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西陣夢まつり見学会レポート(西陣プロジェクト)
2001年10月20日 西陣界隈にて
西陣プロジェクト

10月19日(金)から21日(日)にかけて、西陣界隈で「西陣夢まつり」が開催されました。西陣織会館では、きものショーや実演がおこなわれました。また、西陣界隈では、工房やギャラリーなど40軒が公開工房として披露され、訪れる方々を楽しませてくださいました。

ものづくり塾では、ホームページなどを通して呼びかけたところ、織物をされてる学生さんやきもののお仕事をされてるかたなど、11名もの方が集まり、20日(土)に工房を見学してまわることになりました。訪れた工房のうち、いくつかをみなさんにご紹介します。


手機の道具「稲垣機料」

最初に訪れたのは、稲垣機料さん(五辻通り七本松西入ル)です。手機の織機やその道具を売る老舗です。糸枠はもちろんのこと、手機では見なれた道具から、どうやって使うのだろう?と首をひねりたくなるようなものまで、さまざまです。木綿から糸をつくる器械で実演して説明もしていただきました。

でも、こうした道具も、今では作れる職人さんが少なくなっているとか。竹筬や、右の写真にある道具なんかもそうです。これと同じように、西陣に灯はひとつ、ひとつ消えていくのかと寂しい思いがしました。

稲垣機料さんのホームページは以下のとおりです。

http://www.mediawars.ne.jp/~loom/


佐内機料店

今年4月の職人列伝の取材でお世話になった佐内機料店さんにも、お邪魔しました。こちらでは、手機の道具だけでなく、ご自慢のボトルシップに入ったミニ手機を披露されてました。「みんな、こっちばっかり見ていかはる」と笑っておられました。
先ほど訪れた稲垣機料さんにも、こちらのミニ手機が置かれていたので、そのお話をすると、機料店どうしで、お互いに持っている商品を補い合ったりして仲よくされてるとのこと。こういった関係があるのも、西陣ならではかもしれませんね。


稲垣機料のお店

手機の道具について説明してくださいました

今はつくることができない織の道具


すくい織を披露してくださる杉村さんの奥さん

すくい織「杉村」

ご夫婦で工房を公開しておられる杉村さんにお邪魔しました。すくい織はくしのような道具で経糸をすくい上げ、そこに横糸を通して織るという技法のことをいうようです。すくい織は他の技法に比べて、自由に糸を入れることができるため、いろいろな種類の糸を織り成して、バリエーションを持たせることができるようです。ふだんはなかなか見られない織物を見ることができました。

奥さんとだんなさんが交代で実演して見せてくださり、すくい織の作品の魅力についてお話を聞かせていただきました。
こちらの工房では、ふだんでも予約をすれば見学できるそうなので、みなさんもご覧になってはいかがでしょうか?


福田染工

こちらは7月の職人列伝の見学会でお世話になったところです。公開時間の終わりかけの時間だったにも関わらず、工房を見せていただくことができました。実演は残念ながら終わっていたのですが、福田さんご夫妻が製作された草木染めの作品を見学者の面々に披露してくださいました。

見学者の中に、これから実際に織をしたいと思っている者がいたので、福田さんところの機で織ってみる?なんて話もしていました。


洛陽織物

こちらでは、紋紙とジャガードを使った手機を見せていただくことができました。
ジャガード手機で織った帯は、力織機の帯に比べて、横糸が少ないため、軽いという特長があります。
ジャガードを使うと言っても、どの経糸に横糸を通すかはすべて職人さんが頭にいれていないと織ることができません。微妙に違う色の糸を見分けて、手早く経糸に横糸を通していく技は見事でした。

だんなさんも披露してくださいました

すくい織についてご説明してくださいました


金箔・箔押し「中嶋由商店」

金箔を和紙に張るお仕事をされてる職人さんにお話をお聞きしました。
きものに金を使用するよになったのは、1400年代のこと。中国から持ちこまれたそうです。当時はもちろん、お金持ちの階層の人しか着ることができず、かなりの贅沢品でした。それが何度も禁止令にあいながらも、利用されてきたそうです。

金箔と和紙の接着剤となるのは、漆だそうです。漆は、英語で「JAPAN」といわれるとおり、日本で取られるものだったのですが、今では、消費量の10〜20%程度しかとれないとのこと。他は全部中国からの輸入に頼っているとか。漆はかぶれるから、とあちこちの山で切り落とされ、どんどんなくなっているとのこと。

漆を育てること、漆かぶれ対策のお話など、役に立つお話をお聞きできて、すごくためになりました。これこそが、西陣が長年にわたって蓄積してきた知識なんだろうなぁ、と感じました。
この仕事のあととりがなくなり、仕事がなくなれば、その知識はもう途絶えてしまうのかと思うと、非常に寂しい思いがしました。


西陣蘗(ひこばえ)の家

西陣織の工房ではありませんが、この夢まつりにあわせて公開されていた町家がありました。西関西木造文化研究会(KARTH)というところが研究に利用されている蘗の家というところです。こちらでは、普段から改装した町家に住みながら、その建築文化としての原点を研究されています。

木造建築に、日本人の知恵が凝縮されているという観点から、21世紀に伝えたい日本建築の「和の文化」のこころ・原点を探っておられます。


工房を訪れると1か所で30分から1時間くらい見させていただいて、じっくりお話ししてしまうので、あまりたくさんの工房を見に行くことができませんでした。じっくりお話しを聞かせていただくと、西陣の味わい深さを感じることができます。

今回訪れた以外にも、面白そうな工房はたくさんありました。それらも、予約をすれば拝見できるようなので、ものづくり塾では、工房見学ミニツアーも開催できればと思っています。
そのときはぜひ皆さん、参加してくださいね。


蘗の家の玄関

部屋の奥の庭をのぞむ

改造されたリビングはくつろぎのスペース



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