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『亜空間通信』357号(2002/08/30)
【なぜか今北朝鮮油田発見となると旧著『国際エネルギー利権抗争』日米関係想起】
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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!
本日(2002/08/30)、修羅戦争15 掲示板に、以下の一連の「北朝鮮油田発見」投稿が出現した。
http://www.asyura.com/2002/war15/msg/251.html
【シンガポール】地場社が北朝鮮油田発見、千万バレルか 投稿者 そぶりん 日時 2002 年 8 月 30 日 09:56:04:(回答先: 埋蔵量5千万バレルの油田発見 北朝鮮〔産経新聞〕 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 8 月 29 日 21:20:26)
【シンガポール】地場社が北朝鮮油田発見、千万バレルか
シンガポールに拠点を置くソブリン・ベンチャーズは28日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で大量の天然ガスと油田を発見したことを明らかにした。埋蔵量は推定でガス1兆立方フィート(約283億立方メートル)、原油は1,000万バレルに上るという。埋蔵地は中国との国境近くのハムギョンプクト(咸鏡北道)のフェリョン(会寧)とオンソン(穏城)。ソブリンのベン・タン副社長によると、対象地域全体の3分の1までしか調査していないことから、推定埋蔵量はさらに膨れ上がる可能性がある。
ソブリンは昨年9月、6,000平方キロメートル相当の土地の採掘権を国営企業・朝鮮石油開発会社から取得した。内陸部での採掘権が外国企業に与えられたのはこれが初めて。
採掘権は25年で、最初の3年が地震探査、次の2年が掘削、残り20年が生産段階となる。契約延長は政府との条件交渉により可能だ。
コスト負担を緩和するため、ソブリンはカナダのソブリン・ベンチャーズ・カナダ(非関連企業)と契約。資本金、掘削費用をソブリン・ベンチャーズ・カナダが全額工面する代わりに、最大で収入の85%が同社に与えられる。ガスと原油の埋蔵量測定については、カナダの別会社エクセル・ジェオフィジクスがソブリンから受注している。
カナダ企業と提携したことについてタン副社長は「石油技術で最高水準のノウハウを持つ。北朝鮮の掘削地はカナダのアルバータ州と良く似ている」と説明している。
ソブリンは、採掘資源の45%を取得・販売することができる。残り55%は北朝鮮政府が保有する。
ソブリンは今回の掘削プロジェクトに1,000万米ドル以上を設備投資し、このうち200万米ドルを最初の5年間に投じることを取り決めている。ビジネス・タイムズが29日報じた。(NNA)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020830-00000039-nna-int
海外ニュース - 8月30日(金)8時50分 (前と同じ記事)
以上で引用終わり。
こうなると、以下のような9年前の旧稿を再録して通信を発し、投稿するのも、意義ありと思えるので、古いフロッピから読み込んで抜粋した。
『中曽根 VS 金・竹・小-佐川疑獄と国際エネルギー利権抗争』(木村愛二、汐文社、1993.5.7.)
第9章 新潟ルート「国際物流利権」が金丸の命取り
[中略]
なぜ新潟かという疑問への答えの第一は、地理的な位置づけにある。第二は、田中角栄の選挙地盤だったという歴史的因縁であり、第一と第二の理由は密接に重なっている。
この点にふれた大手メディア報道は非常に少なかった。[中略]
目についたところでは、週刊誌で唯一、『サンデー毎日』(92・9・20)に見開き二ページの記事があった。大見出しには「新潟発/越後を金権漬けにした佐川の狙いはロシア・中国の物流利権だった」とある。[中略] 要するに新潟港は、旧ソ連、現ロシアや北朝鮮、中国東北部(旧満州)など、日本海の対岸諸国との往来に最も便利な港なのである。[中略]
その新潟に一九八八年、新潟佐川の巨大なトラック・ターミナルが出現した。[中略] 佐川急便グループの新潟佐川は当時、新潟の路線免許すら持っていなかった。その佐川がまさに「トントン拍子」で「日本海側で最大の物流拠点」を新潟に築いたのである。[中略]
