トップ / ワーキンググループ [歴史考 ・
マーケット ・ 職人列伝 ・
円卓会議] / |
1999年11月21日(日)
「くりすたるあーと」の林裕峰さんの工房にお邪魔した。 林さんは何でも京都和装の伝統技術を駆使し、携帯電話やノートパソコンに彩色を施す「携帯アート」の仕掛人だという。一体携帯アートとは、どんな物なのだろうか? 早速、作品集のアルバムを見せて頂いた。なるほど、携帯電話に描かれているのは、「紅葉に包まれる塔」や「青海波に浜千鳥」といった純和風の図柄が多い。写真だと、一見蒔絵と見紛う程の煌びやかさである。 私の鍵にて実演してもらった。その手順は、大雑把にいって次の通りである。
とにより、図柄が幾重にも重なって立体感が生まれる。 |
さて、この携帯アート、ケータイと伝統技術というミスマッチ感覚が受け、各種パソコン雑誌に取上げられたのはもちろんの事、メーカーの展示会で発表されたり商品化の誘いもあったという。 ではなぜ、商品化→大儲けと、事は運ばなかったのだろうか。 「箱一杯に詰まって送られてきたケータイに、色を塗ったって面白くない」と言う林さんのこだわりが、ここにある。 この携帯アートを手に入れる為に、客はまず、数度に渡ってメールやファックス等で林さんと打合せを行う。そして実際に工房を訪れ、差し向かいでイメージを伝え、世間話なぞ交えながら工程をつぶさに観察すること半日にして、ようやくケータイが完成する。 こうして作る過程を共有し、作り手の人柄に触れる事で、携帯アートは世界に一つしかない自分だけの物として、客に深い満足を与えるのである。 最近「高くても、自分だけのこだわりの一品」を求める人も多いようだ。その声に応え成功した例として、今回の見学会はとても興味深かった。 見違えるように彩色された鍵を握り締め、「次に来る時は、自分もやらせてもらうのだ」と心に誓ったのであった。 |
くりすたるあーとへ |
トップ / ワーキンググループ [歴史考 ・
マーケット ・ 職人列伝 ・
円卓会議] / |