トピックス2002

<もくじ>
ジョゼ・ボベさんと大いに語る東京集会にて…(2002年10月29日)
         (→チラシ
ジョゼ・ボベさん来日中の報告
「ストップ!遺伝子組み換えイネ全国集会PART2」名古屋での集会報告

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ジョゼ・ボベさんと大いに語る東京集会にて…(2002年10月29日)
◇ジョゼ・ボベさんが語ったこと
 1999年マクドナルド店解体事件で一躍脚光を浴びたフランス農民連盟のジョゼ・ボベさんが、10月27日ATTAC (アタック)Japanの招きで初来日し、全国5ヵ所で集会をもち2000人以上が参加しました。ボベさんは、 
 @農民による農業を破壊するWTO
 A遺伝子組み換え作物の特許化による種子管理を企む多国籍企業
 B遺伝子組み換え作物の危険性と欧州での反対運動
 C遺伝子組み換えイネを止める闘いの重要性
 などを語りました。以下は、10月29日「ジョゼ・ボベさんと大いに語る東京集会」での発言要旨です(中見出しは編集者による)。


◆農民を土地から追い出し、農業を破壊するWTO(世界貿易機関)
 今日、WTOが行っているのは、国境を開き、各国が必要もないのに食料を輸入させるように追い込むことです。それぞれの国にコスト以下の値段で食料を輸入するということを強制しています。おおよその国が自分達の食料を生産できるのもかかわらずです。
 このことよって利益を受けるのは、一握りの食料輸出国と多国籍企業のみです。さらに、様々な国に関税障壁を低くすることを強制しています。そして、自らの国の農業を支えることを禁止するのです。
 こうしたことは非常に破局的な結果をもたらします。その被害者となるのは単に農民だけではなく、消費者も被害者となり、環境も被害を受けます。


◆食料主権の考え方を打ちたてよう
 こうしたシステムを変えなければなりません。食料主権という考え方が必要です。つまり、自国の生産品でもって自国に人々を養う権利です。
 世界の労働人口の半分以上は、いぜんとして農民です。ところがWTOの目的は、この農民の大部分を消滅させ、一握りの多国籍企業に食料生産をまかせるということにほかなりません。この政策は、この地球という星の均衡にとって自殺的な政策です。そこで余った農民をどうしようとするのでしょうか。5千万人あるいは1億人の都市を作って、そこに収容しようというのでしょうか。
 しかもWTOの政策・通商ルールに関しては我々には選択権が一切与えられていません。市民どころか、(国会)議員も発言権を持っておらず、WTOの枠内では誰も異議をとなえられないわけです。
 WTOはきわめて非民主的な組織であり、これに地球の未来を、農民や市民の未来をゆだねてはなりません。


◆生物多様性を特許化する多国籍企業
 
今日人類のみならず地球そのものが様々なものに脅かされていますが、その最終段階は生物多様性の破壊で、それは特許化することによって、いわば人質にとってしまうということです。それを推進しているのが巨大な製薬メーカーであり、農業化学メーカーです。
 この特許化のひとつが遺伝子組み換え作物であり、このような植物に対する特許を通じて、多国籍企業の4社ないし5社が世界中のすべての種子管理を牛耳ろうとしています。農民は従来自分で収穫し、またその種を播くということを行ってきました。ところがこの特許化の論理を通じて、毎年企業から種子を買わせるということを狙っています。したがって、生命体に対する特許化は、多国籍企業による農民に対するいわばホールドアップだと言えます。農民にとっての最初の独立、自立性は、自分の畑で収穫したものを、再び播けるということなのですから。


