無実のゴビンダさんを支える会

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4-8無実のゴビンダさん支援集会 報告

プログラム 集会当日会場で配布したプログラムは、ここからダウンロードできます。
4月8日午後2時から、東京・四谷の「幼きイエス会」で、「一日も早く、再審開始決定を!4-8無実のゴビンダさん支援集会」を開催しました。
参加人数は延べ55〜60名くらい。事件から9年以上が経過したにもかかわらず、毎年この時期に開いてきた集会に、今年も多くのみなさんの参加をいただき、感謝しています。


☆再審請求の新たな段階…………弁護団:神田安積弁護士
最初に、弁護団の神田安積弁護士から、再審をめぐる状況、裁判所、検察とのやりとりの現状について報告され、また再審弁護団の増強についてもご報告がありました。
 名張毒ぶどう酒事件や布川事件など再審開始が決定されるなど再審の扉が開きつつあるようだが、大崎事件(鹿児島地裁の再審開始決定を最高裁が取り消し)や日野町事件(大津地裁は請求棄却)など予断を許さない厳しいものがある。
 ゴビンダさんは2005年3月24日に再審請求を行ったが、12月に検察は再審を行うに足りる新たな証拠ではないと反対意見書を提出した。それに対し、弁護団は2006年2月10日、反論を提出し、事実調べを行うよう請求している。
 この事件の構造は情況証拠をどう解釈するかのみの争いになっている。従って裁判官の心証で黒とも白とも解釈されてしまう部分がある。一審では無罪だが2審では有罪という結果が出てきてしまう要因である。
 再審では無罪につながる新たな証拠の提出が要求される。
  1. 便器に残されたコンドーム内の精液は、劣化状況から見て20日以上経過しているので、犯人はゴビンダさんではない。この鑑定をした押田氏の証人尋問を要求。
  2. 被害者のハンドバッグのDNA鑑定を要求。------この2段構えで進めている。
 名張毒ぶどう酒事件や布川事件の場合は、被告人の自白調書がある。これを精査すると自白と矛盾する証拠が出てきて、これが再審決定の「新規明白な証拠」に結びついている。しかし、ゴビンダさんには自白調書がない。支える会の協力を得ながら再審の実現に向けているが、なかなか切り口が掴み切れない。そこで今までの裁判に関わっていない若い弁護士に参加してもらって、先入観のないところで1件の記録を読み直して、この事件を新しい観点、見落としているかも知れない視点で臨む事にした。

集会には、宮村弁護士が参加され、再審開始に向けともに頑張ると挨拶。また、所用で欠席した鈴木弁護士からも挨拶が届けられました。
 鈴木郁子弁護士…判決文を読んで日本人として何とかしなければならない事件だと思う。新鮮な角度から事件を見られるという強みを生かして頑張りたい。
 宮村啓太弁護士…神山弁護士の講演を聞いてゴビンダさんの事件には常に注目しました。先日、ゴビンダさんに初めてお会いして改めてその思いを強くしました。


☆講演:ゴビンダ事件と再審 ………秋山賢三弁護士
その後、メインの講演として、日弁連人権擁護委員の秋山賢三弁護士から、再審とゴビンダ事件についてお話しいただきました。事件の争点を分かりやすく整理し、一審と控訴審の判決の本質的な差異などをていねいに理解しやすくお話しいただいただきました。また、裁判官として「徳島ラジオ商殺人事件」の再審決定を書き、その後多くのえん罪事件の弁護に関わっておられる秋山先生らしく、裁判とは無辜の救済であるという原点をたんたんと語られ、そのヒューマンな人間性そのものが伝わってくるお話しでした。
講演に先立って、秋山弁護士も弁護団の一員として関わってこられた西武新宿線痴漢えん罪の丸山功さんが、3月8日に高裁で逆転無罪を勝ち取ったことの報告をしてくださいました。昨年の集会で、無実を涙ながらに訴えられた時の姿が思い浮かび、感無量でした。高裁判決では、「本件は本来は起訴にも至らない事件」と裁判長が一喝しました。しかし、まだご本人は職場に復職が実現しておらず、労組とともに交渉中だそうですし、心労から体調をくずされているお連れ合いの健康状態ももとに戻っていないそうです。

