追加1:「サハラ先史美術」付録
「タッシリ文明」最新情報
『日本経済新聞』(2001.5.7.夕)「あすへの話題」欄
タッシリ文明松浦 晃一郎
二月にアルジェリアを訪れた際、サハラ砂漠の真ん中にあるタッシリ国立公園をまず訪れた。この公園は8万平方キロメートルの面積で(日本の5分の1強)、ユネスコに世界遺産として登録されている。
砂漠化が本格化するころ、紀元前の人々の生活状態(農耕や牧畜)や牛などの動物の生態が、砂漠に点在する(時には洞くつの中にある)岩の上に刻み込まれたり、描かれたりしているからである
タッシリの中心地であるジャネ市の博物館はまだ小さい博物館であるが、旧石器時代の石器から始まり発掘物がきちんと展示してある。地元の考古学者の説明によれば一番古い彫刻は紀元前1万1000年のもので、これは旧石器時代の最後にあたる。新石器時代が紀元前1万年から始まり、それから約1万年にわたる彫刻や岩絵が1万5000点以上、タッシリに存在するという。
この地の遺物は紀元前6000年以降と従来言われていたが、それよりもさらに5000年さかのぼる。時代測定がより正確になり、以前言われていたよりも古いことが判明したということであった。
その後で、プーテフリカ・アルジェリア大統領に昼食に招かれた際、タッシリ文明はアフリカ大陸で一番古い文明ですねと話した。すると、大統領はアルジェリアの考古学者は正にそのように主張するが、エジプトの考古学者は必ずしも納得しておらず、論争が続いていると笑いながら説明してくれた。
もう一つ私の興昧をひいたのは、紀元前1万年の土器が発見されていることである。かねて日本の専門家より、世界で土器が最初に作成されたのは縄文時代の日本で、紀元前1万年と聞いていた。また、沿海州、中国でも同じころの土器が発見されているようである。
だが、アルジェリアの考古学者が正しければ、はぼ同じころタッシリで土器が作成され出したということになる。専門家による究明を期待する。
(ユネスコ事務局長)
以上、引用記事です。