◆全体主義的農業である遺伝子組み換え作物
 こうした遺伝子組み換え作物は健康にとっても、環境にとっても大きな危険性を孕んでいます。今日遺伝子組み換え作物の95%が除草剤耐性植物ですが、その植物は除草剤で死なないでその除草剤を吸収しながら育っていきます。したがってこれを食べる動物や人間が汚染されてしまうことになるわけです。また、この遺伝子組み換え作物は現在の農業との共存を許さない存在です。拡散されることによって、次第にその種全体を汚染してしまいます。その意味で、他との共存を許さない遺伝子組み換え作物は全体主義的農業と言えます。
 したがって、我々は遺伝子組み換え作物に関し、国家や業者に最大限の透明性を求めなければならなりません。また、遺伝子組み換え作物実験が普通の畑で行うことを妨げなければなりません。こうした
闘いを我々はヨーロッパで行い、かなり成果を上げてきています。92年には多国籍企業の妨害にもかかわらず遺伝子組み換え食品の延期を求める政策が取られましたし、1ヵ月前には新たな遺伝子組み換え食品を市場に流出させることを禁止した措置が取られました。フランスでは現在のところ、1ヘクタールたりとも遺伝子組み換え作物が作られている畑はありません。


◆まず日本で遺伝子組み換えイネを止めよう!
 こうした闘いの中で時に違法とされる行為も行いました。その法規に対して我々は農民の権利、消費者の権利、そして環境の権利、というものを主張したいと考えています。そうした行動の枠内で試験中の作物を破壊したりしました。また種子をまぜて使用が不可能な形にもしました。それからフランスに来ていたインドの農民達と一緒に遺伝子組み換えの米を破壊したりしました。確かに収監、すなわち監獄に入れられるというリスクもあるわけです。それを怖がってこの闘いを止めることはできません。そして我々の仲間の一人が収監されてしまうと、より多くの仲間達が立ち上がって闘いを続けるという状況がみられます。
 そうした努力のおかげでヨーロッパにおいては、80パーセントの人々が遺伝子組み換え作物に反対の意見を表明しています。これはとても勇気付けられる結果です。なぜ勇気付けられるのかというと、農民と消費者と一般市民が――食物というのは市民全員に関わってくるものであるわけですけれど――、3者が手に手を携えて共闘が組めるということだからです。
 したがって私は、日本のみなさまに遺伝子組み換えイネについて闘うことをおすすめします。そして場合によっては違法と言われるような手段をとらなければならないかもしれませんけれど、それも仕方がないといふうに思います。と申しますのは、遺伝子組み換えのイネを作ったあかつきに、どういうことが起こるかというと、単に一つの基本的な作物が脅かされるということではないわけです。今日、米というのは地球上でもっとも代表的な穀物となっています。それに結び付いた文化も存在するわけです。したがって一旦遺伝子組み換えが行われてしまうと、単に作物が変わるだけではなく我々の自然に対する関係、文化に対する関係――そうしたものは何千年にもわたって培われてきたのもですけれど――そうした一切が変わってしまうと考えなければならないからです。   
 この遺伝子組み換えイネに抵抗するということは単に権利ではなく、もはや義務であります。そしてそれを行うべきところは単に日本という所ではなくて世界中で行わなければなりません。この遺伝子組み換えイネを妨げるということは、非常に大きな課題となっています。
 何年も過ぎたあと、振り返ってみたときにその闘いを誇れるような業績を残していただきたいと思います。さすがに日本においては米作りというものが基本的な農業であったがために、そこで遺伝子組み換えのイネがストップされたんだ――こういうふうに振り返られる闘いをぜひ進めていただきたいと思います。
 闘うと申しましても私達に武器はありません。物理的な力というものはないわけです。そうした力を振るおうとは思っていません。弱者の武器である非暴力を用いて闘わなくてはなりません。しかし我々が決然とした態度で臨むなら、様々な闘いを結び合わせることができるに違いありません。そうした連帯によって我々は世界を変えることができ、より公正な世界というものを作ることができるはずです。そしていつの日か我々は農民であることにまったく恥じることなく、むしろ大いなる誇りをもって農民であるいえる世界が来ることを願っているわけです。そうしたことによってこそ農業と市民達の連帯、和解というものが成立するのであって、そして食料をいうものを絆にして我々は文化と自然との間の調和というものを再び勝ち取ることができるというふうに確信しています。

