(1999.3.26)
[1999.3.20.送信済みmailに加筆]
きたる3月23日18時から八丁堀の労働スクエアこと勤労福祉会館で、盗聴法こと通信傍受法案反対の集会が開かれ、アメリカの状況も報告されるとのことです。
これは参加して置かなくてはと思っているのですが、昔から関心を持っているテーマなのに、最近の状況を調べる余裕がないままに過ぎています。しかし、段々と切羽詰まった状況になっているらしくて、受け身でも色々な情報が、こぼれ落ちてきます。
その1. Wire-tapping法
わが隙間産業こと、わがチャリン語学のAFNの録音には、「日本の国会で、Wire-tapping法を審議しているが、8カ国の内でWire-tapping法がないのは日本だけだ」というのがありました。Wire-tappingの逐語直訳は「針金を叩くこと」であり、手元の安物辞書では「(秘密の電線を使って)電信(電話)を盗み聞きすること、盗聴」となっています。「通信傍受」などと、お得意の、ご都合主義曲訳で気取っている日本政府は、このアメリカの「下品な放送用語」使用に対して断固、「国辱」の抗議をしなければならないのであります!
8カ国の説明はありませんでしたが、おそらくG7プラスのロシアでしょう。このAFN放送を聞いた直後、日経(1999.3.19)「21世紀/勝者の条件」28・第3部「市場型国家の未来」3・「新たな脅威と闘う」と題するコンピュ-タ犯罪対策の記事が載りました。
「日本は不正アクセスを罰する規定を先進国で唯一持たない」ので、日本からのアクセスによる国際犯罪が横行し、「欧米並の犯罪収益の没収などを盛り込んだ法案が昨春、国会に提出されたが、セットで出されている通信傍受法に対する反発が強く、棚ざらしになった」と記し、「日本の法制度や捜査体制はあまりにも立ち遅れている」と結論しています。内外の圧力は強まる一方でしょう。
その2. ホワイト・ハウスの電話盗聴
AFNでは、定時ニュース以外にもABCのニュース解説で、ホワイト・ハウスの電話盗聴を記した本が取り上げられていました。本の名前は分からないのですが、Gordon Smithの近著です。その本には、イスラエルの秘密情報機関モサドが、モニカとクリントンの電話を盗聴録音し、そのテープを取り引き材料にして、ホワイト・ハウス内のモサドのスパイに関する調査を中止しろとクリントンを脅迫したと書いてあるようです。この件で、「ホワイト・ハウスも、モサドの高官も、ナンセンスと言った」そうです。
しかし、これは、わが自称名探偵、または、サスペンス小説『最高裁長官殺人事件』の著者にとっては、実に面白いネタなのです。もしも、モニカの友人、リンダ・トリップが暴露した「電話録音」が、実は、もともとはモサドによる録音だったのだとすると、これは物凄いサスペンス・ドラマになります。わが想像の筋書きは秘密、秘密!
ニクソンの辞任の決定的な証拠もホワイト・ハウスの電話録音でした。これは盗聴ではなくて記録だったようですが、騒ぎの元のウォーターゲート事件も民主党の電話の盗聴でした。ということは、たとえ盗聴法があっても、その法律の手続きによらずに、物理的に可能なことは、大統領でさえもやってしまうということでもあります。法律って、いったい何なのでしょうか?
その3. 大いなる可能性のSFどころではない実情
インターネットの盗聴以前には、宇宙人との交信を口実にする空中電波の盗聴があります。詳しくは、下記資料の内、『パズル・パレス/超スパイ機関NSAの全貌』(J・バムフォード、早川書房、1987)に記されています。その他、電話盗聴に関しては、経験者の本が山程あります。
最近読んだので面白かったのは、すでに簡単なmailも送った記憶があるのですが、イスラエル支持派の二人の著者の本、『ユダヤ人に対する秘密の戦争』(The Secret War against the Jews) の中にあった裏話でした。
CIAの盗聴がばれて、アメリカ政府がアメリカ国民を監視するのは許されないことになったのですが、この抜け道が開発されたというのです。アメリカのFBIは、イギリス国内での反アメリカ活動の監視の目的でイギリス法による盗聴を許可され、イギリスの秘密情報機関のMI6は、アメリカ国内でアイルランド独立運動の盗聴をアメリカ法で許可される仕組みになっているのだそうです。そこで当然、FBIとMI6の裏取引が成立し、双方が自国民の盗聴を依頼し合っているというのです。日本で盗聴法が成立すると、かのノーベル平和賞受賞者の佐藤首相が、沖縄返還で密約を結んだ実績もあり、政府間の密約と裏取引によって、誰でも監視されるようになる可能性ありとなります。
その4. 『会議は踊る』の裏舞台に
