アフリカ史研究家としての木村愛二

2020.8.21追加記事➡『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』著者紹介
2021.5.13追加記事 ➡ 書評:酒井傳六著『ピグミーの世界』

➡『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』WEB公開

鷹書房 1974年5月20日

四六版312頁/定価1500円

近代ヨーロッパ系学者による“古代史偽造”に真向から挑戦!
《ハッキリといえば、彼らは、近代奴隷制・植民地主義帝国の御用学者にすぎない》
著者は、日本テレビ編成局勤続十余年の調査マン。
マスコミ界の虚実を味わいつくした感覚で、広い視野から古代史の真相にせまる。

(全国学校図書館協議会選定図書)
(知的好奇心をそそる愉快な本。専門学者の批判も楽しみ:週刊新潮書評)
(広い視野と鋭さ。小出版社から発行されたために…埋没をおそれる好著:図書新聞書評)

日本読書新聞 第1823号 昭和50年(1975年)9月22日 2面「顔」
➡『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』の著者 木村愛二氏(2020.8.21追加)

➡『アフリカ大陸史を読み直す』

社会評論社 2007年5月25日

第1巻 古代文明の母 (四六版304頁/2600円)
第2巻「火砲」の戦国史(四六版220頁/2300円)

第1巻 古代文明の母
歴史学の通説批判を楽しみ、知的好奇心をそそる歴史読本。
誤解と曲解に満ちている近代ヨーロッパ系学者のエジプト古記録の解釈。その問題点をえぐり、古代エジプト文明の謎を解く。
(第1巻は、1974年に鷹書房より『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』のタイトルで刊行され、全国学校図書館協議会選定図書として好評を得た。)

第2巻 「火砲」の戦国史
ヨーロッパ列強の資料に基づく著作は、根本的に再検討されなければならない。
ハリウッド映画では、もっぱら裸で槍一本しか持たない野蛮人として描かれ続けてきたアフリカ人が、実は大量の火砲を操って、ヨーロッパ人の侵略と戦っていた。アフリカ人自身が築いた大帝国がいくつもあった。

➡『アフリカ古代史7つの謎 アフリカ巨人伝説』WEB公開

いんなあとりっぷ 1976年5月20日

いんなあとりっぷ増刊号『羽仁進 アフリカ動物写真集 野生の生と死」第5巻7号(通貫54号) P176-182掲載
木村愛二(アフリカ古代史研究家)

1 サハラ岩壁画の驚異
2 巨石文化の担い手イベリア人
3 エジプトの初代ファラオは黒人
4 エジプトより古い黒人帝国プーント
5 シバの女王の国
6 謎の国オフィール
7 消えた巨人種の王国

 中央アフリカには、現在も、平均身長2メートル以上の巨人グループが数10万人もいるのだ。しかも、ウガング、ルワンダ、ブルンジ、タンザニア西部では、つい最近まで、その巨人グループが、王族・貴族層をなしていた。また、はるか1万2千年前、ニャンザ大湖のほとりには、背の高い人種と、背の低い人種が一緒に暮らしていた。発掘された人骨の化石が、その事実を物語っているのである。

 アフリカ内陸の巨人貴族には、数千年の歴史の謎が秘められているのだ。

➡『第三世界の混迷と第四世界 アフリカ大陸 文化圏の予兆』 WEB公開

現代評論社 1975年4月1日

『現代の目』4月号 第16巻 P122-129掲載
木村愛二(アフリカ史)

●新生国家ジンバブウェの背景
●世界史を書きかえよ
 黒色のホモ・サピエンス
 狩猟文化の中心地
 農耕・牧畜文化起源
●疑問から学問ヘ
 金属文化
●謎の古代国家プーント・クシュ
 クシュ帝国
●古代エチオピア帝国の謎
●「自由の王国」への途

 紀元前5世紀のヘロドトスは、当時のオリエント文明人としての、共通の認識を表明した。つまり、彼はエチオピア人に最大の敬意を払い、強いあこがれをこめて、エチオピアに関する記述をしたためた。帝国主義者セシル・ローズは、ペルシャ王カンビュセスに範を拝いだのだが、ヘロドトスは、カンビュセスをものともしなかったエチオピア人を、つぎのように描きだした。

 「カンビュセスが使節を送った当のエチオピア人というのは、世界中で最も背が高くかつ最も美しい人種であるといわれている」

 そして事実、現在の中央アフリカには、平均身長2メートルにも達するかつての貴族または士族層が、各地に散在している。旧約聖書も、クシュ王朝期のエチオピア人について、「たけ高く、膚のなめらかな民、遠近に恐れられる民、力強く、戦いに勝つ民」(イザヤ書)という表現を、二度までも使っている。

 この美しく、誇りにみち、武勇にすぐれた人々は、果して、ヨーロッパ人の侵入に手もなく敗退したのであろうか。

➡『ジンバヴウェとは何か』WEB公開

日本読書新聞 1976年6月14日

第1680号 3面掲載
木村愛二・アフリカ研究家

解放戦争の新展開
崩壊近い白人少数支配
アフリカ人はローデシアを認めない
  長い歴史を持つアフリカ史
  セシル・口ーズ=ローデシア
  ローズの鉄道とゲリラの爆破

 ポルトガル人の進出する以前、モノモタパの帝国から東アフリカ海岸の諸都市を結ぶ貿易路は、「インド洋世界貿易」の中心であった。ジンバブウェは、長い歴史を持つアフリカ文化の華であった。解放勢力は、この輝かしい歴史の伝統に誇りをもち、アフリカ文化再建への願いをこめて、新生国家の名をジンバブウェとさだめているのだ。

