こんにちは。有事法制って何なのか、あまり興味のない人も、興味があって勉強してみたひとも「さっぱり、分からん」という人がほとんどでしょう。ということで、そんな人のために、ちょっと片手間に、解説らしきものを書いてみました。難しいところや難しい漢字や法律案の条文などは、テキトーに読み飛ばしちゃってください。
そもそも有事とは何なんでしょうか?昨日、飲み屋で勘定の時に、「はい、3000円」といわれてサイフを見たら1000円札が一枚・・・「サイフが有事」と思わず口走ってしまいました。小泉首相が「備えあれば憂いなし」という言葉が身にしみて分かったような気がします。つまり、有事とは、このようにして困ることで、いざというときに困らないようにするのが「備え」というわけです。
いや、今問題なのは、有事法制でした。これは、サイフの件のように国家がいざという時のために備えをしていなかったせいで困ることがないようにする法律です。でも、国家や国民にとって「備えあれば憂いなし」とはどのようなことなのでしょうか? 「いざというとき」といえば、やっぱりニッポン列島では地震でしょう。地震があったときにどうやって被害を最小限に食い止めるか、これはニッポン列島に住む人々にとって、やっぱり大きな関心事だと思います。でも、地震などの天災については「災害対策基本法」などの法律があって、もう「備え」は、法律上は出来てます。じゃあ、国会で審議されることになりそうな有事法制の有事って、いったい何なんだ???
やっぱり戦争でしょう。どこかの国が突然、わたしたちの住んでいるところに侵略してきたらどうしよう、そのために法律をつくっておこうというのが、有事法制です。
で、ところで、突然、ニッポン列島に侵略してくるような国やゲリラ集団ってあるんでしょうか? 少なくとも第二次世界大戦後、そんなことはなかったし、私たち、戦後に誰かのうらみを買うようなことをやったっけな???という人が多いでしょう。全然そんなことはないとは言い切れないけど、一応、平和憲法を守って、外国に侵略したことはないしな。あれ、でも、そういえば、アメリカ軍がベトナムに爆弾の雨を降らせたときに、ニッポンの基地を使っていたとか、アフガニスタン空爆にも自衛隊が協力しちゃったし・・・。
*
有事法制は、実は三つの法案です。「武力攻撃事態法案」・「自衛隊法改正案」・「安全会議設置法改正案」です。ちょっと待った!なにやら法律の名前がたくさん出てきたからもう読むのを止めようと思ったあなた、あんまり深く考えないでとりあえず読み続けてくださいな。
*
これから国会で審議されるかもしれない有事法制の目的は、ニッポンが「武力攻撃」をされた時に、国家が国民の生命や財産や安全を守ってくれるためのものだ、と「武力攻撃事態法案」第一条に書いてあります。守ってもらうほどの財産か・・・とため息をついている人もたくさんいるでしょう。でも「とにかく国家が悪い奴らから私たちを守ってくれるのは当たり前じゃないか!」という人も多いでしょう。同法案の四条にも、国土や国民の生命・身体・財産を守るのが国の使命だ!と書いてあります。
え、でも日本国憲法では、戦争ももうやらないし、軍隊も持たないことになっていて、なるべく私たちがうらみを買わないようにすることで、「武力攻撃」されないようにしようということになってたんじゃないの?その通り。そうなんです。だから「武力攻撃事態法案」は、これからはアメリカ軍や自衛隊という軍隊で「武力攻撃」に対処しようというのだから、法律でもって、憲法とは違う平和の守り方を定めてしまおうというものです。全然、発想が違うんです。
でもまあ、世界最強のアメリカ軍や自衛隊が守ってくれるんだったら、安心して暮らせるなあと思ったら大間違い。なんと、私たちも、武力攻撃に対抗するのに協力しなくてはならないんです(第8条)。とくに港湾や空港で働く人や輸送(トラックや飛行機や船や鉄道)を仕事にしている人は、まあ間違いなく協力させられますね。また日本銀行やNHKや日本赤十字社や国立大学・病院や電気会社・ガス会社(第2条第5号と第6条)も、都道府県や市町村といった地方公共団体も(第5条と第6条と第7条)協力させられますね。
ということで、国家や自衛隊が、私らを守ってくれるというわけではなくて、アメリカ軍や自衛隊は、私らを守るように頑張るから、私らもちゃんと協力しなさいという法案だということです。「冗談じゃない!何が何でも戦争には協力しないぞ!」と意気込んでいる人も、「え、そんなのめんどくさいからやだ!」という人も、「何で協力しないの?」「てめえ、この非国民!」とか言われて、肩身の狭い思いをすることになるでしょう。
*
え、有事法制ってそんな法律案なんだ、と納得しちゃった人、読むのを止めないでくれえ。ホントは、ここからが大問題なんです。だって、どう考えたって、そんな第二次世界大戦みたいなことが起こるわけないでしょう。湾岸戦争やアフガニスタン空爆なんかをみても、いくら鍛えられて士気の高い兵士がたくさんいたって、アメリカ軍の空爆にあったら、何にもできなでしょう。そうなんです。世界最強のアメリカ軍の空爆の標的にされちゃったら、無駄な抵抗を止めるしかないんです。だったら、アメリカの同盟国ニッポンは、ちゃんとアメリカの言うことを聞いて強い方についておけば大丈夫・・・。
じゃあ、何で有事法制が必要なんだろう?ますます訳が分からなくなってきた人が多いでしょう。
