イラク侵略支持で増長する小泉政権
○有事法制優先で動き出す。「戦後復興」口実の自衛隊派兵を目論む。
○空母キティホークなど在日米軍基地の対イラク出撃拠点化を容認。
(1)有事法制優先処理に動き出す。今すぐ反撃の準備を!
■「戦後復興」を口実にイラクへの自衛隊派兵を画策する小泉政権。放置すれば大変なことに。
米のベーカー駐日大使が与党3幹事長に対し、「自衛隊を派遣し、現地の治安維持に貢献するよう」指示していたことが25日明らかにされました。一体何様なのでしょうか。小泉首相は「新法」を成立させてでも、この「命令」に従うつもりです。
開戦前に予想していたより支持率が下がらなかったことが、首相に暴走するチャンスを与えたのです。早期に首相の支持率を下げないと大変なことになります。再び小泉日本の軍国主義の暴走がまらなくなってしまいます。
※<米駐日大使>イラク復興に自衛隊派遣を要請 与党幹事長と会談(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030326-00000170-mai-pol
※小泉首相、自衛隊派遣含め復興支援前向き イラク戦争後(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030326-00001063-mai-pol
■侵略者・加害者の側に立った日本に「復興」や「人道」を語る資格はない。イラクの破壊、子どものたちの犠牲の上に成り立つ「復興支援法」反対。
何よりもまず、侵略者の側、加害者の側に立った米英日が、「復興支援」「人道支援」などと大きな顔をして語る資格などありません。殺しまくり破壊しまくって、何が「復興」、何が「人道」なのでしょうか。それとも破壊が大きく犠牲者が多いほど「復興」も「自衛隊派遣」もやりがいがあるとでも言うのでしょうか。私たちは主張します。「復興」を言う前に今すぐ破壊をやめること、「人道」を言うなら今すぐ侵略をやめることです。
小泉首相は、アメリカ軍によるイラクの破壊、イラクの人々の犠牲、特に子どもたちの被害や映像が次々と伝えられる中で、25日夜、「そんなに早くカタが付かないと思います」と平然と述べました。日本政府は「復興支援法」なるものの策定をはじめ、小泉首相は、難民支援、周辺国支援などについては「復興支援法」の制定以前から踏み出そうとしています。すでに援助支出を計画しています。防衛庁は26日午後、「難民支援」と称し、テントをヨルダンに輸送するため、政府専用機2機を派遣する準備に入りました。国連平和維持活動(PKO)協力法を持ち出し、これに航空自衛隊の約60人が参加しようとしています。そして復興支援を国連を巻き込んで進めようと画策しています。
※復興国連決議に仏露独引き込み狙う 日本政府(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030327-00000155-mai-pol
※政府専用機30日派遣で調整 2機テント積みヨルダンへ(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030326-00000197-kyodo-pol
■イラク戦争加担・参戦と有事法制の同時強行、あるいは有事法制優先を狙う政府与党。対外的な侵略戦争参戦・加担、対内的な有事法制=戦争国家作り。
私たちが指摘し恐れていた非常に危険な動きが現実味を増してきました。戦争の勢いに便乗して、昨年通常国会、臨時国会の2回の国会で継続審議になってきた有事法制を一気に成立させようと政府与党が動き出したのです。自民党の中川国対委員長は26日、衆院武力攻撃事態特別委員会で、有事関連法案について、来年度予算成立後、早急に有事関連法案の審議に入り、4月中旬に衆院を通過させるよう要請しました。
今日27日の日経新聞は、「有事法案を優先処理へ 衆院採決4月中旬案浮上」という見出しで、イラク戦争の戦況が遅れ気味になってきたことから「復興支援法」は5月中旬以降の見通しとなること、そうなれば有事法制を優先処理する方針が検討されていることを報じました。個人情報保護法案も4月中旬に審議入りする構えとのことです。
※「小泉政権は「支持表明」を撤回せよ! 日本の対イラク参戦・加担阻止に全力を集中しよう!どさくさ紛れの米日韓軍事同盟強化、MD導入、有事法制導入を阻止しよう」
政府は、この機とばかり、どさくさに紛れて、PKO法による自衛官派遣、「イラク戦後復興法」策定、さらには有事法制の強行をもくろんでいます。対外的に米英の侵略戦争への参戦・加担を進めながら、同時に国内的には有事法制を強行し戦争国家体制作りを加速しようとしているのです。イラク侵略の即時中止と併せて、有事法制・「復興支援」に反対する取り組みを早急に立ち上げる必要があります。
