Justice for Govinda Innocence Advocacy Group | ||||
The wise eye penetrates the truth
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事件の概要
発端
ゴビンダさんの逮捕
犯行とゴビンダさんを結びつける証拠の不在 (1)K荘101号室のトイレの中から発見されたコンドーム内の精液のDNA型が、ゴビンダさんのものと一致した。 (2)ゴビンダさんが101号室の鍵を管理人から借りていたことがあり、それを返却したのは事件後の3月10日であり、事件当時101号室に出入りできたのはゴビンダさんだけである。 (3)事件当夜の午後11時半前後に、被害者と見られる女性と「東南アジア風」の男性が101号室に通じるK荘西側の短い階段を上がっていくのを見た、という目撃証言があり、その時刻までにゴビンダさんは勤め先から事件現場まで戻ってきていることが可能であった。 これらの状況証拠は、いずれもゴビンダさんと犯行を直接結びつけるものではありませんが、さらに検察の主張を検証してみると、いずれも有罪根拠とならないばかりか、逆にゴビンダさんの無実をこそ示す物であることがわかります。 (1)現場に残されたコンドームはいつのものか?
ゴビンダさんは、2月末から3月始め頃にYさんの買春客となり、101号室で性的関係をもったことを認めています。したがって、現場のトイレに放置されていたコンドーム内のゴビンダさんとDNA型が一致する精液の存在は、その時のものであると主張しています。コンドームが採取されたのは死体発見時(3月19日)ですので、それが捨てられてから何日経過したものであるのかが重要な争点となりました。事件当日(3月8日深夜)に捨てられたものなら、発見までに約10日経過していることになり、ゴビンダさんの主張通りなら、約20日以上経過している筈です。
この事件では、コンドームが破棄されてからの経過時間について、裁判所による正式な鑑定はなされていません。かわりに警察が依頼した帝京大学の押尾茂氏による鑑定意見書が提出されただけです。この鑑定結果は、コンドーム内の精液の劣化状態から見て、明らかに20日以上が経過していることを示すものでした。しかし、押尾氏はトイレの水が汚れていたので、清潔な水を使用した自分の実験よりも精液の劣化が急速に進んだと考えても矛盾はないとして、強引に10日前に捨てられたという検察側主張に沿う意見書を提出しました。
およそ科学者とは思えないこうした牽強付会で非科学的な「鑑定意見」は当然ながら第一審では採用されず、東京地裁が2000年4月14日に言い渡した無罪判決の中でも、その主張は退けられています。
(2)鍵の返却時期と、誰でも入ることができた101号室
ゴビンダさんは、空室であったK荘101号室を借りる予定で、Mさんから鍵を預かっていたことがあります。しかし事件前の3月6日に、同居人のCさんに頼んで、自分たちが住んでいたHビルの家賃といっしょに鍵をMさんに返却していました。警察はCさんを入管難民法違反で逮捕し、暴行・脅迫や利益誘導を行い、無理矢理「3月6日に返却したというのは嘘だ。ゴビンダさんに頼まれて口裏を合わせた」という供述を引き出し、鍵の返却は事件後の10日であり、事件当日にはゴビンダさんが101号室の鍵を所持していた、と主張しました。
しかに後に、Cさんは証拠保全のための証言において、これらの証言が警察による違法な取り調べによって無理に引き出されたこと。鍵は間違いなく3月6日に返却したことを証言しています。また、そもそも遺体発見時に101号室の鍵がかかっていなかったことは判然としており、仮に鍵の返却が10日であったとしても、事件当夜は鍵のかかっていない101号室は事実上、誰でも入ることが可能だったのです。 被害者は2月末にゴビンダさんと101号室を使用したことがあり、この部屋が空室であることを知っていました。売春のために無料で利用できる場所として彼女がここを他の客と使用した可能性は十分にありえます。 (3)警察に誘導された目撃証言 事件当夜、K荘に入っていく男女を見た、という目撃証言があります。S田さんという学生で、K荘の半地下にある居酒屋にいた父親を迎えに来て、K荘前の路上にクルマを止め、近くのコンビニでガムを買ってからクルマのそばで父親を待っている時、一組の男女がK荘101号室に通じる階段を登っていくのを見たというものです。女性の方は、特徴的な容姿から被害者のYさんにほぼ間違いないと思われます。S田さんは事件発覚2日後の3月21日に、警察にその目撃証言を話していますが、男性の方はよく見ていなかったと述べています。(公判での証言)しかし、2ヶ月もたって、ゴビンダさんが逮捕された後になって、取調中のゴビンダさんを見せた上で、初めて調書をとっています。その調書に初めて「東南アジア風の男」だったという記述があらわれます。警察による誘導が濃厚にうかがわれるものです。
目撃時間についても曖昧で、確認できるのはガムを買った時刻が午後11時14分であることがコンビニのレジ記録から分かるだけです。そこから類推していくと、目撃時刻は11時30分より以前である可能性が強く、その時刻ではゴビンダさんが現場に到達できる可能性はなくなります。したがって警察はできるだけ目撃時刻を後にずらそうとしていますが、K荘2階の住人が、遅くとも11時45分までに神泉駅の公衆電話を使用するために外出した際、S田さんやそのクルマを見ていないという事実からも、目撃証言が11時50分頃であるとする検察の主張は無理があります。 S田さんが目撃した男性がゴビンダさんであるという根拠はまったく存在しません。
道理にかなった一審判決
「はじめに有罪ありき」の東京高裁判決 まったく非科学的で何事も立証していない押田鑑定の恣意的な結論を何の根拠も示さないまま援用し、コンドームが捨てられたのが事件当日であったとしても矛盾しないと判示。
(2)鍵の返却時期
いつ鍵を返却してもらったのかについて記憶が曖昧であることを認め、供述も変遷し、警察の誘導に従って10日に返却されたと供述したことを否定していない管理人Mさんの証言を採用し、他方、6日に自分が返却したと明確な記憶をもって証言しているCさんの証言をこれまた理由もなく信用できないと決めつけただけの判決です。
(3)巣鴨5丁目の定期入れ 一審判決で、ゴビンダさんが犯人だと考えるには合理的疑いを生じさせると指摘された定期入れの発見場所の不自然さについては、この問題が未解決であることを認めながら「これが明らかでないからといって、それゆえに被告人と本件との結び付きが疑わしいということにならないことは、本件証拠に照らして見易い道理である」としています。 本件証拠とは何を指すのかも示さず、見易い道理などという空虚なレトリックだけで合理的疑いに目をつぶり、無罪の積極証拠ではないということを有罪根拠にするという、およそ刑事裁判のイロハさえわきまえておらず、論理の体をなしていない判決と言わざるを得ません。 高木俊夫裁判長は、無罪判決を受けたゴビンダさんの再勾留に最初にお墨付きを与えた判事であり、審理を開始する前から有罪の予断をもっていたとしか考えられません。
再審無罪に向けて |