 
私は今、「ビア・カンペシーナ」という国際的な農民の組織にも所属しています。この「ビア・カンペシーナ」は世界中の約100の組織を連合した農民の組織です。「ビア・カンペシーナ」とは「農民の道」という意味なのですが。そしてそこのスローガンを紹介したいと思います。「闘いをグローバル化しよう」と。なぜグローバル化するのかというと「希望をグローバル化するために」です。


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◇ジョゼ・ボベさん来日報告

10月29日(火)午後6時〜 ジョゼ・ボベさんと大いに語ろう!東京集会に600名参加。立ち見が出るほど盛況。

 ボベさんは5日間の日程を終えて、昨日フランスに戻りました。
11月5日の慌しい中を来日してくださり、またこちらが設定したかなり非人間的なスケジュールにも文句を言わず、最後に「これで終わり。パーフェクトだったよね」と言いつつ、今回の来日について「来てよかった」と言ってくださいました。

昨年12月、ATTAC Japanは、結成直後に農民連盟にジョゼ・ボベさんの来日を要請し、承諾を得てから実現まで10ヶ月かかりましたが、ATTAC Japanの「ボベさん招聘プロジェクト」は大成功したと思います。

 21年前、成田空港に反対する三里塚農民たちがラルザックで開催された国際平和集会に招待され、そのなつかしい交流を引き合いに出しながら、私たちは農民連盟と連絡をとりました。農民連盟も21年前を思い出したかのように、すぐに「ボベを派遣する」という返事を出してくれました。

 ボベさんは、来日直後、すぐその足で、空港の外に出て、三里塚交流会に合流し、かつてラルザックを訪問した農民たちと再会しました。また当時通訳と
してラルザックを訪問したロバート・リケットさん(現在、和光大学教員)も参加して、食事をしながら、わいわいと3時間ほど語り合いました。取材にやってきた朝日新聞の記者も、現地の野菜で作った豚汁、サラダなどに舌鼓を打ちながら、食いつつ、楽しみつつ、取材しつつ、大慌てで本社に記事を送っていました。

 翌日午前中、ボベさんは、有刺鉄線に囲まれ、40メートル頭上をジェット機が飛び交いつつも、移転を拒否して、鶏や豚を飼い、有機農業を続けている農家を訪問しました。豚小屋、鶏舎、堆肥場、出荷場、らっきょう工場などを訪問し、肥沃な黒土をしっかりと観察していました。農民の石井紀子さんは飼育している豚を指して「夕べの豚汁はここにいた豚で、あの豚はクリスマスの楽しみ」と言うと、ボベさんは笑っていました。

 ボベさんは「ここはまるでjail(監獄)だ」と語り、「三里塚とラルザックの唯一の違いは、ラルザックは軍用地拡張反対闘争は終わったけど、三里塚では終わってない」と述べていました。またボベさんは、管制塔の前を通ったとき、「昔あそこに反対派が登って壊したんでしょう。テレビで見たよ」と語り、ボベさんたちも、かつて、軍の事務所に入り込んで、そこに保管してあった、軍が買収した土地の権利書や書類を破り捨て、めちゃめちゃに破壊したそうです(もちろん、この件でも逮捕されたそうです)。

 この三里塚訪問はボベさんにとってなつかしいとともに、かなり印象深いものがあったようです。あちこちで三里塚の話をしていました。福岡交流会では、農民の人から「フランス農民というのはかなり頑張っている。私たち日本の農民も見習わなければならない」と質問されると、「闘いというのは、お互いに学び合うものだ。かつて私たちだって三里塚の農民から闘いの仕方を学んだんだ。だから私たちは彼らをラルザックの勝利集会に招待したのです」と語っておられました。