※有事関連法案、4月中旬の衆院通過要請 中川・自民国対委員長(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030327-00002030-mai-pol
(2)横須賀を母港とする空母キティホークが対イラク戦争に出撃するのは違法だ。在日米軍基地の対イラク出撃拠点化に反対する。
イラク問題について国会論戦が始まりました。3月24日の参院・衆院予算委員会では、小泉首相の攻撃支持の根拠が全くデタラメ、ごまかしであることが改めて暴露されると共に、恐るべき憲法違反、国際法からの逸脱も明らかになりました。私たち市民は、このデマゴギーに満ちた小泉首相のウソを見抜く必要があります。
特に私たちは、「在日米軍の行動範囲」についてもう一度厳しく反対しておきたいと思います。ほとんどのマスコミが現地からの中継と称してキティホークからの「従軍取材」を当たり前のようにやっています。しかしこんな不法なことは即刻やめるべきです。いつから在日米軍が何の制約もなくペルシャ湾に出動できるようになったのでしょうか。なぜマスコミはこの違法性を批判しないのか。「従軍取材」との取引で黙ってしまったのか。
3月24日に非常に重要な論戦がありました。新聞では報道されなかったものです。第7艦隊の空母キティホークは今、対イラク戦争の無差別空爆で中心的役割を担っていますが、安保条約のどこにペルシャ湾への出撃ができると書かれているのか、日本から米軍がペルシャ湾へ出動できる法的根拠はどこにあるのかということです。「日本の防衛」にも「日本の安全保障」にも全く関係のないイラク攻撃になぜ米軍が出撃できるのか。明らかに日米安保条約違反です。私たちはこの軍事同盟条約に反対ですが、この安保条約すら破られているのです。川口外相は、官僚の「移動は許されるはず」という訳の分からない「カンニングペーパー」をただ読むだけで、何度も何度もむにゃむにゃ、むにゃむにゃ、棒読みで何を言っているか全く分からない状況でした。結局、政府側は誰一人答えられませんでした。もちろん「移動」ではなく「範囲」が問題なのです。
日米安保条約第6条は、日本が基地提供をする代わりに米軍は基地利用ができる、しかしその範囲は「極東」に限定されているというものです。いわゆる「極東条項」です。ペルシャ湾が「極東」に入るとは、いくら鉄面皮の首相でも答えられなかったのです。もちろんベトナム戦争時、湾岸戦争時、日本が出撃拠点になったのは事実です。どんどん空文化されてきました。しかしだからといって私たちまで感覚をマヒさせてはなりません。日本から出撃した空母機動部隊が、イラクの民衆と子どもたちを大量殺戮している!私たちは何としても、再度この出撃拠点化への反対を争点化していかねばなりません。
※実はこの質問はあの民主党きってのタカ派(!!)前原誠司氏が追及した論点である。川口外相の答弁に苛立った前原氏は、今度は小泉首相に迫ったのだが、首相もその同じ「カンニングペーパー」をもらって読もうとして場内から失笑が聞こえる始末。政府の弱点であることがここから分かる。
日米安保条約第六条(基地の許与)の第1項は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持の寄与するため、アメリカ合州国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」日本政府は、米に対して基地提供をするが、その出撃範囲は「極東」に限っているのである。
前原議員は、日米安保条約によれば、第五条で日米両国の防衛は「双務的」である、従ってイラク攻撃を支持しないから米は守らない、支持しなければ米国に守ってもらえないという論理は成り立たない、との法律論を持ち出した。もちろんこの議論の裏には北朝鮮に対する「共同攻撃」という民主党のタカ派的な前提がある。
日米安保条約第五条(共同防衛)第1項によれば、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」とある。
現にキティホークと米空母機動部隊は、対イラク戦争で極めて犯罪的な役割を果たしています。F14戦闘機やFA18戦闘攻撃機、EA6Bプロウラー電子戦など艦載機20機が頻繁にイラク空爆を行っているのです。また、キティホークと同じく横須賀基地を母港とするミサイル巡洋艦カウペンスは、駆逐艦、潜水艦10隻と共にトマホーク発射艦として攻撃の主軸になっています。今回のイラク戦争に使われたトマホークは500発を超え、現時点ですでに前回の湾岸戦争を超え史上最大規模となったといいます。日本から出撃した空母機動部隊が、最前面に立ってイラクに攻撃を加えているのです。黙って見過ごすわけにはいきません。