一九九二年三月には、統一協会の文鮮明が日本を経由して、北朝鮮に入った。日本への入国に当たっては、金丸が法務省に直接電話で入国許可を依頼したとされている。文鮮明はアメリカで脱税の罪に問われ、懲役一年六ヵ月の実刑に服していたため、「懲役一年以上の刑を受けた人物の入国を認めない」という日本政府の原則にふれていたのである。だが、金丸の依頼を受けて、法務大臣決裁により「特例」の入国が許可される結果となった。[中略]
詳しい報道例をあげると、『日経産業』は「検証 ロシアビジネス」と題する5回の連載記事(92・9・1~5)を組んでいた。『週刊ダイヤモンド』(92・11・14)は「特集 日本危うし! 北東アジア経済大変動」と題して、「日本外交のカジ取りが問われるだろう」と警告している。「図們江流域開発の行方」という小項目から、特に気になる部分のみを紹介しておこう。
「東北3省とロシア極東地域の経済交流に日本、韓国の資金と技術が合体して、一層高いレベルの経済緊密化が期待される。そのモデルに図們江(北朝鮮では豆満江)河口流域開発がある。……これまで4回、民間の国際会議が開催され、また、アジアとヨーロッパを結ぶランドブリッジ構想を持つUNDP(国連開発計画)の支援を受けて、中国、モンゴル、北朝鮮、韓国が参加する会議も開催されている(日本はオブザーバー)」
上記の「特に気になる部分」[中略]の第一は、UNDPの介在であり、UN(国連)におけるアメリカの支配力である。第二は、「(日本はオブザーバー)」という政治的外交的位置づけの弱さである。 [中略]
早い時期のものでは、一九八九年十二月十五日、中曽根が会長の「世界平和研究所」主催の会議で、「各界百五十人ばかりの参加者を前に″シュルツ教授″のレクチャー」があり、話は「ソ連・東欧関係、日米関係、中国問題など国際情勢全般に及んだ」(『日経』89・12・16)と報道されている。
シュルツは「日米関係に優先権を与え」ることを強調したようであるが、この″シュルツ教授″とは、レーガン政権で国務長官を勤め、退任後、アメリカ式「シンク・タンク」の一つであるスタンフォード大学の「戦争、革命と平和に関するフーヴァー研究所」教授とベクテル社取締役の二足のわらじをはくという、大変な国際的くせものである。ベクテル社(正式にはベクテル・グループ社)はアメリカで、ひいては世界で例年、受注高一、二位の建設会社であり、シュルツはレーガンにこわれて閣僚入りする直前にはベクテル社の社長だった。詳しくは拙著『湾岸報道に偽りあり』の資料リストをご覧いただきたいが、シュルツの他に三人ものレーガン政権閣僚がベクテル社出身だったため、当時、アメリカ政府がベクテル社に買われたという騒ぎになった。それほどの政治支配力を持つベクテル社はまた、石油精製施設やパイプライン建設を得意とするため、石油マフィアの行動部隊という性格をも合せ持っている。
中曽根の「世界平和研究所」は、シュルツがいるスタンフォード大の「戦争、革命と平和に関するフーヴァー研究所」などの、国際的先例のサル真似である。[中略]
第10章 エネルギーで失脚は成り上がりドンの二の舞い
金丸の失脚には、しかし、さらに不気味な背景がありそうなのである。
というのは、先の「戦後日本の疑獄史」の項では、ロッキード疑獄で田中角栄がやられたのは「アメリカからの直撃」によるものとだけ記しておいたが、佐川疑獄にも途中から同じ要素が見えてきたのである。
佐川疑獄は確かに「アメリカからの直撃」で始まったものではない。だが、便乗にしても、狙った効果は同じである。なにが狙いかと考える時には、まず、金丸と田中との共通点に注目すべきであろう。それも、アメリカとの関係での共通点でなければ意味がない。
第一の共通点は、すでに記した事実経過からも明らかであろう。
金丸が新潟から「北東アジア経済圏」を展望したのは、決して独創的発想によるものではない。中国との国交回復で名を挙げた先輩は田中であった。最近の天皇中国訪問に際しても、田中は先に単独訪問を行い、相変わらず「恩人の先生」扱いをされている。
第二は、エネルギー政策との関係である。
戦後の日米間におけるエネルギー政策の緊張関係については、たとえば、『内幕/日本を操ってきた権力の裏面史』の第二章「エネルギーをめぐる潮流」にも、かなり鋭い分析と指摘が見られる。
アメリカはもともと石油財閥が主流の国である。メジャーとも石油マフィアとも呼び習わされているが、名にし負うCIAを作り上げたのも石油財閥であり、非常に狂暴な性格の多国籍型独占資本である。湾岸戦争の陰の主役も石油マフィアであった。
