『亜空間通信』336号(2002/08/14) 阿修羅投稿を02.12再録

815右も左も聞け詔書「太平ヲ開カムト欲ス」吉田茂9条説明審議録(拍手)

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『亜空間通信』336号(2002/08/14)
【815右も左も聞け詔書「太平ヲ開カムト欲ス」吉田茂9条説明審議録(拍手)】

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 転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 明日は815こと、日本の敗戦記念日である。「あの」大本営発表の戦犯NHKが、軍部の脅しに屈することなく「守護」して、放送したと、手前味噌の嫌味な自己宣伝を、し続けてきた「玉音」が、またまた、キーコラキーコラ、流れるかもしれない。だから、当方も、先制攻撃として、自前の美声の玉音を発しておく。

 私は、8歳の夏、北京の国民学校の暗い講堂で、音質の悪い国民型ラディオから、「あの」豚が絞め殺される時のような奇妙な声が出るのを聞いた。

 当時は全く意味の分からなかった「詔書」を、一昨年、市民ヴィデオ自主流通組織、VIDEO ACT!が募集し、私も応募した「戦争、私、1999年」3分ヴィデオの題材に使おうと思い付いて、図書館で探して複写した。裏声で抜粋の声帯模写をして、ヴィデオの画面に使った。

 今、改めて、その「チンブンカンプン」の文章を無理して読むと、そこには、「萬世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス」とある。つまり、「恒久平和実現」の願い、またはその努力の約束である。これは、いわゆる右翼にとっては、「大御心」なのである。これに背くわけにはいかないはずだ。街宣車の前で読み上げてやりたいが、忙しくて、そこまではやっていられない。

 勿論、背後には、「国体護持」の工夫を凝らした「帝国」の官僚たちがいた。しかし、その当時の工夫の具体化が、憲法の「戦争放棄」条項なのであって、左翼にとっては「体制派の権化」の吉田茂による以下のような説明によって、制定の運びとなったのであった。

http://www5a.biglobe.ne.jp/~sdpkitaq/konken12.htm
抜粋:
衆議院本会議における代表質問

 1946年6月25日、憲法改正案について吉田総理の提案理由説明を受けた衆議院本会議は即日、各会派の代表質問に入り、28日まで4日間これを続けた。[中略]

く答弁=吉田総理〉

●日本が再軍備して世界の平和を攪乱する危険は、連合国の「もっとも懸念したところ」である。これは「誤解」だが、「この5ケ年の間の戦いの悲惨なる結果から見まして(略)、日本に対する疑惑、懸念はもっともと考えざるを得ない」。

●「日本がいかにして国体を維持し、国家を維持するかという事態に際会して考えて見ますると、(略)国家の基本法たる憲法を、まず平和主義、民主主義に徹底せしめて、日本憲法が毫も世界の平和を脅かすがごとき危険のある国柄ではないということを表明する必要」を政府として「深く感得したのであります」。

●「ここに至ったゆえんは、そういう国際事情を考慮に入れてのことであります。この点は、各位におかれて深く国際情勢についてご研究下さることを切望いたします」。[中略]

●戦争放棄条項は「直接には自衛権を否定はしておりません」が、第2項でいっさいの軍備と国の交戦権を認めない結果、「自衛権の発動としての戦争」も放棄している。「近年の戦争は、多く自衛権の名において戦われたのであります。満州事変しかり、大東亜戦争またしかりであります」。

●日本は「いかなる名義をもってしても交戦権」は放棄する。それによって「全世界の平和愛好国の先頭に立って、世界の平和確立に貢献する決意」を表明した。またこれによって、日本に対する「正当なる了解」が得られるのだ。[中略]

▼正当防衛による戦争を正当と考えることは有害

く質問=野坂参三・日本共産党〉

1.戦争には、侵略された国が自国を防衛する「正しい戦争」と他国を征服・侵略する「不正の戦争」とがある。したがって、憲法は「戦争の放棄」でなく「侵略戦争の放棄」とすべきだ。2.日本の過去の戦争は侵略戦争ではないのか。

く答弁=吉田総理〉

●「国家正当防衛権による戦争は正当なり」とする考えは「有害である」。戦争の多くは「国家防衛の名において行なわれた」のだから、「正当防衛を認める」ことは「戦争を誘発するゆえん」になる。

●戦争放棄条項は、「国際平和団体の樹立」によってあらゆる侵略戦争の防止を期している。正当防衛による戦争があるとするなら、侵略する国があることが前線になる。したがって、国際平和団体が樹立された場合には「正当防衛権を認めることそれ自身が有害である」。[後略]

 さて、私は、さる8月11日、武蔵野市の「市民平和のつどい」(今年で8回目)に一聴衆として参加した。参加の理由の一つは、後に経歴を紹介する水島朝穂の講演が予定されていたからだった。

 水島朝穂の経歴紹介:「君はサンダーバードを知っているか/もう一つの地球のまもり方」編者。1953年生まれ。早稲田大学法学部・同大学院博士課程を経て、1983年札幌学院大学法学部助教授、1989年広島大学総合科学部助教授を歴任。1996年より早稲田大学法学部教授、憲法学・法政策論・平和論。

 私より16歳も若い、今、49歳、そのせいもあって、実に柔軟で大胆な問題提起をする。

 10年ほど前、彼が広島大学総合科学部助教授の頃に、何人かの論者の中の一人としての短い話を聞いたことがある。広島からきたばかりなどと言って、紙袋を机の上に置いているので、ハンバーガーでも食い出すのかと思ったら、学術研究の名目で入手したと称する各種の自衛隊の銃弾を机の上に小から大へと次々に立てて並べ、日本の軍備が世界有数であることを語った。面白かった。当然、その他の並び大名の古手の「平和商人」の「大家」たちは、完全に食われてしまった。

 彼も、上記の吉田茂答弁を「原点」として重視している。そのことは知っていたが、11日の会の当日の会場で配られた複写資料の中に、もっと興味深いのが入っていた。彼自身が書いた記事の一部である。

 日付は記されていないのだが、『あえら』の題字があり、2000年と手書きで書き添えてある。つまり、2年前の記事である。そこで彼は、上記の吉田茂答弁の内の「正当防衛権を認めることそれ自身が有害である。」の次に重ねて、「ご意見は有害無益であると私は考える。」と続くこと、審議録には、そこに(拍手)とあることを指摘し、「審議録に『拍手』とある部分はあまり多くない。吉田にここまで言わせてしまう、当時の状況があった」と記している。これは実に面白い。

 上記の野坂参三の「正しい戦争」という表現に関しては、審議録そのものの確認はしていないが、「正義の戦争」と記す資料もある。上記の『あえら』記事では、「共産党の野坂参三は、『正義の戦争』と『不正義の戦争』という二分論に立ち、戦争放棄を『侵略戦争の放棄』に限定するよう迫った」となっている。同じことだが、この主張の方には(拍手)があったのだろうか。憲法学の大学教授ともあろうものが、こげなことで依怙贔屓の誤魔化しをするとは思えないから、(拍手)の記載はなかったのだろう。

 ああ、何度も繰り返したので、もう飽き飽きしているが、現在の日本共産党の中央委員会公式見解は、(日本国に)「正当防衛権あり」との主張なのである。いったいぜんたい、誰が拍手してくれると思っているのだろうか。

 以上。


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