 また福岡集会では、日程の事情からキャンセルになった長崎実行委員会の郵政全労協・郵九労の人たちがかけつけると、ボベさんは「自分の都合で迷惑をかけて申し訳ない。長崎、広島は、自分が運動を始めたきっかけなので、長崎はぜひとも行ってみたかった」と詫びながら、大喜びで握手をしていました。ボベさんは、郵政全労協が、昨年フランスの独立労組sudを日本に招待して交流を深めたことを知っていました(東京集会でsudバッジをつけた人を見つけたときは、嬉しかったようです)。

 ボベさんは、私たちは公共サービスの民営化を阻止しなければならないATTACはあらゆる民営化に反対する、と主張されていました。

「権利を守るためには時には司法と対立することだってありうる。法律に触れることだってありうる。ならば、私たちの手で法律を変える運動をしよう。敗北とは闘わないことだ。一人一人の小さい闘いをつないで大きくしていこう」と呼びかけ、「私たちの希望をグローバル化しよう」と訴えました。

 さらにボベさんは「世界社会フォーラムに結集しよう」と呼びかけ、帰国直前の空港でも「ポルトアレグレで会おう」と言い、「いや、ちょっと待て、自分が収監されなかったらね」と付け加えて、笑いながら、去っていきました。

 ボベさんはなかなか楽しい、ひょうきんな人でしたね。11月5日に14ヶ月の判決が予想されるというのに、何1つ動じない姿勢は「闘いの正当性」を確信しているからであるようです。ボベさんは海外のあちこちから著名人を呼んできて、法廷に証人として出廷させて、闘いの正当性を主張するという公判戦術をとっているそうです。これまでに、全く事件とは関係ないのに、スーザン・ジョージやバンダナ・シヴァなども出廷させ、「この人はいい人だ」とか、「GMOsがいかに危険であるか」などについて語ってもらい、「闘いの正当性」を証明してもらうのだそうです。またボベさんによれば、フランスの裁判官組合に加入している裁判官全員(全裁判官の30%)が、ボベさんを投獄させるなという署名にサインをしているそうです。

 なお、皆さんからいただいた、ボベさんを収監させるなという「農民連盟の呼びかけに応えて」という署名は、ボベさんの収監について最終判断を下すシラク大統領に渡すので、後で農民連盟に送ってほしいということでした。事務局としては、来週中に国際宅急便で農民連盟に送付します。

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「ストップ!遺伝子組み換えイネ 全国集会PART2」報告
2002年11月17日(日) 於 名古屋市ナディアパーク・デザインホール

 会場のナディアパークは繁華街に位置し、1階にloftが入っていて若者達がたくさん出入りしている、たいへん綺麗な施設でした。
 会場内では、中部よつ葉会・よつ葉牛乳の試飲と販売、ウガンダ産のコーヒー、わっぱの会の国産小麦・天然酵母・自然塩使用パン、大豆トラストで作られた食品の販売などもあり、見ているだけで楽しい。特に嬉しかったのは赤米・黒米を無料配付してもらったこと。地場で採れる米の美しさに見愡れました。

 名古屋、松本を中心に活動する音楽ユニット、ラブ アース ネットワーク(土を愛する会)の歌と演奏に続いて講演会。

★講演「ダッシュ村の誕生、今そして未来」
  今村 司さん(日テレ「鉄腕ダッシュ」ダッシュ村プロデューサー)

 「鉄腕ダッシュ」という番組の存在は知っていましたが、普段熱心な視聴者というわけではありません。今回は今村さんがダッシュ村の2年半を13分のダイジェスト版ビデオにして上映してくださいました。
 日本のどこかに位置する未認定村落「夢実験場」ダッシュ村。アイドルグループTOKIOが、釘を1本も使用していない築200年の藁葺き日本家屋再建、野菜や果樹の有機栽培、アイガモ農法での米づくり、山羊の飼育と出産、水車づくり、井戸掘り、炭づくりなどに挑み、幾多の困難や挫折を乗り越えながら成長していきます。番組開始当初、農村で百姓をするという設定に「俺たちアイドルなのに、なんで百姓させられるんだよ」とゴネていたTOKIOも次第に意欲的になり、ダッシュ村に癒されるようになっていったとのこと。画面からも彼らの生き生きとした様子が窺えます。単に「カッコイイ」だけでなくみずみずしい生命力を身につけるようになったメンバーは、最近お米のCMにも出演しているとのこと。