※空母キティホークから艦載機20機参加 大規模空爆(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/0322/011.html
※バグダッド近郊など空爆 キティホーク艦載機
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030327-00000048-kyodo-int
(3)殺戮・虐殺、破壊、飢え、差し迫る「バグダッドの大虐殺」:この惨状を前にして小泉首相はまだ無法な侵略を支持し続けるのか。
以下に上記の論点以外の3月24日の参院論戦のポイントを取り上げましょう。
■ブッシュのイラク侵攻は「先制攻撃」ではないのか。国連憲章のどこに「先制攻撃はOK」と書かれているのか。
小泉首相は、24日の衆院予算委員会での答弁で「米の戦争は先制攻撃ではないのか。」との質問に対して、「今回の米英の武力行使は一連の国連決議に基づくもので、決して先制攻撃ではない。」と繰り返しました。しかしごまかしてはいけません。
まず「先制攻撃」をめぐる小泉首相のウソです。ブッシュ大統領は明らかに「先制攻撃」を公言しているのです。「恐怖の日がやってくる前に、手遅れになる前に、危険は取り除かなければならない」「敵に攻撃されて初めて対抗措置をとるのは自衛ではなく、自殺行為である。」(17日の演説)と。敵の攻撃前にあらかじめ「自衛措置」として攻撃することを明言しているのです。これは明確な国連憲章違反です。国連憲章は「自衛のための武力行使」だけでなく、切迫した脅威がない限り「報復攻撃」さえ認めていません。もちろんアメリカの戦争は自衛戦争でも報復戦争でもありません。侵略戦争です。
現に小泉首相は24日の答弁で「政府はアメリカの先制攻撃を支持したわけではない」とうっかり口を滑らしたほどです。
※3月24日の共産党筆坂議員の質問「ブッシュ大統領の演説は、総理が認めたように、国連憲章に違反する先制攻撃について述べたのではないか。」に対して、首相は「(日本政府は)アメリカの先制攻撃を支持したわけではない」と、うっかり今回の攻撃を先制攻撃だと認めてしまった。委員会室がざわめき、慌てて「アメリカの先制攻撃ではなくて国連決議を順守し、国連憲章に合致したもの」と取り繕った。
「敵に攻撃される前に」攻撃するというのは先制攻撃ではないのか、それは国連憲章のどの条文で認められているのか、「大量破壊兵器」を持っただけで攻撃を開始してよいと見なす条文が国連憲章のどこにあるのか、このような「先制攻撃」の戦争への支持・協力は交戦権を放棄し戦力の不保持をうたった日本国憲法に違反するのではないのかを追及しなければなりません。
■こんなデタラメが許されるなら、同じごまかしで、次は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への先制攻撃にも加担することになる。
ブッシュの17日のこの「先制攻撃」演説は、イラクに限らず、今後のアメリカの戦争政策、軍事外交政策の悪しき前例、基準になっていく危険性があります。アメリカが脅威と考えれば、どのような国と政権に対しても「先制攻撃」を加えることができ、それに日本は支持をしていくということになります。世界中で戦争を引き起こす先棒を担ぐことになります。こんなことは絶対に許せません。
それはイラクの次は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対する「先制攻撃」をするのかという問題です。石破防衛庁長官は24日午後の参院予算委員会で、北朝鮮に関し、「米国が『もう待っていられない』と先制的に(武力行使を)やるかどうか分からない」と述べ、アメリカが北朝鮮に対して、先制攻撃に踏み切る可能性を示しました。
「日米同盟」を持ち出して対米追随を図る日本政府の最大の意図の一つはここにあります。だからこそ私たちは、イラク攻撃の不法性を厳しく追及しなければならないのです。
※米、対「北」先制攻撃も=石破防衛庁長官が可能性指摘(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030324-00000285-jij-pol
■ブッシュは「先制攻撃」に基づき侵攻しているのに、首相は「国連決議に基づくもので先制攻撃ではない」??
