ムミアの再審請求を連邦最高裁が棄却
死刑執行を絶対に許さない!
1999年10月7日(10月11日/更新)
今井恭平です。
ムミア・アブ・ジャマールが米連邦最高裁判所に出していた再審請求の申し立てが棄却されました。
以下は、それを報じるレオナルド・ワイングラス氏(ムミアの主任弁護士)らのメールおよび、それに対するムミアのコメントです。いつもさまざまにお力添え下さっている翻訳家の萩谷良さんが訳して下さいましたので、以下に掲載します。
最高裁が棄却することは予想されていたことではありますが、これによってペンシルバニア州知事トム・リッジが彼の死刑執行命令に署名するおそれがたいへんに強くなりました。
知事が署名した場合、ムミアは執行を前提としてフェイズ2という状態におかれ、外部交通が極端に制限されます。この事情については、クラーク・キッシンジャーからのメール「ムミアの裁判の現状」を参照してください。
1999年10月4日
声明 ムミア支援者の皆さんへ
ダニエル・ウィリアムズ/レナード・ワングラスより
再審請求却下 [注1]
きょうは、合州国最高裁判所にとって、正義を行い、17年間の悪夢に終止符を打つ機会でした。裁判所はこの機会を生かすことを怠りました。ほかならぬ合衆国憲法において保証されている、十分に確立された権利を守る機会を、です。
私たちは、ムミアの裁判で何が行われたかについては、記録に明々白々であるにもかかわらず、最高裁がその法廷で彼に発言の機会を与えようとしなかったことに、激しい失望を覚えます。疑いの余地なくムミアは、自分で自分を弁護する権利を不正に剥奪されたのです。彼は、国選弁護士が、彼の弁護に不熱心で、十分な弁護能力も欠いていたことが明らかになると、自分の弁護は自分でする決意をしたのでした。ところが、まさに裁判が始まったそのとき、自分の裁判を自分で処理する権利は奪い取られ、一件は、この件を手がけようとは予想すらしなかった無能な弁護人の手に渡されてしまったのでした。 ムミアは、自分の権利が制限されるのを座視することを拒否すると、強制的に法廷から排除されてしまいました。 私たちが最高裁に要求したのは、この裁判を審理予定に入れ、これら異論の余地のない事実が憲法にてらして検討されるようにすることだけでした。残念なことに、最高裁は、この貴重な機会を逸しました。そこで私たちは、今度は、ムミアの無罪に関する、これらをはじめとする主張を、連邦法廷に提出しなければなりません。いまは、連法裁判所に対する人身保護請求書を書いているところなので、ほどなく提出します。最高裁に勇気と決断が欠けていたことにはがっかりしましたが、私たちは、前方に見えている光が正義の光であるとの希望をもっています。 |
注1 再審請求却下:再審=cert certは(writ of) certioriの略で「事件記録書類移送命令」(上級裁判所から下級裁判所に対してなされる。この件の場合は、連邦最高裁から連邦地裁に対してのもの。 |
ムミア・アブ・ジャマールの声明
最高裁の再審請求却下に対して
1999年10月4日
私の上告を最高裁が却下することは、予測しなかったわけではない。最高裁には半年あるいは法廷の一開廷期間中におよそ7000件の再審問請求が提出されるが、審問が実現するのは75件にすぎない。
だから、私の件が認められるだろうとは期待していなかった。 私たちの相手が、ブッシュ、レーガン政権、そして今はクリントン政権のもとで、死刑囚を含め、およそ再審を求める人の機会を制限しようとしている保守的な法廷であることを忘れてはならない。 再審問請求のうち、かくもわずかしか取り上げない法廷のおかげで、多くの重大な不正が解決されずにいるという事実は、どんなに大目に見る者でも無視できないだろう。近年の最高裁のやり方から見て、彼らが私の三回目の上訴を認めなかったことには、みせしめの意味がある。また、最近の裁判の動向はますます州に有利になり、ますます被告側に不利になっている。たしかに例外はあるが、囚人の権利が制限される中で、州の権力と警察の権力が拡張しているというのが、打ち消しようのない趨勢なのだ。 闘争は続く。同じ古い諸力がまだ働いているのだ。私がWBAI[注2]に呼ばれたときに何が起こったか。私は、数週間前に文字通り放送を不可能にされてしまったのだ。最近のフィリップ・ブロック[注3]の失敗も、州がどれほど必死になっているかを示しているのであり、彼らが必死になることが、そもそも、彼らのうちの誰もフィルの自白など信じていなかったことを認めることにほかならない。 だが、私たちは、真理が人を自由にするという古い言葉を忘れてはならない。私は今もそれを信じている。さもなければ私は馬鹿だ。 死刑囚監房より ムミア・アブ・ジャマール |
注2 WBAIは、ニューヨークをはじめ、西海岸やシカゴなど全米のいくつかの大都市をカバーしているFMラジオ局。最近、このラジオ局内部で保守的な層が左派とみなされる人たちを排除しようとする動きがあり、物議を呼んでいるようです。ムミアが出演できなかったということは、この問題が関係しているのかも知れません(今井) 注3 フィリップ・ブロックの失敗:以前「ムミアと友人だった」と自称するフィリップ・ブロックという白人男性(47歳)が7月13日にラジオ番組に出演して、7年ほど前に、ムミアが自分に対して、殺人を告白したと語ったという内容のネガティブ・キャンペーン。 これについては「ムミアへの新たな攻撃」参照。 |
以下原文
October 4, 1999
TO: MUMIA SUPPORTERS
FROM: DANIEL WILLIAMS AND LEONARD WEINGLASS
RE: DENIAL OF CERT.
Today, the United States Supreme Court failed to seize an opportunity to do justice and to end a 17-year nightmare. An opportunity to vindicate a well-established right, secured within the Constitution itself, has been squandered. We are sorely disappointed in the Supreme Court's unwillingness to give Mumia a hearing in that court, even though the record is crystal clear as to what happened in Mumia's trial. Mumia was unquestionably stripped unjustifiably of his right to represent himself. He had decided to represent himself after it became apparent that his court-appointed lawyer was unwilling and incapable of representing him adequately. Yet, at the very moment that the trial began, Mumia's right to handle his own case was taken from him and the case placed back into the hands of his incompetent defense counsel who did not even expect that he would be trying the case.