理由は、はっきりしてます。「武力攻撃事態法案」は、じ、じつは、ニッポン列島やそこに住む私たちが攻撃された時だけではなくて、武力攻撃されることが予測される時にも備える為の法律です(第2条第2号)。予測されるって、誰が予測するんだろう?と思っている人、それは政府、今で言えば小泉純一郎さんが予測するんです。「え、あの人で大丈夫?石原慎太郎の方がいいんじゃないの?」「あれ、そういえば石原さん、最近、露出度高いよね」という意見はともかく、武力攻撃が予測された場合には、政府が「対処基本方針」をつくって(第9条)、防衛庁長官が自衛隊員に「待機基本命令」や「防御施設構築」命令(第9条第3項の第3号と第4号)なんかを出すわけです。で、「防御施設」ってなんだかよく分かんないけど、まあ例えば、湾岸戦争の時にイラク軍のミサイルをどんどん打ち落としたミサイル迎撃ミサイル「パトリオット」をニッポン列島中の特に基地のあるところ(沖縄とか)に作るんですかねえ。
まあ、実際にはありえないと思うけど、アメリカのブッシュ大統領が「悪の枢軸」と罵倒した北朝鮮が、「テポドン」とか言うへなちょこミサイルを日本のアメリカ軍基地を狙って撃ってきてもまあ、大丈夫。「パトリオット・ミサイル」がぜーんぶ日本海の上で打ち落としてくれるというわけです。
ちょっと話しが飛んじゃいましたが、もとにもどると何で有事法制が必要なわけ?という話しでした。武力攻撃が予測される事態というと、ハッキリ言って、アメリカがアフガニスタンに無茶苦茶な空爆をしたことをうらみに思って、アフガニスタンあたりの過激派が、ニッポン列島にゲリラ攻撃をしてくるという情報をニッポン政府が、CIAから教えられたり、アメリカがイラクを空爆したら、それに協力したニッポンに仕返しをしようとして、まあありえないけどイラクが、ニッポン攻撃のためのミサイルの発射の準備をしているとか、爆撃機に燃料を積んでいるとか、そういう場合のことだと思います。
で、そういう場合に、これは、武力攻撃が予測されるぞ、とニッポン政府が認定したら、政府が「対処基本方針」をつくって、国会に承認してもらって、自衛隊が「防衛出動」(自衛隊法76条)したり、やられるまで待たないで先制攻撃しちゃったり(第3条第2項)、ニッポンの各地に陣地を作ったり、まあ警戒態勢に入るわけです。アメリカへの「後方支援」を一層強めたりもするでしょう。そして、こういうことになった場合に、道路ではないところ(空き地など)を自衛隊の戦車が通ってもいい(自衛隊法改正案第92条の2)とか、公園に工作物を自衛隊がつくるのに、いちいち公園の管理者の許可を取らなくていい(第115条の13)とか、緊急に私たちの土地(といっても私は土地なぞ持ってませんが)を国が収用する手続(土地収用法)は簡略でいい(第115条の9)などなどのことを前もって決めておくのが有事法制なんです。しかも自衛隊が「防御施設」(ミサイル基地とか)を構築する場所で、「どうしても土地を取られるのはいやだぁ」と抵抗したり、その他いろいろと自衛隊の邪魔をする人や反対してデモ行進したりする人などがいたら、自衛隊は、そういう人たちには威嚇発砲してもいい(第92条の3)なんてことも書いてあるのが有事法制なんです。
*
つまり、結局、どういうことかというと、ニッポン政府は、世界からいろいろうらみを買っているけど世界最強の軍隊をもってるアメリカの味方をした方が、外国にあるニッポン企業も守ってくれるし安心だから、アメリカが遠いところで戦争を始めた場合も協力しちゃおう。イラク攻撃とかをするんだったら民間の飛行機や船も動員してアメリカにいい印象を与えておこう。でもそうしたら、ニッポンもうらみを買って攻撃されるかもしれないから、そうなったら、私たちにも協力を求めて、アメリカ軍や自衛隊が、ちゃんと仕事できるようにしてあげましょう、というのが有事法制だ、ということです。「そんなんやってる暇があったらリストラや賃下げを止めてくれー」とか、「医療費を高くするのを止めてくれー」とか、そういうことのほうが大事じゃないの?と思いませんか?。
*
しかしながら、なあんだ、だったら有事法制が出来ても、アメリカの味方になっておけば安心じゃん、と思っているあなた!世界中の六〇億の人たちからうらみを買うことになりますぞ!
やっぱり、貧富の格差が拡大しているアメリカの民衆も含めて、六〇億の世界の人たちとともに生きたほうがいいのでは?あなたの持ち物に、貧しい国の人たちが、僅かのお金をもらって作った服とかありませんか?それでヌクヌクしてて、作った人たちは絶望に打ちのめされているっていうことで、ホントにいいんですか?どんどんセーカツが厳しくなってませんか?そっちのほうが「チョー有事」じゃないんですか?
世界で最も貧しく数百万人が飢え死にしそうなアフガニスタンに爆弾の雨を降らせたアメリカ軍に、ホントに協力していいんですか?爆弾で殺されたのは、ビンラディン氏やオマール氏ではなくて、ただ、何とか食べていくために必死に生き抜いていた人たちじゃあないんですか?人を殺しに行く爆撃機に、燃料を積んであげて、ホントにいいんですか?
以上は、作者(石埼学)が知り合いの法律に詳しい人たちにいろいろ教えてもらったり、話し合ったりして、書いたものです。これを読んで、友達とか恋人とかにも読んで欲しいなあと思ってくれた人は、どんどん他の人にも見せてあげましょう!
作者 石埼学(いしざきまなぶ)
|