小泉首相は国連決議を弄んでいます。アメリカは国連決議や国連憲章を無視して、手前勝手で傲慢な「先制攻撃」に基づいて攻撃をしたのに、日本は「先制攻撃」に基づいてではなく国連決議1441に基づいて米が攻撃し、日本はそれを支持したというのです。
ここには二重のごまかしがあります。一つ目はあたかも国連決議に基づいてアメリカが攻撃を仕掛けたかのように描いていることです。すでに述べたようにブッシュは「先制攻撃」に基づいて侵略したのです。二つ目は首相は「先制攻撃」に基づいて支持しているのに、あたかも「国連決議」に基づいて支持しているかのようにウソを付いていることです。
■小泉首相は「イラクが悪い」「重大違反」というが、「いつ、どこで、誰が、だから武力行使してもよい」と「断定」したのか?
首相の弱点はどこにあるのか?国会論戦で次の質問をされたとき論理破綻が明確になりました。「一体いつ、誰が、イラクの国連決議違反を認定したのか?」−−首相は、これまでも「イラクが悪い」「イラクがちゃんと国連や国際社会の言うことを聞けば戦争にはならなかった」「イラクが重大な違反をしたから」「大量破壊兵器を破棄しなかったから」「大量破壊兵器を隠しているから」等々、全てをイラクの責任にしてきましたが、それじゃ、一体いつ、誰が、イラクに対する武力行使容認を認定したのか、です。皆さんもご存じのように「断定」「認定」したのは米英だけであって、国連安保理ではありません。首相は答えに窮しました。
※3月19日の開戦直前の党首討論で、小泉首相が戦争支持理由を問い質されたのに対して「フセイン政権に武装解除の意志がないことが断定された以上、米国の武力行使を支持する」と答えたことについて、共産党の志位議員がこう追及した。「『意志がない』と誰が『断定』したのか」「安保理も査察団も『断定』していない」と。首相はこれに答えることができず、やじで騒然となった。
皆さんもご存じのように、ついに安保理は米英の独走、武力行使容認決議を認めなかったのです。安保理の圧倒的多数は「査察継続」、平和的外交的解決でまとまったのであり、武力行使容認の新決議を拒否したのです。つまりアメリカは、国連決議1441に基づいて攻撃することができなかったことを意味しています。だからアメリカは、仏露の拒否権示唆で立ち往生し多数派工作にも失敗し、新決議も取り下げて、国連を無視し安保理を無視して、孤立したあげく戦争に突入したのです。
国連決議1441は元々自動開戦を認めるものではありませんでした。国連決議1441は、「査察決議」であり、査察が遂行されているかどうかを国連安保理で認証するだけであり、武力行使には新たな決議が必要だというのが1441の趣旨でした。だから米英はあれだけの時間を新決議の採決のために費やさなければならなかったのです。だから日本も露骨に対米追随の多数派工作に躍起となったのです。そしてフランス、ロシア、中国、さらには「ミドル6」と呼ばれた中間派諸国をも抱き込むことが出来ず、新決議採択を断念したのです。そんな失敗を棚上げにして、国連決議に基づくなど、よくも平気で言えるものです。1441は米英も日本も正当化するものではありません。私たちは、小泉首相に対し、もうこれ以上国連決議を蹂躙し愚弄するのはやめろと言わなければなりません。
※「国連安保理決議1441に抗議する−−ブッシュは「強制査察」を開戦の口実にするな」
