2008.03.04
さる3月1日、以下の宣伝の緊急公開シンポジウム、徹底討論!NHK「再生」の道、に参加した。
緊急公開シンポジウム 徹底討論!NHK「再生」の道
受信料支払い義務化の是非、また新会長の選出をめぐる騒動、 はては職員のインサイダー株取引問題と、問題山積のNHK。 放送法改正により放送局に対する行政の圧力も強まるなかで、 「皆様の」から「私たちの」NHKへ、脱皮は可能なのか?
◆日時:2008年3月1日(土)午後1時から午後5時
◆場所:東京・四谷「プラザエフ」 JR・地下鉄四ッ谷駅下車すぐ
〒102-0085 東京都千代田区六番町15番地 TEL 03-3265-8111◆資料代:1000円(維持会員・学生は無料)
◆基調講演 原 寿雄(ジャーナリスト・元共同通信編集主幹)
◆パネルディスカッション
岸 博幸(慶応大学准教授) 隈元 信一(朝日新聞論説委員)
日隅 一雄(弁護士)
醍醐 聰(NHKを監視・激励するコミュニティ共同代表)
戸崎賢二(愛知東邦大学教授) ほか国会議員など交渉中コーディネーター:服部 孝章(立教大学教授)
主催:メディア総合研究所
上記の「パネルディスカッション」には、質問用紙の提出ができたので、以下の拙著『電波メディアの神話』と『放送メディアの歴史と理論』に記した「オランダ放送連盟」に見習う改革の是非を質問したが、回答は得られなかった。
http://www.jca.apc.org/~altmedka/denpa-1-9.html
『電波メディアの神話』(1994.7.18)
[中略]
立派な理論と実例がある「放送時間の分割使用」
[中略]
一つの会場を様々な主義主張のことなる団体が交互に時間をかぎって使用するのは、日本でもあたり前のこととしてだれも不思議に思わない。
ところがこと放送となると事情がちがってくる。現在でさえ、私がオランダの例をだしたりして「放送時間の分割使用」の可能性を説明すると、おおくの人がキョトンとして私にうたがいいの目をむけるのである。想像力がはたらかなくなっているのだ。固定観念とは、げに恐ろしきものなり、といわねばなるまい。
しかし、日本にもかなり早くから「放送時間の分割使用」の可能性に気づいていた電波関係者やマスコミ研究者がいたのだ。
[中略]
イギリスでは長らくBBCの独占がつづいていたが、現在は民間放送もあり、ITVとよばれる第三チャンネルを一五のテレヴィ放送局が共有している。
オランダの放送制度について私が知ったのは、一五年以上も前のことである。
[中略]
郵政省が発行する白書などは都合の悪いことをのせない。日本には海外の放送事情がほとんど伝わらなくなっているのだ。
[中略]
オランダでは、ラディオの発足当時に最初の民間放送局の出資者が経営不振で手をひき、五つの聴取者団体が結成した「オランダ放送連盟」(NOS)による共同管理が成立した。ところが一九六五年に、この五団体管理が「放送の独占」であるという批判がたかまり、内閣の総辞職を引きおこす騒動となった。その結果、NOSの枠が拡大され、幅広い市民団体に放送時間が配分されるようになった。一九六七年には、新しく二二の団体から申請がだされ、第2表の七団体にラディオとテレヴィの放送時間が配分された。放送団体の数や時間配分は変動するようだが、第3表、第4表が一九七二年当時の状況である。第4表の「その他」は公認団体以外の諸団体のことで、これらをあわせると三〇以上の団体が放送時間の配分をうけている。
[中略]
オランダのような多元的な構造の放送法制だったら、日本のような独裁的「編成権」の主張はもともと成りたたない。だから日本の郵政省やNHKなどは、「四次元」または放送時間分割使用」の可能性について、極力、秘密にしてきた。政府が発表する白書類に はオランダなどの実例の記載はまるでない。研究者の言及も不十分である。
この最後の「可能性について、極力、秘密」と「研究者の言及も不十分」が、「徹底討論」を標榜するシンポジウムの実態であった。「偽の友は公然の敵より悪い」または「公然の敵の方が偽の友より良い」の典型である。
(編集長の随時日誌2007.10.04 の野次馬追記をそっくりそのまま転記)
2005年発行の『放送メディアの歴史と理論』には、1994年発行の『電波メディアの神話』の内容が取り込まれている。
上記の「送信者へのコペルニクス的展開の道」も同書にある。この見出しでは何が言いたいか分かりづらいが、無理やり一言でいうと、「市民に放送枠を寄こせ」。
荒唐無稽な主張と揶揄する向きもあったようだが、事実は理屈より奇なり…ではなく、現実は主義主張理論を追い越し、置き去りにもする。
インターネットの急速な発達で、「市民」は無料もしくは格安の「発信枠」を手に入れた。好き勝手に発信できる。ネットテレビも始まった。
著者はこんな事態を予想していただろうか。