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野宿者
A1:居所を持つことができず、野宿せざるを得ない人たちで、報道では「ホームレス」と言われることが多いです。 典型的には、公園や河川敷などにテント小屋を作り、そこで生活をする人たちがいます。また、そのような小屋も持つことができずに、昼間は荷物を持って移動し、夜だけ駅頭や軒下にダンボールを敷いて寝る人もいます。また、建設業者などの簡易宿舎(いわゆる飯場)やホームレス向け施設に居住する人も、現実には路上での野宿と往還している人が少なくありません。若者を中心としたいわゆる「ネットカフェ難民」と言われる人たちも事実上の野宿者で、ある程度のお金がある時はネットカフェに泊まりますが、所持金の具合により、24時間営業のファーストフード店、公衆電話のボックスの中、路上での野宿、などを行ったり来たりしています。 「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」に基づき厚生労働省が2007年1月に行った全国調査では、「全国のホームレス数」は18,564人とされ、4年前の調査から6,732人減少していると報告されています。しかし、同法のホームレスの定義は「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいるものを言う」とされているため、先に述べた野宿者のうち一部の人たちを数えたに過ぎず、実際には厚労省の発表よりもはるかに多い野宿者がいます。また、野宿者の減少というのも、見えにくくなったに過ぎず、実際には増大・深刻化していると支援運動の中では感じられます。 A2:野宿者の聞き取りで最大の原因としてあげられているのは、失業です。もともと不安定な業種で働いていた人を中心に、一度失業すると、再就職の困難さから収入の道が閉ざされ、しかももともと蓄えが多いわけではないので、居所を維持することができなくなってしまいます。また、土木建設業の飯場を転々としていた日雇労働者、住み込みで働いていた職人や配達労働者などは、失業するとそのまま住むところを失ってしまいます。若い人の中には、始めからフリーターのような不安定かつ単純な労働しか経験できず、そのまま35歳を過ぎてアルバイト先が見つからなくなり、野宿になる人も増えてきました。また、野宿者となるのは雇われていた人たちばかりではありません。バブルとその崩壊、その後の銀行の不良債権処理、系列企業の下請け切り捨てなどで、多く零細自営業者が倒産し、その中には野宿に至っている人が数多くいます。これらの過程で、借金を抱え、家庭が崩壊してしまった人が、野宿者の中には多くいます。 これらの背景には、正社員をリストラしてパートや派遣などの非正規雇用労働者に切り替えた産業界の人件費削減、不安定雇用を促進した改正労働者派遣法など各種労働法の改悪、生活保護費の切り下げなど「構造改革」に伴う各種社会保障制度の切り捨て、不良債権処理の過程で行われた銀行による貸しはがしと融資拒否による零細企業の倒産、大規模農業優遇による零細農家の困窮などがあります。これらの一連の「改革」は、新自由主義と呼ばれる弱肉強食の市場至上主義の下で行われており、これが貧困と格差を拡大し、ワーキング・プアを増大し、さらに野宿者を生み出しています。すなわち、この国の政治・経済の大きな方向性が、必然的に野宿者問題を深刻化していると言えます。 A3:野宿者の生活を脅かすという点と、そもそも野宿者を生み出すことに寄与しているという点で、大いに関係あります。 直接的な問題としては、G8サミットのような国際イベントが開催される際、会場付近で野宿者の強制排除が行われ、野宿者の日々の生活を破壊します。2002年日韓ワールドカップでは、会場となる各都市で野宿者が排除されたことが報告されています。2006年の世界バラ会議(大阪)では靱公園と大阪城公園で、その翌年の世界陸上では長居公園で、大阪市による野宿者の強制排除が行われ、生活を支え合ってきた野宿者コミュニティが解体されました。東急電鉄渋谷駅の地下通路では2007年末の厳寒期に野宿者が排除され、それを東急側は「警視庁や渋谷署と連携したテロ対策のため」と説明しました。G8サミットを控えて「テロ対策」が声高に強調される中、北海道のみならず、閣僚会議などが行われる各都市で、野宿者の生活が脅かされます。 また間接的には(こちらの方がより重要で、ある意味これも直接的なのですが)、G8サミットは野宿者を生み出す役割を果たしているとも言えます。なぜなら、G8サミットは、各国の利害を調整しながらも、アメリカを中心とした新自由主義的グローバリズムを積極的に進めてきました。ダボス会議のような経済界・巨大民間資本の私的サロンでの要求を、政治レベルで裏付け推進する役割を果たしています。これを反映して国内では、小泉政権による「民営化」や「構造改革」が進められ、先述のように、雇用は不安定化し、零細自営業者・農家はつぶれ、福祉が削減されて、野宿者の増大につながっています。