※小泉首相が根拠にしているのは1441以外に、安保理決議678と687がある。前者は1990年の湾岸戦争の武力容認決議、後者は1991年の停戦決議だ。国際法上「自衛権行使」が認められているのは、@相手国が国連憲章に違反する場合、A国連決議が採択された場合(しかしこれも@を前提にしなければならない)、この2つの場合だけである。すでに説明したように、@は今回の米のイラク攻撃には当てはまらない。むしろ@を蹂躙している。Aはどうか。これも当てはまらない。つまりどの点から見ても国際法違反なのである。
そもそも678も687も、イラクとクウェートとの国境紛争に基づくものである。今回の米英によるイラクへの攻撃とは、戦争の当事者も、戦争の性格も全く異なるものなのである。ごまかしとすり替えも甚だしい。しかも678も687も、国連決議として適用されるには安保理の承認が必要なのである。「承認」はあったか?否、である。小泉首相の「国連決議が根拠」という論理は破綻しているのである。
■いつからそんなに偉くなったの?アナン事務総長をこき下ろす川口外相。
本来なら、今すぐ国連は米英の侵略行為を、国連憲章と安保理決議に違反する不法行為を働いたとして懲罰すべき立場にあるはずです。しかし腹立たしいことですが、まだ米英の侵略を今すぐ止める有効な手だては見つかっていない状況です。
当然、イラク政府は、アナン事務総長を厳しく非難しています。ブッシュの侵略を身体を張って阻止しないばかりか、真正面から非難しようともしないからです。「国連憲章に違反している」という趣旨の弱々しい批判だけです。多数の犠牲者を出すことに対する無神経さには信じがたいものがあります。前任者のガリ氏がアメリカの言うことを聞かなくなったため、急遽対抗馬として持ち上げられた親米派事務総長としてアメリカに逆らえないのかも知れません。
しかしそのアナン事務総長でさえ、今回の対イラク攻撃が「国連憲章に合致しない」「新決議なしの攻撃には正当性に疑問が残る」と発言したその事実に川口外相は噛みついたのです。曰く、アナン事務総長は「国連安保理のメンバーが決めた決議を解釈する権限はない」と。何という傲慢な態度でしょう。「国連安保理のメンバー」とは一体どこのことを言い、「決議」とは如何なる決議を言うのでしょうか。フランスもロシアも反対していました。川口外相の発言は、アメリカだけが国連決議を解釈する資格や権限があるとでも言うのでしょうか。
■国家元首打倒・政権転覆のための戦争は明々白々な国連憲章違反。
さらに日本の弱点は、アメリカが明確にフセイン政権の転覆、フセイン大統領個人の暗殺を戦争目的に掲げていることです。これは国家主権の侵害を禁止した国連憲章に違反する違法行為です。アメリカは、戦争は開戦初日、大統領宮殿への「処刑(decapitation)=首を取る」作戦によって幕を切りました。大量破壊兵器の廃棄を掲げたこの戦争はまやかしであり、実際はフセイン政権の打倒であることを、行為でもって明らかにしたのです。
アメリカは化学兵器や大量破壊兵器の所在を必死になって探しています。いやでっち上げようと偽情報を流してはウソであることが暴露されています。首相はこの点について、「フセインが武装解除の最大の障害だ」と述べフセイン大統領抹殺を狙った戦争目的を支持しました。しかし、大量破壊兵器を破棄しなければならない→しかしフセイン大統領が障害になる→だからフセインを打倒しなければならない。こんな勝手な解釈が国連や安保理のどこで通ったというのでしょうか。論理の飛躍も飛躍、もう滅茶苦茶です。小泉首相は、外交政策、国内政策が気に入らないと言う理由だけでその政策を出す国家元首を武力によって打倒する、一般市民もろとも大量殺戮することを認めるのでしょうか。首相に問う。あなたも「次は北朝鮮」でこの論法を使うのか!
■日本は核を持っていないから「属国」になる?!属国にならぬためには核武装する?!