 今村さんのお話は、知識に偏りがちな運動圏の人間にとっては目からウロコでした。上から声高に物申しても何も伝わらない、やさしいアピールで個々の人々に問題意識を持ってもらおうとする今村さん。24時間30台のカメラを回し生命の営みを追うスタッフの熱意。週に一度必ずダッシュ村を訪れて畑や動物と触れあっているというTOKIOメンバー。それを見て茶碗にひと粒のお米も残さず食べるようになった幼い視聴者。最終的には受け手に委ねられるという今村さんの意気は、スタッフを通じて確実にお茶の間に伝わっているようです。テレビというメディアが持つ力と、伝えることの難しさと大切さを改めて感じました。

 個人的に非常に感じ入ったエピソード。今村さんは他に「スーパーテレビ」も担当しており、その中で日光に生きる猿と人間との関係を一年間追っていきました。日光は猿を駆除しつつ保護し共存していく地域ですが、農業を営む人たちは猿の被害に自殺者が出るほど悩まされています。猿と人間の生の営みをそれぞれ丁寧に描いた後、猿を駆除する目的で射殺するシーンを流したところ、その日のうちに日光市と(おそらくは都市生活者の)女性たちから3000件の抗議電話が殺到したそうです。番組の制作意図もそこに至る過程も無視し、射殺のシーンだけを切り取って非難する人々の姿勢に、今村さんは非常に憤慨していました。

 今村さんはBSEや輸入食材をめぐる昨今の騒動に関しても、一時期だけ騒ぎ立ててはすぐ忘れる人々の無責任な姿勢に批判的でした。全てを世間やメディアの責任だとし、自らの意識の低さ・マナーの悪さに気付かない大人には何も期待していないと言い切ります。「若い世代に第一次産業の大切さを刷り込みたい」この言葉には非常に感動しました。

 ダッシュ村でスタッフに農業についてアドバイスするのは、仕込みの有名人でも何でもない、ただの「近所のお百姓さん」です。農業に最も大切なのは「土地の気候を知ること」であると今村さんは力説します。
また、番組が伝えているのは農の楽しさのみでなく、ダッシュ村で作った炭を東京で売ると1俵1900円にしかならず、彼らが3ヶ月を費やして作られた20俵の炭の金銭的価値は3万8000円に過ぎないという厳しい現実を見せつけたりもしています。

 農業=第一次産業の価値を上げること、お年寄りの知恵を後世に残すこと、生命と向かい合うことを目的に番組づくりをしていると。ココロザシそのものは「鉄腕ダッシュ」も「遺伝子組み換え反対集会」も同じである、ただ人々に伝えるという目的があるのであれば、伝え方を考え選ぶことも大切であると、今村さんから教わりました。たいへん学ぶところの多い講演会でした。皆さんも今村さんのお話を聞く機会があればぜひ!


★シンポジウム「いらない!食べない!作らない!遺伝子組み換えイネ」

●「ヨーロッパGM見聞録・表示の現状」 天笠啓祐さん
 BSE以降のヨーロッパの農の実態見聞。ドイツではBSE発生後、消費者の意識と力が高まり農水省が解体されて消費者保護食料農業省ができる展開。市民の食と農に関する意識と行政への影響力が、欧州と日本とでは段違いであることがわかります。
 その他、コープイタリアが推奨する低農薬低化学肥料作物、エミリア・ロマーナ州で実行されているトレーサビリティの追及、イギリス小売協会、欧州消費者連合会などをレポート。

