2000.12.26.入力。
2000年末に石油マフィア政権の出現の中締め
本シリーズについては、カスピ海からの石油パイプライン建設の争いなど、材料は豊富だったのだが、まとめる時間の余裕がなくなった。前回の英文資料の訳出も実現していない。斜読みしただけだが、来年も「化石燃料」重視の戦略であることは明瞭である。
『日経ビジネス』(2000.11.20)の新聞広告に「米国の新戦略を見誤るな/ゴアかブッシュかよりも重要なアメリカの本音」とあったので、これこれと、パクリを狙ったが、広告と中身の題名とが微妙に違う事例だった。広告と雑誌の表紙の題名は同じなのだが、中身の方は「ゴアかブッシュかよりも重要なアメリカの本音/米国の新外交を見誤るな/中国の脅威増大で日本に突きつけられる最後通牒」となっていた。ところが、これが、なかなか面白い。いわゆる中国封じこめの底流に、石油資源争奪戦が潜んでいるとの観測である。
ペトロチャイナ(中国石油)を名乗る中国の石油天然ガス集団公司の子会社が、ニューヨークでの上場を計画しているが、その動きに対抗して、アメリカの右から左までを網羅したロビーが、まさに挙国一致の上場反対運動を繰り広げているというのだ。仕掛人は、ペトロチャイナがスーダンの大ナイル圏石油開発公社の株を40%持つ事実を発見した。そこで、スーダンの政権がキリスト教徒を虐殺しているとして打倒の方針を掲げるアメリカの人権団体に働きかけ、左の方から反対運動の火を付ける。結果として、右の石油マフィアは、余裕たっぷりの国論形成に成功する仕組みである。中国もカスピ海石油を狙っているから、本命は、そちらへの資金流入の牽制であろう。
その状況下、最初から石油マフィアが背景にありとの批判を浴びていたブッシュJR.政権が成立するのである。どうやら、やはり、血腥い21世紀の開幕となりそうである。その点で重要なのは、上記の記事の広告と表紙と中身のすべてに共通していた副題の「ゴアかブッシュかよりも重要なアメリカの本音」であろう。このことを私は、湾岸戦争の準備でも、情報技術の準備でも、共通の問題として指摘し続けてきた。世界支配の観点から見ると、新興のアメリカ帝国は、従兄弟のイギリス帝国とヨーロッパ諸国を目下の同盟として押さえ込んだ。日本は無権利で言いなりになる末っ子州である。東西冷戦構造が崩壊した今、アメリカ帝国は、ロシア、アラブ、中国、古代からの帝国支配の広大な領域に、これから本格的に攻め込むのである。いよいよ本番、日本にも、親日の歴史を持つインドから誘いの声が掛かっているとか、噂はしきりだが、歴史は流動的である。来年は、もっと接近して観察し、このシリーズを継続する。
以上。
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