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書評:酒井傳六著『ピグミーの世界』

日本読書新聞 第1876号 昭和51年10月11日(月)4面

ひとつの対決を迫られ

アフリアの森林地帯の真只中にひきずりこみ

 これは通常のルポルタージュではない。まさしく、ひとつの「世界」なのである。読者は、アフリカ大陸の森林地帯の真只中にひきずりこまれ、そこで著者の人生観をきかされる。そして、みずからの人生にも、ひとつの対決を迫られる。

 あとがきによると、「一九七三年十一月、ザイールのモブツ大統領は外国人によるピグミーの撮影を禁止する旨の演説をした」、とのこと。著者はその前年にザイールのエフェ族と起居をともにしたのだが、その直前には、カメルーンで実質的な取材拒否に会っており、本書はその経験を最初のエピソードとしている。

 「行きづまった現代文明人の出口をさぐるためにピグミーに会いたい」、と著者は真剣に願う。しかし、その理由自体がピグミーの「未開性」を前提としているのであり、カメルーン当局にとっては、取材を拒否したい理由そのものとなっている。現代文明人の対局にあるものとしてのピグミー。つまりは、もっとも原初的、太古的な人間集団に対する一方の側の関心。そして、その人間集団がアフリカ人であること、カメルーン人であること、みずからの同胞であることを想い、取材拒否にでる他方の側の嫌悪感。このすれちがいの背景には、また、長い歴史がある。ピグミーの蔑称を当然のことのように用いつづけ、ハダカの狩猟民の存在を拡大し歪曲し、アフリカ文明を野蛮なものであるかのように描き出してきた欧米の思想潮流がある。

 著者は、エフェ族にとけこみ、そのすべてを知ろうとする。ヨーロッパ人が「気分がわるくなる」と感じた住居のにおいでさえ、日本人の著者にとっては、「探していた芳香」であった。このちがいは、はたして日本人一般に共通のものなのであろうか。それとも、著者個人に特有なものなのであろうか。

 ジャーナリストである著者は、特派員としてエジプトにも駐在した。エジプト、アフリカに関する著書、訳書も多い。古代エジプト以来の数千年の時空を探ってきた眼が、いま、さらに数万年の雄大な流れにむかう。アフリカ大陸の狩猟文化。それはかつて世界でもっとも先進的な文化であった。おそらく弓矢を最初に発明したであろう人々の、直系の子孫がここにいる。古代エジプト人が、「踊る小人の神様」として知っていた人々の、その踊りが、いま眼前にかがり火をめぐって、くりひろげられている。読者はこの興奮をともにしないわけにはいかない。

 なお、いわゆるピグミーの社会組織については、コシに乗った王の存在を記した例もあるし、近隣の農耕牧畜民への従属関係も指摘されている。ザイールのエフェ族は、その点では原始共同体さながらの民主的集団であるようだが、本書の性質上、これ以上のくわしい分析はのぞめないであろう。

(木村愛二・アフリカ史研究家)

(201.5.14:追加収録)

▽四六判二五八頁・六八〇円・朝日新聞社=千代田区有楽町二の六の一電話212〇一三一 9・20刊

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『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』の著者 木村愛二氏

日本読書新聞 第1823号 昭和50(1975)年9月22日 2面「顔」

木村愛二1975年

 柔和な眼差し。淡々とした口調。

 「アフリカへは、行きたくてしょうがなかったけど、行ったことはないんです。」

 中学生のとき、百科辞典並みの厚さをもつウェルズの『世界文化史大系』を読破したという、根っからの歴史好き。

 「ヨーロッパのアフリカ支配は、実は一番遅いんです。ポルトガルの500年支配といっても、400年は港にへばりついていただけです。アフリカは内陸部の方が気候がよく、人口も多かった。19世紀前半までは、封建態勢のもと、鉄砲を生産し、大砲も持ち、侵略する白人と戦争を繰り返していたんです。」

 「暗黒大陸」と呼ばれていたアフリカには誤解と偏見がまとわりついている。本邦最初のアフリカ史と名のついた本書の帯には、「近代ヨーロッパ系学者……近代奴隷制・植民地主義帝国の御用学者……による“古代史偽造”に真向から挑戦!」とあるが、鉄器の発明、稲作、牧畜の起源、旧約聖書の世界等、古代文明発祥の中心地は、アフリカ内陸部であるという主張はヨーロッパ中心の人類史をひっくり返すものである。

 「オリエントの白人系文明から説明できなくなると、どちらが先かという論議を煮つめないで、安易に別起源説を採る。分離発達という考えは、アパルトヘイトの発想と同時にでてくる。歴史背景をキチンとしないで、平等なんてありえないですよ。」

 世界史の潮流は確実に変化しつつある。ホワイトとブラックの抗争。白人の黒人に対するコンプレックスには、歴史的必然性がある。

 「貧しいヨーロッパがいかにしてアジア・アフリカに割り込んできたか。そのへんから、歴史がゆがんでくる。追い詰められていくヨーロッパ人には、冷静に歴史を視るのは難しい。その点、日本人なんていくら踏んばっても、人類史の傍流に過ぎないけど、役割は大きいと思いますよ」

 今後は言語系統の問題や「パン・アフリカの世界史」をまとめたいという。

 日本テレビの編成局に勤務していたが、72年、活発な組合活動を狙われて解雇され、現在「不当解雇撤回」闘争中。またエレメンタルフォルムの会をつくり、英・仏・独・露・日の「五カ国資本論」を研究しつつ本にまとめている。1937年生れ。北京から引き上げ。防衛大中退、東大英文科卒。二児の父。(T)

(2020.8.21:追加収録)