木村愛二の生活と意見 2000年7月 から分離

『噂の真相』(2000.8)「メディア異人伝」魚住昭「ナベツネ」本に感慨無量

2000.7.9(日)(2019.6.7分離)

 一昨日、七夕の7月7日には、10日発売予定の『創』(2000.8)が届いた。この雑誌には20年ほど前から寄稿していたので、執筆者向け贈呈を受け続けている。私の寄稿は、『マルコポーロ』廃刊騒ぎの際が最後である。だが、この問題を契機とする身辺事情の激変以後も、特に執筆の依頼こそないが、編集長の篠田博之は、わが「ガス室の嘘」問題を、それなりに理解しているようであり、海外取材の際にはカンパをくれたりする。そんな関係だから、さる6.15のロフトプラスワン1960年安保40周年記念激論にも、声を掛けたら来てくれた。「壇上には登らないと言ったのに出席者として名が出ていた」などと苦情を述べながらも、後半には、『噂の真相』襲撃事件に関して一言したいと、壇上に登ってきた。先に予告した通り、『創』(2000.8)の記事には襲撃事件の部分の発言の要約が載った。私は「企画者」となっているだけで発言の収録はない。残念だが、一般読者(ミーちゃん、ハーちゃん、などとは言わない)には受けないのだろうから仕方がない。別途、わがホームページで公開する予定である。

 続いて昨日、7月8日、やはり10日発売予定の『噂の真相』(2000.8)が届いた。こちらも同じ経過で贈呈を受けて続けている。目次を見ると、「メディア異人伝」に「魚住昭」とある。元共同通信記者の魚住からは、つい最近、『渡邉恒雄/メディアと権力』(講談社、2000.6.20)を「謹呈」署名入りで送られたばかりなので、その件であろうかと頁をめくると、やはり、そうだった。激賞である。

 この魚住の新刊書は、月刊『現代』の連載記事を改訂したものだが、「メディア異人伝」では「超弩級」の評価ともなっている。われら元軍国少年ならば、当然、「超弩級」の原義を心得ているが、今時の『噂の真相』の若い読者らにも通じるのであろうか。それが心配だ。「弩」は中国の大型石弓のことだが、実は、石弓とは全く関係がない。イギリスの「英」と同じく、中国人流の発音による当て字で、イギリスの戦艦ドレッドフォードの「ド」を意味する。「超弩級」は、それ以上の大型戦艦であり、建造の競争があった。日本の海軍では、最後は戦艦大和に至る「大艦巨砲主義」となり、歴史的悲劇の意味をも孕む。

「悲劇」などと、ついつい、縁起の悪い言葉を使ってしまったが、魚住の本のことではない。「一千万部」の独裁者の本格的な研究、批判として、後世に残る労作である。願わくば、その数少ない「主な参考文献」に挙げられた拙著、すでに店頭には並んではいない自称わが労作、『読売新聞・歴史検証』(汐文社、1996.3.6)にも、注文がきてほしいものである。私には、どうやら、一般読者に受ける書き方ができないらしいので、初版が大量に売れ残っているが、研究資料としては「超弩級」、ロングセラーの自信がある。

 以上では、わざと、魚住の本について「主な参考文献」が「数少ない」と書いたが、これは、魚住が「数少ない」「参考文献」しか見ていないという意味ではない。むしろ逆である。講談社だけではなくて、日本のほとんどの出版社は、参考文献リストの頁を節約したがるのである。魚住が可能な限りの関係資料を収集した事実は、おそらく私が一番よく知っている。奥付を見ると1951年生れだから、1937年生れの私よりも14歳若い彼とは、わが仮住まいの応接間代わりの三鷹駅北口喫茶店で会った。その時、彼は、すでに拙著『読売新聞・歴史検証』を読み、その13頁におよぶマニアックなまでの「主要参考書」リストの内の「渡辺恒雄関係」資料のコピーを、すべて入手していた。私の旧著『読売新聞・日本テレビ・グループ研究』(汐文社、1979.3.6)は絶版なのだが、全文コピーしたいと言うから、喜んで貸した。

 さて、ここからが偶然とはいえ歴史的必然として、この「日記風」記事の前回、「田原総一朗」問題とつながるのだが、田原は、上記の『読売新聞・日本テレビ・グループ研究』から剽窃した。上之郷も同様だった。しかし、その後に出た大型伝記、これまた「超弩級」の『巨怪伝/正力松太郎と影武者たちの一世紀』(佐野眞一、文藝春秋、1994)では、上記の『読売新聞・日本テレビ・グループ研究』以外にも、同じく拙著、『読売新聞新総帥《小林与三次》研究』『マスコミ大戦争/読売vsTBS』を、参考資料に挙げていたし、私の名前も本文中に明記していた。私は、さらにそれを受けて、上記の『読売新聞・歴史検証』を発表した。その中には、すでに『マスコミ大戦争/読売vsTBS』に収めていた「渡辺恒雄」の怪しげな経歴への批判も入っていた。その直後、「次はナベツネをやれ!」と唆す友人もいたのだが、私には、もうひとつ、ナベツネ個人に迫る必然的な動機が不足していた。だからこそ、魚住の快挙には、両手を挙げて快哉を叫ぶ。

 佐野眞一も私より若い。私の糞面白くもない本が、次の世代への肥やしになるのなら、以て暝すべし、と言っても良いが、「暝す」とは「死ぬ」ことなので、やはり、「暝」さずに、私自身も頑張り続ける。誰だ!「迷惑」などと呟いたのは?

 私が、ナベツネをやらなかったのは、それ以外のテーマが山積していたからでもあるが、マスコミ関係の個人としてなら、「ガス室」問題で卑劣な裏切り行為を働いた元朝日新聞記者、本多勝一について、すでに優に「超弩級」1冊分以上の文章をホームページで発表している。この方は、本多勝一が『噂の真相』から追放された経過もあり、私は、すでに、『噂の真相』編集長、岡留安則から直接、『本多勝一“噂の真相”』の「ブランド使用」許可を得ている。現在、頭の中では、これを『本多勝一“噂の真相”体験記』にしようかなどと考慮中であるが、いつのことになるのやら、自分のことながら、物好きが過ぎて困っている。資料の欲しい人には惜しみ無く提供したい。ああ、言ってしまった。格好良すぎるかな。