私はすでに、『湾岸報道に偽りあり』で石油マフィアの最近の動きを追っているが、ここでは詳しくふれない。本書に関係するポイントだけにとどめるが、アメリカの石油マフィアの重要な特徴は、石油に限らず、すべてのエネルギー資源への支配力を独占しようと、固く決意している点にある。石油、天然ガス、LNG(液化天然ガス)、それらのプラント、パイプライン、原子力発電の原料であるウラン、原子炉……。それも全地球規模であり、まさに国際独占の名にふさわしい努力を傾け続けているのである。
一九七三年秋には第三次中東戦争が起き、いわゆるオイル・ショックが世界中を襲った。時の日本国首相は田中角栄であった。田中は即座に、オイル・ショックをも新しい政治利権の柱にしようと計画した。「エネルギー自立」政策であり、「資源外交」の展開である。たとえば日本の石油自主開発会社の内、二十社が田中首相時代に設立されている。エネルギー資源も世界中から買い漁っている。
この時、突如、昔から公安警察情報リークで有名な文芸春秋社が、月刊誌と週刊誌を総動員して、「田中金脈追及」を開始した。田中のカネづくりの汚さは、すでに日本の政財界では知れ渡った事実であった。それが急に問題にされ出したのはなぜか。[中略]
犯人は、アメリカの石油マフィア、およびそれと古くから結びついてきた日本の政財界主流の一部以外にはあり得ない。[中略]
田中は、それでも諦めなかった。日本の財界の中にも、「エネルギー自立」への動きは続いていた。田中は三木政権の背後で「院政」を敷いた。そこで再び加えられたのが「ロッキード・スキャンダル」の大陸間ミサイル直撃なのである。これは決して私だけの推理ではない。「ロッキード・スキャンダルはアメリカの日本再占領計画だ」という解釈は、すでに消息筋の間では定説になっている。
さてそこで、金丸とエネルギーの関係であるが、問題の北東アジア経済圏の利権となると、まだまだ未知数の部分が多い。特にロシア関係は政治情勢も不安定なままだし、日程を立てにくい。最近流行のインフラ整備でODAを出す気なら、極端にいえば、先の見通しが不透明でも仕事はできる。大手建設業は確実にもうかる。だが、長期展望の輸出入を考えれば、先方から輸入できるものがなければ輸出超過、代金は回収不能にならないとも限らない。ロシア・ビジネスの記事で見る限り、確実に大量にあって日本でも必要なものは、シベリアの石油と天然ガスである。特に天然ガスは将来有望なようだが、これを恒常的に安い価格で日本に持ってくるためには、最初に高価なパイプラインを設置する必要がある。パイプライン用の鋼管も商売になる。
たとえば「東シベリア・ヤクート天然ガス田/日本商社など企業化調査権/確認埋蔵量1兆立方メートル/パイプラインで日本に輸送提案」(『朝日』92・4・3夕)とか、「7億ドルの天然ガス輸出用鋼管 対露輸出商談 大詰め」(『毎日』92・7・10)などといった見出しの記事も、時折思い出したように現れている。その一方、問題のエリツィン訪日延期が決まった直後に、「天然ガス協定準備不足も理由」(『毎日』92・9・11)という小さい見出しのベタ記事もあった。「ロシアのチェルノムイ副首相は……石油および天然ガスに関する融資協定が訪日時に間に合わない点を指摘した」というのである。
「パイプラインで日本に輸送」する計画では、サハリン経由と朝鮮半島経由の二つのルートが検討されている。朝鮮半島経由の方が、「エネルギー需要の旺盛な北朝鮮と韓国にガスを供給しつつ、最終的には日本に必要な年間百万トン程度のガスを運ぶに適している、と見込んでいるが、北朝鮮との調整などの難題もある」(『朝日』92・4・3夕)といった状況だった。ところが、訪日を延期したエリツィンが韓国を訪れ、韓露基本条約を締結した際、経済専門紙の日本工業新聞(92・11・19)だけにだが、次のような、いささかニュアンスの異なる記事が載ったのである。
見出しは「パイプライン建設計画/北朝鮮、通過敷設に同意/韓露天然ガス開発を実現へ/韓国紙報道」。記事内容には、「ロシアの政府高官が北朝鮮の同意を明らかにしたのは今回が初めて」とあるが、「ロシア・ヤクートから韓国に天然ガスを輸送する計画」とあるだけで、日本のことには一言もふれていないのである。
[中略]
アメリカの「国防指針」の中の「地域紛争」地帯の一つに、北朝鮮も挙げられていた。軍事的な挑発と、利権のおねだりと、どちらが本命の狙いだったのだろうか。
山梨の成り上がりドン・金丸は、どうやら、エネルギーの国際利権をめぐるこうした複雑な争いの読み方を知らずに、田中角栄の二の舞いを演じたらしいのだ。
[後略]
以上。