さらに、小泉首相は独仏との対応の違いについて、「日本はフランスのように核兵器を持っていない」と述べました。核兵器の有無で外交政策を決める、アメリカの「核の傘」に有る限りアメリカの政策には反対しない、ブッシュが暴走しても侵略しても大量虐殺しても、とにかく何をしても黙って支持するしかないと言うのです。もしそうなら外務省や外交は必要ありません。解体してしまえばいい。米国務省に任せればいいのですから。しかしこれじゃまるで「核植民地」ではないですか。日本は「独立国」ではなかったのでしょうか。米の命令は絶対、何も言うな、奴隷のように従え−−これは彼ら自民党右翼が大騒ぎした「自虐史観」そのもの、まさに「究極の自虐史観」ではないのでしょうか。
しかしこの議論は、とんでもない論理を含んでいます。もし今のような「属国」から「独立国」になるには、核兵器を保有するしかないという「独自核武装」にまでエスカレートする極めて危険な論理です。ところで、ドイツは一体どう説明するのでしょうか。教えて欲しいものです。
※<イラク戦争>国会集中審議 小泉首相「日本は核兵器ない」(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030325-00002098-mai-pol
■小泉首相は劣化ウランの使用を支持するのか。非人道兵器の使用を支持するのか。大量虐殺を支持するのか。
衆参予算委員会では、戦争の被害、大量殺りく、非人道兵器の使用、劣化ウランの使用の問題はほとんど追及されませんでした。しかし、私たちが一番問題にしなければならないのはこの点です。一般民間人の無差別大量殺りく、ジェノサイドは国際法違反です。
がれきの山、住宅地の破壊、バスへの「誤爆」、傷ついた子どもたち。すでに一般人の犠牲者だけで数百人を数えています。直接の犠牲者だけではありません。バスラでは電力や水の供給施設が空爆によって破壊され、電気と水の供給が止まり、100万人以上の民間人が市内に閉じこめられています。ユニセフによると水の供給や電気の供給は3日前から止まり汚水がたれ流されているシャトルアラブ川の生水や壊れたパイプラインの水を汲み出し飲料水に使用していると言い、5歳以下の10万人以上が脱水、下痢、衛生状態の悪化による疾病などで死亡する可能性があると警告しています。−−小泉首相の「支持」は、これら大量殺戮行為全体への支持なのです。
(4)「米英楽勝」の後退とともに小泉政権の「復興支援」シナリオも動揺。反戦世論の高まりで政府与党の独走を許さない闘いを!
確かに世論支持率は私たちが思ったようにはすぐには落ちませんでした。しかし米英の「楽勝」「大本営発表」がウソであることが明らかになり、首相も戸惑いを隠せないでいます。政府与党の側も思惑通りには進んでいないのです。
政府与党のシナリオはこうです。「米英楽勝」→「イラク国民が米英軍を解放軍として大歓迎」→仏独露も折れて米英に屈服→米英の意向を受けて日本が「復興支援」で欧米の中に入ってまとめる→国連と国連決議で「復興支援」枠組みができる→「復興支援新法」を制定し自衛隊を戦後初めて占領軍・治安軍として侵略軍米英の下に送る。等々。
ところが米英の「楽勝」気運の後退でこの最初の段階でシナリオが崩れたのです。またパウエルは「イラクの支配権を国連に委譲する考えはない」と明言しました。「戦利品」は侵略国で独占すると公言したのです。「戦後復興」と称して米系土建業者や戦争ビジネス、しかもチェイニーのハリバートンなど政権と深く結び付いている業者に「復興」事業を勝手に発注していることは世界中からのひんしゅくを買っています。開戦前に私たちが暴露した通りです。日本政府の「国連主義」の建前はますますウソであることがバレバレになっているのです。
※フセイン政権崩壊後に国連に移譲する考えはない=米国務長官(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030327-00000174-reu-int
※「石油強奪と戦争特需:対イラク戦争は石油=軍事帝国アメリカの“巨大公共事業”−「石油動機説批判」「石油無関係説」のいかがわしさ−」
イラクの軍と市民の反撃と抵抗が増すにつれて、イラク側の犠牲者は急増しています。虐殺と破壊と飢え、目を覆う被害が生み出されています。バグダッドの地上戦が目前に迫り、「バグダッドの大虐殺」の危険があります。何としても「大虐殺」が起こる前に戦争を止めることが差し迫って重要になっています。
戦争が長期化すれば、国際反戦運動も国内の反戦世論も盛り上がるでしょう。今私たちにとってあきらめと無力感が最大の敵です。すでに日本の市民と市民運動は、昨年2回も有事法制を強行させなかった実績があるのです。自信を持って下からの反戦世論を盛り上げましょう。
2003年3月27日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
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