都が学ぶべき点は多い。

参考文献
梅棹忠夫『京都の精神』角川書店
岡本義行『イタリアの中小企業戦略』三田出版社



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