When Mumia refused to sit in silence as his rights were being abridged, he was forcibly removed from the trial proceedings.
All that we asked of the Supreme Court was to put this case on its docket so these incontrovertible facts could be evaluated in the light of the Constitution. Unfortunately, the Supreme Court let this golden moment pass, and we must now present these, and other claims concerning Mumia's innocence, to the federal courts. We are finalizing our federal habeas petition and shall file it shortly. Although disappointed by the Supreme Court's lack of courage and resolve, we are hopeful that the light we see in front of us is the light of justice.
(end statement)
MUMIA ABU-JAMAL'S STATEMENT
IN RESPONSE TO SUPREME COURT DENIAL FOR NEW TRIAL
October 4, 1999 It was not unexpected that the Supreme Court would deny my appeal. The Supreme Court hears only a tiny percent of the cases that are brought before it, roughly 75 out of 7,000 in one semester or a term of the court. I entertained no expectations that mine would be granted. We have to remember that we are working with a conservative court that has worked deciduously in the Bush and Reagan administrations and now in the Clinton administration to narrow the chances of anyone having had their case heard, not just a prisoner on death row. Even the most charitable observer must agree that by virtue of the court taking such a small fraction of the important cases that are filed before it, it is impossible to ignore the fact that many grave injustices are going unresolved. Given the tone and tenor of recent Supreme Court opinions there is even a sense of relief that they didn't grant my third appeal. And the trend is increasingly in favor of the State, the trend is increasingly to disfavor the defendant and the accused. Certainly there are exceptions, but that's the undeniable trend, the expansion of state power and police power in the retractions of prisoners' rights.
The struggle continued, the same old forces are still at work. Look what happened when I called into WBAI. I was literally pulled off the air a few weeks ago. The recent Phillip Block debacle reflects too how desperate the state is and their desperation is really an acknowledgement that none of them believed Phil's confession story to begin with. Still we can't forget the old saying that the truth shall set you free. I still believe that. I'd be a fool not to.
From Death Row, Mumia Abu-Jamal