2008.10.14
「2008.09.21:転機の米「イスラエル・ロビー」、超巨大記事を日経が掲載」の全文
日経 9月21日(日曜日 7面、特集欄)
世界を読む
転機の米「イスラエル・ロビー」
「柔軟路線」求める声
タカ派色に不安■米政権交代も注視
米政治に幅広い影響力を持つ「イスラエル・ロビー」が転機に立っている。ブッシュ政権下のイラク戦争、イランの核開発などで米・イスラエル同盟関係が微妙に変化、さらに最近のグルジア情勢も影を落とし、「イスラエルの国益」を守る方法が見えにくくなってきた。米国のユダヤ系社会(別途、解説あり)も多様化、ロビーが米政府に求める姿勢も一枚岩ではなくなってきている。
今月九日に開かれた米上院軍事委員会の公聴会。
「そのミサイルは極めて重要な能力を持つ。懸念すべき材料だ。」----- 米統合参謀本部のパクストン中将は、グルジア紛争を巡り米ロ対立が深まっている時期に伝えられたロシアによるイランやシリアへの対空ミサイルシステム「S300」売却方針に警戒感を隠さなかった。S300は低空飛行の戦闘機も捕捉でき、「イランやシリアの核施設空爆」という軍事オプションを狭めかねない。
イスラエルは米国の意を受けて、親米国グルジアに高性能武器を提供して軍の訓練に協力してきた。だがイランやシリアがS300を入手すれば、イスラエルにとっては「米国を支えてきたのに自国の安全保障が脅かされる」ということになる。これに敏感に反応したのが、AIPAC(別途、解説あり)の略称で知られる最大のイスラエル・ロビー(米イスラエル公共政策委員会)。機関紙の社説で「ロシアを止めるべきだ。ロシアの意図はどこにあるのか、わかったものではない」と米政府に強く迫った。
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イスラエル・ロビーとは、政治ロビーだけでなく政策提言するシンクタンクや評論家ら団体・個人を含む総称。目的はイスラエルの国益を米政策に反映させることだ。
影響力の行使には手を尽くす。AIPACは注目法案の「賛成議員リスト」を作成。リストはユダヤ系住民の投票行動を左右する。ブッシュ大統領が選挙の年の二〇〇四年に、米大統領として初めてイスラエルの入植地の存続を認めたのもロビーの圧力といわれている。
今月二日、米ミネアポリスのホテル。四日前に共和党の副大統領に指名されたペイリン・アラスカ州知事の部屋にAIPAC幹部ら十数人が入った。同知事にとって事実上、初の勉強会だった。
関係者によると、AIPAC幹部は四十五分にわたりペイリン氏の「親イスラエル度」を探った。八年前の大統領選で民主党の副大統領候補だったユダヤ人のリーバーマン上院議員も隣に座り、激戦州でいかにユダヤ系がキャスフィングボードを握るか説明した。
「面接」の重要性を理解したペイリン氏は「米イスラエルは特別な関係」「イランの核開発には反対」と模範解答を繰り返し、AIPACを安心させた。
民主党の大統領候補、オバマ上院議員のイスラエル訪問にイスラエル・ロビーに近い人物が同行したように、ロビー関係者は頻繁に議員のイスラエル訪問を企画し、パイプ作りを積極的に進めている。
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ただ、米国内にも変化が生じている。四月に誕生した親イスラエル団体「Jストリート」はイスラエル・ロビーの中で異色の存在だ。
「米・イランの高官直接対話を」と提唱する立場は、「イラン制裁強化」を訴えるAIPACなどと一線を画す。影響力はまだ小さいが、クリントン政権で政策顧問を務めた同団体トップのジェレミー・ベン・アミ氏は「米国のユダヤ社会の多様な意見を示したい」と言う。
ブッシュ政権の中東外交の行き詰まりが背景にある。米国のユダヤ系市民を対象にした世論調査では六一%が「イラク戦争の結果イスラエルはより大きな脅威にさらされた」と回答。米ユダヤ委員会(AJC)の調査では、ユダヤ系市民の間で「核開発阻止のためのイラン攻撃」への反対が五七%に達する。シカゴ大のミアシャイマー教授も「米国のユダヤ社会はイスラエル・ロビーのタカ派色の強さに不安を感じている」と指摘する。
複雑さを増す国際情勢、米国のユダヤ人の意識の変化。あるAIPAC元幹部は「イランへの対応などユダヤ社会も有効な決め手を見いだせていない」と語る。来月一月に誕生する新大統領は米国の外交政策を仕切り直す。イスラエル・ロビーも新たな対応を迫られることになる。
(米州総局編集委員 加藤秀央、国際部 森安健)
