「従軍慰安婦」問題に見る「メビウスの帯」断章(その4)
(2001.4.28のメールを収録)
送信日時 : 2001年4月28日 土曜日 9:03 AM
件名:続:NHK戦争裁判の大いなる錯誤
私は先にも、直前改変のETV番組、「戦争をどう裁くか」の企画が、最初に「ホロコーストの大嘘」を掲げること自体、実は、アメリカの侵略の正当化のデマゴギーの先兵に他ならないと、喝破しました。驚く人も多いでしょうが、これは、まるで不思議でもなく、珍しくもない歴史的現象なのです。
日本が大陸を侵略した際の代表的な檄は、「東洋平和のため」でした。「五族協和」でした。「東洋平和のためならば、何で命が惜しかろか」と歌って、数百万人の日本軍兵士が死に、そのひと桁上の「東洋」人の死者が出たのです。私は、読売新聞の過去を調べるために、国会図書館の古い蔵書を検索し、その一部を見ました。
「白人」が、いかに「東洋」を侵略し、残酷な搾取、収奪を続けてきたかという主旨の冊子が、無数といっても過言でないくらいに残っています。近代の侵略戦争は、常に、「人道」の旗印の下に行われたのであり、遅れて参入した半封建的な資本主義国家、日本も、その例外ではなかったのです。
「戦争をどう裁くか」の第2夜、「問われる戦時性暴力」の題名では、「日本軍」が消えていることも問題にされています。「法廷」そのものの題名は、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」でした。「日本軍」が、しかし、なぜ、最近、話題になりはじめたのでしょうか。その一つの切っ掛けは、非常に奇妙なのです。
この「法廷」に至る経過を、『人権と報道・連絡会ニュース』160号、2001.4.23.の記事による要約で紹介します。私も会員の同会の163回例会、4.9.「女性国際戦犯法廷をめぐる報道」の記事の中には、次のようにあります。
例会で西野さんは、この法廷が開かれるに至った経緯、NHKの番組改変、その背景について要旨次のように話した。
戦時性暴力の克服へ[小見出し] 法廷は97年、東京で戦時下の性暴力根絶について20か国代表が話し合った国際会議をきっかけに開かれることになった。[中略]ユーゴではレイプが「民族浄化」という戦略の一つとして使われ、20万人が被害にあった。
西野さんは、この運動の副代表です。代表は、朝日新聞記者の経歴の松井やよりさんです。朝日新聞は、アメリカの対ユーゴ・デマ宣伝を、ほとんど鵜のみ報道し続けました。私は、わが電網宝庫に、いわゆる「大量レイプ」とか「民族浄化」とかが、いかに卑劣な大嘘だったかを連載しています。
http://www.jca.apc.org/~altmedka/yugo.html
このデマゴギーについては、私だけでなく、ユーゴ問題を早くから追ってきた多くの日本人が、かなり詳しく知っているのです。そういう情報を知らないで、または、無視して、怪し気なアメリカ人の自称平和主義者に騙されて、または、利用して、大向こうを狙う「パフォーマンス」をやってしまったのが、この粗雑な運動なのです。
しかも、その粗雑な運動に、東大助教授とか、NHKプロデューサーとかが、群がって、さらには、その逆の側では、その動きの中に、大問題の「天皇の戦争責任」が含まれているのに、「危機管理」を怠って、右翼に脅かされ、右往左往したNHKの破落戸幹部がいて、直前ずたずたの見苦しい改変を強要したのですから、最早、私の命名による「草野球の酔っ払い観客の場外乱闘」は、犬も食わぬ状況に成り果てているのです。
最早、全部、御破算、願いましては、と最初から、やりなおす以外にないでしょう。
以上で(その04)終わり。(その05)に続く。