 ゴビンダ事件は一審の東京地裁で刑事裁判の「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則に則り立派な無罪判決が出された。間接事実を行きつ戻りつしながらも最後に次の4点<(1)遺留されたコンドーム(2)4本の陰毛(3)定期券の破棄場所(4)101号室の鍵>が解明されなければ有罪に出来ないという結論に達した。ところが高裁はほとんど実質審議もなく簡単な書面審理で僅か8ケ月後に無期懲役という逆転有罪判決を下した。論理と実証という刑事裁判の根本的な立場を放棄している。「ひどい時代がやってきた」と思わざるを得ない。
 高裁は7つの間接事実を有罪方向に認定し、ゴビンダ犯人説に合理的な疑いを入れる余地なしなどとしている。しかし、この再審で弁護団が「新証拠」として提出している「コンドーム内精液の劣化度鑑定」(本件精液は、遺留後20日以上経過しているので、3月8日のゴビンダ犯行説は成り立たない)が受け入れられれば、高裁の確定判決の根拠となった7つの間接事実は崩壊するのである。
 日本の警察は、とかく外国人に対して偏見を持っている。オーバーステイで別件逮捕したり、取り調べで罵倒したりするのは、恥ずべき人権侵害である。このようなことは日本人の品位に関わる問題として、日本人である私たちの手で解決しなければならない。本日は、外国人であるゴビンダさんのために多くの人が参加していて大変心強く思っている。

☆田中哲朗さんのミニコンサート
沖電気の不当解雇と四半世紀にわたり、歌と言葉を武器にたたかっている田中哲朗さんのミニコンサートを行いました。田中さんがたたかっている職場のファシズムを許さない労働運動や、日の丸・君が代強制反対のたたかいなどは、人の尊厳をふみにじるという意味で、えん罪と共通する権力による犯罪である点で、共有できることが多いことを、あらためて認識させられました。
田中哲朗さんが、ご自分のHPにも掲載してくださっています。

☆戦後を画期する3つのえん罪・再審事件
 1942年から終戦直後までの間に起きた、一連の言論弾圧えん罪事件である「横浜事件」、1961年に三重県名張市でおきた5名が亡くなった「名張・毒ぶどう酒事件」、1967年茨城県利根町布川で起きた強盗殺人事件である布川事件。これらは、いずれも戦後の歴史の中でも特筆される顕著なえん罪事件です。  いずれも再審の開始が決定されながら、横浜事件は無罪判決を求める請求人の声を抹殺する免訴の決定。名張、布川事件はいずれも検察の理不尽な異議申し立てや即時抗告により、再審の開始が遅れています。
布川事件
桜井昌司さん(再審請求人)
水戸地裁土浦支部は再審開始を決定。だが検察は即時抗告で妨害。どこまで苦しめるのか。
名張毒ぶどう酒事件
宮崎孝さん (守る会事務局長)
奥西勝さんは死の淵から一時帰還。名古屋高裁再審を決定するも、検察が引き延ばし。
横浜事件
木村まきさん(再審請求人)
横浜地裁は司法の良心と責任を投げ捨て、免訴を言い渡した。闘いは終わらない。

☆ゴビンダさん、ご家族からのメッセージ
 事務局から、ゴビンダさん本人およびご家族(兄のインドラさん)からのメッセージを紹介し、またご家族との連絡役をしてくださっている蓮見順子さんから、ゴビンダさんのお連れ合いのラダさん、二人の娘さんの様子などが報告されました。
 ゴビンダさんを待ちわびているネパールのご家族の気持ちを考え、また老齢のご両親のことを心配しているゴビンダさんの気持ちがよく理解でき、ほんとうに一日も早く彼をネパールに帰してあげなければという気持ちを大きくしました。
ゴビンダさんからの挨拶全文