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別途解説
米国のユダヤ系社会
米国のユダヤ系人口はイスラエル住むユダヤ人とほぼ同じ五百万から六百万人。欧州での迫害を逃れてきた人が多く、一九四八年のイスラエル建国でも大きな影響力を持った。全米人口の二%前後だが、政界での存在は圧倒的。ワシントン・ポスト紙によるとこれまでの民主党大統領が集めた選挙資金の六割はユダヤ系からだ。歴代大統領はホワイトハウスに「ユダヤ人社会とのリエゾン(橋渡し役)」を担当する補佐官を置き、主要閣僚にもユダヤ人を登用。ブッシュ政権ではチェイニー副大統領のスタッフや国防総省にAIPACに思想信条が近い人が多い。
AIPAC
銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)などと並び、米最強のロビー団体といわれる。会費が最低十万ドルという超エリート会員になると、副大統領ら政権幹部との内輪の夕食会に出席できることもある。六月の年次総会には約七千人が出席。撤退直前だったヒラリー・クリントン上院議員を含め三人の大統領候補や民主・共和両党の幹部が貌をそろえ、影響力を見せつけた。政治活動団体ではなく、候補への組織的献金はしていない。
以下、関連する拙訳の一部を紹介する。(再掲)
http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-25.html
『偽イスラエル政治神話』
第3章:神話の政治的利用
第1節:アメリカのイスラエル=シオニスト・ロビー-1/2
[中略]
アメリカには、六百万人[総人口の四%弱]のユダヤ人が住んでいる。"ユダヤ票"は、決定的な影響力を持っている。なぜなら、棄権は増大する一方であり、二大政党の政策に大した違いがないから、選挙で過半数の票を確保するためには、小さな問題もおろそかにできないし、勝敗は、ほんのわずかの票差で決まるからである。
[中略]
アメリカの議会で公式に認められているロビーの中で最も強力なのは、AIPAC(“アメリカ=イスラエル公事委員会”)である。
[中略]
《アメリカのパレスチナ政策は、ユダヤ票と、いくつかの大きなユダヤ人企業の献金によって、具体化された》(クレメント・アトリー『首相の回想』61)
[中略]
一九四八年以来、アメリカはイスラエルに、二八〇億ドルの経済および軍事援助を供給してきた(『タイム・マガジン』94・6)。
[後略]
(2019.9.17野次馬追記)
2008.10.14のこの記事が、『憎まれ愚痴』の最後の記事となった。阿修羅掲示板への投稿も既に散発的で、内容も海外の英文記事そのまま転載などが多い。
体調の著しい悪化があった。
木村愛二が最初に脳梗塞を発症したのが2002年5月。前年2001年7月に自宅兼事務所移転し、何とか整理がついたところへ911事件発生。我が人生最大のテーマとばかりにのめり込んだ無理がたたってのことだった。
おとなしく入院していることが出来ず、強引に中途退院。その後も再発症・中途退院を繰り返し、2004年病院の最後通告を受け治療開始。2005年にも中途退院。
(2004年5月にはかかりつけでない救急病院に搬送され「医療過誤」事件があった。)
2007年7月自宅兼事務所移転
同年8月槍ヶ岳登山にて遭難。明らかな体力低下が原因だった。
2009年8月9日、木村愛二の理解者であったワールドフォーラム代表の佐宗邦皇氏死去。喪失感は大きく、次第に気力が低下していく。
同年12月、事故により腰椎圧迫骨折、長期入院。
それからは骨折や肺炎・細菌感染症等で入退院を繰り返している。
2010年3月木村書店『カール・マルクスの大罪』発行。
2007年7月発行告知から3年後、内容は当初の予定から少々ずれて、第2部ラダイトからボルサまで(社会変革の道は労働組合が開く)の比重が大きくなっている。まとめきれなかった感が残る。
『真相の深層』掲載の『カール・マルクスの大罪』と、憎まれ愚痴連載の『マルクスと亜流の暴力革命思想徹底批判』と、同じく憎まれ愚痴連載の『元共産党「二重秘密党員」の遺言』をもう一度突き合わせて、内容を整理すべきか。
木村愛二現在82歳。ネット情報によると、
2017年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳。
2016年の日本人の健康寿命は男性が72.14歳、女性が74.79歳。
木村愛二として、言うべきことは全部言ってしまった、書くべき本は全部書いてしまった――と思うべきだろうか。