『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』おわりに

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近代ヨーロッパ系学者による“古代史偽造”に真向から挑戦

おわりに

 はじめにも断ったように、わたしは、シロウトの身軽さにまかせて、思いきり推理を発展させた。疑わしい点も多いことと思う。しかし、これによって、日本の邪馬台国論争のような、シロウト参加の人類史・アフリカ大陸史論争の、きっかけをつかむことができれば、と希望している。わたし自身も、この本では煩雑さをさけるために省略した言語系統の問題などを、つづいて追求したいと考えている。

 それゆえ、たとえ酷評でも、わたしは大歓迎をしたい。ジャーナリストの伊藤正孝が描いた『南アフリカ共和国の内幕』には、在日タンザニア大使官員C・カビエメラの訴えが記録されている。彼は、参加者30人の、アパルトヘイト反対デモ行進に感動し、こう語っている。

 「日本人の良心に、とはいわない。好奇心に訴えるだけでもいいから、南アの黒人問題に目を向けるようにしてほしい」

 わたしはこの訴えを、「知的好奇心」への要望と受けとった。そして、明確な結論をさけ、論難をさける文章では、この要望に応えることはできないだろう、と考えた。ひとつひとつの問題に、わたしなりの推理を試みてみた結果は、ごらんの通りである。酷評も含めて、やはり、結論をつきつめる批評、論争を望むものである。

 最後に、本書の執筆に当って、貴重な資料の教示をいただいた諸先輩、有益な指摘をいただいた出版界の諸兄姉に、お礼を申し上げたい。また、鷹書房の三好社長は、20年来の旧友とはいうものの、用紙高その他の事情の中で、本書の出版を快諾された。この友誼には、感謝の言葉もない。

1974年3月

木村 愛二


 以上で、『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』は終わりです。
 以下二つのリンクは、引用記事です。

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