●「世界の最新情報・遺伝子汚染の現状」 河田昌東さん
 スターリンク事件で判明した人畜差別認識の破綻、分別流通の困難(作物流通管理
の杜撰さ)、栽培現場での汚染(花粉飛散による他家受粉)・雑草の除草剤多重耐性・交配力強化、ターミネーター種による生態系破壊への懸念・カナダでの除草剤耐性ナタネ特許問題(シュマイザー裁判)…カナダの農民シュマイザー氏の畑から一部モンサントの除草剤耐性ナタネが発見され、裁判の結果モンサント側が勝利(<花粉にも特許があるのか><モンサント=遺伝子警察>の批判)
 アメリカの一農家では「購入した種で育った作物からとれた種を来年も使う」という<自家採取の権利>を主張する裁判も行われている・メキシコ野生コーン群にGMコーン発生→生物多様性の危機、生態系と生物進化への遺伝子侵略、生物多様性条約とGM推進の矛盾などが表れ、アメリカのコーンベルト地帯ではGM作物の栽培を自主規制する動き・未認可GM植物の試験栽培による汚染の可能性→ベンチャー企業プロジデン社事件(ネブラスカ州で大豆畑に、医薬品用に試験栽培されていたGMトウモロコシ混入)→我々は食べたくもないワクチン医薬品を知らずのうちに食べてしまう危険性がある・ヨーロッパの反対運動で排除されたGM穀物の行方→規制の甘い日本、食糧難のアフリカ、ラテン・アメリカへ?

 簡潔にまとめましたが、いずれも興味深い内容でした。河田さんが発信する最新情報には今後も注目していきたいと思います。

●ディスカッション
 黒瀬 正さん(秋田県の稲作農家)
 松沢政満さん(愛知県の稲作農家) 
 中村知美さん(愛知県議会議員)
 コーディネーター 斎藤まことさん(名古屋市議会議員・わっぱの会)
 + 河田さん、天笠さん


 新城市から参加の松沢さんは脱サラして18年間、有機農業を営まれる専業農民。黒瀬さんは秋田県大潟村村長黒瀬喜多さんのパートナー。大潟村は、村自体を民主的なコミュニティにしよう、効果的近代農業モデルを作ろうという意図で農林省が作ったモデル農村だそうです。
 「なぜこの(シンポジウムの)場に愛知県農業試験場の関係者がいないのか、役人や行政の関係者がいないのか。GM作物は圃場でできても農業の現場に持っていってできる可能性はあるのか? 何のためのGMOなのか、技術開発者のテクノロジー追求のエゴのためじゃないか」と厳しく追及。技術が先鋭化する度に技術者は視野を狭くする、10%の収穫率アップの代償に人々は何を犠牲にするのか(環境への影響、子供の教育の場と年寄りが帰っていく場を失うリスク、etc.)、モンサントは「田圃に入って作業せずに済むことを目指している」そうだが田圃に入るのが嫌なら農業なんかやめなさい、という力強い主張は会場から篤い支持を得ていました。

 県議会議員の中村さんは平成8年からGM問題に取り組み、平成9年6月議会からの「愛知県議会における遺伝子組み換え食品に関する質議」をまとめてくださいました。中村さんによると、愛知県農業試験場でのGM作物の研究費を問うたところ、平成8年度で119万円、9〜13年度で181万円という何とも呆れた回答だったとのこと。モンサントによる多額の援助金が出ていることが推察されます。
 日本での反GM運動は消費者の意識は高いが農民の自覚と知識が余りにも希薄すぎるとの指摘。農民が農に対する関心を失っている現実と、消費者運動の重要さを改めて意識しました。

 集会終了後には1キロ米プレゼントの抽選などもあり(ハズレましたが)、非常に楽しく、また問題意識を新たにさせられ、運動を推進するにあたって「伝え方=個々に問題意識を持ってもらう方法」についても考えさせられた集会でした。参加できて本当に良かった。個人的に関心のあることを中心にまとめましたので、情報が欠けている、ニュアンスが伝えきれていないなど、非常に稚拙な内容で申し訳ありません。誤りがあればご指摘ください。

 後日談:「わっぱの会」のパンを買いすぎたので、翌日職場に持っていったところ、おいしいと評判でした。

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