☆裁判の現状と課題・・・・・・日本国民救援会・山田会長のお話
ゴビンダさんの支援運動は、日本国民救援会が正式支援を決定してから、きわめて大きな広がりを獲得してきました。治安維持法の時代から、政治犯やえん罪、政治弾圧などとたたかってきた歴史に裏打ちされた経験と知恵は、私たちに大きな力を与えています。
 国民救援会はゴビンダさん再審など約20の事件の支援を行っている。一体この3年間で裁判所はどんな判決を下したのか調べてみました。2004年に13件、2005年に12件、今年は11件と合計36件の判決が出た。これら36の事件のうち、否認・黙秘が19件、自白で認めたのが17件、自白から否認に転じたのが18件です。
有罪判決が24件、無罪判決が7件、布川事件・名張事件など再審決定が2件、日野町事件・大崎事件など再審棄却が2件です。
 これらの事件から言えることは一つは代用監獄(警察の留置場)の問題が浮かびあがる。布川事件の桜井さん、杉山さんや、日野町事件の桜庭さんは、留置場から拘置所に移されてまた留置場に戻されている。代用監獄(警察の留置場)が冤罪の温床になっている事を物語っている。二つは自白調書をとられたが、無罪判決を勝ち取った例である。西武新宿線痴漢冤罪事件では、警察の捜査手法を批判した素晴らしい判決が出された。愛知県の幼女殺害事件では自白偏重の裁判を朝日が社説で批判した。
 そのほか、自衛隊官舎への立川ビラ事件では一審無罪だったが二審は逆転有罪判決。静岡県の御殿場少年事件では少女の嘘の証言をもとに有罪判決を下した。判決文を書くのに5ケ月も要する異常な裁判であった。再審棄却をした日野町事件では「否定されるものではない」「…ものではない」が9ケ所も出てくる推論を繋ぎ合わせたひどいものである。宮城県の北陸クリニック事件では証拠調べもせずに控訴棄却をした。裁判の迅速化というが、裁判の杜撰化である。大阪地裁所長オヤジ狩り事件では家裁と地裁全く異なった判断がなされている。
 裁判員制度を目前に控え、すでに公判前整理手続きが始まっているが、危惧すべき事も明らかになってきている。公判の中で出された新しい証拠は使う事が出来ない。裁判内容についての批判も出来なくなる。
 国民の開かれた裁判を実現し、裁判を通して国民の人権と民主主義を守る社会を築いていく努力をともに進めいきましょう。

☆「支える会」1年の活動報告と今後の方針
最後に事務局の客野美喜子さんから、この1年をふりかえっての活動の報告や、これからの方向についての提起がありました。
事務局の客野です。今日は集会にご参加いただき、ありがとうございました。
「支える会」の1年間の活動とおもな出来事、今後の方針などについてご報告します。

昨年4月3日、今日と同じ場所で「ゴビンダさん支援集会」を行い、3月24日に再審請求したことを、みなさまにご報告しました。そのわずか2日後、「名張事件、名古屋高裁で再審開始決定!」という歴史的なニュースがありました。この朗報を、ゴビンダさんも獄中で知り、大変な勇気をいただきました。4月13日〜20日、お母さんと奥さんが、ゴビンダさんと面会のため来日しました。お母さんは、じつに12年ぶりの親子再会でした。正直なところ、ネパールのご家族には、再審のせいで仮釈放がかえって遅れるのではという不安もあったそうです。しかし、ゴビンダさんは、名張の開始決定のことを説明し、「私の主任弁護人と同じ神山先生が、再審弁護団に入っておられる。私も再審に希望を持っている」と名言したそうです。
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以上をもって当日の集会を予定通りに終えました。会場で販売したネパール紅茶やネパールグッズなども好評をいただきました。売上げは、支援活動資金に充当されます。ありがとうございました。

文責 事務局