従って、G8サミットは野宿者を生み出すシステムを作り、促進してきたと言えます。 A4:G8サミットで論議される貧困対策の方向性は、あくまでも新自由主義に基づく「経済成長」が貧困をなくすという筋書きで進められており、これは貧困を解決することにはなりません。 G8サミットで論議されるのは、主に途上国における開発・貧困の問題ですが、そもそもかつての植民地支配や先進国資本の収奪により深刻な貧困状況が作り出されてきたにもかかわらず、さらにIMF「構造調整プログラム」などを進めて「経済成長」を促すという方針が前提で、G8諸国の国益やそれらの国の資本の利益が優先されます。このように、実際に貧困に瀕している当事者が不在のままに進められる、新自由主義を前提とした解決手法は、表面的には経済成長を促すように見えるかもしれませんが、その内実は国際競争力のある企業の成長などが優遇され、「成長」の阻害要因は切り捨てるものですから、貧困層は一層貧窮に追い込まれます。 これが問題の解決にならないことは、戦後最長の好景気の中で貧困と格差が拡大している、今の日本を見ても明らかです。日本政府もこれを認めざるを得なくなっており、07年経済財政白書では、日本や米英では「成長と格差拡大が同時に進む例が見られ」ると書かれています。 A5:私たちは、スラムでのコミュニティ運動をしているアジア各国の仲間がいますが、アジアの貧困者運動から見ても、G8サミットは賛成できるものではありません。 アジアのスラム住民などは、相互扶助のコミュニティ社会を作りながら、貧困や強制排除と闘っています。彼らにとって、海外資本による再開発とそれに伴うスラムの強制排除は、仕事と生活の基盤を脅かすものです。それをアジアで中心的に進めているのが、アジア開発銀行(日米が最大の出資国)や日本の国際協力銀行(JBIC)、そして日本の金融資本であり、税制優遇措置のもとで多くの日本の企業が現地に進出しています。そのため、彼らの中では、新自由主義の脅威は日本以上に身近に意識されていますし、それを進める最大の「敵」はアメリカよりも日本であると受け止められています。 さらに、アジアからG8に参加しているのは日本だけですから、日本はG8サミットでアジアにおける覇権を行使しており、欧米と勝手に「談合」して自分たちを食い物にしていると考えています。アジアで貧困者運動を担っている活動家たちは、そのような「談合」を認められないと異口同音に訴えています。 A6:確かに、野宿者がG8首脳に直談判し、それを受け入れさせたら画期的ですよね。しかし、新自由主義的政策を転換して、私たちが求めるように格差と貧困をなくすという選択をさせるのは、G8サミットの基本的性格からも、無理だと考えます。 また、もしそれが万が一可能であったとしても、G8サミットを問題解決の契機にするのは間違っていると考えます。G8“サミット”は、2つの意味でトップ・ダウン的な非民主的性格を持っています。8カ国首脳だけで世界的な政治経済に関する調整を行うという意味でも非民主的ですし、それぞれの国内的にも民主的プロセスを経ていません。このような国際的にも国内的にも根拠のない「非公式会議」にもかかわらず、ここでの対外的約束を根拠に法的・実務的な国内整備を行うというやり方が行われています。例えば2004年シーアイランド・サミットでは、小泉首相は国内での論議を無視し、いきなりイラク多国籍軍への自衛隊の参加を表明して、それを国際公約として自衛隊派兵を進めました。もし野宿者の直談判があり得るとしても、このようなトップ・ダウンの権力に依拠し、G8首脳の「英断」に期待するのは間違いではないでしょうか。 従って、私たちはG8サミットという「談合」自体に反対します。G8サミットを介して貧困・格差をなくすというという考え方ではなく、G8サミットのような非民主的システムをなくし、貧困者自身の声が反映される民主的プロセスと新自由主義的政策の転換を求めます。 A7:野宿当事者や支援者だけの取り組みではなく、貧困・格差・不安定雇用・社会的排除に苦しむ国内外の多くの人たちに呼びかけ、相互交流を深めつつ、北海道で抗議行動を行いたいと考えています。具体的には、G8サミットの時期に、貧困・労働問題を焦点とした街頭アクションを北海道で予定しています。街頭アクションとする理由は、G8要人に要求するというよりも、G8サミットはおかしい、G8サミットはいらない、ということを広く市民・民衆に訴え、大きなうねりを作りたいと考えるからです。しかし、現実には北海道に行けない人の方が多いですから、東京、大阪など各地で、各現場や様々な人々を結びつける集会などを開催し、北海道での取り組みに連動させたいと考えています。このサミットを契機に、多くの苦しむ人々が連帯の輪を拡げ、新自由主義に反対する大きな力となることを目指します。 これらの取り組みへ、多くの皆さんの参加を呼びかけます。 |
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