政策提言:さくら銀行株主総会で日本経済再生の提言(その2)

1999.4.2

[(その1)は本誌12号に掲載](注:本誌=WEB雑誌『憎まれ愚痴』

 さる3月4日、私は、さくら銀行の臨時株主総会に「末端株主」として出席し、旧態依然たる総会屋とも対決の上、わがホームページ『武蔵野市民オンブズマンの城』に掲載中の「緊急提言:21世紀日本経済再生政策」を開陳してきた。その報告の前々回に続く2回目である。

 以下、陳ぶれば、長い長い講談並、扇子を叩くべき場面も多いが、千代田区は九段下の大手銀行の本店大ホールにおける孤軍奮闘の一席である。

 前々回には、私が発言し始めると、何とも品のない総会屋がまた立ち上がって、「総会屋じゃない」とか何とか、ブツブツ言い始め、しかし、そこは長年、シュプレヒコールで鍛え上げたわが美声で、ざわ付く会場を制したところまでにて、わが Web週刊誌発行の締切り時間が迫ってしまった。しかも、続きを予告した前回には、いまだに何者とも判明しないメ-ル爆弾魔の妨害により、わがMacが崩壊し、3日間も予定が狂ってしまった。

 以下、簡単に、「末端株主」としての堂々の発言を記す。

 私は、総会屋ではないと言ったついでに、予定せざる本音をしゃべってしまう癖が出て、同じ千代田区の近所にある日本テレビの労働組合役員として、総会屋と対決してきた方だと言ってしまった。そのまたついでに、労働組合をやってきた立場から言えば、資本主義が崩壊するのも面白いのだが、そうは言っていられない、社会主義の方も駄目だし、なんとか皆が無事に過ごせるようにするしかないから、発言するのだと主張した。

 そこで、議長役の頭取が遠慮がちに手を挙げて、「受け付け番号とお名前を」と言うので、今や誰も笑わずに針一本落ちても音が響きそうな静寂の中で、ビンと響き渡る声で、「…………番、木村愛二です」と名乗りを上げた。

 続いて、質問の最初には、少しは財界首脳の肝を冷やしてやろうと思って、つぎのように鋭く切り込んだ。

「私は、末端株主、かつ、末端預金者の典型だ。解雇争議で厚生年金の支給が遅れ、額も少ないから民間の年金積立をしていたが、名前は言わないが、その保険会社がバブっているという情報が入り、それではと下ろして銀行預金にしても利息は最低。先程の頭取の報告にもあったように、昨年春に不良資産を整理するというから、そろそろ底値かと思って株に替えたら、その後に、日銀のドブン、ザブンがばれて、銀行株は軒並み暴落。その時の半値以下に下がってしまった。最早、売るにも売れない。いわば老後の保障が懸かっている立場だ」

 これには、重役一同、形ばかりとはいえ、ハ、ハッと畏まって、一斉に頭を下げた。

「そこで、質問の第1.私は落語家と呼んでいるが、世間では経済評論家で通っている佐高信(さたか・まこと)によれば、銀行では、われわれ末端の預金者のことをドブと呼んでいるそうだが、つまり、ドブをさらって小銭を集めると表現しているそうだが、本当か。もしもそうなら、これからの経済再生の上で思想的に誤っている。直ちに改めよ」

「質問の第2.私は昨年の株主総会には出る暇がなかったが、電話をして、土地開発公社に対する貸し付け状況を教えよと請求した。今度も事前に電話した。どういう状況か。地方自治体は今、借金だらけで、新しい公共事業を起せる状態ではない。私は、地方自治体の塩漬け用地を国が取得価格で引き取れと言う政策を提言しているが、こういう金の貸し方は良くない。金を貸して、それで客が仕事をして利益が上がるようでなければ、単なる昔の高利貸しと同じだ。昔の小説にあるような、病人の枕元で、金を返すか返さぬか、返せなければ娘を寄越せというような阿漕な金の貸し方をしてはならない。状況と対策を明らかにせよ」

 再度の質問も続けて記す。

「再質問。土地開発公社への貸し付けについては、自治省の発表の仕方に問題がある。地方自治体の借金の総額が、145兆円から160兆円にふくらむと報道されているが、土地開発公社の借金は地方自治体が返済責任を負っているのに、この数字には含まれていない。大手メディアでは、何も知らない若い記者に、体育会系と言われるデスクが、行ってこいと命令して、記者クラブで当局発表を貰ってくるだけだから、何も分からない。そういう新聞記事の切抜きだけで書くサボり屋の大学教授の論文には、土地開発公社のことが入っていない。政治家はなおさらのことで、バブルの付けを地方自治体に回した失政の責任者の当時の総理大臣が今、大蔵大臣をやっているような状態だから、皆が、ごまかし合っているだけだ。さくら銀行は、明治維新からの日本最大の政商、三井の末裔だ。日本の政治スキャンダルの歴史をひもとくと、西郷隆盛が大久保利通と決別する時に、酒を注がれて、三井の番頭さん、ごっつぁんでごわす、と言ったということが書いてある。そういう銀行が、今日のように、下手くそな総会屋を雇って、株主にまともな議論をさせないようなやり方をしているのでは、日本経済は再生しない。どういう調査、議論をしているのか」

 以上の質問に、最初は適当に返事をした担当重役も、私の再度の質問に答える時には、顔面蒼白になって、不健全な貸し付けはしたおりませんと、畏まって答えるようになった。しかし、さすが大銀行、実際には、何の約束もしないのであった。

 以後、私が口火を切ったものだから、何人かの普通の株主の非常に声の小さい質問が続いた。郵便で受けとった株主総会議案を「持参」せよと書いてあったから持ってきたのに、入り口でまた同じ物をくれたが、こういう無駄は省けなんて言う株主には、並み居る重役でもも、呆気に取られたようなふぬけ面で、ふにゃふにゃっと謝っていた。

 さて、さて、やはり、やはり、これも昔からの仕来り通り、12時が近付いて、朝飯の粗末な日本人のエネルギ-が切れて脳ミソの活動が鈍くなり、腹が減り始める頃、生真面目な顔の別の総会屋が「そろそろ議決を」と求め、ハイ、シャンシャンと総会は終了

 翌日、さくら銀行のマーク入りの普通郵便の封筒が届いた。簡単にいうと、臨時株主総会で提案が承認されたという文面の印刷物である。よろしいかな。昼に終了した株主総会の結果が印刷されて、翌日の郵便で届いたのですぞ。特別の飛脚を雇ったのではなくて、日本国は郵政省管轄の郵便局の配達によって、速達でもなくて、翌日の通常の配達で届いたのですぞ。この点については、電話で、「相変わらず株主をなめてますね」と皮肉を飛ばして置いたが、やはり、電話だから相手の総務課員の顔は見えないものの、「蛙の面に小便」の実感であった。ああ、日本経済再生は、夢のまた夢か。

 以上。


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