その3:『噂の真相』の最新号が追放決定!
1998.12.07
表紙の宣伝文句の冒頭には「本多勝一への最終決別宣言!」。
目次の2番目には「本多勝一リクルート接待旅行の真相を徹底解明!」
上記の8頁の特集記事の実際の冒頭見出しは、とても長い。
曰く、「『新聞が面白くない理由』が告発した朝日幹部リクルート接待旅行の真相を徹底究明し、本誌が裁断す!/本多勝一『老害』への最終決別状!/本誌特別取材班」
本多勝一個人名の連載コラムは最終回。つまり、これで打ち切り。
投書欄「読者の広場」には、冒頭から「″言論人″本多勝一への提言」「『クズ・カス』について」「「民衆不在の『思想』について」「本多勝一氏の『フェア』?」と3つの本多勝一氏批判が並び、たったの1つだけ「悪口のための悪口はやめよう」と題して「本多氏を″ダカツ″と呼ぶ失礼」を犯した過去の投書への批判が続く。
以下、著作権のある私の投書(一部既報)のみを全文インターネット再録。
本多勝一氏の「フェア」?
年初に本誌で本多勝一氏を巡る論争が勃発、「クズ、カス」「老害」の応酬に至った。私は昨年春、同氏が編集長時代の『週刊金曜日』連載記事「『朝日』と『文春』のための世界現代史講座」で名指攻撃を受け、やむなく提訴した。同じ「ガス室論争」(本誌94.9に拙稿)で話題を呼んだフランスの「発禁本」、84歳の元共産党幹部ガロディ著『偽イスラエル政治神話』の翻訳・解説作業中だったので、その完成(8.15発売)まではと、横目で見ていた。
訴訟を知る友人知人からは予想以上に多くの驚くべき本多勝一氏「噂の真相」が殺到した。いずれ一冊の本にまとめる予定だが、その矢先に、同じく『マルコポーロ』廃刊事件の際、95.5月号の紙面を提供してくれた『創』が、最新の9月号で、本多勝一氏らの「リクルート汚染疑惑」を巡る「朝日新聞・講談社を巻き込む大激論」を特集した。この件では私も本命の仕事の合間を縫って朝日新聞社に電話をし、4.1付広報室発ファックスで「『接待』は受けていないと判断」、再度「判断」の根拠を求め、「当時の社内調査で本人が領収書を持っていると答えた」との回答を得ている。
ところが右『創』特集の岩本太郎氏質問「領収書の現物はあるのですか?」に対して本多氏は「3年以内ならともかくね。10年前の領収書を捜すといっても……」と逃げ、「どちらがフェアなのか」とか、講談社が「捏造」とか主張している。
そこで、本多氏が「フェア」で他社の「捏造」を主張できる資格の持ち主か否か、裁判用語では「証人の信憑性」に当たる決定的な物的証拠を、一つだけ公表に踏み切る。
本多勝一は本誌(98.4)の個人名コラムで「今ではポル=ポト政権下での大虐殺政治を否定する者など、もはや例外的ないわば精神異常者くらい」とし、「虐殺否定派」と戦った自分の「現地取材」を誇り、返す刀で、問題の記事「朝日新聞の呆れた内憂外患」(『ヴューズ』97.1)を「ヨタ記事」と決め付けている。
ところが、本多氏自身が、『潮』(75.10)「カンボジア革命の一側面」では、「例によってアメリカが宣伝した『共産主義者による大虐殺』などは全くウソだったが(それを受けて宣伝した日本の反動評論家や反動ジャーナリストの姿はもっと滑稽だったが)」と書いていた。それだけならまだしも、この記事を再録した雑文集『貧困なる精神』第4集9刷では、何の断りもなしに、「アメリカが宣伝した『共産主義者による大虐殺』によって全市民がただちに虐殺されたとも思われぬが、すべては鎖国状態の中にあっては事実そのものが全くわからず、噂や一方的宣伝ばかりでは軽々に論じられない」と書き変えていた。本多氏の狙いはジョージ・オーウェル『一九八四年』のパロディだったのだろうか?
(武蔵野市 木村愛二 著述業)
注1。文中(8.15発売)となっているのは、諸事情により(目下印刷中)。
その後、10月15日に無事発売!
注2。ジョージ・オーウェル『一九八四年』の主人公が働く真理省記録局では、毎日、不都合な過去の新聞報道などを改竄、抹殺、焼却し、都合の良い過去を創造する。
注3。1999.2.26.追記。上記の「カンボジア革命の一側面」に関する改竄問題の情報源は、このシリーズの5に紹介してある。
以上。