「盗み読み」「盗聴」場面
映像として面白かったのは、有名なドイツ映画『会議は踊る』に出てくるウィーン講和会議の裏舞台での手紙の盗み読み、宿舎での会話の伝声管による古典的盗聴でした。
この映画は、ナチス宣伝映画ではないという理由で、戦後の日本に輸入許可されたはずであるが、ナポレオンを倒した列強がウィーンに集まり、そこで、ドイツ連邦(Deutscher Bund,1815-48, 51-66)が成立、その後の.北ドイツ連邦が現在のドイツの基礎となり、ウフィーンを主都とするオーストリアは、ヒトラーによって併合されるという歴史を背景にして野暮な感想を言うと、やはり、ドイツ人の「民族魂」を刺激した映画のような気がします。
ウィーン会議(1814.9.18-1815.6.9)は、神聖ローマ帝国(-1806)以後、初めて、形ばかりとは言え、当時のオーストリア外相、後首相の辣腕政治家、メッテルニヒ(von Metternich)の主宰によって、以後のヨーロッパの運命を大いに左右したとされています。その陰の力が、映画に描かれたような、極秘の情報収集力にあったのでしょうか。
その5. 資料紹介
以下、拙著『湾岸報道に偽りあり』資料から、盗聴に関係の深い日本語の単行本だけを再録、紹介します。
『大統領の陰謀』カール・バーンスタイン、ボブ・ウッドワード、立風書房、1974。
『情報操作/歪められた真実』リチャード・ディーコン、時事通信社、1988。
『アメリカ謀略秘史』上村健二、泰流社、1990。
『アメリカの秘密機関』山田泰二郎、五月書房、1953(晩聲社が復刻、1976)。
『CIA/アメリカ中央情報局の内幕/ロックフェラー委員会報告』毎日新聞社、1975。
『CIA暗殺計画/米上院特別委員会報告』毎日新聞社、1976。
『CIA』フリーマントル、新潮選書、1984。
『CIA』斉藤彰、講談社現代新書、1985。
『CIA/謀略の全貌』角間隆、講談社、1976。
『CIA/悪の情報戦略』小山内宏、ベストブック、1987。
『CIA/もう一つの政府』山川暁夫、教育社、1978。
『CIA/研究ノート』池田昌昭、金沢印刷 1986 。
『CIA黒書』D・W・W・コンデ、労働旬報社、1968。
『CIAの内幕』スタン・ターナー、時事通信社、1986。
『CIAの情報操作』ヴィタリー・ペトロチェンコ、一光社、1978。
『CIAの心理戦争』N・N・ヤコヴレス、新読書社、1983。
『CIAの逆襲』カーミット・ルーズベルト、毎日新聞社、1980。
『CIA日記』アギー・フィリップ、勁文社、1975。
『CIAの栄光と屈辱』レイ・S・クライン、学陽書房、1981。
『CIAの戦争/ベトナム大敗走の軌跡』(上下)フランク・スネップ、パシフィカ、1978。
『CIA委託報告書/日本2000年』歳川隆雄、アイペックプレス、1991。
『スパイ帝国CIAの全貌?ロックフェラー委員会CIA活動報告』徳間書店、1975。
『栄光の男たち/コルビー元CIA長官回顧録』ウィリアム・E・コルビー、政治広報センター、1978。
『大統領のスパイ/わがCIA20年の告白』ハワード・ムント、講談社、1975。
『仮面をはげば/CIAの実体』F・セルゲーエフ、新読書社、1984。
『ひび割れたCIA』デイヴィッド・C・マーティン、早川書房、1985。
『そこにCIAがいる』松本政喜、太田書房、1971。
『霧の中のCIA』山岡清二、政治広報センター、1977。
『情報帝国CIAの崩壊』アーネスト・ボルクマン、教育社、1987。
『ヴェール/CIAの極秘戦略1981-1989 』(上下)ボブ・ウッドワード、文芸春秋、1988。
『何も知らなかった日本人?裏から牛耳っていたヤツら』畠山清行、青春出版社、1976。
『ザ・スーパースパイ』アレン・ダレス、光文社、1987。
『ザ・カンパニー』ジョン・アーリックマン、角川書店、1978。
『パズル・パレス/超スパイ機関NSAの全貌』J・バムフォード、早川書房、1987。
『スパイの科学』D・コーエン、東京図書、1978。
『スパイキャッチャー』ピーター・ライトほか、朝日新聞社、1987。
『対決』チャップマン・ピンチャー、時事通信社、1988。
『ザ・モサド/世界最強の秘密情報機関』デニス・アイゼンバーグ、時事通信社、1980。
『世界の情報機関/軍事スパイの実態』立花正照、泰流社、1989。
『諜報/情報機関の使命』ゲルト・ブッフハイト、三修社、1982。
『諜報戦争』ウィリアム・V・ケネディほか、光文社、1985。
『防諜と諜報/原則と実践』H・H・A・クーパーほか、心交社、1991。
『秘密工作者たち』スティーブン・エマーソン、集英社、1988。
以上。